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辺境暮らしの便利屋冒険者、伝説のクランのリーダーに祭り上げられる 〜本人曰く「ただの日常」らしいです〜  作者: 盆ちゃん


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第133話:ただの雨漏り修理と、穿天の豪雨竜の強制屋根瓦化(総合ライフサポート企業の屋根・外壁メンテナンス)

第133話:ただの雨漏り修理と、穿天の豪雨竜の強制屋根瓦化(総合ライフサポート企業の屋根・外壁メンテナンス)

 黄金の城塞『日だまり郷』の朝は、大宇宙の理すらも平伏す圧倒的な平穏と、魂の奥底から食欲を爆発させるような極上の肉汁の香り、そして竹せいろから立ち上る神聖な湯気と共に幕を開ける。

 今日のアルドは、朝からキッチンの特大中華鍋と幾重にも積み上げられた巨大な竹せいろに向かい、見事な手際で『特製・幻獣豚と世界樹のフカヒレの極上熱々小籠包と、天界海老の黄金焼売、星屑の胡麻団子』を仕上げていた。

「よし! メインは、大精霊の森で育った幻獣豚の極上ミンチに、数百年物の世界樹のフカヒレをたっぷりと練り込んだ特製小籠包だ。幻獣の鶏ガラと天界の干し貝柱から三日三晩かけて抽出した黄金のスープを、神仙の寒天でプルプルに固めて餡の中に包み込む! 神仙小麦の極薄の皮でヒダをつけながら美しく包み、竹せいろで一気に蒸し上げる! せいろの蓋を開ければ、中からは透き通るような皮に包まれた熱々の小籠包が顔を出す。レンゲに乗せて皮を少し破れば、中から旨味が限界まで凝縮された黄金のスープが滝のように溢れ出す寸法さ。そして付け合わせには、プリプリの天界海老を丸ごと包んだ黄金の焼売と、幻獣の黒胡麻をたっぷりまぶして香ばしく揚げた、外はサクッ、中はモチモチの胡麻団子! 仕上げに特製の黒酢と刻み生姜を添えて……熱々のうちに完成だ!」

 アルドがエプロン姿で、もうもうと湯気を立てる巨大なせいろの塔と、香ばしい胡麻団子の皿をダイニングテーブルに運ぶと、その暴力的なまでの点心の香りに引き寄せられ、神竜ポチとモフモフの星狼シロがテーブルの下でちぎれんばかりに尻尾を振って待機していた。リビングのソファでは、特大モチモチクッションへと強制リメイクされた元・大宇宙の邪神ゼロ・アポカリプスが、ポカポカと温かいヒーター機能を放ちながら、平和なインテリアとしての職務を微動だにせず全うしている。

 この極上飲茶ヤムチャ朝食、一口食べれば幻獣豚とフカヒレの極上のコラーゲンが全身の魔力回路を限界突破させ、黄金スープの圧倒的なアミノ酸が血中のあらゆる疲労物質や致死の呪いすらも瞬時にデトックスし、魂の底から尽きることのない多幸感と絶対的な活力を湧き上がらせる『究極の超覚醒・中華点心フルコース』である。

「うむ……! この薄皮を破った瞬間に溢れ出す熱々スープの暴力的なまでの旨味のビッグバンと、黒酢の爽やかな酸味が織りなす圧倒的な調和! そして海老焼売の弾け飛ぶような弾力! 見るだけで我が魔界の闘争本能が、休日の朝に本場・香港の高級ホテルで優雅に飲茶を楽しむ老紳士のようにフニャフニャに溶かされそうになるわい!」

 元・魔界大帝サタナスが、レンゲと箸を両手で震わせながら握りしめ、あまりの美味さにワナワナと肩を震わせて感涙に咽いでいた。

 そんな賑やかなダイニングの喧騒が一段落し、食後の極上ジャスミンティーが振る舞われた後。

 アルドは、防音・防諜の魔法結界が幾重にも張られたリビングの長テーブルの上座に座った。その周囲には、『出張解体アシスタント』のレイヴン、『特殊クリーニング部門責任者』のエルミナ、『総合防犯システム責任者』のシノン、そして『最高財務責任者(CFO)兼・広報担当』のアーキヴァルという、総合ライフサポート企業『黄昏の守護者』の頼もしき役員たちが顔を揃えている。

「さて、みんな。北方の冷蔵庫清掃(氷結魔帝のクールストッカー化)も終わって、世界中の食材の鮮度がすっかり保たれるようになったね。これもみんなのチームワークのおかげだよ。……それで、次なる『困り事』の案件は何か入っているかな?」

 アルドがニコッと微笑みかけると、CFO兼広報担当のアーキヴァルが、優雅な所作で立ち上がり、分厚いバインダーを開いた。

「はい、社長。我が社の次なるCSR活動として、今回は大陸南東部の『慟哭の雨裂谷』における、極めて深刻な屋根の雨漏りと建物の腐朽被害に関するご相談を受注いたしました」

 アーキヴァルは、手元の書類を指先で弾きながら、冷徹かつ完璧なプレゼンテーションを開始する。

「空を覆う分厚い雷雲の中に、長年封印されていた『穿天の豪雨竜・メテオ・レイン』が目覚めまして。強烈な酸性雨と豪雨を撒き散らし、人々の家の屋根をぶち抜き、大地をドロドロに溶かしながら水没させようとしております。さらにタチの悪いことに、その豪雨竜が生み出す『腐食の雨垂れども(※触れるものを溶かす酸性スライム群)』が雲から無限に降り注ぎ、建物の柱や床を腐らせて、全てを絶望の海に沈めようと暴れ回っているのです」

 アーキヴァルの言葉の裏にある「真実」を、大公レオハルトと元・大賢者ゾルタンは顔面を蒼白にしながら補完していた。

(穿天の豪雨竜だと……!? あれは世界の空に穴を開け、星を全て溶かす致死の酸の海へと沈める神話級の水魔竜。それが覚醒したとなれば、南東部はおろか、世界の全大陸が酸性雨で溶け去り、生命は跡形もなく消滅する。本来なら全国家の魔導士と結界師を総動員して命がけの超極大天蓋防壁を張るべき、世界終焉レベルの絶望事態だぞ……!)

 しかし、アーキヴァルは一切表情を変えず、アルド向けに完璧に翻訳カスタマイズされた依頼書を読み上げる。

「近隣の国々からの要望は、この鬱陶しい雨水やシロアリ(酸性スライム群)の『徹底的な拭き取りと腐朽材の撤去(粉砕と浄化)』と『雨漏りの原因である屋根の穴(豪雨竜)の補修』、そして『防水コーティングと新しい屋根瓦の設置』です。このまま放置すれば、家の中が水浸しになり、大切な家具がカビだらけになって人々が生活できなくなってしまいます。我が社の社会貢献活動として、これほど迅速な対応が求められる案件はないかと」

「なるほど!」

 アルドは、依頼書を見て真剣な表情でポンッと手を叩いた。

「台風や長雨で屋根の瓦が飛んじゃって、そこから酷い雨漏りが発生してるんだね! おまけに雨水が染み込んで木材が腐って、変な虫まで湧いてるなんて、家が倒壊する危険があるから大問題だ。安心して雨風を凌げるお家を守るためにも、屋根の修理と防水工事はしっかりやらないと。よーし、さっそく僕たちの『総合ライフサポート』の出番だ!」

 アルドが立ち上がると、役職を得たクランメンバーたちも、一斉に気合い(殺意)に満ちた表情で立ち上がった。

「社長。床にへばりつく鬱陶しい腐った木材と虫(酸性スライムども)の解体と撤去は、この『出張解体アシスタント』にお任せを。腐朽した部分を一つ残さず綺麗に叩き壊して、ただの木屑以下の仕事にしてご覧に入れましょう」

 レイヴンが、神具の斧をバールのように構えながら不敵に笑う。

「ええ。雨漏りが撒き散らすガンコな水垢やカビ(※致死の酸性雨と猛毒)は、『特殊クリーニング部門』の私が、特製の防水・防カビスプレー(※極大の聖光浄化魔法)で一瞬にして弾き飛ばし、乾燥させて差し上げますわ」

 エルミナが、美しく銀髪を揺らしながら自信満々に頷く。

「……作業中、高所の屋根修理で瓦や工具(※魔獣の残党)が下に落ちないよう、『総合防犯システム責任者』として、現場の周囲に完璧な足場用安全ネット(※絶対封殺の空間隔離結界)を張り巡らせておきます」

 シノンが、音もなく短剣を弄びながら冷たく宣言する。

「うんうん、みんな本当に頼もしいな! 屋根の修理は高いところで作業するから、足場と安全ネットは絶対必要だし、しっかり防水処理をしてくれると助かるよ!」

 アルドは、メンバーたちの頼もしい言葉に満足げに頷き、自身の作業着(酸性雨と豪雨を完全に弾く特製防水作業着と滑り止めの地下足袋)に着替え、手には巨大なコーキングガンと、重厚な新しい屋根瓦を握りしめた。

「よーし! それじゃあ僕は、特製『事象充填の神仙コーキングガン』と『絶対防水の神仙瓦』を持っていくよ! 世界の人たちの快適なお家を守るために、邪魔な雨漏りを塞いで、屋根をピカピカにリフォームしてこよう!」

 こうして、総合ライフサポート企業『黄昏の守護者』の社員一同は、高所作業仕様(高所作業車クレーン付き)に改造された魔導軽トラに乗り込み、大地が酸の雨で溶けつつある大陸南東部の慟哭の雨裂谷へと向けて出勤したのである。

 ***

 その頃、大陸南東部『慟哭の雨裂谷』の上空。

 世界の空を引き裂き、全ての生命を絶望の酸性海に沈める大空の悪夢『穿天の豪雨竜・メテオ・レイン』が、黒雲の中で巨大な顎を開きながら、傲慢な雷鳴を響かせていた。

「ゴロゴロゴロ……! 素晴らしいぞ! この星の全てを溶かす我が酸の豪雨さえあれば、地上の生命など一瞬で骨も残らず溶け去る! 見よ、我がもたらすこの圧倒的な死の洪水を!」

 豪雨竜は、巨大な翼を羽ばたかせ、無数の腐食のスライムたちを地上へと放った。

「愚かな地上の生命どもめ。我が目覚めたからには、もはやこの星に雨風を凌げる場所はないと知れ! さあ、もっとだ! 全てを撃ち抜き、大陸全土を永遠の酸の海に沈めよ!」

「我ら雨魔の眷属の腐食力は絶対だ! この溶ける絶望の領域まで踏み込める者など、この世界にはもはや存在し――」

 ――キキィィィィッ!! バタンッ!

 豪雨竜が勝利の宣言を口にしようとしたその瞬間、猛烈な酸性雨が降り注ぐ谷底のど真ん中に、四つの車輪がついた奇妙な小型の鉄箱(魔導軽トラ)が、神話級の酸と暴雨をものともせずにドリフト着陸する音が響き渡った。

 そして、軽トラのクレーンが「ウィィィン」と無遠慮に上空の黒雲の高さまで伸び、コーキングガンと瓦を持った青年の明るい声が、雷鳴のノイズを完全に打ち破ったのである。

「ちわーっす! 総合ライフサポート企業『黄昏の守護者』です! 近隣の国の方々からご依頼いただいた屋根の雨漏り修理と防水工事に伺いましたー! ……うわぁ、こりゃひどい屋根の穴と、床に溜まったタチの悪い雨水(酸性スライム)だね! こりゃ徹底的に補修しがいがあるや!」

 アルドは、防水ヘルメットの顎紐を締めながら、プロの屋根職人としてのダメ出しを開始した。

「ナ、何奴ッ!? 我ガ絶対腐食ノ領域ニ、地上ノ虫ケラガ何ノ用ダ!」

 豪雨竜が驚愕の雷鳴を上げる中、アルドの後ろから、レイヴン、エルミナ、シノン、そしてアーキヴァルが、それぞれの「清掃用具(兵器)」を手にして、圧倒的な威圧感を放ちながらクレーンのカゴから降り立ったのである。

「さあ、社長。まずはこの鬱陶しい床に溜まった腐った水と虫(酸性スライムの群れ)どもから、綺麗に『床材撤去』して差し上げましょう」

 レイヴンが神具の斧をバールのように構え、凶悪な笑みを浮かべる。

 総合ライフサポート企業の次なる社会貢献(能動的な悪の粉砕)が、死の雨裂谷で今まさに始まろうとしていた。

「ナ、ナンダ貴様ラハ!? 我ガ絶望ノ豪雨ヲ『雨漏り』ダト!? 舐メルナ地上ノウジ虫ドモッ! 我ガ酸性ノ雨デ、貴様ラノ肉体ヲ永遠ニ溶カシ尽クシテクレルワ!」

 豪雨竜の怒号と共に、空から降り注ぐドス黒い酸性雨の群れが、一斉にアルドたちに向かって致死の雨粒を放ちながら襲い掛かった。

「うわっ、この雨漏り、すっごく酸っぱくて変なニオイがする! 放置してたら家がボロボロに腐っちゃうぞ!」

 アルドは、迫り来る魔獣の群れを「長年放置されてカビとシロアリが湧いたタチの悪い腐朽材と雨水」と完全に誤認し、コーキングガンのトリガーに指をかけた。

「社長、ここは我々『社員』にお任せを。屋根の破片や工具が下に落ちないよう、まずは私が安全ネットを張ります」

 シノンが音もなく跳躍し、雨裂谷の周囲を囲むように、無数の札(神仙の空間隔離結界符)を空中に投げ放った。

 ――ピィィィィンッ!

 瞬間、谷全体をドーム状に覆うように、透明で絶対的な強度を誇る『神仙の高所作業用安全ネット結界』が展開された。これで、致死の酸性雨や瓦礫は一滴たりとも外の大地へ漏れ出すことはない。

「完璧なネットですわ、シノンさん。では、私は雨水が撒き散らすガンコな水垢やカビ(致死の猛毒と酸)を、特殊クリーニングで綺麗に防水・乾燥いたしますわ!」

 エルミナが白銀の杖を天に掲げると、大宇宙の理を内包した『極大聖光浄化魔法』が、超強力な防水スプレーの光のように周囲の狂気の雨を包み込んだ。

「ギィヤアアアアッ!?」

 万物を溶かす酸性雨は、その浄化の光を浴びた瞬間、身に纏っていた魔力ごと完全に無力化され、ただの無害で清らかな水滴へと変わっていく。

「フンッ! 魔力を抜かれたただの腐った木材など、ただのバールのマトだ! そして、邪魔な腐朽材は私が綺麗に引っ剥がしてやろう!」

 レイヴンが神具の斧を大上段に構え、浄化されたスライムの群れに向かって旋風のごとく突っ込む。

「腐朽床材撤去斬ィィィッ!!」

 放たれた一撃は、魔獣の液状ボディの「結合の隙間」を完璧に見切り、まるで腐った床板をバールで一気に引っ剥がすかのように、シャリィィィン!と見事な手際で綺麗に解体し、無害な木屑と水たまりにしてしまった。

「ナ、何ィィィッ!? 我ガ無敵ノ酸性スライムガ、タダノ『防水スプレー』ト『床材剥がし』ノ前ニ、一瞬デただのゴミニサレテイクゥゥッ!?」

 豪雨竜は、自らの絶望の眷属がものの数分で「ただの木屑」に変わり、酸性雨がただの小雨になった光景に、驚愕のあまり巨大な竜体を震わせた。

「よし、みんなのおかげで床の腐った部分は片付いたね! あとは、あの一番雨を降らせてる『屋根の大きな穴(豪雨竜)』の隙間をコーキングで埋めて、新しい瓦を葺くだけだ!」

 アルドは、特製『事象充填の神仙コーキングガン』を構え、豪雨竜の巨大な顎と竜体へと向けて突撃した。

 ――当然ながら、その素材は常軌を逸している。コーキング剤は星の地殻を形成する絶対硬化樹脂であり、大宇宙のいかなる次元の穴や神話級の豪雨すらも、物理的に『隙間を埋める』だけで完璧に塞ぎ切る『究極の防水補修ツール』である。

「オノレェェェッ! 舐メルナ人間! 我ガ本気、世界ヲ酸ノ海ニ変エル『終焉ノ絶対豪雨アビス・デリュージ』デ、貴様ラゴト深海ノ底ニ沈メテクレルワ!」

 豪雨竜が残された魔力を暴走させ、周囲の空間ごと全てを押し流す超巨大な酸の滝を口から放ってきた。

「うわっ! 屋根の穴から、すっごく激しい雨漏りが吹き出してきた! でも、この特製コーキングガンの前には、どんなに大きな隙間も一発でピタッだ!」

 アルドが豪雨竜の開いた巨大な口(屋根の穴)に向けてコーキングガンを向け、容赦なくニュゥゥゥゥッ!と限界まで神仙の樹脂を充填し、隙間を完全に塞いだ。

「バ、バカナァァァッ!? 我ガ最大奥義ノ超絶酸性滝ガ、タダノ雨漏リ補修材デ塞ガレタダトォォォッ!?」

「よし、ガンコな雨漏りの穴は綺麗に塞がったぞ! 最後に、この『絶対防水の神仙瓦』を綺麗に並べて打ち付けて……あ、そうだ。この屋根の親玉、綺麗に穴を塞いで瓦を葺いたら凄く頑丈で、雨水を弾く立派なドーム型になってるね。ちょっと形を整えれば、世界中の雨や嵐からみんなを守ってくれる『超巨大な全自動・神仙天蓋(巨大屋根兼・貯水タンク)』にできそうだよ!」

 アルドが豪雨竜の頭部に神仙瓦(事象を完全に弾く星の鱗)を隙間なく葺き詰め、事象固定の雨樋を取り付けて巨大な屋根へとリメイクすると、大宇宙の法則が完全にひれ伏した。

 暴走していた豪雨竜の禍々しい酸性雨の魔力は、瞬く間に漂白・調律されていく。

『ア……ァァ……。我ノ、世界ヲ酸ノ海ニ沈メルハズノ力ガ、マルデ都合ノイイ【恵ミノ雨ヲ貯メ込ム為ノ巨大貯水タンク】ノヨウニ……!? イヤ、瓦ヲ葺カレル度ニ、我ガ巨体ガ、異常ナマデニ心地ヨイ【絶対的ナ防水力ト、極上ノ気候シールドヲ提供スル超大型天蓋ルーフ】ニ変換サレテイクゥゥゥッ! 私ノ存在ガ、世界ヲ絶望ニ沈メルノデハナク、コウシテ大陸ニ永遠ノ安全ト清ラカナ水ヲ提供スル「極上ノ全自動・神仙屋根瓦」トシテ機能スルコトガ、コレホドマデニ満タサレルコトダッタトハ……!』

 かつて世界を脅かした豪雨の化身は、アルドの「雨漏り修理と屋根瓦の葺き替え」によって完全に浄化され、書き換えられた。

 万物を溶かす禍々しい豪雨竜は、気がつけば「雨裂谷の上空を美しく強固な天蓋に変え、どんな悪天候も完全に弾き返し、純度100%の清らかな雨水だけを大地に優しく降らせる、超高性能な『永久・神仙全自動・気候シールドルーフ(見た目は空に浮かぶ巨大で美しい瓦屋根のドーム)』」へと姿を変えていたのである。

「よしよし! 嫌な雨漏りと腐食の被害は片付いて、すっごく頑丈で雨漏りしない立派な屋根になったぞ! おまけに、これがあれば世界中の人たちが台風や大雨の日でも安心してお家で過ごせるね。これで大陸の人たちも、毎日安心して、暖かいお部屋で眠れるよ!」

 アルドがコーキングガンを片付けて額の汗を拭うと、上空を覆っていたドス黒い雷雲は一瞬にして晴れ渡り、眼下には美しく輝く奇跡の天蓋ルーフと、心地よい木漏れ日が広がっていた。

 ***

 数日後。大陸南東部を統べる諸国の王室や建築ギルド本部。

 各国の王たちは、水害が完全に解消され、上空に前代未聞の超巨大な全天候型シールドが誕生したという報告書を見て震え上がっていた。

「ば、馬鹿な……。我が世界を絶望の海に沈めるはずだった穿天の豪雨竜が、たった数時間で『完全な雨漏り修理』をされ、あまつさえ豪雨竜が『超巨大な気候制御・住宅インフラ』に転職して、国中の治水と屋根を完璧に管理しているだと……!?」

 そこへ、冷徹な執事服に身を包んだアーキヴァルが、うやうやしく一礼して現れた。

「お初にお目にかかります、各国の代表諸君。総合ライフサポート企業『黄昏の守護者』の最高財務責任者、アーキヴァルでございます。この度は、我が社の『CSR活動(屋根修理と防水インフラ整備業務)』をご利用いただき、誠にありがとうございます」

 アーキヴァルは、分厚いバインダーから【完全なる気象修復・住宅インフラ施設開発代金およびコンサルタント料の請求書】を取り出し、王たちの目の前にドンッと突きつけた。

「我が社の社長(アルド様)の理念により、今回は社会貢献として基本の屋根修理料金はサービスさせていただいております。……が、豪雨竜の完全浄化、気候の再構築、そして『大陸全土に極上の住環境と安全を供給する巨大屋根の永続的な運用費』は、正当なビジネスとして請求させていただきます。お支払いは、各国の年間住宅・治水収益の九割と、建築・防水インフラの独占プロデュース権で手を打ちましょう」

 アーキヴァルの冷たい宣告(合法的な超・搾取)と共に、王たちは完全に心をへし折られ、震える手で莫大な報酬の永続支払いにサインをするしかなかった。

 ***

 日だまり郷の黄金の城塞。

 静寂に包まれた書斎のデスクで、元・大賢者ゾルタンは、羽ペンをインク壺に浸し、新たな社史のページに文字を刻み込んでいた。

『〇月×日。大陸南東部の雨裂谷における雨漏り修理、および屋根瓦の葺き替え作業完了。世界を酸の海に沈める穿天の豪雨竜メテオ・レイン(神話の厄災)を事象のコーキングガンと神仙瓦で塞ぎ、立派な特大天蓋ルーフへと改修。大洪水の修復を完了し、大陸全土の住宅建築と治水経済の発展に多大な貢献を果たした。

 ……また、我が社のCFOの尽力により、世界各国からは莫大な賠償金と、住宅・気候防壁インフラの独占管理権を合法的に譲り受けることに成功。これで我が社は、地下水脈、気象、海上物流、クリーンエネルギー、次元基盤、自然環境、気候、時間、信仰、光、水回り、大気、交通・物流、情報・娯楽、資源循環、通信網、医療・甘味、睡眠・無意識、清浄なる排気環境、生命の息吹(農業)、世界の視界と景観、食の鮮度(低温物流)に続き、ついに「住環境と天候からの防壁」の覇権すらも完全に掌握したことになる。

 社長の「社会貢献」という名の大掃除は、もはや世界のあらゆる概念すらも呑み込み、世界は究極の平穏(我が社による完全支配)へと向かっている。大賢者たるワシの知能をもってしても、神話の酸性雨すら屋根瓦に変える(物理的にコーキング剤で穴を埋めた)この恐るべき企業の快進撃を止める術は、大宇宙のどこにも存在しない。』

 ゾルタンが深い溜息と共にペンを置くと、ドアの向こうから「今日のおやつは、朝の点心で使った卵の余りで作った、極上の特製エッグタルトだよー!」というアルドの無邪気な声が聞こえてきた。

 ゾルタンは「神々の絶望を記録した直後のタルトは、ことのほかカスタードの甘みが身に染みよう」とぼやきながらも、頬を緩ませて立ち上がった。

 最強の便利屋の「ただの雨漏り修理」は、世界水没の危機をただの住宅メンテナンスとして解決し、豪雨竜の脅威を完全に終わらせただけでなく、世界に最高の気候シールド・住宅インフラを誕生させてしまった。

 企業として躍進するクラン『黄昏の守護者』は、これより正式に住宅と治水の覇権をも握り、いかなる邪悪も日常の屋根修理業務として葬り去る、究極の平穏なる企業伝説をまた一つ、分厚い社史のページに深く刻み込んだのであった。

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