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辺境暮らしの便利屋冒険者、伝説のクランのリーダーに祭り上げられる 〜本人曰く「ただの日常」らしいです〜  作者: 盆ちゃん


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第131話:ただの窓拭きと、幻惑の邪眼帝の強制パノラマウィンドウ化(総合ライフサポート企業のガラス清掃業務)

第131話:ただの窓拭きと、幻惑の邪眼帝の強制パノラマウィンドウ化(総合ライフサポート企業のガラス清掃業務)

 黄金の城塞『日だまり郷』の朝は、大宇宙の理すらも平伏す圧倒的な平穏と、魂の奥底からジャンクな欲望を呼び覚ますような極上の肉が焼ける匂い、そして油が弾ける暴力的な香ばしさと共に幕を開ける。

 今日のアルドは、朝からキッチンの特大鉄板と深い揚げ鍋に向かい、見事な手際で『特製・幻獣牛の極厚ダブルチーズバーガーと、世界樹の特大フライドポテト、天界レモンの爽快スカッシュ』を仕上げていた。

「よし! メインは、大精霊の牧草を食べて育った幻獣牛の粗挽き肉を、つなぎを一切使わずに叩き上げた極厚の100%ビーフパティだ。これを神仙牛脂を引いた鉄板で一気に焼き上げ、肉汁を限界まで閉じ込める! パティの上には、数百年熟成させた幻獣チェダーチーズをたっぷりと乗せてトロトロに溶かす。そして、神仙小麦でふっくらと焼き上げた特製のバンズに、自家製の星屑マスタードとオーロラソースを塗り、シャキシャキの幻獣レタス、厚切りの天界トマトと一緒に、パティを二枚重ねて豪快に挟み込む! 付け合わせには、世界樹の巨大なジャガイモを皮付きのまま太めにカットし、幻獣の油で外はカリッと、中はホクホクに二度揚げした山盛りのフライドポテト! 仕上げに、星屑の岩塩と神仙ハーブをまぶし、キンキンに冷えた天界レモンスカッシュを添えて……熱々のうちに完成だ!」

 アルドがエプロン姿で、肉汁が滴り落ちる巨大なハンバーガーと、黄金色に輝くポテトの山をダイニングテーブルに運ぶと、その暴力的なまでのジャンクで食欲をそそる香りに引き寄せられ、神竜ポチとモフモフの星狼シロがテーブルの下でちぎれんばかりに尻尾を振って待機していた。リビングのソファでは、特大モチモチクッションへと強制リメイクされた元・大宇宙の邪神ゼロ・アポカリプスが、ポカポカと温かいヒーター機能を放ちながら、平和なインテリアとしての職務を微動だにせず全うしている。

 この極上ハンバーガー朝食、一口食べれば幻獣牛の極上のタンパク質とチーズのカルシウムが全身の魔力回路を限界突破させ、レモンスカッシュの圧倒的なクエン酸と炭酸が血中のあらゆる疲労物質や致死の呪いすらも瞬時にデトックスし、魂の底から尽きることのない多幸感と野生の活力を湧き上がらせる『究極の超覚醒・ダイナーフルコース』である。

「うむ……! このバンズを噛みちぎった瞬間に溢れ出す肉汁の大洪水と、濃厚なチーズが織りなす圧倒的なジャンクの宇宙! そしてカリホクのポテトを炭酸で流し込むこの背徳感! 見るだけで我が魔界の闘争本能が、休日の昼下がりにアメリカンダイナーでスポーツ観戦を楽しむ若者のようにフニャフニャに溶かされそうになるわい!」

 元・魔界大帝サタナスが、顔中をソースだらけにしながらバーガーを両手で震わせて握りしめ、あまりの美味さにワナワナと肩を震わせて感涙に咽いでいた。

 そんな賑やかなダイニングの喧騒が一段落し、食後の極上ミントティーが振る舞われた後。

 アルドは、防音・防諜の魔法結界が幾重にも張られたリビングの長テーブルの上座に座った。その周囲には、『出張解体アシスタント』のレイヴン、『特殊クリーニング部門責任者』のエルミナ、『総合防犯システム責任者』のシノン、そして『最高財務責任者(CFO)兼・広報担当』のアーキヴァルという、総合ライフサポート企業『黄昏の守護者』の頼もしき役員たちが顔を揃えている。

「さて、みんな。大陸東部の草むしりと造園(狂乱の魔蔓樹の果樹園化)も終わって、世界中のお庭と景観がすっかり綺麗になったね。これもみんなのチームワークのおかげだよ。……それで、次なる『困り事』の案件は何か入っているかな?」

 アルドがニコッと微笑みかけると、CFO兼広報担当のアーキヴァルが、優雅な所作で立ち上がり、分厚いバインダーを開いた。

「はい、社長。我が社の次なるCSR活動として、今回は大陸西部の『霧幻の山脈』における、極めて深刻な視界不良と幻覚被害に関するご相談を受注いたしました」

 アーキヴァルは、手元の書類を指先で弾きながら、冷徹かつ完璧なプレゼンテーションを開始する。

「大陸西部にそびえ立つ高山地帯に、長年封印されていた『幻惑の邪眼帝・ミスティック・アイズ』が目覚めまして。強烈な幻惑の霧と無数の邪眼を宙に浮かべ、人々の視界を奪い、絶望的な幻覚を見せ続けております。さらにタチの悪いことに、その邪眼帝が生み出す『白濁の眼球魔獣ども(※空間を歪め、正気を奪う浮遊魔獣群)』が山脈から溢れ出し、人々の街の風景をモヤモヤの霧で覆い尽くし、何も見えなくしようと暴れ回っているのです」

 アーキヴァルの言葉の裏にある「真実」を、大公レオハルトと元・大賢者ゾルタンは顔面を蒼白にしながら補完していた。

(幻惑の邪眼帝だと……!? あれは世界の空間そのものを歪め、星の全ての生命から視力と正気を奪い取る神話級の幻魔。それが覚醒したとなれば、西部諸国はおろか、世界の全生命が盲目となり、己の最悪のトラウマを見せられながら狂死する。本来なら全国家の魔導士と光の神官を総動員して命がけの超極大視界確保・浄化結界を張るべき、世界終焉レベルの絶望事態だぞ……!)

 しかし、アーキヴァルは一切表情を変えず、アルド向けに完璧に翻訳カスタマイズされた依頼書を読み上げる。

「近隣の国々からの要望は、この鬱陶しい白いモヤモヤ(眼球魔獣群)の『徹底的な拭き掃除(粉砕と浄化)』と『霧を発生させる親玉(邪眼帝)のガラス磨き』、そして『曇りガラスの解消と絶景の確保』です。このまま放置すれば、景色が全く見えず、道に迷って事故が多発し、人々の生活が成り立たなくなってしまいます。我が社の社会貢献活動として、これほど迅速な対応が求められる案件はないかと」

「なるほど!」

 アルドは、依頼書を見て真剣な表情でポンッと手を叩いた。

「家の窓ガラスが長年の結露や手垢、泥水で真っ白に曇ってて、外の景色が全然見えなくなっちゃってるんだね! おまけに窓のサッシにカビや変な虫が湧いてるなんて、部屋の中まで暗くなるし衛生的にも大問題だ。お部屋から綺麗な景色を見てリフレッシュするためにも、窓ガラスの清掃はしっかりやらないと。よーし、さっそく僕たちの『総合ライフサポート』の出番だ!」

 アルドが立ち上がると、役職を得たクランメンバーたちも、一斉に気合い(殺意)に満ちた表情で立ち上がった。

「社長。窓にへばりつく鬱陶しい汚れの塊(眼球の魔獣ども)の解体と撤去は、この『出張解体アシスタント』にお任せを。こびりついた汚れを一つ残さず綺麗に削り落として、ただの汚水以下の仕事にしてご覧に入れましょう」

 レイヴンが、神具の斧をスクイージー(水切りワイパー)のように構えながら不敵に笑う。

「ええ。窓が撒き散らすガンコな曇りやカビ(※致死の幻惑瘴気と狂気)は、『特殊クリーニング部門』の私が、特製のガラス用洗剤(※極大の聖光浄化魔法)で一瞬にして透明に拭き上げ、浄化して差し上げますわ」

 エルミナが、美しく銀髪を揺らしながら自信満々に頷く。

「……作業中、高所の窓拭きで汚水や洗剤(※魔獣の残党)が下へ落ちないよう、『総合防犯システム責任者』として、現場の周囲に完璧な落下防止ネットと防水シート(※絶対封殺の空間隔離結界)を張り巡らせておきます」

 シノンが、音もなく短剣を弄びながら冷たく宣言する。

「うんうん、みんな本当に頼もしいな! 窓ガラスの掃除は外側を拭く時に落っこちないように安全対策が大事だし、汚水が下に垂れないようにシートを張ってくれると助かるよ!」

 アルドは、メンバーたちの頼もしい言葉に満足げに頷き、自身の作業着(幻惑と狂気を完全に弾く特製清掃用ツナギと、滑り止めのついた安全靴)に着替え、手には巨大な窓拭き用ワイパーと、大きなスプレーボトルを握りしめた。

「よーし! それじゃあ僕は、特製『事象払拭の神仙ワイパー』と『絶対透明のガラスクリーナー』を持っていくよ! 世界の人たちの綺麗な景色を守るために、邪魔な曇りを拭き取って、窓ガラスをピカピカのパノラマウィンドウにリフォームしてこよう!」

 こうして、総合ライフサポート企業『黄昏の守護者』の社員一同は、高所作業仕様(ゴンドラ付き)に改造された魔導軽トラに乗り込み、空間が白濁した霧に覆われつつある大陸西部の霧幻の山脈へと向けて出勤したのである。

 ***

 その頃、大陸西部『霧幻の山脈』の中心。

 世界の視界を奪い、全ての生命を狂気の幻覚に沈める大地の悪夢『幻惑の邪眼帝・ミスティック・アイズ』が、空を覆うほどの巨大な眼球を蠢かせながら、傲慢な不協和音を響かせていた。

「ギョロギョロギョロ……! 素晴らしいぞ! この星の視界を全て奪い去る我が幻惑の霧さえあれば、地上の生命など一瞬で己の狂気に飲まれて自滅する! 見よ、我がもたらすこの圧倒的な盲目と絶望の世界を!」

 邪眼帝は、巨大な主眼をギョロリと動かし、無数の白濁した眼球魔獣たちを山脈の外へと放った。

「愚かな地上の生命どもめ。我が目覚めたからには、もはやこの星に真実の景色はないと知れ! さあ、もっとだ! 全てを白濁させ、大陸全土を永遠の霧と狂気の牢獄に沈めよ!」

「我ら幻惑の眷属の視界奪取力は絶対だ! この狂気の領域まで踏み込める者など、この世界にはもはや存在し――」

 ――キキィィィィッ!! バタンッ!

 邪眼帝が勝利の宣言を口にしようとしたその瞬間、分厚い霧が立ち込める山頂のど真ん中に、四つの車輪がついた奇妙な小型の鉄箱(魔導軽トラ)が、神話級の幻惑瘴気と空間の歪みをものともせずにドリフト着陸する音が響き渡った。

 そして、軽トラのドアが「ガラッ」と無遠慮に開け放たれ、ワイパーとスプレーを持った青年の明るい声が、狂気の不協和音を完全に打ち破ったのである。

「ちわーっす! 総合ライフサポート企業『黄昏の守護者』です! 近隣の国の方々からご依頼いただいた窓ガラスの清掃と曇り止め加工に伺いましたー! ……うわぁ、こりゃひどい結露と、窓にこびりついたタチの悪い泥汚れ(眼球魔獣)だね! こりゃ徹底的に拭き上げがいがあるや!」

 アルドは、滑り止めの手袋をキュッとはめながら、プロの清掃業者としてのダメ出しを開始した。

「ナ、何奴ッ!? 我ガ絶対盲目ノ領域ニ、地上ノ虫ケラガ何ノ用ダ!」

 邪眼帝が驚愕の瞬きを繰り返す中、アルドの後ろから、レイヴン、エルミナ、シノン、そしてアーキヴァルが、それぞれの「清掃用具(兵器)」を手にして、圧倒的な威圧感を放ちながら山頂へと降り立ったのである。

「さあ、社長。まずはこの鬱陶しい窓にへばりついた汚れ(眼球魔獣の群れ)どもから、綺麗に『水切り』して差し上げましょう」

 レイヴンが神具の斧を構え、凶悪な笑みを浮かべる。

 総合ライフサポート企業の次なる社会貢献(能動的な悪の粉砕)が、死の霧の山脈で今まさに始まろうとしていた。

「ナ、ナンダ貴様ラハ!? 我ガ絶望ノ幻惑霧ヲ『窓の曇り』ダト!? 舐メルナ地上ノウジ虫ドモッ! 我ガ眼球魔獣ノ視線デ、貴様ラノ正気ヲ永遠ニ奪イ尽クシテクレルワ!」

 邪眼帝の怒号と共に、空を覆うほどのドス黒い白濁の眼球群が、一斉にアルドたちに向かって狂気の視線を放ちながら襲い掛かった。

「うわっ、この汚れ、すっごくガンコでジメジメしてる! そのままにしてたらカビの胞子が部屋に入ってきちゃって危ないぞ!」

 アルドは、迫り来る魔獣の群れを「湿気と手垢で固まったタチの悪いゼリー状の汚れ」と完全に誤認し、クリーナースプレーのトリガーに指をかけた。

「社長、ここは我々『社員』にお任せを。汚水や洗剤が下に落ちないよう、まずは私が防水シートと落下防止ネットを張ります」

 シノンが音もなく跳躍し、山脈の周囲を囲むように、無数の札(神仙の空間隔離結界符)を空中に投げ放った。

 ――ピィィィィンッ!

 瞬間、山全体をドーム状に覆うように、透明で絶対的な強度を誇る『神仙の窓拭き用養生結界』が展開された。これで、致死の幻惑瘴気や汚水は一滴たりとも外の大地へ漏れ出すことはない。

「完璧な養生ですわ、シノンさん。では、私は汚れが撒き散らすガンコな曇りやカビ(致死の幻惑瘴気)を、特殊クリーニングで綺麗に拭き上げて透明にいたしますわ!」

 エルミナが白銀の杖を天に掲げると、大宇宙の理を内包した『極大聖光浄化魔法』が、超強力なガラスクリーナーの泡のように周囲の狂気の霧を包み込んだ。

「ギィヤアアアアッ!?」

 万物を狂わせる幻惑の霧は、その浄化の光の泡を浴びた瞬間、身に纏っていた魔力ごと完全に無力化され、ただの無害な水蒸気とピカピカの透明な空気へと変わっていく。

「フンッ! 魔力を抜かれたただの汚水など、ただの水切りのマトだ! そして、邪魔なこびりつきは私が綺麗に削り落としてやろう!」

 レイヴンが神具の斧を大上段に構え、浄化された魔獣の群れに向かって旋風のごとく突っ込む。

「窓硝子水切斬ィィィッ!!」

 放たれた一撃は、魔獣の概念ボディの「汚れの隙間」を完璧に見切り、まるでガラス表面の水滴をワイパーで一気に拭き取るかのように、シャリィィィン!と見事な手際で綺麗に削り落とし、無害な水溜まりにしてしまった。

「ナ、何ィィィッ!? 我ガ無敵ノ眼球魔獣ガ、タダノ『ガラス用洗剤』ト『水切りワイパー』ノ前ニ、一瞬デただの汚水ニサレテイクゥゥッ!?」

 邪眼帝は、自らの絶望の眷属がものの数分で「ただの泥水」に変わり、幻惑の霧が晴れ渡った光景に、驚愕のあまり巨大な瞳孔を開ききって震わせた。

「よし、みんなのおかげで表面のガンコな汚れは片付いたね! あとは、あの一番曇りきってる『窓ガラスの親玉(邪眼帝)』にクリーナーをたっぷり吹きかけて、ワイパーで一気に拭き上げるだけだ!」

 アルドは、特製『絶対透明のガラスクリーナー』を構え、邪眼帝の巨大な主眼へと向けて突撃した。

 ――当然ながら、その素材は常軌を逸している。ガラスクリーナーは星の創世の光を液化した絶対透過溶剤であり、大宇宙のいかなる空間の歪みや神話級の幻惑すらも、物理的に『吹きかけて拭き取る』だけで完璧に透明にする『究極のガラス清掃ツール』である。

「オノレェェェッ! 舐メルナ人間! 我ガ本気、世界ヲ盲目ニ変エル『終焉ノ絶対白濁アビス・ブラインド』デ、貴様ラゴト暗闇ノ底ニ閉ジ込メテクレルワ!」

 邪眼帝が残された魔力を暴走させ、周囲の空間ごと全ての光を歪める超巨大な白濁の光線を放ってきた。

「うわっ! 窓の奥から、すっごくガンコな結露と曇りが噴き出してきた! でも、この特製クリーナーとワイパーの前には、どんなに曇ったガラスも一発でピカピカだ!」

 アルドが邪眼帝の巨大な瞳に向けてスプレーを限界までプシュゥゥゥゥッ!と吹き付け、すかさず『事象払拭の神仙ワイパー』を大上段からキュッ、キュッ、キュッ!と滑らせた。

「バ、バカナァァァッ!? 我ガ最大奥義ノ超絶幻惑光ガ、タダノ窓拭キワイパーデ拭キ取ラレタダトォォォッ!?」

「よし、ガンコな曇りと汚れは綺麗に拭き取れたぞ! 最後に、この『事象固定の曇り止めコーティング』をサッと塗って……あ、そうだ。この窓の親玉、綺麗に磨き上げたら凄く大きくて、遠くまでよく見えるレンズみたいになってるね。ちょっと枠を付けてあげれば、世界中の人がここから極上の絶景を楽しめる『超巨大な全自動・神仙パノラマウィンドウ(展望台)』にできそうだよ!」

 アルドが邪眼帝の瞳に曇り止めコーティング(星の光を固定する奇跡の被膜)を施し、事象固定の美しい窓枠をカポッと嵌め込んで展望台へとリメイクすると、大宇宙の法則が完全にひれ伏した。

 暴走していた邪眼帝の禍々しい幻惑の魔力は、瞬く間に漂白・調律されていく。

『ア……ァァ……。我ノ、世界ヲ盲目ニ沈メルハズノ力ガ、マルデ都合ノイイ【遠クノ景色ヲ綺麗ニ映シ出ス為ノ特大ガラス】ノヨウニ……!? イヤ、ワイパーデ拭キ上ゲラレル度ニ、我ガ巨体ガ、異常ナマデニ心地ヨイ【絶対的ナ透明度ト、極上ノパノラマビューヲ提供スル超大型展望窓】ニ変換サレテイクゥゥゥッ! 私ノ存在ガ、世界ヲ絶望ニ沈メルノデハナク、コウシテ大陸ニ永遠ノ美シイ景観ト感動ヲ提供スル「極上ノ全自動・神仙パノラマウィンドウ」トシテ機能スルコトガ、コレホドマデニ満タサレルコトダッタトハ……!』

 かつて世界を脅かした幻惑の化身は、アルドの「窓拭きとワイパーがけ」によって完全に浄化され、書き換えられた。

 万物の視界を奪う禍々しい邪眼帝は、気がつけば「霧幻の山脈を美しく透明な展望台に変え、世界中のどんな遠くの美しい景色でも、まるで目の前にあるかのように24時間映し出し続ける、超高性能な『永久・神仙全自動パノラマ展望台(見た目は巨大でピカピカに磨かれた一枚ガラスの特大ウィンドウ)』」へと姿を変えていたのである。

「よしよし! 嫌な曇りと汚れの被害は片付いて、すっごく綺麗で遠くまで見渡せる窓ガラスになったぞ! おまけに、これがあれば世界中の人たちがいつでも絶景を楽しめてリフレッシュできるね。これで大陸の人たちも、毎日綺麗な景色を見て、明るい気持ちで暮らせるよ!」

 アルドがワイパーを片付けて額の汗を拭うと、山脈を覆っていたドス黒い霧は一瞬にして晴れ渡り、眼下には美しく透き通る奇跡の絶景と、果てしなく広がる青空が広がっていた。

 ***

 数日後。大陸西部を統べる諸国の王室や観光ギルド本部。

 各国の王たちは、視界不良が完全に解消され、山頂に前代未聞の超絶景展望台が誕生したという報告書を見て震え上がっていた。

「ば、馬鹿な……。我が世界を盲目と狂気に沈めるはずだった幻惑の邪眼帝が、たった数時間で『完全な窓拭き』をされ、あまつさえ邪眼帝が『超巨大な景観・観光インフラ』に転職して、国中の観光資源と視界を完璧に管理しているだと……!?」

 そこへ、冷徹な執事服に身を包んだアーキヴァルが、うやうやしく一礼して現れた。

「お初にお目にかかります、各国の代表諸君。総合ライフサポート企業『黄昏の守護者』の最高財務責任者、アーキヴァルでございます。この度は、我が社の『CSR活動(窓ガラス清掃と展望台設置業務)』をご利用いただき、誠にありがとうございます」

 アーキヴァルは、分厚いバインダーから【完全なる視界修復・観光インフラ施設開発代金およびコンサルタント料の請求書】を取り出し、王たちの目の前にドンッと突きつけた。

「我が社の社長(アルド様)の理念により、今回は社会貢献として基本の窓拭き料金はサービスさせていただいております。……が、邪眼帝の完全浄化、空間視界の再構築、そして『大陸全土に極上の絶景と感動を供給する巨大パノラマウィンドウの永続的な運用費』は、正当なビジネスとして請求させていただきます。お支払いは、各国の年間観光・交通収益の九割と、景観・展望インフラの独占プロデュース権で手を打ちましょう」

 アーキヴァルの冷たい宣告(合法的な超・搾取)と共に、王たちは完全に心をへし折られ、震える手で莫大な報酬の永続支払いにサインをするしかなかった。

 ***

 日だまり郷の黄金の城塞。

 静寂に包まれた書斎のデスクで、元・大賢者ゾルタンは、羽ペンをインク壺に浸し、新たな社史のページに文字を刻み込んでいた。

『〇月×日。大陸西部の霧幻の山脈における窓ガラス清掃、およびワイパーがけ作業完了。世界の視界を奪う幻惑の邪眼帝ミスティック・アイズ(神話の厄災)を事象のガラスクリーナーとワイパーで磨き上げ、立派な特大パノラマウィンドウへと改修。空間の白濁の修復を完了し、大陸全土の観光経済と景観保護の発展に多大な貢献を果たした。

 ……また、我が社のCFOの尽力により、世界各国からは莫大な賠償金と、観光・景観インフラの独占管理権を合法的に譲り受けることに成功。これで我が社は、地下水脈、気象、海上物流、クリーンエネルギー、次元基盤、自然環境、気候、時間、信仰、光、水回り、大気、交通・物流、情報・娯楽、資源循環、通信網、医療・甘味、睡眠・無意識、清浄なる排気環境、生命の息吹(農業)に続き、ついに「世界の視界と景観(観光)」の覇権すらも完全に掌握したことになる。

 社長の「社会貢献」という名の大掃除は、もはや世界のあらゆる概念すらも呑み込み、世界は究極の平穏(我が社による完全支配)へと向かっている。大賢者たるワシの知能をもってしても、神話の幻惑すら展望台のガラスに変える(物理的にワイパーでキュッキュと磨き上げた)この恐るべき企業の快進撃を止める術は、大宇宙のどこにも存在しない。』

 ゾルタンが深い溜息と共にペンを置くと、ドアの向こうから「今日のおやつは、朝のフライドポテトをちょっとアレンジした、極上の特製チーズポテトグラタンだよー!」というアルドの無邪気な声が聞こえてきた。

 ゾルタンは「神々の絶望を記録した直後のグラタンは、ことのほかチーズの焦げ目が身に染みよう」とぼやきながらも、頬を緩ませて立ち上がった。

 最強の便利屋の「ただの窓拭き」は、世界盲目化の危機をただのガラス清掃として解決し、邪眼帝の脅威を完全に終わらせただけでなく、世界に最高の観光・景観インフラを誕生させてしまった。

 企業として躍進するクラン『黄昏の守護者』は、これより正式に世界の視界と観光の覇権をも握り、いかなる邪悪も日常の窓拭き業務として葬り去る、究極の平穏なる企業伝説をまた一つ、分厚い社史のページに深く刻み込んだのであった。

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