第127話:ただのハチの巣駆除と、厄災の群女王の強制養蜂箱化(総合ライフサポート企業の害虫駆除業務)
第127話:ただのハチの巣駆除と、厄災の群女王の強制養蜂箱化(総合ライフサポート企業の害虫駆除業務)
黄金の城塞『日だまり郷』の朝は、大宇宙の理すらも平伏す圧倒的な平穏と、魂を根底から狂わせるような極上の香ばしい脂の匂い、そして甘味噌の芳醇な香りとともに幕を開ける。
今日のアルドは、朝からキッチンの巨大な特注石窯と中華鍋に向かい、見事な火加減と包丁さばきで『特製・天界鴨の極上北京ダックと、世界樹のネギと幻獣キュウリの神仙クレープ巻き、星屑の中華風コーンスープ』を仕上げていた。
「よし! メインは、大精霊の清冽な水を飲んで育った天界鴨の丸焼きだ。特製の星屑水飴を何度も塗り重ねて、石窯でじっくりと焼き上げたから、皮はガラスのようにパリッパリで、中は肉汁が溢れ出すほどジューシーに仕上がっているよ。この黄金色に輝く皮を薄く削ぎ切りにして、神仙小麦で焼いたモチモチの極薄クレープに、世界樹の白髪ネギと幻獣キュウリと一緒に乗せる! そこに、数百年熟成させた神仙甜麺醤をタラリと垂らして、クルッと巻いて一口で食べるんだ。そして付け合わせは、幻獣の卵白と星屑のスイートコーンをたっぷり使った、とろけるように甘くて温かい中華スープ! 熱々のうちに完成だ!」
アルドがエプロン姿で、ルビーのように輝く北京ダックの皮が盛られた大皿と、湯気を立てる黄金のスープをダイニングテーブルに運ぶと、その暴力的なまでの香ばしさに引き寄せられ、神竜ポチとモフモフの星狼シロがテーブルの下でちぎれんばかりに尻尾を振って待機していた。リビングのソファでは、特大モチモチクッションへと強制リメイクされた元・大宇宙の邪神が、ポカポカと温かいヒーター機能を放ちながら、平和なインテリアとしての職務を微動だにせず全うしている。
この極上中華朝食、一口食べれば天界鴨の極上のコラーゲンと不飽和脂肪酸が全身の魔力回路を限界突破させ、神仙甜麺醤の圧倒的な発酵パワーが血中のあらゆる疲労物質や致死の呪いすらも瞬時にデトックスし、魂の底から尽きることのない多幸感と絶対的な活力を湧き上がらせる『究極の超覚醒・至福の宮廷フルコース』である。
「うむ……! この皮のパリッとした神聖なる響きと、噛み締めた瞬間に口の中を満たす鴨の脂と甘味噌のビッグバン! そしてスープの圧倒的な優しさとコク! 見るだけで我が魔界の闘争本能が、休日の昼下がりに高級中華街で円卓を囲む富豪のようにフニャフニャに溶かされそうになるわい!」
元・魔界大帝サタナスが、クレープを両手で震わせながら握りしめ、あまりの美味さにワナワナと肩を震わせて感涙に咽いでいた。
そんな賑やかなダイニングの喧騒が一段落し、食後の極上烏龍茶が振る舞われた後。
アルドは、防音・防諜の魔法結界が幾重にも張られたリビングの長テーブルの上座に座った。その周囲には、『出張解体アシスタント』のレイヴン、『特殊クリーニング部門責任者』のエルミナ、『総合防犯システム責任者』のシノン、そして『最高財務責任者(CFO)兼・広報担当』のアーキヴァルという、総合ライフサポート企業『黄昏の守護者』の頼もしき役員たちが顔を揃えている。
「さて、みんな。西方大洋のコインランドリー化(混沌の泥渦神のお洗濯)も終わって、世界中の海流と衛生がすっかり綺麗になったね。これもみんなのチームワークのおかげだよ。……それで、次なる『困り事』の案件は何か入っているかな?」
アルドがニコッと微笑みかけると、CFO兼広報担当のアーキヴァルが、優雅な所作で立ち上がり、分厚いバインダーを開いた。
「はい、社長。我が社の次なるCSR活動として、今回は南の群島地帯における『深刻な害虫被害と謎の伝染病』に関する、極めて重大なご相談を受注いたしました」
アーキヴァルは、手元の書類を指先で弾きながら、冷徹かつ完璧なプレゼンテーションを開始する。
「南の美しい群島に、長年封印されていた『厄災の群女王・ヴェスパ・ドミニオン』が目覚めまして。島全体を覆い尽くすほどの巨大な巣を作り、強毒の針と病原菌で周囲の生態系を破壊しております。さらにタチの悪いことに、その女王が生み出す『殺人蜂の群れ(※猛毒と疫病を撒き散らす群蟲魔獣)』が海を越えて大陸へ飛来し、人々の街に致死の病とパニックを引き起こそうと暴れ回っているのです」
アーキヴァルの言葉の裏にある「真実」を、大公レオハルトと元・大賢者ゾルタンは顔面を蒼白にしながら補完していた。
(厄災の群女王だと……!? あれは世界の生命を全て苗床にし、星を巨大な蟲の巣へと変貌させる神話級の群魔。それが覚醒したとなれば、群島はおろか、世界のあらゆる動植物が疫病に侵され、蟲の餌食となって死に絶える。本来なら全国家の魔導士と聖騎士団を総動員して命がけの超極大焦土結界を張るべき、世界終焉レベルの絶望事態だぞ……!)
しかし、アーキヴァルは一切表情を変えず、アルド向けに完璧に翻訳された依頼書を読み上げる。
「近隣の国々からの要望は、この鬱陶しい危険なハチたち(群蟲魔獣)の『徹底的な駆除(粉砕と焼却)』と『巣を作っている親玉(女王蜂)の退治』、そして『安全なハチの巣撤去と防虫環境の改善』です。このまま放置すれば、刺されて痛い思いをするだけでなく、街中にハチが溢れて外で洗濯物も干せなくなってしまいます。我が社の社会貢献活動として、これほど迅速な対応が求められる案件はないかと」
「なるほど!」
アルドは、依頼書を見て真剣な表情でポンッと手を叩いた。
「家の軒下や公園の木に、スズメバチみたいな危ないハチがデカい巣を作っちゃってるんだね! おまけに刺されたら危ない毒まで持ってるなんて、子供たちが安心して遊べないし大問題だ。安全で平和な暮らしを守るためにも、ハチの巣駆除は専門家の僕たちがしっかりやらないと。よーし、さっそく僕たちの『総合ライフサポート』の出番だ!」
アルドが立ち上がると、役職を得たクランメンバーたちも、一斉に気合い(殺意)に満ちた表情で立ち上がった。
「社長。飛び回る鬱陶しい害虫(群蟲の魔獣ども)の解体と撤去は、この『出張解体アシスタント』にお任せを。羽の一枚、毒針の一本残さず綺麗に切り刻んで、ただの虫の死骸以下の仕事にしてご覧に入れましょう」
レイヴンが、神具の斧を肩に担ぎながら不敵に笑う。
「ええ。ハチが撒き散らすガンコな毒液や病原菌(※致死の疫病と猛毒瘴気)は、『特殊クリーニング部門』の私が、特製の虫よけ線香(※極大の聖火浄化魔法)で一瞬にして燻し出して差し上げますわ」
エルミナが、美しく銀髪を揺らしながら自信満々に頷く。
「……作業中、危険なハチ(※魔獣の残党)が周囲の街へ飛んでいかないよう、『総合防犯システム責任者』として、現場の周囲に完璧な防虫ネット(※絶対封殺の空間密閉結界)を張り巡らせておきます」
シノンが、音もなく短剣を弄びながら冷たく宣言する。
「うんうん、みんな本当に頼もしいな! ハチの巣駆除は刺されないように防護服を着て、周りに逃がさないことが大事だから、しっかりネットを張ってくれると助かるよ!」
アルドは、メンバーたちの頼もしい言葉に満足げに頷き、自身の作業着(猛毒と針を完全に無効化する特製分厚い防護服と網付き帽子、厚手の手袋)に着替え、手には大きなスプレー缶と虫取り網を握りしめた。
「よーし! それじゃあ僕は、特製『絶対無害の神仙殺虫スプレー』と『事象捕獲の虫取り網』、それから安全な『全自動・神仙養蜂箱』を持っていくよ! 世界の人たちの安全を守るために、邪魔なハチの巣を撤去して、危ないハチを働き者にリフォームしてこよう!」
こうして、総合ライフサポート企業『黄昏の守護者』の社員一同は、防虫仕様に改造された魔導軽トラに乗り込み、全てが蟲の巣と化しつつある南の群島へと向けて出勤したのである。
***
その頃、南の群島の中心。
あらゆる生命を苗床にし、世界を巨大な蟲の巣に変える大地の悪夢『厄災の群女王・ヴェスパ・ドミニオン』が、空を覆うほどの巨大な羽音を響かせながら、傲慢な瘴気を放っていた。
「ブブブブブ……! 素晴らしいぞ! この星の生命を全て喰らい尽くす我が毒針さえあれば、地上の生命など一瞬で腐り落ち、我が子らの餌となる! 見よ、我がもたらすこの圧倒的な死の羽音を!」
群女王は、巨大な腹部を脈動させ、無数の殺人蜂の魔獣たちを空へと放った。
「愚かな地上の生命どもめ。我が目覚めたからには、もはやこの星に健やかな肉体はないと知れ! さあ、もっとだ! 全てを刺し貫き、大陸全土を永遠の蟲の揺り籠に沈めよ!」
「我ら群蟲の眷属の猛毒は絶対だ! この死の領域まで踏み込める者など、この世界にはもはや存在し――」
――キキィィィィッ!! バタンッ!
群女王が勝利の宣言を口にしようとしたその瞬間、巨大なハチの巣と化した島のど真ん中に、四つの車輪がついた奇妙な小型の鉄箱(魔導軽トラ)が、神話級の猛毒瘴気をものともせずにドリフト着陸する音が響き渡った。
そして、軽トラのドアが「ガラッ」と無遠慮に開け放たれ、スプレー缶と虫取り網を持った青年の明るい声が、羽音のノイズを完全に打ち破ったのである。
「ちわーっす! 総合ライフサポート企業『黄昏の守護者』です! 近隣の国の方々からご依頼いただいたハチの巣駆除と害虫対策に伺いましたー! ……うわぁ、こりゃひどい巣の大きさと、飛び回ってるハチの数だね! こりゃ徹底的に駆除しがいがあるや!」
アルドは、防護帽子の網越しに、プロの駆除業者としてのダメ出しを開始した。
「ナ、何奴ッ!? 我ガ絶対疫病ノ領域ニ、地上ノ虫ケラガ何ノ用ダ!」
群女王が驚愕の羽音を上げる中、アルドの後ろから、レイヴン、エルミナ、シノン、そしてアーキヴァルが、それぞれの「清掃用具(兵器)」を手にして、圧倒的な威圧感を放ちながら巣へと降り立ったのである。
「さあ、社長。まずはこの鬱陶しい羽虫(群蟲の魔獣)どもから、綺麗に『叩き落として』差し上げましょう」
レイヴンが神具の斧を構え、凶悪な笑みを浮かべる。
総合ライフサポート企業の次なる社会貢献(能動的な悪の粉砕)が、死の群島で今まさに始まろうとしていた。
「ナ、ナンダ貴様ラハ!? 我ガ絶望ノ群レヲ『害虫駆除』ダト!? 舐メルナ地上ノウジ虫ドモッ! 我ガ殺人蜂ノ群レデ、貴様ラノ肉体ヲ永遠ニ腐ラセテクレルワ!」
群女王の怒号と共に、空を覆うほどのドス黒い殺人蜂の群れが、一斉にアルドたちに向かって猛毒の針を向けて襲い掛かった。
「うわっ、このハチ、すっごく大きくて毒々しい色をしてる! 刺されたらただじゃすまないぞ!」
アルドは、迫り来る魔獣の群れを「異常繁殖したタチの悪い超特大スズメバチ」と完全に誤認し、虫取り網の柄を強く握りしめた。
「社長、ここは我々『社員』にお任せを。危険なハチが外に逃げないよう、まずは私が防虫ネットを張ります」
シノンが音もなく跳躍し、群島の周囲を囲むように、無数の札(神仙の空間密閉結界符)を空中に投げ放った。
――ピィィィィンッ!
瞬間、島全体をドーム状に覆うように、透明で絶対的な強度を誇る『神仙の防虫ネット結界』が展開された。これで、致死の殺人蜂や疫病は一匹たりとも外へ漏れ出すことはない。
「完璧なネットですわ、シノンさん。では、私はハチが撒き散らすガンコな毒素や病原菌(致死の疫病瘴気)を、特殊クリーニングで綺麗に燻し出しますわ!」
エルミナが白銀の杖を天に掲げると、大宇宙の理を内包した『極大聖火浄化魔法』が、超強力な防虫線香の煙のように周囲の狂気の波動を包み込んだ。
「ギャアアアアッ!?」
万物を腐らせる猛毒瘴気は、その浄化の煙を浴びた瞬間、身に纏っていた魔力ごと完全に無力化され、ハチたちはフラフラと酔っ払ったように地面に墜落していく。
「フンッ! 毒を抜かれたただの虫ケラなど、ただのハエ叩きのマトだ! そして、邪魔な羽虫は私が綺麗に刻んでやろう!」
レイヴンが神具の斧を大上段に構え、墜落した魔獣の群れに向かって旋風のごとく突っ込む。
「害虫微塵斬ィィィッ!!」
放たれた一撃は、魔獣の甲殻の中にある「核の隙間」を完璧に見切り、まるで巨大なハエを叩き落とすかのように、シャリィィィン!と見事な手際で細かな木っ端へと変え、ただの土の養分にしてしまった。
「ナ、何ィィィッ!? 我ガ無敵ノ殺人蜂ガ、タダノ『虫よけ線香』ト『ハエ叩き』ノ前ニ、一瞬デ土ノ肥料ニサレテイクゥゥッ!?」
群女王は、自らの絶望の眷属がものの数分で「ただの肥料」に変わり、羽音が消え去った光景に、驚愕のあまり巨体を震わせた。
「よし、みんなのおかげで危ない働きバチは片付いたね! あとは、あの一番毒を撒き散らしてる『巣の親玉(群女王)』を虫取り網で捕まえて、殺虫スプレーをかけるだけだ!」
アルドは、特製『事象捕獲の虫取り網』を構え、群女王の巨大な毒針へと向けて突撃した。
――当然ながら、その素材は常軌を逸している。虫取り網の網目は星の引力を編み込んだ絶対捕獲網であり、大宇宙のいかなる次元の歪みや神話級の猛毒すらも、物理的に『被せて捕まえる』だけで完璧に捕獲・無力化する『究極の害虫捕獲ツール』である。
「オノレェェェッ! 舐メルナ人間! 我ガ本気、世界ヲ苗床ニ変エル『終焉ノ絶対腐死』デ、貴様ラゴト地獄ノ底ニ刺シ貫イテクレルワ!」
群女王が残された魔力を暴走させ、周囲の空間ごと全てを貫く超巨大な猛毒の槍(毒針)を突き出してきた。
「うわっ! 親玉のハチがすっごくデカい針を振り回してる! でも、この特製虫取り網の前には、どんな素早い虫も一発でスッポリだ!」
アルドが虫取り網を大きく振りかぶり、迫り来る必殺の毒針ごと、群女王の頭から容赦なくバサッ!と網を被せた。
「バ、バカナァァァッ!? 我ガ最大奥義ノ超絶毒針ガ、タダノ虫取リ網デ捕獲サレタダトォォォッ!?」
「よし、ガンコな親玉は綺麗に捕まえたぞ! 最後に、この『絶対無害の神仙殺虫スプレー』をプシューッとかけて大人しくさせて……あ、そうだ。このハチの親玉、すごく生命力が強くて働き者みたいだね。ちょっと住処を変えてあげれば、世界中の人に甘くて美味しいハチミツを届けてくれる『超巨大な養蜂所の女王蜂』にできそうだよ!」
アルドが神仙殺虫スプレー(事象を完璧に調律する無害化ミスト)を群女王に吹きかけ、捕獲したまま『全自動・神仙養蜂箱』の中にスポンと押し込むと、大宇宙の法則が完全にひれ伏した。
暴走していた群女王の禍々しい疫病の魔力は、瞬く間に漂白・調律されていく。
『ア……ァァ……。我ノ、世界ヲ腐ラセルハズノ猛毒ガ、マルデ都合ノイイ【万病ヲ癒ヤス為ノ極上ノローヤルゼリー】ノヨウニ……!? イヤ、養蜂箱ニ入レラレル度ニ、我ガ毒針ガ、異常ナマデニ心地ヨイ【絶対的ナ治癒力ト、極上ノ甘味ヲ生ミ出ス超大型蜜腺】ニ変換サレテイクゥゥゥッ! 私ノ存在ガ、世界ヲ絶望ニ沈メルノデハナク、コウシテ大陸ニ永遠ノ健康ト甘イ奇跡ヲ提供スル「極上ノ全自動・神仙女王蜂」トシテ機能スルコトガ、コレホドマデニ満タサレルコトダッタトハ……!』
かつて世界を脅かした疫病の化身は、アルドの「ハチの巣駆除と養蜂箱への移住」によって完全に浄化され、書き換えられた。
万物を腐死させる禍々しい群女王は、気がつけば「群島を美しく豊かな花畑に変え、世界中の花から蜜を集めては、どんな難病も治す奇跡のハチミツを24時間生産し続ける、超高性能な『永久・神仙全自動養蜂プラント(見た目は巨大でピカピカな美しい木箱)』」へと姿を変えていたのである。
「よしよし! 嫌な毒針と疫病の被害は片付いて、すっごく立派で安全なハチミツ工場になったぞ! おまけに、これがあれば世界中の人たちが甘いものを食べて健康になれるね。これで大陸の人たちも、毎日綺麗な花を見て、安心して暮らせるよ!」
アルドが網を片付けて額の汗を拭うと、群島を覆っていたドス黒い瘴気の雲は一瞬にして晴れ渡り、眼下には美しく咲き乱れる奇跡の花畑と、甘いハチミツの香りが広がっていた。
***
数日後。大陸南部を統べる諸国の王室。
各国の王たちは、無限に生み出される黄金の奇跡のハチミツと報告書を見て震え上がっていた。
「ば、馬鹿な……。我が世界を蟲の巣に沈めるはずだった厄災の群女王が、たった数時間で『完全なハチの巣駆除』をされ、あまつさえ群女王が『超巨大な医療・甘味料インフラ』に転職して、国中の製薬と食品産業を完璧に独占しているだと……!?」
そこへ、冷徹な執事服に身を包んだアーキヴァルが、うやうやしく一礼して現れた。
「お初にお目にかかります、各国の代表諸君。総合ライフサポート企業『黄昏の守護者』の最高財務責任者、アーキヴァルでございます。この度は、我が社の『CSR活動(ハチの巣駆除と養蜂プラント建設業務)』をご利用いただき、誠にありがとうございます」
アーキヴァルは、分厚いバインダーから【完全なる生態系修復・医療食品施設開発代金およびコンサルタント料の請求書】を取り出し、王たちの目の前にドンッと突きつけた。
「我が社の社長(アルド様)の理念により、今回は社会貢献として基本の駆除料金はサービスさせていただいております。……が、群女王の完全浄化、生態系の再構築、そして『大陸全土に極上の特効薬と甘味を供給する巨大養蜂箱の永続的な運用費』は、正当なビジネスとして請求させていただきます。お支払いは、各国の年間医療・農業収益の八割と、製薬・甘味料経済の独占プロデュース権で手を打ちましょう」
アーキヴァルの冷たい宣告(合法的な超・搾取)と共に、王たちは完全に心をへし折られ、震える手で莫大な報酬の永続支払いにサインをするしかなかった。
***
日だまり郷の黄金の城塞。
静寂に包まれた書斎のデスクで、元・大賢者ゾルタンは、羽ペンをインク壺に浸し、新たな社史のページに文字を刻み込んでいた。
『〇月×日。南の群島におけるハチの巣駆除、および養蜂箱への移設作業完了。世界を蟲の巣に変える厄災の群女王ヴェスパ・ドミニオン(神話の厄災)を事象の虫取り網と殺虫スプレーで無力化し、立派な特大養蜂プラントへと改修。疫病の蔓延の修復を完了し、大陸全土の医療・食品経済の発展に多大な貢献を果たした。
……また、我が社のCFOの尽力により、世界各国からは莫大な賠償金と、製薬・甘味料インフラの独占管理権を合法的に譲り受けることに成功。これで我が社は、地下水脈、気象、海上物流、クリーンエネルギー、次元基盤、自然環境、気候、時間、信仰、光、水回り、大気、交通・物流、情報・娯楽、資源循環、通信網に続き、ついに「医療と万能薬(そして甘味)」の覇権すらも完全に掌握したことになる。
社長の「社会貢献」という名の大掃除は、もはや世界のあらゆる概念すらも呑み込み、世界は究極の平穏(我が社による完全支配)へと向かっている。大賢者たるワシの知能をもってしても、神話の猛毒すらハチミツに変える(物理的に虫取り網で捕まえた)この恐るべき企業の快進撃を止める術は、大宇宙のどこにも存在しない。』
ゾルタンが深い溜息と共にペンを置くと、ドアの向こうから「今日のおやつは、新しく採れた奇跡のハチミツをたっぷりかけた、極上の特製ハニーレモンパンケーキだよー!」というアルドの無邪気な声が聞こえてきた。
ゾルタンは「神々の絶望を記録した直後のハチミツは、ことのほか脳髄の疲労に染み渡ろう」とぼやきながらも、頬を緩ませて立ち上がった。
最強の便利屋の「ただのハチの巣駆除」は、世界疫病の危機をただの害虫駆除として解決し、群女王の脅威を完全に終わらせただけでなく、世界に最高の医療・甘味インフラを誕生させてしまった。
企業として躍進するクラン『黄昏の守護者』は、これより正式に医療と食品の覇権をも握り、いかなる邪悪も日常の害虫駆除業務として葬り去る、究極の平穏なる企業伝説をまた一つ、分厚い社史のページに深く刻み込んだのであった。
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