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辺境暮らしの便利屋冒険者、伝説のクランのリーダーに祭り上げられる 〜本人曰く「ただの日常」らしいです〜  作者: 盆ちゃん


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第122話:ただの道路舗装と、震天の地竜神の強制ハイウェイ化(総合ライフサポート企業の土木工事)

第122話:ただの道路舗装と、震天の地竜神の強制ハイウェイ化(総合ライフサポート企業の土木工事)

 黄金の城塞『日だまり郷』の朝は、大宇宙の理すらも平伏す圧倒的な平穏と、魂を根底から沸き立たせるような甘辛い醤油の香り、そして極上の肉の脂が焦げる暴力的な匂いと共に幕を開ける。

 今日のアルドは、朝からダイニングテーブルの中央に設置した巨大な特注鉄鍋に向かい、見事な手際で『特製・天界牛の極上すき焼きと、世界樹の春菊、神仙卵の絶品うどん』を仕上げていた。

「よし! メインは、大精霊の牧草を食べて育った天界牛の極上霜降り肉だ。これを、幻獣の骨からとった出汁と星屑のザラメ、そして数百年寝かせた神仙醤油を合わせた特製の割り下で、さっと香ばしく焼き煮にする! 肉の旨味が溶け出した鍋に、世界樹の春菊、幻獣の焼き豆腐、そして旨味を吸い尽くす神仙白滝をたっぷりと投入するんだ。そして、器には天界鶏の産みたて黄金卵を溶いて待機! 締めには、肉と野菜の旨味が凝縮された黄金の残り汁で、神仙小麦の極太手打ちうどんを煮込んで……熱々のうちに完成だ!」

 アルドがエプロン姿で、グツグツと湯気を立て、暴力的なまでの甘辛い香りを放つすき焼き鍋を取り仕切ると、神竜ポチとモフモフの星狼シロがテーブルの下でちぎれんばかりに尻尾を振って待機していた。リビングのソファでは、特大モチモチクッションへと強制リメイクされた元・大宇宙の邪神ゼロ・アポカリプスが、ポカポカと温かいヒーター機能を放ちながら、平和なインテリアとしての職務を微動だにせず全うしている。

 この極上すき焼き朝食、一口食べれば天界牛の極上のタンパク質と黄金卵のアミノ酸が全身の魔力回路を限界突破させ、春菊の圧倒的な抗酸化作用が血中のあらゆる疲労物質や致死の呪いすらも瞬時にデトックスし、魂の底から尽きることのない多幸感と活力を湧き上がらせる『究極の超覚醒・至福の鍋フルコース』である。

「うむ……! この肉が舌の上で溶ける圧倒的な口溶けと、割り下の甘辛さが織りなす無限の宇宙! そして旨味を吸い尽くしたうどんの破壊力! 見るだけで我が魔界の闘争本能が、大晦日の夜にこたつで家族と鍋を囲む老人のようにフニャフニャに溶かされそうになるわい!」

 元・魔界大帝サタナスが、溶き卵の入った器を両手で震わせながら握りしめ、あまりの美味さにワナワナと肩を震わせて感涙に咽いでいた。

 そんな賑やかなダイニングの喧騒が一段落し、食後の極上ほうじ茶が振る舞われた後。

 アルドは、防音・防諜の魔法結界が幾重にも張られたリビングの長テーブルの上座に座った。その周囲には、『出張解体アシスタント』のレイヴン、『特殊クリーニング部門責任者』のエルミナ、『総合防犯システム責任者』のシノン、そして『最高財務責任者(CFO)兼・広報担当』のアーキヴァルという、総合ライフサポート企業『黄昏の守護者』の頼もしき役員たちが顔を揃えている。

「さて、みんな。南東部の大気の浄化(暴風の魔帝のエアコン化)も終わって、世界中の空気がすっかり綺麗になったね。これもみんなのチームワークのおかげだよ。……それで、次なる『困り事』の案件は何か入っているかな?」

 アルドがニコッと微笑みかけると、CFO兼広報担当のアーキヴァルが、優雅な所作で立ち上がり、分厚いバインダーを開いた。

「はい、社長。我が社の次なるCSR活動として、今回は大陸北西部の『断層地帯』における、極めて深刻な地殻変動と交通寸断に関するご相談を受注いたしました」

 アーキヴァルは、手元の書類を指先で弾きながら、冷徹かつ完璧なプレゼンテーションを開始する。

「大陸北西部の広大な大地の下に、長年封印されていた『震天の地竜神・アースクエイク・ドラゴン』が目覚めまして。強靭な背骨で地殻を突き上げ、凄まじい地震と地割れを引き起こしております。さらにタチの悪いことに、その地竜神が生み出す『岩塊の眷属ども(※大地を砕くゴーレム群)』が地割れから溢れ出し、街道を破壊して大陸間の物流と交通を完全に遮断しようと暴れ回っているのです」

 アーキヴァルの言葉の裏にある「真実」を、大公レオハルトと元・大賢者ゾルタンは顔面を蒼白にしながら補完していた。

(震天の地竜神だと……!? あれは世界のプレートそのものを破壊し、星を粉々の岩塊に還す神話級の地竜。それが覚醒したとなれば、北西部はおろか、大陸全土が液状化して海に沈む。本来なら全国家の魔導士を総動員して命がけの超極大地盤固定結界を張るべき、世界終焉レベルの絶望事態だぞ……!)

 しかし、アーキヴァルは一切表情を変えず、アルド向けに完璧に翻訳カスタマイズされた依頼書を読み上げる。

「近隣の国々からの要望は、この鬱陶しい瓦礫の塊(ゴーレム群)の『徹底的な砕石(粉砕と撤去)』と『地面を揺らすデカいモグラ(地竜神)の地ならし』、そして『道路の舗装工事と交通網の復旧』です。このまま放置すれば、道がガタガタで馬車も通れず、物流が止まって人々が生活物資不足で飢えてしまいます。我が社の社会貢献活動として、これほど迅速な対応が求められる案件はないかと」

「なるほど!」

 アルドは、依頼書を見て真剣な表情でポンッと手を叩いた。

「地震で道がひび割れて、落石がゴロゴロ転がってるんだね! おまけにデカいモグラが地面の下で暴れてるなんて、道路がボコボコになっちゃうのも当然だ。安全にお買い物に行ったり、美味しい食材を運んだりするためにも、道路工事はしっかりやらないと。よーし、さっそく僕たちの『総合ライフサポート』の出番だ!」

 アルドが立ち上がると、役職を得たクランメンバーたちも、一斉に気合い(殺意)に満ちた表情で立ち上がった。

「社長。街道を塞ぐ鬱陶しい岩の塊(岩塊の魔獣ども)の解体と撤去は、この『出張解体アシスタント』にお任せを。岩の核の一つ残さず綺麗に砕いて、ただの砂利以下の仕事にしてご覧に入れましょう」

 レイヴンが、神具の斧を肩に担ぎながら不敵に笑う。

「ええ。工事現場が撒き散らすガンコな粉塵や有毒ガス(※致死の地殻変動エネルギー)は、『特殊クリーニング部門』の私が、特製の散水車(※極大の聖水鎮静魔法)で一瞬にして中和・洗浄して差し上げますわ」

 エルミナが、美しく銀髪を揺らしながら自信満々に頷く。

「……作業中、落石や砂埃(※魔獣の残党)が周囲の街へ飛んでいかないよう、『総合防犯システム責任者』として、現場の周囲に完璧な防砂シート(※絶対封殺の空間固定結界)を張り巡らせておきます」

 シノンが、音もなく短剣を弄びながら冷たく宣言する。

「うんうん、みんな本当に頼もしいな! 道路工事は砂埃が飛んだり石が跳ねたりして危ないから、しっかり防砂シートを張って養生してくれると助かるよ!」

 アルドは、メンバーたちの頼もしい言葉に満足げに頷き、自身の作業着(地震の衝撃と地割れを完全に無効化する特製安全靴とヘルメット、作業着)に着替え、手には巨大なロードローラーのキーとアスファルトの袋を握りしめた。

「よーし! それじゃあ僕は、特製『事象圧延の魔導ロードローラー』と『絶対平滑の神仙アスファルト』を持っていくよ! 世界の人たちの安全な道を切り拓くために、邪魔なデカいモグラを平らにして、道路をピカピカに舗装してこよう!」

 こうして、総合ライフサポート企業『黄昏の守護者』の社員一同は、重機搬送仕様に改造された魔導軽トラに乗り込み、大地が裂けつつある北西部の断層地帯へと向けて出勤したのである。

 ***

 その頃、大陸北西部の断層地帯の中心。

 大地を砕き、世界を分断する大地の悪夢『震天の地竜神・アースクエイク・ドラゴン』が、山脈のような背骨を地上に突き出しながら、傲慢な轟音を響かせていた。

「ズドォォォォォ……! 素晴らしいぞ! この星の地殻を砕く我が背骨さえあれば、地上の生命など一瞬で大地の底に呑み込まれる! 見よ、我がもたらすこの圧倒的な崩壊の震撃を!」

 地竜神は、巨大な尾を地面に叩きつけ、無数の岩塊の魔獣たちを周囲の街道へと放った。

「愚かな地上の生命どもめ。我が目覚めたからには、もはやこの星に平穏な道はないと知れ! さあ、もっとだ! 全てを分断し、大陸全土を永遠の瓦礫の山に変えよ!」

「我ら地竜の眷属の破壊力は絶対だ! この地割れの領域まで踏み込める者など、この世界にはもはや存在し――」

 ――キキィィィィッ!! バタンッ!

 地竜神が勝利の宣言を口にしようとしたその瞬間、猛烈な地震が続く荒野のど真ん中に、四つの車輪がついた奇妙な小型の鉄箱(魔導軽トラ)が、神話級の地殻変動をものともせずにドリフト着陸する音が響き渡った。

 そして、軽トラの荷台から「ガラッ」と無遠慮に降ろされた巨大なロードローラーと、ヘルメットを被った青年の明るい声が、崩壊の轟音を完全に打ち破ったのである。

「ちわーっす! 総合ライフサポート企業『黄昏の守護者』です! 近隣の国の方々からご依頼いただいた道路の舗装工事と地ならしに伺いましたー! ……うわぁ、こりゃひどい地割れと、道端に転がってる落石の量だね! こりゃ徹底的にローラー掛けしがいがあるや!」

 アルドは、ヘルメットの顎紐を締めながら、プロの土木作業員としてのダメ出しを開始した。

「ナ、何奴ッ!? 我ガ絶対崩壊ノ領域ニ、地上ノ虫ケラガ何ノ用ダ!」

 地竜神が驚愕の地鳴りを上げる中、アルドの後ろから、レイヴン、エルミナ、シノン、そしてアーキヴァルが、それぞれの「清掃用具(兵器)」を手にして、圧倒的な威圧感を放ちながら荒野へと降り立ったのである。

「さあ、社長。まずはこの鬱陶しい瓦礫の塊(岩塊の魔獣)どもから、綺麗に『砕石』して差し上げましょう」

 レイヴンが神具の斧をツルハシのように構え、凶悪な笑みを浮かべる。

 総合ライフサポート企業の次なる社会貢献(能動的な悪の粉砕)が、死の断層地帯で今まさに始まろうとしていた。

「ナ、ナンダ貴様ラハ!? 我ガ絶望ノ地割レヲ『道路工事』ダト!? 舐メルナ地上ノウジ虫ドモッ! 我ガ岩塊ノ魔獣デ、貴様ラノ肉体ヲ永遠ニ圧シ潰シテクレルワ!」

 地竜神の怒号と共に、荒野を覆うほどのドス黒い岩の魔獣の群れが、一斉にアルドたちに向かって巨岩を投げつけて襲い掛かった。

「うわっ、この落石、すっごく大きくて危ない! 道路に転がってたら馬車が事故を起こしちゃうぞ!」

 アルドは、迫り来る魔獣の群れを「長年の風化で転がり落ちてきたタチの悪い瓦礫の塊」と完全に誤認し、ロードローラーのエンジンをブルンッと吹かした。

「社長、ここは我々『社員』にお任せを。落石や粉塵が外に漏れないよう、まずは私が防砂シートを張ります」

 シノンが音もなく跳躍し、断層地帯の周囲を囲むように、無数の札(神仙の空間固定結界符)を空中に投げ放った。

 ――ピィィィィンッ!

 瞬間、断層全体をドーム状に覆うように、透明で絶対的な強度を誇る『神仙の防砂養生結界』が展開された。これで、致死の粉塵や飛礫は一ミリたりとも外へ漏れ出すことはない。

「完璧な養生ですわ、シノンさん。では、私は工事現場が撒き散らすガンコな粉塵や有毒ガス(致死の地殻変動エネルギー)を、特殊クリーニングで綺麗に鎮静いたしますわ!」

 エルミナが白銀の杖を天に掲げると、大宇宙の理を内包した『極大聖水鎮静魔法』が、超強力な散水車のように周囲の粉塵と有毒ガスを包み込んだ。

「ギャアアアアッ!?」

 万物を崩壊させる地殻エネルギーは、その浄化の水の霧を浴びた瞬間、身に纏っていた魔力ごと完全に無力化され、ただのしっとりとした無害な土煙へと変わっていく。

「フンッ! 魔力を抜かれたただの岩など、ただの砕石のマトだ! そして、邪魔な瓦礫は私が綺麗に砕いてやろう!」

 レイヴンが神具の斧を大上段に構え、岩の魔獣の群れに向かって旋風のごとく突っ込む。

「瓦礫砕石斬ィィィッ!!」

 放たれた一撃は、魔獣の強固な岩石ボディの中にある「断層の核の隙間」を完璧に見切り、まるで工事現場で岩を砕くかのように、シャリィィィン!と見事な手際で綺麗な砂利へと変え、道端に寄せてしまった。

「ナ、何ィィィッ!? 我ガ無敵ノ岩塊ノ魔獣ガ、タダノ『散水』ト『砕石』ノ前ニ、一瞬デ道路ノ砂利ニサレテイクゥゥッ!?」

 地竜神は、自らの絶望の眷属がものの数分で「ただの砂利」に変わり、地割れが収まり始めた光景に、驚愕のあまり巨体を震わせた。

「よし、みんなのおかげで邪魔な落石と粉塵は片付いたね! あとは、あの一番地面をボコボコにしてる『デカいモグラの背中(地竜神)』をロードローラーでペシャンコにして、アスファルトを敷くだけだ!」

 アルドは、特製『事象圧延の魔導ロードローラー』に乗り込み、地竜神の巨大な山脈のような背骨へと向けて突撃した。

 ――当然ながら、その素材は常軌を逸している。ローラーのローラー部分は星の重力を凝縮した超高密度質量合金であり、大宇宙のいかなる次元の歪みや神話級の装甲すらも、物理的に『上から轢いて均す』だけで完璧に真っ平らにする『究極の地均し重機』である。

「オノレェェェッ! 舐メルナ人間! 我ガ本気、大陸ヲ真ッ二ツニ割ル『終焉ノ大陸割断アビス・フォールト』デ、貴様ラゴト地獄ノ底ニ落トシテクレルワ!」

 地竜神が残された魔力を暴走させ、周囲の空間ごと全てを奈落へと叩き落とす超巨大な地割れを巻き起こし始めた。

「うわっ! 地面の下から、すっごくガンコな地割れが起ころうとしてる! でも、この特製ロードローラーの前には、どんなボコボコの道も一発でペシャンコだ!」

 アルドがロードローラーのアクセルを全開にし、迫り来る地割れと地竜神の背骨の上に容赦なくズドォォォォンッ!とローラーを乗り上げさせた。

「バ、バカナァァァッ!? 我ガ最大奥義ノ超絶地割レガ、タダノ重機デ平ラニ圧シ潰サレタダトォォォッ!?」

「よし、ガンコなボコボコ道は綺麗に平らになったぞ! 最後に、この『絶対平滑の神仙アスファルト』を上から敷き詰めて……あ、そうだ。このデカいモグラの背中、綺麗に均したら凄く真っ直ぐで丈夫な道になってるね。ちょっと整備すれば、大陸の端から端まで一瞬で移動できる『超巨大な高速道路』にできそうだよ!」

 アルドが真っ黒な神仙アスファルト(事象を完璧に固定する滑らかな魔導樹脂)を地竜神の平らになった背中に敷き詰め、事象調律の白線を引いていくと、大宇宙の法則が完全にひれ伏した。

 暴走していた地竜神の禍々しい破壊の魔力は、瞬く間に漂白・調律されていく。

『ア……ァァ……。我ノ、世界ヲ分断スルハズノ地割レガ、マルデ都合ノイイ【馬車ガ揺レズニ走レル為ノクッション】ノヨウニ……!? イヤ、アスファルトヲ敷カレル度ニ、我ガ背骨ガ、異常ナマデニ心地ヨイ【絶対的ナ安全性ト超高速移動ヲ可能ニスル、大陸横断ハイウェイ】ニ変換サレテイクゥゥゥッ! 私ノ存在ガ、世界ヲ絶望ニ沈メルノデハナク、コウシテ大陸ニ永遠ノ繋ガリト物流ヲ提供スル「極上ノ全自動・神仙高速道路」トシテ機能スルコトガ、コレホドマデニ満タサレルコトダッタトハ……!』

 かつて世界を脅かした大地の化身は、アルドの「ロードローラーによる地ならしとアスファルト舗装」によって完全に浄化され、書き換えられた。

 万物を破壊する禍々しい地竜神は、気がつけば「断層地帯を美しく滑らかな一本道に変え、地脈を通じて世界中の都市を繋ぎ、どんな荷物も揺らさずに光の速さで運べる、超高性能な『永久・神仙大陸横断ハイウェイ(見た目は巨大で美しい輝きを放つ漆黒の高速道路)』」へと姿を変えていたのである。

「よしよし! 嫌な地割れと落石の被害は片付いて、すっごく立派で走りやすい高速道路になったぞ! おまけに、これがあれば世界中の物流がスムーズになって、旅行も快適だね。これで大陸の人たちも、毎日安全に移動して、美味しい特産品を楽しめるよ!」

 アルドがロードローラーから降りて額の汗を拭うと、断層を覆っていたドス黒い土煙は一瞬にして晴れ渡り、眼下には美しく一直線に伸びる奇跡の道が広がっていた。

 ***

 数日後。大陸北西部を統べる諸国の王室。

 各国の王たちは、鏡のように滑らかな高速道路と報告書を見て震え上がっていた。

「ば、馬鹿な……。我が世界を奈落に沈めるはずだった震天の地竜神が、たった数時間で『完全な道路舗装』をされ、あまつさえ地竜神が『超巨大な超高速交通インフラ』に転職して、国中の物流と交通網を完璧に管理しているだと……!?」

 そこへ、冷徹な執事服に身を包んだアーキヴァルが、うやうやしく一礼して現れた。

「お初にお目にかかります、各国の代表諸君。総合ライフサポート企業『黄昏の守護者』の最高財務責任者、アーキヴァルでございます。この度は、我が社の『CSR活動(道路舗装と地ならし業務)』をご利用いただき、誠にありがとうございます」

 アーキヴァルは、分厚いバインダーから【完全なる大地修復・交通インフラ施設開発代金およびコンサルタント料の請求書】を取り出し、王たちの目の前にドンッと突きつけた。

「我が社の社長(アルド様)の理念により、今回は社会貢献として基本の地ならし料金はサービスさせていただいております。……が、地竜神の完全浄化、地盤の再構築、そして『大陸全土に極上の移動速度と安全を供給する巨大ハイウェイの永続的な運用費』は、正当なビジネスとして請求させていただきます。お支払いは、各国の年間関税・通行税の七割と、物流・交通経済の独占プロデュース権で手を打ちましょう」

 アーキヴァルの冷たい宣告(合法的な超・搾取)と共に、王たちは完全に心をへし折られ、震える手で莫大な報酬の永続支払いにサインをするしかなかった。

 ***

 日だまり郷の黄金の城塞。

 静寂に包まれた書斎のデスクで、元・大賢者ゾルタンは、羽ペンをインク壺に浸し、新たな社史のページに文字を刻み込んでいた。

『〇月×日。北西部の断層地帯における道路舗装、および地ならし作業完了。世界を分断する震天の地竜神アースクエイク・ドラゴン(神話の厄災)を事象のロードローラーと神仙アスファルトで舗装し、立派な特大高速道路へと改修。大地の崩壊の修復を完了し、大陸全土の物流と交通経済の発展に多大な貢献を果たした。

 ……また、我が社のCFOの尽力により、北西部諸国からは莫大な賠償金と、交通網・物流インフラの独占管理権を合法的に譲り受けることに成功。これで我が社は、地下水脈、気象、海上物流、クリーンエネルギー、次元基盤、自然環境、気候、時間、信仰、光、水回り、大気に続き、ついに「生命の往来を司る大地と物流」の覇権すらも完全に掌握したことになる。

 社長の「社会貢献」という名の大掃除は、もはや世界のあらゆる概念すらも呑み込み、世界は究極の平穏(我が社による完全支配)へと向かっている。大賢者たるワシの知能をもってしても、神話の地殻変動すらハイウェイに変える(物理的にローラーでペシャンコにした)この恐るべき企業の快進撃を止める術は、大宇宙のどこにも存在しない。』

 ゾルタンが深い溜息と共にペンを置くと、ドアの向こうから「今日のおやつは、朝のすき焼きの余りで作った、極上の特製肉まんだよー!」というアルドの無邪気な声が聞こえてきた。

 ゾルタンは「神々の絶望を記録した直後の肉まんは、ことのほか肉汁が身に染みよう」とぼやきながらも、頬を緩ませて立ち上がった。

 最強の便利屋の「ただの道路舗装」は、世界分断の危機をただの土木工事として解決し、地竜神の脅威を完全に終わらせただけでなく、世界に最高の交通と物流インフラを誕生させてしまった。

 企業として躍進するクラン『黄昏の守護者』は、これより正式に交通の覇権をも握り、いかなる邪悪も日常のメンテナンス業務として葬り去る、究極の平穏なる企業伝説をまた一つ、分厚い社史のページに深く刻み込んだのであった。

ここまでお読みいただきありがとうございます!少しでも面白いと感じたら、画面下から【ブックマーク】と【☆☆☆☆☆】の評価をいただけると、執筆の大きなモチベーションになります!

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