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辺境暮らしの便利屋冒険者、伝説のクランのリーダーに祭り上げられる 〜本人曰く「ただの日常」らしいです〜  作者: 盆ちゃん


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第119話:ただの電球交換と、蝕星の暗黒獣の強制LED照明化(総合ライフサポート企業の照明メンテナンス)

第119話:ただの電球交換と、蝕星の暗黒獣の強制LED照明化(総合ライフサポート企業の照明メンテナンス)

 黄金の城塞『日だまり郷』の朝は、大宇宙の理すらも平伏す圧倒的な平穏と、日本人のDNAを根底から歓喜させる炊きたての米の香り、そして芳醇極まりない醤油と出汁の匂いと共に幕を開ける。

 今日のアルドは、朝からキッチンの特大の土鍋に向かい、極上の火加減と蒸らし時間で『特製・神仙米の炊きたて銀シャリと、天界鶏の黄金卵かけご飯(TKG)、幻獣豆腐と大精霊のワカメの味噌汁』を仕上げていた。

「よし! メインは、大精霊の加護を受けた土壌で育った神仙米だ。一粒一粒が真珠のように輝いて立っているよ。そこに、天界鶏が産んだばかりの、箸で摘めるほど濃厚で弾力のある黄金卵を落とし、数百年寝かせた星屑の大豆から絞った特製の神仙醤油をタラリと回しかける! そして、幻獣の滑らかな絹ごし豆腐と、海のエキスが詰まった大精霊のワカメをたっぷり入れた、湯気立つお味噌汁! 仕上げにネギを散らして……熱々のうちに完成だ!」

 アルドがエプロン姿で、黄金の輝きを放つ卵かけご飯と、出汁の香りが暴力的なまでに鼻腔をくすぐるお味噌汁をダイニングテーブルに運ぶと、神竜ポチとモフモフの星狼シロがテーブルの下でちぎれんばかりに尻尾を振って待機していた。リビングのソファでは、特大モチモチクッションへと強制リメイクされた元・大宇宙の邪神ゼロ・アポカリプスが、ポカポカと温かいヒーター機能を放ちながら、平和なインテリアとしての職務を微動だにせず全うしている。

 この究極の和朝食、一口食べれば黄金卵の極上のアミノ酸と神仙米の炭水化物が全身の魔力回路を限界突破させ、味噌汁の圧倒的な発酵成分が血中のあらゆる疲労物質や致死の猛毒すらも瞬時にデトックスし、魂の底から尽きることのない活力を湧き上がらせる『究極の超覚醒・日本の心フルコース』である。

「うむ……! この卵の濃厚なコクと、醤油の香ばしさが織りなす宇宙的ビッグバン! そして味噌汁の圧倒的な包容力! 見るだけで我が魔界の闘争本能が、縁側で将棋を指しながらお茶をすする隠居老人のようにフニャフニャに溶かされそうになるわい!」

 元・魔界大帝サタナスが、お茶碗を両手で震わせながら握りしめ、あまりの美味さにワナワナと肩を震わせて感涙に咽いでいた。

 そんな賑やかなダイニングの喧騒が一段落し、食後の極上緑茶(大精霊の朝露ブレンド)が振る舞われた後。

 アルドは、防音・防諜の魔法結界が幾重にも張られたリビングの長テーブルの上座に座った。その周囲には、『出張解体アシスタント』のレイヴン、『特殊クリーニング部門責任者』のエルミナ、『総合防犯システム責任者』のシノン、そして『最高財務責任者(CFO)兼・広報担当』のアーキヴァルという、総合ライフサポート企業『黄昏の守護者』の頼もしき役員たちが顔を揃えている。

「さて、みんな。聖国上空の天窓リフォーム(虚無の邪竜の防水処理)も終わって、空の雨漏りもすっかり直ったね。これもみんなのチームワークのおかげだよ。……それで、次なる『困り事』の案件は何か入っているかな?」

 アルドがニコッと微笑みかけると、CFO兼広報担当のアーキヴァルが、優雅な所作で立ち上がり、分厚いバインダーを開いた。

「はい、社長。我が社の次なるCSR活動として、今回は大陸全土の『深刻な日照不足と夜間の治安悪化』に関する、極めて重大なご相談を受注いたしました」

 アーキヴァルは、手元の書類を指先で弾きながら、冷徹かつ完璧なプレゼンテーションを開始する。

「世界を照らす天頂の神域に、長年封印されていた『巨大な闇の化け物(蝕星の暗黒獣・ダークマター・イクリプス)』が目覚めまして。強靭な闇の触手で太陽や星々の光を次々と飲み込み、周囲を永遠の暗闇に閉ざしております。さらにタチの悪いことに、その化け物が生み出す『闇の羽虫ども(※光を喰らう影の悪魔群)』が空を覆い尽くし、人々の生活から完全に光を奪おうと暴れ回っているのです」

 アーキヴァルの言葉の裏にある「真実」を、大公レオハルトと元・大賢者ゾルタンは顔面を蒼白にしながら補完していた。

(蝕星の暗黒獣だと……!? あれは世界の光源そのものを喰らい尽くし、星を永遠の暗黒と絶対零度の死の世界に還す神話級の絶望獣。それが覚醒したとなれば、大陸はおろか、世界のあらゆる生命が光を失い狂乱して死に絶える。本来なら全国家の聖騎士を総動員して命がけの超極大光魔法を放つべき、世界終焉レベルの絶望事態だぞ……!)

 しかし、アーキヴァルは一切表情を変えず、アルド向けに完璧に翻訳カスタマイズされた依頼書を読み上げる。

「各国からの要望は、この鬱陶しい羽虫たち(影の悪魔)の『徹底的な駆除(粉砕)』と『巨大な闇の塊(暗黒獣)の清掃』、そして『切れた電球の交換と照明環境の改善』です。このまま放置すれば、夜道が真っ暗で危ないですし、本を読むにも目が悪くなってしまいます。我が社の社会貢献活動として、これほど迅速な対応が求められる案件はないかと」

「なるほど!」

 アルドは、依頼書を見て真剣な表情でポンッと手を叩いた。

「天井の電球が切れかかってて、おまけにホコリや蛾がいっぱい群がって真っ暗になってるんだね! 夜道も街灯が切れてたら転んで怪我しちゃうし、防犯上も大問題だ。明るくて健康的な生活を送るためにも、照明のメンテナンスはしっかりやらないと。よーし、さっそく僕たちの『総合ライフサポート』の出番だ!」

 アルドが立ち上がると、役職を得たクランメンバーたちも、一斉に気合い(殺意)に満ちた表情で立ち上がった。

「社長。照明に群がる鬱陶しい蛾(影の悪魔ども)の解体と撤去は、この『出張解体アシスタント』にお任せを。羽の一枚残さず綺麗に叩き落として、ただのゴミ以下の仕事にしてご覧に入れましょう」

 レイヴンが、神具の斧を肩に担ぎながら不敵に笑う。

「ええ。電球にこびりついたガンコな闇の煤やホコリ(※致死の暗黒瘴気と絶望の霧)は、『特殊クリーニング部門』の私が、特製のガラスクリーナー(※極大の聖光浄化魔法)で一瞬にして拭き取って差し上げますわ」

 エルミナが、美しく銀髪を揺らしながら自信満々に頷く。

「……作業中、ホコリや羽虫(※悪魔の残党)が下に落ちないよう、『総合防犯システム責任者』として、現場の真下に完璧な養生シート(※絶対封殺の光縛結界)を広げておきます」

 シノンが、音もなく短剣を弄びながら冷たく宣言する。

「うんうん、みんな本当に頼もしいな! 高いところの電球交換は足場が大事だから、しっかり養生してくれると助かるよ!」

 アルドは、メンバーたちの頼もしい言葉に満足げに頷き、自身の作業着(暗黒瘴気と空間崩壊を完全に弾く特製静電気防止エプロン)に着替え、手には長い柄のはたきと、ピカピカの新しい魔石ランプを握りしめた。

「よーし! それじゃあ僕は、特製『絶対払拭の神仙はたき』と『事象照臨の特製LEDエコ電球』、それから安全な『事象踏み台の脚立』を持っていくよ! 世界の人たちの明るい生活を守るために、邪魔なホコリを払って、照明をピカピカにリフォームしてこよう!」

 こうして、総合ライフサポート企業『黄昏の守護者』の社員一同は、大気圏外突破仕様に改造された魔導軽トラに乗り込み、光が失われつつある天頂の神域へと向けて出勤したのである。

 ***

 その頃、世界の上空、天頂の神域。

 太陽の光を喰らい、空をどす黒い絶望で染め上げる大地の悪夢『蝕星の暗黒獣ダークマター・イクリプス』が、光を飲み込むブラックホールのような大口を開けながら、傲慢な咆哮を響かせていた。

「ゴゾゾゾォォォ……! 素晴らしいぞ! この星の光を喰らい尽くす顎さえあれば、地上の生命など一瞬で暗闇に狂い死ぬ! 見よ、我がもたらすこの圧倒的な絶望の夜を!」

 暗黒獣は、巨大な闇の触手を広げ、無数の影の悪魔たちを地上へと放った。

「愚かな地上の生命どもめ。我が目覚めたからには、もはやこの星に夜明けはないと知れ! さあ、もっとだ! 光を飲み込み、大陸全土を永遠の盲目に沈めよ!」

「我ら暗黒の眷属の力は絶対だ! この光無き領域まで踏み込める者など、この世界にはもはや存在し――」

 ――キキィィィィッ!! バタンッ!

 暗黒獣が勝利の宣言を口にしようとしたその瞬間、真っ暗な神域のど真ん中に、四つの車輪がついた奇妙な小型の鉄箱(魔導軽トラ)が、重力と真空をものともせずにドリフト着陸(空中停止)する音が響き渡った。

 そして、軽トラのドアが「ガラッ」と無遠慮に開け放たれ、はたきと脚立を持った青年の明るい声が、終焉の静寂を完全に打ち破ったのである。

「ちわーっす! 総合ライフサポート企業『黄昏の守護者』です! 各国の方々からご依頼いただいた照明のメンテナンスと電球交換に伺いましたー! ……うわぁ、こりゃひどいホコリと、群がってる蛾の量だね! 全然前が見えないや!」

 アルドは、はたきをポンポンと叩きながら、プロの清掃業者としてのダメ出しを開始した。

「ナ、何奴ッ!? 我ガ絶対暗黒ノ領域ニ、地上ノ虫ケラガ何ノ用ダ!」

 暗黒獣が驚愕の声を上げる中、アルドの後ろから、レイヴン、エルミナ、シノン、そしてアーキヴァルが、それぞれの「清掃用具(兵器)」を手にして、圧倒的な威圧感を放ちながら虚空へと降り立ったのである。

「さあ、社長。まずはこの鬱陶しい蛾(影の悪魔)どもから、綺麗に『叩き落として』差し上げましょう」

 レイヴンが神具の斧を構え、凶悪な笑みを浮かべる。

 総合ライフサポート企業の次なる社会貢献(能動的な悪の粉砕)が、天頂の神域で今まさに始まろうとしていた。

「ナ、ナンダ貴様ラハ!? 我ガ絶望ノ夜ヲ『電球の球切れ』ダト!? 舐メルナ地上ノウジ虫ドモッ! 我ガ影ノ悪魔デ、貴様ラノ視界ヲ永遠ニ奪ッテクレルワ!」

 暗黒獣の怒号と共に、空を覆うほどのドス黒い悪魔の群れが、一斉にアルドたちに向かって襲い掛かった。

「うわっ、この蛾、すっごく大きくて粉を撒き散らしてる! 目に入ったら痛くて危ないぞ!」

 アルドは、迫り来る影の悪魔を「光に群がるタチの悪い巨大蛾」と完全に誤認し、脚立をガチャリと組み立てた。

「社長、ここは我々『社員』にお任せを。蛾の死骸やホコリが下に落ちないよう、まずは私が養生シートを広げます」

 シノンが音もなく跳躍し、神域の下層を覆うように、無数の札(神仙の光縛結界符)を空中に投げ放った。

 ――ピィィィィンッ!

 瞬間、天頂全体を覆うように、透明で絶対的な強度を誇る『神仙の養生シート結界』が展開された。これで、闇の残滓は一滴たりとも地上へ落ちることはない。

「完璧な養生ですわ、シノンさん。では、私は照明にこびりついたガンコな闇のホコリ(致死の暗黒瘴気)を、特殊クリーニングで綺麗に拭き取りますわ!」

 エルミナが白銀の杖を天に掲げると、大宇宙の理を内包した『極大聖光浄化魔法』が、超強力なガラスクリーナーのように周囲の暗闇を包み込んだ。

「ギャアアアアッ!?」

 万物を飲み込む暗黒瘴気は、その浄化の閃光を浴びた瞬間、身に纏っていた闇の魔力ごと完全に無力化され、ただのカラカラに乾いた無害なススへと変わっていく。

「フンッ! カラカラになったススなど、ただのはたき掛けのマトだ! そして、邪魔な蛾の羽は私が綺麗に斬り落としてやろう!」

 レイヴンが神具の斧を大上段に構え、影の悪魔の群れに向かって旋風のごとく突っ込む。

「害虫剪定斬ィィィッ!!」

 放たれた一撃は、悪魔の体を「影の結合の隙間」から完璧に見切り、まるでハエ叩きを振り回すかのように、シャリィィィン!と見事な手際で微塵切りにしてしまった。

「ナ、何ィィィッ!? 我ガ無敵ノ暗黒瘴気ト悪魔ガ、タダノ『ガラス拭き』ト『虫退治』ノ前ニ、一瞬デ無力化サレテイクゥゥッ!?」

 暗黒獣は、自らの絶望の闇がものの数分で「ただのスス」に変わり、眷属が全滅した光景に、驚愕のあまり巨体を震わせた。

「よし、みんなのおかげで邪魔なホコリと蛾は片付いたね! あとは、あの一番真っ黒になってる『切れた電球(暗黒獣)』をはたきで綺麗にして、新しい電球に交換するだけだ!」

 アルドは、『事象踏み台の脚立』にヒョイッと登り、特製『絶対払拭の神仙はたき』を構え、暗黒獣の巨大な顔面へと向けて突撃した。

 ――当然ながら、その素材は常軌を逸している。脚立は神話の巨神の骨格を組み上げたものであり、いかなる重力や次元の崩壊にも揺るがない絶対の足場。そしてはたきは、天界の霊鳥の羽を束ねたもので、大宇宙のいかなる概念的暗黒すらも、物理的に『パタパタと払う』だけで完璧に拭き取る『究極の清掃ツール』である。

「オノレェェェッ! 舐メルナ人間! 我ガ本気、全てノ光ヲ喰ラウ『終焉ノ絶対暗黒アビス・ブラックホール』デ、貴様ラゴト虚無ニ飲ミ込ンデクレルワ!」

 暗黒獣が残された魔力を暴走させ、周囲の空間ごと全てを飲み込む超巨大なブラックホールを口に展開し始めた。

「うわっ! 電球のソケットの奥に、すっごくガンコな黒いホコリの塊が詰まってる! でも、この特製はたきの前には、どんな汚れも一発でパタパタだ!」

 アルドがはたきを力強く振り下ろすと、神仙の羽毛が容赦なくバサッ!とブラックホールに叩きつけられた。

「バ、バカナァァァッ!? 我ガ最大奥義ノブラックホールガ、タダノハタキデ払イ落トサレタダトォォォッ!?」

「よし、ホコリは綺麗に落ちたぞ! 最後に、この真っ黒になった古い電球(暗黒獣のコア)の代わりに、この『事象照臨の特製LEDエコ電球』をカチャッと嵌めて……あ、そうだ。この真っ黒なカバー、綺麗に磨けば光を反射して、世界中を優しく照らす『巨大なシャンデリア(街灯)』にできそうだよ!」

 アルドが暗黒獣のコアに特製LED電球(事象固定の超特大光魔石)をガコンと嵌め込み、周囲の黒い外殻をツルツルに磨き上げると、大宇宙の法則が完全にひれ伏した。

 暴走していた蝕星の暗黒獣の禍々しい魔力は、瞬く間に漂白・調律されていく。

『ア……ァァ……。我ノ、世界ヲ暗闇ニ沈メルハズノ力ガ、マルデ都合ノイイ【夜道ヲ照ラス為ノ反射板】ノヨウニ……!? イヤ、新シイ電球ヲ嵌メラレル度ニ、我ガ巨体ガ、異常ナマデニ心地ヨイ【絶対的ナ神聖光トエコな消費電力ヲ誇ル、超巨大シャンデリア】ニ変換サレテイクゥゥゥッ! 私ノ存在ガ、世界ヲ絶望ニ沈メルノデハナク、コウシテ大陸ニ永遠ノ安全ト優シイ光ヲ提供スル「極上ノ全自動・神仙LED街灯」トシテ機能スルコトガ、コレホドマデニ満タサレルコトダッタトハ……!』

 かつて世界を脅かした暗黒の化身は、アルドの「電球交換とはたき掛け」によって完全に浄化され、書き換えられた。

 万物を飲み込む禍々しい暗黒獣は、気がつけば「天頂の神域に美しく輝き、眩しすぎない極上の光で夜の防犯を完璧にこなし、農作物の育成すらも促進させる、超高性能な『永久・神仙人工太陽兼シャンデリア(見た目は荘厳で神々しいクリスタルの照明)』」へと姿を変えていたのである。

「よしよし! 嫌なホコリと蛾の被害は片付いて、すっごく立派で明るい照明になったぞ! おまけに、LEDだから寿命も長くてエコだね。これで大陸の人たちも、夜道で転ぶこともなく、毎日安全に暮らせるよ!」

 アルドが脚立を片付けて額の汗を拭うと、空を覆っていたドス黒い暗闇は一瞬にして晴れ渡り、眼下の大陸には美しく優しい奇跡の光が降り注いでいた。

 ***

 数日後。大陸を統べる世界連盟の議事堂。

 各国の王と代表たちは、上空に輝く巨大なシャンデリアと報告書を見て震え上がっていた。

「ば、馬鹿な……。我が世界を暗黒に沈めるはずだった蝕星の暗黒獣が、たった数時間で『完全な電球交換』をされ、あまつさえ暗黒獣が『超巨大な防犯LEDインフラ』に転職して、国中の治安と農作物の育成を完璧に管理しているだと……!?」

 そこへ、冷徹な執事服に身を包んだアーキヴァルが、うやうやしく一礼して現れた。

「お初にお目にかかります、各国の代表諸君。総合ライフサポート企業『黄昏の守護者』の最高財務責任者、アーキヴァルでございます。この度は、我が社の『CSR活動(照明器具メンテナンスと防犯灯設置業務)』をご利用いただき、誠にありがとうございます」

 アーキヴァルは、分厚いバインダーから【完全なる日照権修復・防犯照明インフラ施設開発代金およびコンサルタント料の請求書】を取り出し、王たちの目の前にドンッと突きつけた。

「我が社の社長(アルド様)の理念により、今回は社会貢献として基本の電球交換料金はサービスさせていただいております。……が、暗黒獣の完全浄化、光学防壁の再構築、そして『大陸全土に極上の光と安全を供給する巨大シャンデリアの永続的な運用費』は、正当なビジネスとして請求させていただきます。お支払いは、各国の年間防犯・エネルギー税の五割と、夜間経済の独占プロデュース権で手を打ちましょう」

 アーキヴァルの冷たい宣告(合法的な超・搾取)と共に、王たちは完全に心をへし折られ、震える手で莫大な報酬の永続支払いにサインをするしかなかった。

 ***

 日だまり郷の黄金の城塞。

 静寂に包まれた書斎のデスクで、元・大賢者ゾルタンは、羽ペンをインク壺に浸し、新たな社史のページに文字を刻み込んでいた。

『〇月×日。天頂の神域における電球交換、および照明リフォーム作業完了。世界を暗闇に沈める蝕星の暗黒獣ダークマター・イクリプス(神話の厄災)を事象の脚立とはたきで清掃し、立派な特大LEDシャンデリアへと改修。光の喪失の修復を完了し、大陸全土の治安維持と夜間経済の発展に多大な貢献を果たした。

 ……また、我が社のCFOの尽力により、世界連盟からは莫大な賠償金と、照明・防犯インフラの独占管理権を合法的に譲り受けることに成功。これで我が社は、地下水脈、気象、海上物流、クリーンエネルギー、次元基盤、自然環境、気候、時間、信仰に続き、ついに「光と昼夜の概念」の覇権すらも完全に掌握したことになる。

 社長の「社会貢献」という名の大掃除は、もはや宇宙の光源すらも呑み込み、世界は究極の平穏(我が社による完全支配)へと向かっている。大賢者たるワシの知能をもってしても、太陽すら味方につけた(物理的に電球として嵌め込んだ)この恐るべき企業の快進撃を止める術は、大宇宙のどこにも存在しない。』

 ゾルタンが深い溜息と共にペンを置くと、ドアの向こうから「今日のおやつは天界鶏の卵を使った、ふんわり特製カステラだよー!」というアルドの無邪気な声が聞こえてきた。

 ゾルタンは「神々の絶望を記録した直後のカステラは、ことのほか甘かろう」とぼやきながらも、頬を緩ませて立ち上がった。

 最強の便利屋の「ただの電球交換」は、世界暗黒化の危機をただの照明メンテナンスとして解決し、暗黒獣の脅威を完全に終わらせただけでなく、世界に最高の光と防犯インフラを誕生させてしまった。

 企業として躍進するクラン『黄昏の守護者』は、これより正式に光の覇権をも握り、いかなる邪悪も日常の家事手伝いとして葬り去る、究極の平穏なる企業伝説をまた一つ、分厚い社史のページに深く刻み込んだのであった。

ここまでお読みいただきありがとうございます!少しでも面白いと感じたら、画面下から【ブックマーク】と【☆☆☆☆☆】の評価をいただけると、執筆の大きなモチベーションになります!

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