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辺境暮らしの便利屋冒険者、伝説のクランのリーダーに祭り上げられる 〜本人曰く「ただの日常」らしいです〜  作者: 盆ちゃん


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第118話:ただの雨漏り修理と、虚無の邪竜の強制ステンドグラス化(総合ライフサポート企業の屋根補修)

第118話:ただの雨漏り修理と、虚無の邪竜の強制ステンドグラス化(総合ライフサポート企業の屋根補修)

 黄金の城塞『日だまり郷』の朝は、大宇宙の理すらも平伏す圧倒的な平穏と、魂を根底からとろけさせるような極上の甘い香り、そして香ばしく焼き上がるバターの匂いと共に幕を開ける。

 今日のアルドは、朝からキッチンの特注の極厚鉄板に向かい、見事な手際で『特製・神仙小麦の極厚スフレパンケーキと、世界樹の特濃メープルシロップ、星屑ベリーのコンポート添え』を仕上げていた。

「よし! メインは、大精霊の清冽な水と幻獣の卵白を限界まで泡立てて、神仙小麦とふんわり混ぜ合わせた極厚のパンケーキだ。鉄板でじっくり蒸し焼きにして、お皿を揺らすとプルプル震えるくらい柔らかく焼き上がっているよ。そこに、世界樹の樹液を煮詰めた黄金色のメープルシロップをたっぷりと回しかけ、甘酸っぱい星屑ベリーのコンポートと、幻獣ミルクの濃厚な生クリームを高く盛り付けて……熱々のうちに完成だ!」

 アルドがエプロン姿で、雪山のようにクリームが盛られ、湯気と共に圧倒的な甘い香りを放つパンケーキのタワーをダイニングテーブルに運ぶと、神竜ポチとモフモフの星狼シロがテーブルの下でちぎれんばかりに尻尾を振って待機していた。リビングのソファでは、特大モチモチクッションへと強制リメイクされた元・大宇宙の邪神ゼロ・アポカリプスが、ポカポカと温かいヒーター機能を放ちながら、平和なインテリアとしての職務を微動だにせず全うしている。

 この極上スイーツ朝食、一口食べれば神仙小麦の極上の炭水化物が全身の魔力回路を限界突破させ、メープルシロップの圧倒的な糖分が血中のあらゆる疲労物質や致死の精神汚染すらも瞬時にデトックスし、魂の底から尽きることのない多幸感と閃きを湧き上がらせる『究極の超覚醒・至福の朝食』である。

「うむ……! このナイフを入れた瞬間に伝わる雲のような柔らかさと、口の中で溶けて消える圧倒的な口溶け! そしてメープルとベリーの奇跡のハーモニー! 見るだけで我が魔界の闘争本能が、休日の昼下がりにオシャレなカフェで女子会を楽しむ令嬢のようにフニャフニャに溶かされそうになるわい!」

 元・魔界大帝サタナスが、フォークを両手で震わせながら握りしめ、あまりの美味さにワナワナと肩を震わせて感涙に咽いでいた。

 そんな賑やかなダイニングの喧騒が一段落し、食後の極上ストレートティーが振る舞われた後。

 アルドは、防音・防諜の魔法結界が幾重にも張られたリビングの長テーブルの上座に座った。その周囲には、『出張解体アシスタント』のレイヴン、『特殊クリーニング部門責任者』のエルミナ、『総合防犯システム責任者』のシノン、そして『最高財務責任者(CFO)兼・広報担当』のアーキヴァルという、総合ライフサポート企業『黄昏の守護者』の頼もしき役員たちが顔を揃えている。

「さて、みんな。東方列島の柱時計化(時空機神の修理)も終わって、世界中の時間管理がすっかり安定したね。これもみんなのチームワークのおかげだよ。……それで、次なる『困り事』の案件は何か入っているかな?」

 アルドがニコッと微笑みかけると、CFO兼広報担当のアーキヴァルが、優雅な所作で立ち上がり、分厚いバインダーを開いた。

「はい、社長。我が社の次なるCSR活動として、今回は大陸中央に位置する聖国アルカディアにおける『深刻な雨漏りと屋根の腐敗』に関する、極めて重大なご相談を受注いたしました」

 アーキヴァルは、手元の書類を指先で弾きながら、冷徹かつ完璧なプレゼンテーションを開始する。

「聖国の上空、つまり大空という名の巨大な屋根に、突如として『巨大な亀裂(次元の裂け目)』が走りまして。そこから長年封印されていた『厄介なコウモリの化け物(虚無の邪竜アビス・バハムート)』が顔を出し、タチの悪い泥水(※万物を消滅させる虚無の泥)を国中にポタポタと撒き散らしているのです」

 アーキヴァルの言葉の裏にある「真実」を、大公レオハルトと元・大賢者ゾルタンは顔面を蒼白にしながら補完していた。

(虚無の邪竜だと……!? あれは世界の空に穴を空け、次元の外側から宇宙の混沌を流し込んで星を泥に還す神話級の破滅竜。それが覚醒したとなれば、聖国はおろか、世界の空が崩落し、全てがドロドロの混沌に呑み込まれる。本来なら全神官を総動員して命がけの神聖防壁を構築すべき、世界終焉レベルの絶望事態だぞ……!)

 しかし、アーキヴァルは一切表情を変えず、アルド向けに完璧に翻訳カスタマイズされた依頼書を読み上げる。

「聖国の教皇からの要望は、この鬱陶しい雨漏り(虚無の泥)の『徹底的な拭き取り(浄化)』と『屋根裏の害獣(邪竜)の退治』、そして『空の屋根の防水工事』です。このまま放置すれば、人々の家が泥水で腐り、カビだらけになってしまいます。我が社の社会貢献活動として、これほど迅速な対応が求められる案件はないかと」

「なるほど!」

 アルドは、依頼書を見て真剣な表情でポンッと手を叩いた。

「空の屋根に穴が空いて雨漏りしてるなんて、家の中がジメジメして最悪だね! おまけに屋根裏にデカいコウモリが住み着いて泥水を落としてるなんて、衛生的に大問題だ。床が腐る前に、しっかり防水補修しないと。よーし、さっそく僕たちの『総合ライフサポート』の出番だ!」

 アルドが立ち上がると、役職を得たクランメンバーたちも、一斉に気合い(殺意)に満ちた表情で立ち上がった。

「社長。屋根にへばりつく鬱陶しい害獣(邪竜)の解体と撤去は、この『出張解体アシスタント』にお任せを。羽の一枚、鱗の一片残さず綺麗に削り落として、ただの廃材以下の仕事にしてご覧に入れましょう」

 レイヴンが、神具の斧を肩に担ぎながら不敵に笑う。

「ええ。雨漏りが撒き散らすガンコな泥汚れやカビ(※致死の混沌と虚無の魔力)は、『特殊クリーニング部門』の私が、特製の乾燥機(※極大の天界光熱魔法)で一瞬にして蒸発・殺菌して差し上げますわ」

 エルミナが、美しく銀髪を揺らしながら自信満々に頷く。

「……作業中、泥水や害獣(※邪竜の破片)が他の国へ飛び散らないよう、『総合防犯システム責任者』として、現場の下に完璧なブルーシート(※絶対封殺の空間遮断結界)を広げておきます」

 シノンが、音もなく短剣を弄びながら冷たく宣言する。

「うんうん、みんな本当に頼もしいな! 屋根の上の作業は滑りやすいから、しっかりブルーシートを敷いて養生してくれると助かるよ!」

 アルドは、メンバーたちの頼もしい言葉に満足げに頷き、自身の作業着(虚無の泥と空間崩壊を完全に弾く特製防水カッパと安全靴)に着替え、手にはコーキングガンと大きなガラス板を握りしめた。

「よーし! それじゃあ僕は、特製『事象封殺のコーキングガン』と『絶対防水の神仙天窓ガラス』を持っていくよ! 聖国の人たちのお家を守るために、邪魔な雨漏りを塞いで、屋根をピカピカにリフォームしてこよう!」

 こうして、総合ライフサポート企業『黄昏の守護者』の社員一同は、空中浮遊仕様に改造された魔導軽トラに乗り込み、空が裂けつつある聖国アルカディアの上空へと向けて出勤したのである。

 ***

 その頃、聖国アルカディアの上空。

 大空を引き裂き、次元の向こう側から這い出した大地の悪夢『虚無の邪竜アビス・バハムート』が、空をどす黒く染める混沌の泥を吐き出しながら、傲慢な咆哮を響かせていた。

「グルオォォォォ……! 素晴らしいぞ! この空の裂け目から溢れる虚無の泥さえあれば、地上の生命など一瞬で混沌へと溶け去る! 見よ、我がもたらすこの圧倒的な破滅の雨を!」

 邪竜は、巨大な翼を広げ、絶望の泥雨を地上へと降らせた。

「愚かな地上の生命どもめ。我が目覚めたからには、もはやこの星に明日はないと知れ! さあ、もっとだ! 空を食い破り、大陸全土を永遠の泥沼に沈めよ!」

「我ら虚無の眷属の力は絶対だ! この次元の裂け目まで踏み込める者など、この世界にはもはや存在し――」

 ――キキィィィィッ!! バタンッ!

 邪竜が勝利の宣言を口にしようとしたその瞬間、次元の裂け目の真ん前に、四つの車輪がついた奇妙な小型の鉄箱(魔導軽トラ)が、重力と虚無の嵐をものともせずにドリフト着陸(空中停止)する音が響き渡った。

 そして、軽トラのドアが「ガラッ」と無遠慮に開け放たれ、コーキングガンとガラス板を持った青年の明るい声が、終焉の静寂を完全に打ち破ったのである。

「ちわーっす! 総合ライフサポート企業『黄昏の守護者』です! 教皇様からご依頼いただいた屋根の雨漏り修理と害獣駆除に伺いましたー! ……うわぁ、こりゃひどい屋根のヒビ割れと、ドロドロの汚い雨漏りだね!」

 アルドは、防水カッパのフードを被りながら、プロの屋根職人としてのダメ出しを開始した。

「ナ、何奴ッ!? 我ガ絶対虚無ノ領域ニ、地上ノ虫ケラガ何ノ用ダ!」

 邪竜が驚愕の声を上げる中、アルドの後ろから、レイヴン、エルミナ、シノン、そしてアーキヴァルが、それぞれの「清掃用具(兵器)」を手にして、圧倒的な威圧感を放ちながら空中へと降り立ったのである。

「さあ、社長。まずはこの鬱陶しいコウモリ(邪竜)の邪魔な部分から、綺麗に『解体』して差し上げましょう」

 レイヴンが神具の斧を構え、凶悪な笑みを浮かべる。

 総合ライフサポート企業の次なる社会貢献(能動的な悪の粉砕)が、空の屋根の上で今まさに始まろうとしていた。

「ナ、ナンダ貴様ラハ!? 我ガ次元ノ裂ケ目ヲ『雨漏リ』ダト!? 舐メルナ地上ノウジ虫ドモッ! 我ガ虚無ノ泥デ、貴様ラゴト溶カシ尽クシテクレルワ!」

 邪竜の怒号と共に、空を覆うほどのドス黒い泥の雨が、一斉にアルドたちに向かって降り注いだ。

「うわっ、この泥水、すっごく臭くてベタベタしてる! 家の壁にシミができたら大変だ!」

 アルドは、迫り来る虚無の泥を「長年の汚れが溜まったタチの悪い雨水」と完全に誤認し、コーキングガンのトリガーに指をかけた。

「社長、ここは我々『社員』にお任せを。泥水が下へ落ちないよう、まずは私がブルーシートを広げます」

 シノンが音もなく跳躍し、聖国の上空を覆うように、無数の札(神仙の空間遮断結界符)を空中に投げ放った。

 ――ピィィィィンッ!

 瞬間、国全体を覆うように、透明で絶対的な強度を誇る『神仙のブルーシート結界』が展開された。これで、虚無の泥は一滴たりとも地上へ落ちることはない。

「完璧な養生ですわ、シノンさん。では、私はシートの上に溜まったガンコな泥水(致死の混沌)を、特殊クリーニングで綺麗に乾燥・殺菌いたしますわ!」

 エルミナが白銀の杖を天に掲げると、大宇宙の理を内包した『極大天界光熱魔法』が、超強力な布団乾燥機のように周囲の泥雨を包み込んだ。

「ギャアアアアッ!?」

 万物を溶かす混沌の泥は、その浄化の光熱を浴びた瞬間、身に纏っていた虚無の魔力ごと完全に無力化され、ただのカラカラに乾いた無害な砂埃へと変わっていく。

「フンッ! カラカラになった泥など、ただの掃き掃除のマトだ! そして、邪魔なコウモリの羽は私が綺麗に剥ぎ取ってやろう!」

 レイヴンが神具の斧を大上段に構え、邪竜の巨大な翼に向かって旋風のごとく突っ込む。

「害獣剪定斬ィィィッ!!」

 放たれた一撃は、邪竜の強靭な翼を「関節の隙間」から完璧に見切り、まるで屋根の上の落ち葉を払うかのように、シャリィィィン!と見事な手際で翼を切り落としてしまった。

「ナ、何ィィィッ!? 我ガ無敵ノ虚無ノ泥ト翼ガ、タダノ『乾燥』ト『解体』ノ前ニ、一瞬デ無力化サレテイクゥゥッ!?」

 邪竜は、自らの絶望の雨がものの数分で「ただの砂埃」に変わり、翼をもがれた光景に、驚愕のあまり巨体を震わせた。

「よし、みんなのおかげで邪魔な泥水は片付いたね! あとは、あの一番穴を広げてる『屋根裏のコウモリ(邪竜)』を穴に押し込んで、コーキングで隙間を塞ぐだけだ!」

 アルドは、特製『事象封殺のコーキングガン』を構え、次元の裂け目と邪竜の隙間へと向けて突撃した。

 ――当然ながら、その素材は常軌を逸している。コーキング剤は星の創世の光を練り上げた神仙のパテであり、大宇宙のいかなる次元の断裂や虚無の侵食すらも、物理的に『隙間に注入する』だけで完璧に塞ぎ、事象を固定する『究極の防水補修材』である。

「オノレェェェッ! 舐メルナ人間! 我ガ本気、全てヲ無ニ還ス『終焉ノ大崩壊アビス・カタストロフィ』デ、貴様ラゴト空ヲ砕イテクレルワ!」

 邪竜が残された魔力を暴走させ、空そのものを粉砕するほどの超巨大な破壊エネルギーを口に充填し始めた。

「うわっ! 屋根のヒビがさらに広がろうとしてる! でも、この特製コーキングの前には、どんな雨漏りの隙間も一発でピタッだ!」

 アルドがコーキングガンのトリガーを力強く引くと、銃口から神仙のパテが容赦なくニュルルルッ!と射出され、邪竜の口の中と次元の裂け目にびっしりと充填された。

「バ、バカナァァァッ!? 我ガ最大奥義ノ破壊エネルギーガ、タダノ防水パテデ塞ガレタダトォォォッ!?」

「よし、隙間は綺麗に塞がったぞ! 最後に、この『絶対防水の神仙天窓ガラス』を上からペタッと貼って……あ、そうだ。この屋根裏のコウモリ、パテで固まったらなんだかステンドグラスの模様みたいで綺麗だね。ちょっと色を塗って整えれば、聖国にぴったりの『巨大な神聖ステンドグラスの天窓』にできそうだよ!」

 アルドが邪竜の巨体ごと次元の裂け目に神仙ガラス(事象固定のクリスタル)を嵌め込み、周囲を綺麗に拭き上げると、大宇宙の法則が完全にひれ伏した。

 暴走していた虚無の邪竜の禍々しい魔力は、瞬く間に漂白・調律されていく。

『ア……ァァ……。我ノ、世界ヲ混沌ニ沈メルハズノ力ガ、マルデ都合ノイイ【太陽ノ光ヲ美シク取リ込ム為ノ芸術作品】ノヨウニ……!? イヤ、ガラスニ閉ジ込メラレル度ニ、我ガ巨体ガ、異常ナマデニ心地ヨイ【絶対的ナ神聖波動ト癒ヤシノ光ヲ降ラセル、超巨大ステンドグラス】ニ変換サレテイクゥゥゥッ! 私ノ存在ガ、世界ヲ絶望ニ沈メルノデハナク、コウシテ聖国ニ永遠ノ芸術ト光ヲ提供スル「極上ノ全自動・神仙天窓」トシテ機能スルコトガ、コレホドマデニ満タサレルコトダッタトハ……!』

 かつて世界を脅かした虚無の化身は、アルドの「雨漏り補修と天窓の設置」によって完全に浄化され、書き換えられた。

 万物を消滅させる禍々しい邪竜は、気がつけば「空の屋根に美しく輝き、太陽の光を通して聖国中に病を癒やす七色の光を24時間降り注がせる、超高性能な『永久・神仙天窓ステンドグラス(見た目は荘厳で神々しい竜のレリーフ)』」へと姿を変えていたのである。

「よしよし! 嫌な雨漏りの被害は片付いて、すっごく立派で綺麗な天窓になったぞ! おまけに、これがあれば家の中がずっと明るくて健康的だね。これで聖国の人たちも、雨漏りに悩まされずに、毎日綺麗な光を浴びて暮らせるよ!」

 アルドがコーキングガンを片付けて額の汗を拭うと、空を覆っていたドス黒い泥の雨雲は一瞬にして晴れ渡り、眼下の聖国には七色に輝く奇跡の光が降り注いでいた。

 ***

 数日後。聖国アルカディアの教皇庁。

 教皇と枢機卿たちは、上空に輝く巨大なステンドグラスと報告書を見て震え上がっていた。

「ば、馬鹿な……。我が国を泥に沈めるはずだった虚無の邪竜が、たった数時間で『完全防水処理』され、あまつさえ邪竜が『超巨大な癒やしの天窓・神聖インフラ』に転職して、国中の信仰と奇跡を完璧に体現しているだと……!?」

 そこへ、冷徹な執事服に身を包んだアーキヴァルが、うやうやしく一礼して現れた。

「お初にお目にかかります、教皇猊下。総合ライフサポート企業『黄昏の守護者』の最高財務責任者、アーキヴァルでございます。この度は、我が社の『CSR活動(雨漏り修理と天窓リフォーム業務)』をご利用いただき、誠にありがとうございます」

 アーキヴァルは、分厚いバインダーから【完全なる次元修復・神聖インフラ施設開発代金およびコンサルタント料の請求書】を取り出し、教皇の目の前にドンッと突きつけた。

「我が社の社長(アルド様)の理念により、今回は社会貢献として基本の補修料金はサービスさせていただいております。……が、邪竜の完全浄化、空間防壁の再構築、そして『聖国全土に極上の奇跡と癒やしを供給する巨大天窓の永続的な運用費』は、正当なビジネスとして請求させていただきます。お支払いは、聖国の年間巡礼・免罪符収益の四割と、宗教的権威の独占プロデュース権で手を打ちましょう」

 アーキヴァルの冷たい宣告(合法的な超・搾取)と共に、教皇は完全に心をへし折られ、震える手で莫大な報酬の永続支払いにサインをするしかなかった。

 ***

 日だまり郷の黄金の城塞。

 静寂に包まれた書斎のデスクで、元・大賢者ゾルタンは、羽ペンをインク壺に浸し、新たな社史のページに文字を刻み込んでいた。

『〇月×日。聖国上空における雨漏り修理、および天窓リフォーム作業完了。次元を崩壊させる虚無の邪竜アビス・バハムート(神話の厄災)を事象のコーキングガンとガラスで防水し、立派な特大ステンドグラスへと改修。空の亀裂の修復を完了し、大陸全土の建築の安全性と芸術文化の発展に多大な貢献を果たした。

 ……また、我が社のCFOの尽力により、聖国からは莫大な賠償金と、宗教的権威・神聖インフラの独占管理権を合法的に譲り受けることに成功。これで我が社は、地下水脈、気象、海上物流、クリーンエネルギー、次元基盤、自然環境、気候、時間に続き、ついに「神への信仰と奇跡」の覇権すらも完全に掌握したことになる。

 社長の「社会貢献」という名の大掃除は、もはや神の領域すらも呑み込み、世界は究極の平穏(我が社による完全支配)へと向かっている。大賢者たるワシの知能をもってしても、神仏すら味方につけた(物理的に窓枠に嵌め込んだ)この恐るべき企業の快進撃を止める術は、大宇宙のどこにも存在しない。』

 ゾルタンが深い溜息と共にペンを置くと、ドアの向こうから「今日のおやつは天界小麦のスフレパンケーキの残りで作った、特製フルーツサンドだよー!」というアルドの無邪気な声が聞こえてきた。

 ゾルタンは「甘味の誘惑だけには勝てん」とぼやきながらも、頬を緩ませて立ち上がった。

 最強の便利屋の「ただの雨漏り修理」は、世界崩壊の危機をただのコーキングとして解決し、虚無の邪竜の脅威を完全に終わらせただけでなく、世界に最高の芸術・神聖インフラを誕生させてしまった。

 企業として躍進するクラン『黄昏の守護者』は、これより正式に信仰の覇権をも握り、いかなる邪悪も日常のリフォーム業務として葬り去る、究極の平穏なる企業伝説をまた一つ、分厚い社史のページに刻み込んだのであった。

ここまでお読みいただきありがとうございます!少しでも面白いと感じたら、画面下から【ブックマーク】と【☆☆☆☆☆】の評価をいただけると、執筆の大きなモチベーションになります!

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