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辺境暮らしの便利屋冒険者、伝説のクランのリーダーに祭り上げられる 〜本人曰く「ただの日常」らしいです〜  作者: 盆ちゃん


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第117話:ただの時計修理と、時空機神の強制柱時計化(総合ライフサポート企業の精密機器メンテナンス)

第117話:ただの時計修理と、時空機神の強制柱時計化(総合ライフサポート企業の精密機器メンテナンス)

 黄金の城塞『日だまり郷』の朝は、大宇宙の理すらも平伏す圧倒的な平穏と、前世の記憶の琴線を激しく掻き鳴らす極上の湯気、そして胃袋を直接掴んで揺さぶるような中華スパイスの芳醇な香りと共に幕を開ける。

 今日のアルドは、朝からキッチンの巨大な特注蒸籠せいろと中華鍋に向かい、見事な手際で『特製・天界豚と神仙蟹の極上小籠包と、世界樹のフカヒレ風とろみスープ、星屑の薬膳粥』を仕上げていた。

「よし! メインは、大精霊の加護を受けて育った天界豚の挽肉と、神仙蟹の濃厚なカニミソをたっぷり練り込んだ極上小籠包だ。幻獣の骨から三日三晩かけて抽出したプルプルの煮こごりを餡に混ぜ込み、極薄の神仙小麦の皮で包んで一気に蒸し上げる! 箸で皮を破れば、中から黄金色の熱々スープが滝のように溢れ出す寸法さ。そして、世界樹の若竹と幻獣のコラーゲンをたっぷり使ったとろみスープに、五臓六腑に染み渡る星屑の薬膳粥! 仕上げに特製の黒酢と針生姜を添えて……熱々のうちに完成だ!」

 アルドがエプロン姿で、もうもうと湯気を立てる巨大な蒸籠と土鍋をダイニングテーブルに運ぶと、その暴力的なまでの食欲をそそる香りに引き寄せられ、神竜ポチとモフモフの星狼シロがテーブルの下でちぎれんばかりに尻尾を振って待機していた。リビングのソファでは、特大モチモチクッションへと強制リメイクされた元・大宇宙の邪神ゼロ・アポカリプスが、ポカポカと温かいヒーター機能を放ちながら、平和なインテリアとしての職務を微動だにせず全うしている。

 この極上中華朝食、一口食べれば天界豚の極上のビタミン群と神仙蟹のタウリンが全身の魔力回路を限界突破させ、薬膳粥の圧倒的な滋養強壮力が血中のあらゆる疲労物質や致死の呪いすらも瞬時にデトックスし、魂の底から尽きることのない多幸感と活力を湧き上がらせる『究極の超覚醒・長寿フルコース』である。

「うむ……! この薄皮を破った瞬間に溢れ出す黄金のスープと、蟹の旨味のビッグバン! そして薬膳粥の圧倒的な優しさとコク! 見るだけで我が魔界の闘争本能が、朝の公園で太極拳を楽しむ老人のようにフニャフニャに溶かされそうになるわい!」

 元・魔界大帝サタナスが、レンゲの上で小籠包を冷ましながら両手で震わせ、あまりの美味さにワナワナと肩を震わせて感涙に咽いでいた。

 そんな賑やかなダイニングの喧騒が一段落し、食後の極上ジャスミンティーが振る舞われた後。

 アルドは、防音・防諜の魔法結界が幾重にも張られたリビングの長テーブルの上座に座った。その周囲には、『出張解体アシスタント』のレイヴン、『特殊クリーニング部門責任者』のエルミナ、『総合防犯システム責任者』のシノン、そして『最高財務責任者(CFO)兼・広報担当』のアーキヴァルという、総合ライフサポート企業『黄昏の守護者』の頼もしき役員たちが顔を揃えている。

「さて、みんな。西方の大雪山の冷蔵庫化(氷将の除雪)も終わって、世界中の気候と食料保存がすっかり安定したね。これも我が社の社会貢献の賜物だよ。……それで、次なる『困り事』の案件は何か入っているかな?」

 アルドがニコッと微笑みかけると、CFO兼広報担当のアーキヴァルが、優雅な所作で立ち上がり、分厚いバインダーを開いた。

「はい、社長。我が社の次なるCSR活動として、今回は東方の列島地域における『深刻な時間の遅延と寿命の狂い』に関する、極めて重大なご相談を受注いたしました」

 アーキヴァルは、手元の書類を指先で弾きながら、冷徹かつ完璧なプレゼンテーションを開始する。

「東方の隔離された次元の狭間に、長年封印されていた『巨大な時計仕掛けの魔神(時空機神クロノス・マキナ)』が目覚めまして。狂った歯車で周囲の時空を削り取り、時間の流れをめちゃくちゃにしております。さらにタチの悪いことに、その魔神が生み出す『時の歯車ども(※時間を喰らう機械兵群)』が列島に溢れ出し、人々の時間を奪って急速に老化させたり、逆に永遠の停止状態に陥らせようと暴れ回っているのです」

 アーキヴァルの言葉の裏にある「真実」を、大公レオハルトと元・大賢者ゾルタンは顔面を蒼白にしながら補完していた。

(時空機神だと……!? あれは世界の因果律そのものを破壊し、時間を虚無に還すために顕現した神話級の機械神。それが覚醒したとなれば、東方諸国はおろか、世界の歴史そのものが崩壊する。本来なら全国家の魔導士を総動員して極大の時空凍結結界を構築すべき、次元崩壊レベルの絶望事態だぞ……!)

 しかし、アーキヴァルは一切表情を変えず、アルド向けに完璧に翻訳カスタマイズされた依頼書を読み上げる。

「近隣の国々からの要望は、この鬱陶しい狂った歯車たち(機械兵群)の『徹底的な分解(粉砕と無力化)』と『巨大な親玉(時空機神)の修理』、そして『狂った時計の時刻合わせ』です。このまま放置すれば、人々の生活リズムが完全に崩れ、寝不足や過労で倒れてしまいます。我が社の社会貢献活動として、これほど迅速な対応が求められる案件はないかと」

「なるほど!」

 アルドは、依頼書を見て真剣な表情でポンッと手を叩いた。

「古い柱時計のゼンマイが錆びついて、夜中に変な音で鳴ったり、時間がズレたりしてご近所迷惑になってるんだね! おまけに時計の部品が外れて散らかってるなんて、踏んだら痛いし大問題だ。健康的な生活を送るためにも、時計のメンテナンスはしっかりやらないと。よーし、さっそく僕たちの『総合ライフサポート』の出番だ!」

 アルドが立ち上がると、役職を得たクランメンバーたちも、一斉に気合い(殺意)に満ちた表情で立ち上がった。

「社長。街に散らばる鬱陶しい部品(時の機械兵ども)の解体と撤去は、この『出張解体アシスタント』にお任せを。ネジ一本残さず綺麗に砕いて、ただの鉄クズ以下の仕事にしてご覧に入れましょう」

 レイヴンが、神具の斧を肩に担ぎながら不敵に笑う。

「ええ。機械が撒き散らすガンコな錆や時間の歪み(※致死の時空断裂と老化呪縛)は、『特殊クリーニング部門』の私が、特製のサビ落とし(※極大の時間復元魔法)で一瞬にして中和・洗浄して差し上げますわ」

 エルミナが、美しく銀髪を揺らしながら自信満々に頷く。

「……作業中、細かい部品(※機械兵の残党)が他の国へ飛んでいかないよう、『総合防犯システム責任者』として、現場の周囲に完璧な防音・防振マット(※絶対封殺の時空固定結界)を敷き詰めておきます」

 シノンが、音もなく短剣を弄びながら冷たく宣言する。

「うんうん、みんな本当に頼もしいな! 精密機器の修理は細かい部品を無くさないことが大事だから、しっかりマットを敷いてくれると助かるよ!」

 アルドは、メンバーたちの頼もしい言葉に満足げに頷き、自身の作業着(時空の歪みと老化を完全に無効化する特製静電気防止ツナギとルーペ)に着替え、手には工具箱を握りしめた。

「よーし! それじゃあ僕は、特製『事象巻き戻しの精密ドライバー』と『絶対潤滑の神仙オイル』を持っていくよ! 東方の人たちの生活リズムを守るために、邪魔な錆を落として、柱時計をピカピカにリフォームしてこよう!」

 こうして、総合ライフサポート企業『黄昏の守護者』の社員一同は、時空跳躍仕様に改造された魔導軽トラに乗り込み、東方の歪んだ次元の狭間へと向けて出勤したのである。

 ***

 その頃、東方の次元の狭間に浮かぶ巨大な歯車の塔。

 世界の因果を削り取り、時間を貪る大地の悪夢『時空機神クロノス・マキナ』が、空間を歪ませるほどのけたたましい駆動音を響かせていた。

「ジジジ……ガガガ……! 素晴らしいぞ! この星の時間を削り取る歯車さえあれば、地上の生命など一瞬で塵と化す! 見よ、我が生み出したこの圧倒的な時の機械兵の軍勢を!」

 時空機神は、塔から溢れ出す無数の機械兵たちに号令をかけた。

「愚かな地上の生命どもめ。我が目覚めたからには、もはやこの星に未来はないと知れ! さあ、もっとだ! 時間を加速させ、大陸全土を永遠の終焉に導け!」

「ギゴゴゴゴッ!!」

 次元の狭間から這い出した数万の機械兵たちが、主の言葉に呼応して不気味な金属音を上げる。

「我ら時空機神の因果律操作は絶対だ! この時間の果ての領域まで踏み込める者など、この世界にはもはや存在し――」

 ――キキィィィィッ!! バタンッ!

 時空機神が勝利の宣言を口にしようとしたその瞬間、歪んだ歯車の塔のど真ん中に、四つの車輪がついた奇妙な小型の鉄箱(魔導軽トラ)が、時空の嵐をものともせずにドリフト着陸する音が響き渡った。

 そして、軽トラのドアが「ガラッ」と無遠慮に開け放たれ、精密ドライバーとスプレー缶を持った青年の明るい声が、時間の静寂を完全に打ち破ったのである。

「ちわーっす! 総合ライフサポート企業『黄昏の守護者』です! 近隣の国の方々からご依頼いただいたアンティーク時計の修理と時刻合わせに伺いましたー! ……うわぁ、こりゃひどい歯車のズレっぷりと、ギシギシ鳴る嫌なサビの音だね!」

 アルドは、ルーペ越しにプロの時計職人としてのダメ出しを開始した。

「ナ、何奴ッ!? 我ガ絶対時間ノ領域ニ、地上ノ虫ケラガ何ノ用ダ!」

 時空機神が驚愕の電子音を上げる中、アルドの後ろから、レイヴン、エルミナ、シノン、そしてアーキヴァルが、それぞれの「清掃用具(兵器)」を手にして、圧倒的な威圧感を放ちながら歯車の塔に降り立ったのである。

「さあ、社長。まずはこの鬱陶しい部品(機械兵)どもから、綺麗に『バラして』差し上げましょう」

 レイヴンが神具の斧を構え、凶悪な笑みを浮かべる。

 総合ライフサポート企業の次なる社会貢献(能動的な悪の粉砕)が、時間の果てで今まさに始まろうとしていた。

「ナ、ナンダ貴様ラハ!? 我ガ時空ノ塔ヲ『時計』ダト!? 舐メルナ地上ノウジ虫ドモッ! ヤレ、我ガ誇リ高キ機械兵ノ軍勢ヨ! 奴ラノ時間ヲ奪イ尽クシ、灰ニ変エロ!」

 時空機神の怒号と共に、塔を埋め尽くしていた無数の機械兵たちが、一斉にアルドたちに向かって鋭い歯車の刃を剥いて襲い掛かった。

「うわっ、この外れた部品、すっごく硬くてトゲトゲしてる! 踏んだら怪我して危ないぞ!」

 アルドは、迫り来る機械兵部隊を「長年の放置でこぼれ落ちたタチの悪い時計の部品」と完全に誤認し、精密ドライバーの柄を強く握りしめた。

「社長、ここは我々『社員』にお任せを。部品や騒音が他の場所に広がらないよう、まずは私が防音マットを敷きます」

 シノンが音もなく跳躍し、歯車の塔の周囲を囲むように、無数の札(神仙の時空固定結界符)を空中に投げ放った。

 ――ピィィィィンッ!

 瞬間、塔全体を覆うように、透明で絶対的な固定力を誇る『神仙の防振・防音結界』が展開された。これで、時間の歪みは一ミリたりとも塔の外へ逃げ出すことはできない。

「完璧なマットですわ、シノンさん。では、私は部品が撒き散らすガンコなサビや時間の狂い(致死の老化呪縛と時空断裂)を、特殊クリーニングで綺麗に拭き取りますわ!」

 エルミナが白銀の杖を天に掲げると、大宇宙の理を内包した『極大時間復元魔法』が、サビ落としスプレーのように周囲の機械兵と時空の歪みを包み込んだ。

「ガガピーーーッ!?」

 猛烈な時間加速を纏っていた機械兵たちは、その浄化の光を浴びた瞬間、身に纏っていた因果律ごと完全に無力化され、ただのぜんまい仕掛けのおもちゃのようにギギギと停止していく。

「フンッ! 時間を止められたガラクタなど、ただの解体のマトだ! 私が綺麗にバラしてやろう!」

 レイヴンが神具の斧を大上段に構え、停止した機械兵の群れに向かって旋風のごとく突っ込む。

「部品分解斬ィィィッ!!」

 放たれた一撃は、機械兵の硬い装甲を「ネジと歯車の隙間」から完璧に見切り、まるでプラモデルをバラすかのように、シャリィィィン!と見事な細かいビスと歯車へと解体してしまった。

「ナ、何ィィィッ!? 我ガ無敵ノ機械兵ノ軍勢ガ、タダノ『分解』ト『サビ落トシ』ノ前ニ、一瞬デ鉄クズニサレテイクゥゥッ!?」

 時空機神は、自らの精鋭部隊がものの数分で「綺麗な時計のパーツ」と「ただのネジの山」に変わってしまった光景に、驚愕のあまりメインコアを震わせた。

「よし、みんなのおかげで散らばった部品は片付いたね! あとは、あの一番ギシギシ嫌な音を立ててる『時計の心臓部(時空機神)』のネジを締めて、潤滑油を差すだけだ!」

 アルドは、特製『事象巻き戻しの精密ドライバー』を構え、時空機神の巨大なメインコアへと向けて突撃した。

 ――当然ながら、その素材は常軌を逸している。精密ドライバーの先端は神話の運命を紡ぐ女神の針を加工したものであり、大宇宙のいかなる因果の乱れや時空の断裂すらも、物理的に『ネジを回す』だけで完璧に過去へと巻き戻し修復する『究極の時計修理ツール』である。

「オノレェェェッ! 舐メルナ人間! 我ガ本気、星ノ歴史ヲ消シ飛バス『虚無ノ刻印クロノス・デリート』デ、貴様ラゴト過去カラ消滅サセテクレルワ!」

 時空機神がメインコアを暴走させ、大地の底からアルドの存在そのものを消し去るほどの超巨大な時空崩壊エネルギーを無数に放ってきた。

「うわっ! 心臓部のネジが緩んで、変な火花をいっぱい散らしてる! でも、この特製ドライバーの前には、どんな緩んだネジも一発でキュッだ!」

 アルドがドライバーをコアの隙間に突き刺してクルクルと回すと、迫り来る致死の時空崩壊は、神仙の刃に触れた瞬間に「カチッ!」と心地よい音を立てて、まるでただのゼンマイが巻き直されるように綺麗に収束してしまった。

「バ、バカナァァァッ!? 我ガ最大奥義ノ時空崩壊ガ、タダノ精密ドライバーデ巻キ戻サレタダトォォォッ!?」

「よし、緩んだネジは綺麗に締まったぞ! 最後に、この『絶対潤滑の神仙オイル』をギアの隙間にプシュッと差して……あ、そうだ。この時計の心臓部、すごく正確に動くようになったから、ちょっと外枠を被せれば世界中の人に時間を教えてくれる『巨大な柱時計』にできそうだよ!」

 アルドが神仙オイル(事象調律の潤滑液)を機神の全身にたっぷりと吹きかけ、手際よく美しい木目の外装(事象固定のケース)を取り付けると、大宇宙の法則が完全にひれ伏した。

 暴走していた時空機神の禍々しい因果律操作は、瞬く間に漂白・調律されていく。

『ア……ァァ……。我ノ、世界ノ歴史ヲ破壊スルハズノ力ガ、マルデ都合ノイイ【正確ナ時間ヲ刻ム為ノテンプト振リ子】ノヨウニ……!? イヤ、オイルヲ差サレル度ニ、我ガメインギアガ、異常ナマデニ心地ヨイ【絶対的ナ世界標準時ノ管理ト、人界ノ健康寿命ヲ最適化スルアンチエイジング機能】ニ変換サレテイクゥゥゥッ! 私ノ存在ガ、世界ヲ虚無ニ沈メルノデハナク、コウシテ大陸ニ永遠ノ規則正シイ生活ト長寿ヲ提供スル「極上ノ全自動・神仙グランドクロック」トシテ機能スルコトガ、コレホドマデニ満タサレルコトダッタトハ……!』

 かつて世界を脅かした時間の化身は、アルドの「時計修理と潤滑油の散布」によって完全に浄化され、書き換えられた。

 万物を消滅させる禍々しい機械神は、気がつけば「世界の時間を一秒の狂いもなく刻み、心地よい鐘の音と共に人々の細胞を若返らせる究極のリズムを24時間奏で続ける、超高性能な『永久・神仙世界標準時計(見た目は巨大で美しいアンティーク調の柱時計)』」へと姿を変えていたのである。

「よしよし! 嫌なサビの音は片付いて、すっごく立派で便利な柱時計になったぞ! おまけに、これがあれば毎朝決まった時間に心地よく起きられるね。これで東方の人たちも、寝不足に悩まされずに、毎日元気で健康に暮らせるよ!」

 アルドがドライバーを片付けて額の汗を拭うと、時空の狭間を覆っていたドス黒い次元の嵐は一瞬にして晴れ渡り、眼下の塔の周辺には穏やかな朝の日差しと、澄み切った鐘の音が鳴り響いていた。

 ***

 数日後。東方列島を統べる諸国の王室。

 各国の王たちは、宰相からの報告書を見て震え上がっていた。

「ば、馬鹿な……。我が大陸の時間を奪い尽くすはずだった時空機神が、たった数時間で『完全修理』され、あまつさえ機神が『超巨大な全自動世界標準時計・抗老化インフラ』に転職して、大陸中の時間管理と健康寿命を完璧に統括しているだと……!?」

 そこへ、冷徹な執事服に身を包んだアーキヴァルが、うやうやしく一礼して現れた。

「お初にお目にかかります、各国の国王陛下。総合ライフサポート企業『黄昏の守護者』の最高財務責任者、アーキヴァルでございます。この度は、我が社の『CSR活動(時計修理と精密機器メンテナンス業務)』をご利用いただき、誠にありがとうございます」

 アーキヴァルは、分厚いバインダーから【完全なる時間軸修復・抗老化インフラ施設開発代金およびコンサルタント料の請求書】を取り出し、王たちの目の前にドンッと突きつけた。

「我が社の社長(アルド様)の理念により、今回は社会貢献として基本の修理料金はサービスさせていただいております。……が、時空機神の完全浄化、因果律システムの再構築、そして『大陸全土に極上の時間と若さを供給する巨大柱時計の永続的な運用費』は、正当なビジネスとして請求させていただきます。お支払いは、各国の年間国民総生産の三割と、時間・医療インフラの独占管理権で手を打ちましょう」

 アーキヴァルの冷たい宣告(合法的な超・搾取)と共に、王たちは完全に心をへし折られ、震える手で莫大な報酬の永続支払いにサインをするしかなかった。

 ***

 日だまり郷の黄金の城塞。

 静寂に包まれた書斎のデスクで、元・大賢者ゾルタンは、羽ペンをインク壺に浸し、新たな社史のページに文字を刻み込んでいた。

『〇月×日。東方大陸における精密機器の修理、およびサビ落とし作業完了。大陸の歴史を崩壊させる時空機神クロノス・マキナ(神話の厄災)を事象のドライバーと潤滑油で修理し、立派な特大柱時計へと改修。時空の歪みの排除を完了し、大陸全土の健康寿命と生活リズムの発展に多大な貢献を果たした。

 ……また、我が社のCFOの尽力により、東方諸国からは莫大な賠償金と、時間・医療インフラの独占管理権を合法的に譲り受けることに成功。これで我が社は、地下水脈、気象、海上物流、クリーンエネルギー、次元基盤、自然環境、気候に続き、ついに「時間と生命の因果律」の覇権すらも完全に掌握したことになる。

 社長の「社会貢献」という名の大掃除は、もはや時間の理すらも呑み込み、世界は究極の平穏(我が社による完全支配)へと向かっている。大賢者たるワシの知能をもってしても、時間を味方につけたこの恐るべき企業の快進撃を止める術は、大宇宙のどこにも存在しない。』

 ゾルタンが深い溜息と共にペンを置くと、ドアの向こうから「今日のおやつは天界豚の極上肉まんと、あったかいジャスミンティーだよー!」というアルドの無邪気な声が聞こえてきた。

 最強の便利屋の「ただの時計修理」は、歴史崩壊の危機をただのネジ締めとして解決し、時空機神の脅威を完全に終わらせただけでなく、世界に最高の時間・抗老化インフラを誕生させてしまった。

 企業として躍進するクラン『黄昏の守護者』は、これより正式に時間の覇権をも握り、いかなる邪悪も日常のメンテナンス業務として葬り去る、究極の平穏なる企業伝説をまた一つ、分厚い社史のページに刻み込んだのであった。

ここまでお読みいただきありがとうございます!少しでも面白いと感じたら、画面下から【ブックマーク】と【☆☆☆☆☆】の評価をいただけると、執筆の大きなモチベーションになります!

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