第116話:ただの雪かきと、絶対零度の氷将の強制冷凍庫化(総合ライフサポート企業の除雪作業)
第116話:ただの雪かきと、絶対零度の氷将の強制冷凍庫化(総合ライフサポート企業の除雪作業)
黄金の城塞『日だまり郷』の朝は、大宇宙の理すらも平伏す圧倒的な平穏と、魂の芯まで温めるような極上のミルクとバターの香り、そしてふっくらと焼き上がった小麦の匂いと共に幕を開ける。
今日のアルドは、朝からキッチンの巨大なオーブンと特注のホーロー鍋に向かい、見事な火加減で『特製・天界鮭の極上クリームシチューと、世界樹の木の実の焼き立てパン』を仕上げていた。
「よし! メインは、大精霊の清流を遡上してきた脂の乗った天界鮭の特大切り身だ。これを、幻獣のミルクと神仙バターでじっくりと煮込み、世界樹の根菜をゴロゴロと入れた濃厚なクリームシチューにする! 隠し味に星屑のチーズを少しだけ削って入れると、コクが限界突破するんだ。そして、シチューに合わせるのは、今朝捏ねて焼き上げたばかりの世界樹の木の実がたっぷり入ったフワフワのパン! 外はカリッと、中は湯気が立つほどモチモチだ。熱々のうちに完成だ!」
アルドがエプロン姿で、黄金色の焦げ目がついたパンの山と、湯気を立てる純白のシチューをダイニングテーブルに運ぶと、その暴力的なまでのクリーミーな香りに引き寄せられ、神竜ポチとモフモフの星狼シロがテーブルの下でちぎれんばかりに尻尾を振って待機していた。リビングのソファでは、特大モチモチクッションへと強制リメイクされた元・大宇宙の邪神が、ポカポカと温かいヒーター機能を放ちながら、平和なインテリアとしての職務を微動だにせず全うしている。
この極上シチュー朝食、一口食べれば天界鮭の極上のオメガ3脂肪酸とビタミンが全身の魔力回路を限界突破させ、濃厚なクリームが血中のあらゆる疲労物質や致死の冷気を瞬時に解凍・浄化し、魂の底から尽きることのない多幸感と活力を湧き上がらせる『究極の超覚醒・ぽかぽかフルコース』である。
「うむ……! このパンの香ばしい小麦の響きと、シチューの鮭から溢れ出す旨味のビッグバン! そしてミルクの圧倒的な優しさとコク! 見るだけで我が魔界の闘争本能が、真冬の暖炉の前で毛布にくるまる幼子のようにフニャフニャに溶かされそうになるわい!」
元・魔界大帝サタナスが、パンをシチューに浸しながら両手で震わせ、あまりの美味さにワナワナと肩を震わせて感涙に咽いでいた。
そんな賑やかなダイニングの喧騒が一段落し、食後の極上ハーブティーが振る舞われた後。
アルドは、防音・防諜の魔法結界が幾重にも張られたリビングの長テーブルの上座に座った。その周囲には、『出張解体アシスタント』のレイヴン、『特殊クリーニング部門責任者』のエルミナ、『総合防犯システム責任者』のシノン、そして『最高財務責任者(CFO)兼・広報担当』のアーキヴァルという、総合ライフサポート企業『黄昏の守護者』の頼もしき役員たちが顔を揃えている。
「さて、みんな。北の大陸の観葉植物化(星喰の寄生樹王の除草)も終わって、世界中の空気がすっかり綺麗になったね。これも我が社の社会貢献の賜物だよ。……それで、次なる『困り事』の案件は何か入っているかな?」
アルドがニコッと微笑みかけると、CFO兼広報担当のアーキヴァルが、優雅な所作で立ち上がり、分厚いバインダーを開いた。
「はい、社長。我が社の次なるCSR活動として、今回は西方の大雪山脈における『異常気象と雪害』に関する、極めて深刻なご相談を受注いたしました」
アーキヴァルは、手元の書類を指先で弾きながら、冷徹かつ完璧なプレゼンテーションを開始する。
「西方の大雪山に、長年封印されていた『巨大な氷の化け物(絶対零度の氷将・グレイシャル・ロード)』が目覚めまして。周囲の気温を急激に下げ、猛烈な吹雪と大雪崩を引き起こしております。さらにタチの悪いことに、その化け物が生み出す『氷の眷属ども(※凍結の魔獣群)』が山を降り、周辺諸国の都市を完全に氷河で覆い尽くそうと暴れ回っているのです」
アーキヴァルの言葉の裏にある「真実」を、大公レオハルトと元・大賢者ゾルタンは顔面を蒼白にしながら補完していた。
(絶対零度の氷将だと……!? あれは世界の熱を奪い尽くし、星を永遠の死の冬に閉ざすために顕現した神話級の氷魔。それが覚醒したとなれば、西方諸国はおろか、大陸全体が分厚い氷の下に沈む。本来なら全国家の魔導士を総動員して極大の太陽熱結界を構築すべき、歴史的な絶望事態だぞ……!)
しかし、アーキヴァルは一切表情を変えず、アルド向けに完璧に翻訳された依頼書を読み上げる。
「近隣の国々からの要望は、この鬱陶しい雪と氷(氷の魔獣たち)の『徹底的な除雪(粉砕と無力化)』と『巨大な親玉(氷将)の霜取り』、そして『融雪と防寒対策の環境改善』です。このまま放置すれば、人々の家が雪に埋もれて潰れ、寒さで生活できなくなってしまいます。我が社の社会貢献活動として、これほど迅速な対応が求められる案件はないかと」
「なるほど!」
アルドは、依頼書を見て真剣な表情でポンッと手を叩いた。
「家の前に大雪が積もってて、しかも冷蔵庫の中に霜が張り付きすぎて冷えすぎちゃってる状態なんだね! おまけに雪崩が起きたら家が潰れちゃうし、ご近所の人たちが凍えちゃうのは大問題だ。美味しいご飯を温かいうちに食べるためにも、冷気の調節はしっかりやらないと。よーし、さっそく僕たちの『総合ライフサポート』の出番だ!」
アルドが立ち上がると、役職を得たクランメンバーたちも、一斉に気合い(殺意)に満ちた表情で立ち上がった。
「社長。街を埋め尽くす鬱陶しい雪塊(氷の魔獣ども)の解体と撤去は、この『出張解体アシスタント』にお任せを。氷の欠片一つ残さず綺麗に砕いて、ただのかき氷以下の仕事にしてご覧に入れましょう」
レイヴンが、神具の斧を肩に担ぎながら不敵に笑う。
「ええ。魔獣が撒き散らすガンコな霜や吹雪(※致死の絶対零度と氷河領域)は、『特殊クリーニング部門』の私が、特製の融雪剤(※極大の太陽熱浄化魔法)で一瞬にして中和・溶かして差し上げますわ」
エルミナが、美しく銀髪を揺らしながら自信満々に頷く。
「……作業中、雪崩(※魔獣の残党)が他の国へ流れ込まないよう、『総合防犯システム責任者』として、現場の周囲に完璧な防雪ネット(※絶対封殺の熱壁結界)を張り巡らせておきます」
シノンが、音もなく短剣を弄びながら冷たく宣言する。
「うんうん、みんな本当に頼もしいな! 雪かき作業は体が冷えるし危険だから、しっかり防雪ネットを張ってくれると助かるよ!」
アルドは、メンバーたちの頼もしい言葉に満足げに頷き、自身の作業着(絶対零度と呪いを完全に無効化する特製極暖ダウンとゴーグル)に着替え、手には巨大なスコップを握りしめた。
「よーし! それじゃあ僕は、特製『事象雪かきの魔導スコップ』と『絶対融解の神仙霜取りスプレー』を持っていくよ! 西方の人たちの生活を守るために、邪魔な雪をかき出して、冷蔵庫をピカピカにリフォームしてこよう!」
こうして、総合ライフサポート企業『黄昏の守護者』の社員一同は、寒冷地仕様(チェーン付き)に改造された魔導軽トラに乗り込み、西方の凍てつく大雪山脈へと向けて出勤したのである。
***
その頃、西方の大雪山の山頂。
星の熱を奪い尽くし、周囲の空間を凍結させる大地の悪夢『絶対零度の氷将・グレイシャル・ロード』が、極寒の吹雪を纏いながら、傲慢な氷の軋む音を響かせていた。
「ピキィィィィン……! 素晴らしいぞ! この星の熱を奪う吹雪さえあれば、地上の生命など一瞬で氷像と化す! 見よ、我が生み出したこの圧倒的な凍結の軍勢を!」
氷将は、氷塊から溢れ出す無数の氷の魔獣たちに号令をかけた。
「愚かな地上の生命どもめ。我が目覚めたからには、もはやこの星に温もりはないと知れ! さあ、もっとだ! 吹雪を巻き起こし、大陸全土を永遠の氷河期に変えよ!」
「ガウウゥゥゥッ!!」
雪原から這い出した数万の氷の魔獣たちが、主の言葉に呼応して悍ましい咆哮を上げる。
「我ら氷魔の一族の凍結力は絶対だ! この絶対零度の領域まで踏み込める者など、この世界にはもはや存在し――」
――キキィィィィッ!! バタンッ!
氷将が勝利の宣言を口にしようとしたその瞬間、凍りついた雪山のど真ん中に、四つの車輪がついた奇妙な小型の鉄箱(魔導軽トラ)が、猛吹雪をものともせずにドリフト着陸する音が響き渡った。
そして、軽トラのドアが「ガラッ」と無遠慮に開け放たれ、巨大な雪かきスコップとスプレーを持った青年の明るい声が、氷の森の静寂を完全に打ち破ったのである。
「ちわーっす! 総合ライフサポート企業『黄昏の守護者』です! 近隣の国の方々からご依頼いただいた家の前の雪かきと霜取りに伺いましたー! ……うわぁ、こりゃひどい雪の積もりっぷりと、カチカチの霜だね!」
アルドは、ゴーグル越しにプロの除雪業者としてのダメ出しを開始した。
「ナ、何奴ッ!? 我ガ絶対凍結ノ領域ニ、地上ノ虫ケラガ何ノ用ダ!」
氷将が驚愕の声を上げる中、アルドの後ろから、レイヴン、エルミナ、シノン、そしてアーキヴァルが、それぞれの「清掃用具(兵器)」を手にして、圧倒的な威圧感を放ちながら雪原に降り立ったのである。
「さあ、社長。まずはこの鬱陶しい雪塊(氷の魔獣)どもから、綺麗に『砕いて』差し上げましょう」
レイヴンが神具の斧を構え、凶悪な笑みを浮かべる。
総合ライフサポート企業の次なる社会貢献(能動的な悪の粉砕)が、死の雪山で今まさに始まろうとしていた。
「ナ、ナンダ貴様ラハ!? 我ガ死ノ氷河ヲ『雪かき』ダト!? 舐メルナ地上ノウジ虫ドモッ! ヤレ、我ガ誇リ高キ氷魔ノ軍勢ヨ! 奴ラノ熱ヲ奪イ尽クシ、氷像ニ変エロ!」
氷将の怒号と共に、雪原を埋め尽くしていた無数の氷の魔獣たちが、一斉にアルドたちに向かって鋭い氷の牙を剥いて襲い掛かった。
「うわっ、この雪の塊、すっごく硬くてトゲトゲしてる! 足にぶつかったら怪我して危ないぞ!」
アルドは、迫り来る魔獣部隊を「長年の放置でカチカチに凍りついたタチの悪い雪塊」と完全に誤認し、雪かきスコップの柄を強く握りしめた。
「社長、ここは我々『社員』にお任せを。雪崩や冷気が他の場所に広がらないよう、まずは私が防雪ネットを設置します」
シノンが音もなく跳躍し、大雪山の周囲を囲むように、無数の札(神仙の熱壁結界符)を空中に投げ放った。
――ピィィィィンッ!
瞬間、山全体を覆うように、透明で絶対的な熱量を誇る『神仙の防雪結界』が展開された。これで、吹雪は一陣たりとも山の外へ逃げ出すことはできない。
「完璧なネットですわ、シノンさん。では、私は雪塊が撒き散らすガンコな冷気や氷結(致死の絶対零度と凍結魔力)を、特殊クリーニングで綺麗に融雪いたしますわ!」
エルミナが白銀の杖を天に掲げると、大宇宙の理を内包した『極大太陽熱浄化魔法』が、融雪剤のように周囲の氷の魔獣と吹雪を包み込んだ。
「ギャアアアアッ!?」
猛烈な冷気を纏っていた魔獣たちは、その浄化の熱を浴びた瞬間、身に纏っていた冷気ごと完全に無力化され、ただの溶けかけのシャーベットのようにベチャベチャに崩れ落ちていく。
「フンッ! 冷気を抜かれた雪塊など、ただの砕氷のマトだ! 私が綺麗に砕いてやろう!」
レイヴンが神具の斧を大上段に構え、シャーベット状になった魔獣の群れに向かって旋風のごとく突っ込む。
「砕氷粉砕斬ィィィッ!!」
放たれた一撃は、魔獣の硬い氷の骨格を「結晶の隙間」から完璧に見切り、まるでかき氷機にかけるかのように、シャリィィィン!と見事な細かい粉雪へと解体してしまった。
「ナ、何ィィィッ!? 我ガ無敵ノ氷魔ノ軍勢ガ、タダノ『砕氷』ト『融雪』ノ前ニ、一瞬デかき氷ニサレテイクゥゥッ!?」
氷将は、自らの精鋭部隊がものの数分で「綺麗なサラサラの粉雪」と「ただの水たまり」に変わってしまった光景に、驚愕のあまり氷の鎧を震わせた。
「よし、みんなのおかげで邪魔な雪の塊は片付いたね! あとは、あの一番冷気を撒き散らしてる『霜の親玉(氷将)』をスコップで剥がして、霜取りスプレーをかけるだけだ!」
アルドは、特製『事象雪かきの魔導スコップ』を構え、氷将の巨大な身体へと向けて突撃した。
――当然ながら、その素材は常軌を逸している。スコップの刃は神話の太陽神の盾をシャベル状に加工したものであり、大宇宙のいかなる呪いや絶対零度の装甲すらも、物理的に『すくい上げて放り投げる』だけで完璧に剥離する『究極の除雪ツール』である。
「オノレェェェッ! 舐メルナ人間! 我ガ本気、星ノ命ヲ凍ラセル『絶対零度ノ棺』デ、貴様ラゴト永久凍土ニ閉ジ込メテクレルワ!」
氷将が魔力を暴走させ、大地の底からアルドの体温すべてを奪い取るほどの超巨大な氷の結晶を無数に突き出してきた。
「うわっ! 霜の親玉が変な氷のトゲをいっぱい伸ばしてきた! でも、この特製スコップの前には、どんな分厚い霜も一発でペリッだ!」
アルドがスコップを根元に突き刺してテコの原理で抉り上げると、迫り来る致死の氷結晶は、神仙の刃に触れた瞬間に「パリンッ!」と情けない音を立てて、まるでただの薄氷のように綺麗に剥がれ落ちてしまった。
「バ、バカナァァァッ!? 我ガ最大奥義ノ氷柱ガ、タダノ雪かきスコップデ剥ガサレタダトォォォッ!?」
「よし、邪魔な霜は綺麗に剥がせたぞ! 最後に、この『絶対融解の神仙霜取りスプレー』をかけて……あ、そうだ。この霜の親玉、冷やす力はすごく強いから、ちょっと形を整えれば食材を新鮮に保ってくれる『巨大な冷蔵庫』にできそうだよ!」
アルドが霜取りスプレー(事象調律の浄化液)を氷将の全身にたっぷりと吹きかけ、スコップで四角く綺麗に形を整えると、大宇宙の法則が完全にひれ伏した。
暴走していた氷将の禍々しい凍結力は、瞬く間に漂白・調律されていく。
『ア……ァァ……。我ノ、世界ヲ永久凍土ニスルハズノ冷気ガ、マルデ都合ノイイ【食材ヲ鮮度抜群ニ保ツ為ノチルド室】ノヨウニ……!? イヤ、スプレーヲ浴ビル度ニ、我ガ氷ノ鎧ガ、異常ナマデニ心地ヨイ【絶対的ナ温度管理ト製氷機能ヲ備エタ大型冷蔵庫】ニ変換サレテイクゥゥゥッ! 私ノ存在ガ、世界ヲ絶望ノ冬ニ沈メルノデハナク、コウシテ大陸ニ永遠ノ保存食ト冷タイ飲ミ物ヲ提供スル「極上ノ全自動・神仙冷蔵庫」トシテ機能スルコトガ、コレホドマデニ満タサレルコトダッタトハ……!』
かつて世界を脅かした絶対零度の化身は、アルドの「除雪と霜取りスプレーの散布」によって完全に浄化され、書き換えられた。
万物を凍らせる禍々しい氷魔は、気がつけば「大地の熱を安全に吸収し、代わりに極上のチルド空間と純度100%の美味しい氷を24時間作り続ける、超高性能な『永久・神仙特大冷蔵庫兼・かき氷機(見た目は巨大で美しい四角いクリスタル)』」へと姿を変えていたのである。
「よしよし! 嫌な吹雪の被害は片付いて、すっごく立派で便利な冷蔵庫になったぞ! おまけに、これがあれば夏でも冷たいかき氷が食べ放題だね。これで西方の人たちも、冬の雪害に悩まされずに、一年中美味しい食料を保存できるよ!」
アルドがスコップを片付けて額の汗を拭うと、雪山を覆っていたドス黒い吹雪の雲は一瞬にして晴れ渡り、眼下の雪原には穏やかな日差しと、澄み切った空気が戻っていた。
***
数日後。西方大陸を統べる諸国の王室。
各国の王たちは、宰相からの報告書を見て震え上がっていた。
「ば、馬鹿な……。我が大陸を氷河期に沈めるはずだった絶対零度の氷将が、たった数時間で『完全除雪』され、あまつさえ氷将が『超巨大な全自動冷蔵・製氷インフラ』に転職して、大陸中の食料保存と冷暖房を完璧に管理しているだと……!?」
そこへ、冷徹な執事服に身を包んだアーキヴァルが、うやうやしく一礼して現れた。
「お初にお目にかかります、各国の国王陛下。総合ライフサポート企業『黄昏の守護者』の最高財務責任者、アーキヴァルでございます。この度は、我が社の『CSR活動(雪かきと冷蔵庫のメンテナンス業務)』をご利用いただき、誠にありがとうございます」
アーキヴァルは、分厚いバインダーから【完全なる雪害対策・冷蔵インフラ施設開発代金およびコンサルタント料の請求書】を取り出し、王たちの目の前にドンッと突きつけた。
「我が社の社長(アルド様)の理念により、今回は社会貢献として基本の除雪料金はサービスさせていただいております。……が、氷将の完全浄化、気候環境の再構築、そして『大陸全土に極上の保存環境を供給する巨大冷蔵庫の永続的な運用費』は、正当なビジネスとして請求させていただきます。お支払いは、各国の年間食料輸出収益の三割と、冷蔵インフラの独占管理権で手を打ちましょう」
アーキヴァルの冷たい宣告(合法的な超・搾取)と共に、王たちは完全に心をへし折られ、震える手で莫大な報酬の永続支払いにサインをするしかなかった。
***
日だまり郷の黄金の城塞。
静寂に包まれた書斎のデスクで、元・大賢者ゾルタンは、羽ペンをインク壺に浸し、新たな社史のページに文字を刻み込んでいた。
『〇月×日。西方大陸における雪かき、および霜取り作業完了。大陸を氷河期に沈める絶対零度の氷将(神話の厄災)を事象のスコップとスプレーで洗浄し、立派な特大冷蔵庫へと改修。雪害の排除を完了し、大陸全土の食料保存と生活環境の発展に多大な貢献を果たした。
……また、我が社のCFOの尽力により、西方諸国からは莫大な賠償金と、冷蔵・製氷インフラの独占管理権を合法的に譲り受けることに成功。これで我が社は、地下水脈、気象、海上物流、クリーンエネルギー、次元基盤、自然環境に続き、気候と食料保存の覇権すらも完全に掌握したことになる。
社長の「社会貢献」という名の大掃除は、もはや絶対零度の理すらも呑み込み、世界は究極の平穏(我が社による完全支配)へと向かっている。大賢者たるワシの知能をもってしても、この恐るべき企業の快進撃を止める術は、もはや存在しない。』
ゾルタンが深い溜息と共にペンを置くと、ドアの向こうから「今日のおやつは天界鮭の特製シチューと、新しく作ったかき氷機で作った極上フルーツかき氷だよー!」というアルドの無邪気な声が聞こえてきた。
最強の便利屋の「ただの雪かき」は、大陸凍結の危機をただの除雪と霜取りとして解決し、氷将の脅威を完全に終わらせただけでなく、世界に最高の冷蔵インフラを誕生させてしまった。
企業として躍進するクラン『黄昏の守護者』は、これより正式に気候管理の覇権をも握り、いかなる邪悪も日常の家事手伝いとして葬り去る、究極の平穏なる企業伝説をまた一つ、歴史(社史)に刻み込んだのであった。
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