第115話:ただの草刈りと、星喰の寄生樹の強制観葉植物化(総合ライフサポート企業のお庭手入れ)
第115話:ただの草刈りと、星喰の寄生樹の強制観葉植物化(総合ライフサポート企業のお庭手入れ)
黄金の城塞『日だまり郷』の朝は、大宇宙の理すらも平伏す圧倒的な平穏と、前世の記憶を強烈に刺激する香ばしい揚げ物の匂い、そして胃袋を鷲掴みにするような濃厚なポタージュの香りと共に幕を開ける。
今日のアルドは、朝からキッチンの巨大な揚げ鍋と特注のミキサーに向かい、見事な温度管理で『特製・天界牛の極厚ビーフカツレツと、世界樹の春キャベツの千切り、神仙玉ねぎの極上ポタージュ』を仕上げていた。
「よし! メインは、大精霊の牧草を食べて育った天界牛の極厚ヒレ肉だ。これを、幻獣の卵と神仙小麦、そして星屑の生パン粉で包み込み、極上の幻獣油で外はサクッと、中はレアに揚げ上げる! ナイフを入れた瞬間に溢れ出す肉汁がたまらないんだ。そして、付け合わせには世界樹の春キャベツを極限まで細かく千切りにしたシャキシャキのサラダ。さらに、神仙玉ねぎを飴色になるまで炒め、幻獣のミルクと合わせて裏ごしした、黄金色に輝く濃厚ポタージュ! 仕上げにパセリを散らして……熱々のうちに完成だ!」
アルドがエプロン姿で、黄金色に輝く衣を纏った巨大なビーフカツと、湯気を立てるポタージュをダイニングテーブルに運ぶと、その暴力的なまでの香ばしさに引き寄せられ、神竜ポチとモフモフの星狼シロがテーブルの下でちぎれんばかりに尻尾を振って待機していた。リビングのソファでは、特大モチモチクッションへと強制リメイクされた元・大宇宙の邪神が、ポカポカと温かいヒーター機能を放ちながら、平和なインテリアとしての職務を全うしている。
この極上カツレツ朝食、一口食べれば天界牛の極上の鉄分とアミノ酸が全身の魔力回路を限界突破させ、玉ねぎポタージュの圧倒的な血液浄化作用が血中のあらゆる疲労物質や呪いを瞬時にデトックスし、魂の底から尽きることのない多幸感と活力を湧き上がらせる『究極の超覚醒・スタミナフルコース』である。
「うむ……! この衣のサクサクとした神聖なる響きと、噛み締めた瞬間に口の中を満たす肉汁のビッグバン! そしてポタージュの圧倒的な甘みとコク! 見るだけで我が魔界の闘争本能が、休日の昼下がりに高級洋食店で舌鼓を打つ紳士のようにフニャフニャに溶かされそうになるわい!」
元・魔界大帝サタナスが、フォークとナイフを両手で震わせながら握りしめ、あまりの美味さにワナワナと肩を震わせて感涙に咽いでいた。
そんな賑やかなダイニングの喧騒が一段落し、食後の極上ハーブティーが振る舞われた後。
アルドは、防音・防諜の魔法結界が幾重にも張られたリビングの長テーブルの上座に座った。その周囲には、『出張解体アシスタント』のレイヴン、『特殊クリーニング部門責任者』のエルミナ、『総合防犯システム責任者』のシノン、そして『最高財務責任者(CFO)兼・広報担当』のアーキヴァルという、総合ライフサポート企業『黄昏の守護者』の頼もしき役員たちが顔を揃えている。
「さて、みんな。大陸の床下のルンバ化(次元魔蟲王の駆除)も終わって、世界中の建物の土台がすっかり安定したね。これも我が社の社会貢献の賜物だよ。……それで、次なる『困り事』の案件は何か入っているかな?」
アルドがニコッと微笑みかけると、CFO兼広報担当のアーキヴァルが、優雅な所作で立ち上がり、分厚いバインダーを開いた。
「はい、社長。我が社の次なるCSR活動として、今回は大陸北部に広がる『深刻な日照権侵害と花粉公害』に関する、極めて重大なご相談を受注いたしました」
アーキヴァルは、手元の書類を指先で弾きながら、冷徹かつ完璧なプレゼンテーションを開始する。
「大陸北部の広大な森林地帯に、長年封印されていた『巨大な毒草の化け物(星喰の寄生樹王・パラサイト・ユグドラシル)』が目覚めまして。強靭な根で他の植物から養分を吸い尽くし、異常な速度で繁殖しております。さらにタチの悪いことに、その化け物が生み出す『毒花粉(※精神を崩壊させる致死の呪粉)』が風に乗って近隣諸国に飛散し、住民たちに酷いアレルギー症状(※狂乱と魂の枯渇)を引き起こしているのです」
アーキヴァルの言葉の裏にある「真実」を、大公レオハルトと元・大賢者ゾルタンは顔面を蒼白にしながら補完していた。
(星喰の寄生樹王だと……!? あれは星の生命力そのものを吸い尽くし、世界を枯れ果てた死の星に変えるために顕現した神話級の植物魔獣。それが覚醒したとなれば、大陸の自然はおろか、あらゆる生命が花粉によって狂わされ、干からびて死に絶える。本来なら全国家の魔導士を総動員して大陸北部ごと焦土と化すしかない、歴史的な絶望事態だぞ……!)
しかし、アーキヴァルは一切表情を変えず、アルド向けに完璧に翻訳された依頼書を読み上げる。
「近隣の国々からの要望は、このタチの悪い雑草(寄生植物)の『徹底的な草刈り(伐採と無力化)』と『巨大な親玉(寄生樹王)の除草』、そして『花粉症対策の環境改善』です。このまま放置すれば、大陸中の緑が枯れ果て、人々が花粉症で外に出られなくなってしまいます。我が社の社会貢献活動として、これほど迅速な対応が求められる案件はないかと」
「なるほど!」
アルドは、依頼書を見て真剣な表情でポンッと手を叩いた。
「お庭の雑草が伸び放題で、他の綺麗なお花に迷惑をかけてるんだね! おまけに花粉症の原因になる毒花粉まで撒き散らしてるなんて、ご近所迷惑もいいところだ。美味しい空気と綺麗な景色を守るためにも、お庭の手入れはしっかりやらないと。よーし、さっそく僕たちの『総合ライフサポート』の出番だ!」
アルドが立ち上がると、役職を得たクランメンバーたちも、一斉に気合い(殺意)に満ちた表情で立ち上がった。
「社長。森を埋め尽くす鬱陶しい雑草(魔植物ども)の解体と撤去は、この『出張解体アシスタント』にお任せを。根っこ一本残さず綺麗に刈り取って、ただの堆肥以下の仕事にしてご覧に入れましょう」
レイヴンが、神具の斧を肩に担ぎながら不敵に笑う。
「ええ。雑草が撒き散らすガンコな毒花粉や瘴気(※致死の呪粉と枯渇領域)は、『特殊クリーニング部門』の私が、特製の空気清浄スプレー(※極大の浄化焼却魔法)で一瞬にして中和・洗浄して差し上げますわ」
エルミナが、美しく銀髪を揺らしながら自信満々に頷く。
「……作業中、花粉や雑草の種(※魔植物の胞子)が他の国へ飛散しないよう、『総合防犯システム責任者』として、現場の周囲に完璧な防粉塵シート(※絶対封殺の防風結界)を張り巡らせておきます」
シノンが、音もなく短剣を弄びながら冷たく宣言する。
「うんうん、みんな本当に頼もしいな! 花粉対策の作業は飛散を防ぐことが大事だから、しっかり防粉塵シートを張ってくれると助かるよ!」
アルドは、メンバーたちの頼もしい言葉に満足げに頷き、自身の作業着(毒花粉と呪いを完全に無効化する特製サロペットとゴーグル、マスク)に着替え、手にはエンジン式の巨大な草刈り機を握りしめた。
「よーし! それじゃあ僕は、特製『事象刈り取りの魔導草刈り機』と『絶対枯死の神仙除草剤』を持っていくよ! 大陸の自然を守るために、お庭の雑草を退治して、ピカピカのグリーンガーデンにリフォームしてこよう!」
こうして、総合ライフサポート企業『黄昏の守護者』の社員一同は、悪路走破仕様に改造された魔導軽トラに乗り込み、大陸北部の緑を蝕む死の森林地帯へと向けて出勤したのである。
***
その頃、大陸北部の森林地帯の中心。
星の生命力を吸い上げ、空を覆い隠すほどに巨大化した大地の悪夢『星喰の寄生樹王』が、周囲の植物を枯死させながら、傲慢な葉擦れの音を響かせていた。
「シャシャシャシャ……! 素晴らしいぞ! この星の生命力を吸い尽くす根さえあれば、地上の生命など一瞬で干からびる! 見よ、我が生み出したこの圧倒的な毒花粉の嵐を!」
星喰の寄生樹王は、枝葉から溢れ出す無数の精神崩壊の呪粉を風に乗せながら、配下の魔植物たちに号令をかけた。
「愚かな地上の生命どもめ。我が目覚めたからには、もはやこの星に緑の楽園はないと知れ! さあ、もっとだ! 根を張り巡らせ、大陸全土を死の砂漠に変えよ!」
「ギュルルルッ!!」
大地から這い出した数万の魔植物たちが、主の言葉に呼応して悍ましい蠢きを見せる。
「我ら星喰の一族の吸動力は絶対だ! この毒花粉の領域まで踏み込める者など、この世界にはもはや存在し――」
――キキィィィィッ!! バタンッ!
寄生樹王が勝利の宣言を口にしようとしたその瞬間、枯れ果てた森のど真ん中に、四つの車輪がついた奇妙な小型の鉄箱(魔導軽トラ)が、毒花粉の嵐をものともせずにドリフト着陸する音が響き渡った。
そして、軽トラのドアが「ガラッ」と無遠慮に開け放たれ、草刈り機と除草剤のタンクを持った青年の明るい声が、死の森の静寂を完全に打ち破ったのである。
「ちわーっす! 総合ライフサポート企業『黄昏の守護者』です! 近隣の国の方々からご依頼いただいたお庭の草刈りと花粉症対策に伺いましたー! ……うわぁ、こりゃひどい雑草の伸びっぷりと、息が詰まるような花粉の量だね!」
アルドは、ゴーグル越しにプロの庭師としてのダメ出しを開始した。
「ナ、何奴ッ!? 我ガ絶対枯渇ノ領域ニ、地上ノ虫ケラガ何ノ用ダ!」
星喰の寄生樹王が驚愕の葉擦れを鳴らす中、アルドの後ろから、レイヴン、エルミナ、シノン、そしてアーキヴァルが、それぞれの「清掃用具(兵器)」を手にして、圧倒的な威圧感を放ちながら枯れ地に降り立ったのである。
「さあ、社長。まずはこの鬱陶しい雑草(魔植物)どもから、綺麗に『刈り取って』差し上げましょう」
レイヴンが神具の斧を構え、凶悪な笑みを浮かべる。
総合ライフサポート企業の次なる社会貢献(能動的な悪の粉砕)が、死の森林地帯で今まさに始まろうとしていた。
「ナ、ナンダ貴様ラハ!? 我ガ死ノ森ヲ『お庭』ダト!? 舐メルナ地上ノウジ虫ドモッ! ヤレ、我ガ誇リ高キ魔植物ノ軍勢ヨ! 奴ラノ養分ヲ吸イ尽クシ、ミイラニ変エロ!」
寄生樹王の怒号と共に、森を埋め尽くしていた無数の魔植物たちが、一斉にアルドたちに向かって触手やツルを伸ばして襲い掛かった。
「うわっ、この雑草、すっごく長くてトゲトゲしてる! 足に絡まったら転んで危ないぞ!」
アルドは、迫り来る魔植物部隊を「長年の放置で異常成長したタチの悪いツル草」と完全に誤認し、草刈り機のエンジンをブルンッと吹かした。
「社長、ここは我々『社員』にお任せを。花粉や種が他の場所に飛ばないよう、まずは私が防粉塵シートを設置します」
シノンが音もなく跳躍し、森林地帯の周囲を囲むように、無数の札(神仙の防風結界符)を空中に投げ放った。
――ピィィィィンッ!
瞬間、森全体を覆うように、透明で絶対的な強度を誇る『神仙の防粉塵結界』が展開された。これで、毒花粉は一粒たりとも森の外へ逃げ出すことはできない。
「完璧なシートですわ、シノンさん。では、私は雑草が撒き散らすガンコな花粉や瘴気(致死の呪粉と枯渇魔力)を、特殊クリーニングで綺麗に洗浄いたしますわ!」
エルミナが白銀の杖を天に掲げると、大宇宙の理を内包した『極大浄化焼却魔法』が、空気清浄スプレーのように周囲の魔植物と花粉を包み込んだ。
「ギャアアアアッ!?」
猛毒を纏っていた魔植物たちは、その浄化の炎を浴びた瞬間、身に纏っていた毒素ごと完全に無力化され、ただの干からびた枯れ草のようにカサカサに崩れ落ちていく。
「フンッ! 毒を抜かれた雑草など、ただの草刈りのマトだ! 私が綺麗に刻んでやろう!」
レイヴンが神具の斧を大上段に構え、カサカサになった魔植物の群れに向かって旋風のごとく突っ込む。
「雑草粉砕斬ィィィッ!!」
放たれた一撃は、魔植物の硬いツルを「繊維の隙間」から完璧に見切り、まるで芝刈り機をかけるかのように、シャリィィィン!と見事な細かい草のチップへと解体してしまった。
「ナ、何ィィィッ!? 我ガ無敵ノ魔植物ノ軍勢ガ、タダノ『草刈リ』ト『空気清浄』ノ前ニ、一瞬デ堆肥ニサレテイクゥゥッ!?」
寄生樹王は、自らの精鋭部隊がものの数分で「綺麗な庭のチップ」と「ただの堆肥」に変わってしまった光景に、驚愕のあまり幹を震わせた。
「よし、みんなのおかげで邪魔な雑草は片付いたね! あとは、あの一番花粉を撒き散らしてる『親玉の雑草(寄生樹王)』を刈り取って、除草剤を撒くだけだ!」
アルドは、特製『事象刈り取りの魔導草刈り機』のアクセルを全開にし、寄生樹王の巨大な幹へと向けて突撃した。
――当然ながら、その素材は常軌を逸している。草刈り機の刃は神話の戦神の剣を円盤状に加工したものであり、大宇宙のいかなる呪いや強固な装甲すらも、物理的に『回転して刈り取る』だけで完璧に切断する『究極の草刈りツール』である。
「オノレェェェッ! 舐メルナ人間! 我ガ本気、星ノ命ヲ枯ラス『絶望ノ吸根』デ、貴様ラゴト生命力ヲ吸イ尽クシテクレルワ!」
寄生樹王が根を暴走させ、大地の底からアルドの魔力すべてを奪い取るほどの超巨大な触手を無数に突き出してきた。
「うわっ! 親玉の雑草が変な根っこをいっぱい伸ばしてきた! でも、この特製草刈り機の前には、どんな太い根っこも一発でウィィィンだ!」
アルドが草刈り機を左右に振り回すと、迫り来る致死の触手は、神仙の刃に触れた瞬間に「スパスパスパッ!」と情けない音を立てて、まるでただの芝生のように綺麗に刈り揃えられてしまった。
「バ、バカナァァァッ!? 我ガ最大奥義ノ触手ガ、タダノ草刈リ機デ散髪サレタダトォォォッ!?」
「よし、邪魔な枝と根っこは綺麗に刈り取れたぞ! 最後に、この『絶対枯死の神仙除草剤』を根元に撒いて……あ、そうだ。この親玉の雑草、根っこはすごく元気だから、ちょっと形を整えればお部屋の空気を綺麗にしてくれる『巨大な観葉植物』にできそうだよ!」
アルドがオーガニック除草剤(事象調律の栄養剤)を寄生樹王の根元にたっぷりと注ぎ込み、ハサミで樹形を丸く可愛らしく刈り揃えると、大宇宙の法則が完全にひれ伏した。
暴走していた寄生植物の禍々しい吸動力は、瞬く間に漂白・調律されていく。
『ア……ァァ……。我ノ、世界ヲ干カラビサセルハズノ根ガ、マルデ都合ノイイ【空気中ノ汚レヲ吸イ込ム為ノフィルター】ノヨウニ……!? イヤ、除草剤ヲ浴ビル度ニ、我ガ葉ノ一枚一枚ガ、異常ナマデニ心地ヨイ【絶対的ナマイナスイオント芳香ヲ放ツアロマディフューザー】ニ変換サレテイクゥゥゥッ! 私ノ存在ガ、世界ヲ絶望ニ沈メルノデハナク、コウシテ大陸ニ永遠ノ清浄ナル空気ヲ提供スル「極上ノ全自動・神仙観葉植物」トシテ機能スルコトガ、コレホドマデニ満タサレルコトダッタトハ……!』
かつて世界を脅かした星喰の化身は、アルドの「草刈りとオーガニック除草剤の散布」によって完全に浄化され、書き換えられた。
万物を枯死させる禍々しい寄生樹は、気がつけば「大地の不純物を安全に吸収し、代わりに極上のマイナスイオンと万病を癒やすフローラルな香りを24時間放ち続ける、超高性能な『永久・神仙エコ観葉植物(見た目は巨大で美しい丸みを帯びたトピアリー)』」へと姿を変えていたのである。
「よしよし! 嫌な毒花粉の被害は片付いて、すっごく立派でいい匂いのする観葉植物になったぞ! おまけに、これが森の空気を綺麗にしてくれるからアレルギー対策もバッチリだね。これで大陸の人たちも、春先でも安心してお散歩できるよ!」
アルドが草刈り機のエンジンを切って額の汗を拭うと、森林地帯を覆っていたドス黒い花粉の雲は一瞬にして晴れ渡り、眼下の森には澄み切った空気と美しい緑の輝きが戻っていた。
***
数日後。大陸北部を統べる諸国の王室。
各国の王たちは、宰相からの報告書を見て震え上がっていた。
「ば、馬鹿な……。我が大陸の自然を枯らし尽くすはずだった星喰の寄生樹王が、たった数時間で『完全除草』され、あまつさえ寄生樹王が『超巨大な全自動空気清浄・観葉植物』に転職して、大陸中の空気を極上のアロマ空間に変えているだと……!?」
そこへ、冷徹な執事服に身を包んだアーキヴァルが、うやうやしく一礼して現れた。
「お初にお目にかかります、各国の国王陛下。総合ライフサポート企業『黄昏の守護者』の最高財務責任者、アーキヴァルでございます。この度は、我が社の『CSR活動(お庭の草刈りと花粉対策業務)』をご利用いただき、誠にありがとうございます」
アーキヴァルは、分厚いバインダーから【完全なる森林保全・空気清浄施設開発代金およびコンサルタント料の請求書】を取り出し、王たちの目の前にドンッと突きつけた。
「我が社の社長(アルド様)の理念により、今回は社会貢献として基本の草刈り料金はサービスさせていただいております。……が、寄生樹王の完全浄化、自然環境の再構築、そして『大陸全土に極上の空気を供給する巨大観葉植物の永続的な運用費』は、正当なビジネスとして請求させていただきます。お支払いは、各国の年間林業・医療収益の三割と、森林資源の独占管理権で手を打ちましょう」
アーキヴァルの冷たい宣告(合法的な超・搾取)と共に、王たちは完全に心をへし折られ、震える手で莫大な報酬の永続支払いにサインをするしかなかった。
***
日だまり郷の黄金の城塞。
静寂に包まれた書斎のデスクで、元・大賢者ゾルタンは、羽ペンをインク壺に浸し、新たな社史のページに文字を刻み込んでいた。
『〇月×日。大陸北部における雑草の草刈り、および花粉対策完了。大陸を枯死させる星喰の寄生樹王(神話の厄災)を事象の草刈り機と除草剤で洗浄し、立派な特大観葉植物へと改修。大気の浄化を完了し、大陸全土の自然保全と公衆衛生の発展に多大な貢献を果たした。
……また、我が社のCFOの尽力により、北部諸国からは莫大な賠償金と、森林資源の独占管理権を合法的に譲り受けることに成功。これで我が社は、地下水脈、気象、海上物流、クリーンエネルギー、次元基盤に続き、自然環境と大気の覇権すらも完全に掌握したことになる。
社長の「社会貢献」という名の大掃除は、もはや生命の理すらも呑み込み、世界は究極の平穏(我が社による完全支配)へと向かっている。大賢者たるワシの知能をもってしても、この恐るべき企業の快進撃を止める術は、もはや存在しない。』
ゾルタンが深い溜息と共にペンを置くと、ドアの向こうから「今日のおやつは天界牛のビーフカツサンドだよー!」というアルドの無邪気な声が聞こえてきた。
最強の便利屋の「ただの草刈り」は、大陸枯死の危機をただの庭手入れとして解決し、寄生樹王の脅威を完全に終わらせただけでなく、世界に最高の空気清浄インフラを誕生させてしまった。
企業として躍進するクラン『黄昏の守護者』は、これより正式に自然環境の覇権をも握り、いかなる邪悪も日常のガーデニング業務として葬り去る、究極の平穏なる企業伝説をまた一つ、歴史(社史)に刻み込んだのであった。
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