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辺境暮らしの便利屋冒険者、伝説のクランのリーダーに祭り上げられる 〜本人曰く「ただの日常」らしいです〜  作者: 盆ちゃん


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第114話:ただの床下換気と、次元魔蟲王の強制ルンバ化(総合ライフサポート企業のシロアリ駆除)

### 第114話:ただの床下換気と、次元魔蟲王の強制ルンバ化(総合ライフサポート企業のシロアリ駆除)


 黄金の城塞『日だまり郷』の朝は、大宇宙の理すらも平伏す圧倒的な平穏と、魂を根底から揺さぶるような極上の甘味と香ばしさの入り混じった匂いと共に幕を開ける。

 今日のアルドは、朝からキッチンの特注オーブンと巨大な銅鍋に向かい、見事な温度管理で『特製・天界リンゴの極厚アップルパイと、世界樹の果実の特濃キャラメルラテ』を仕上げていた。


「よし! メインは、大精霊の果樹園で採れた天界リンゴを、幻獣のバターでじっくりとソテーして甘みを限界まで引き出し、神仙小麦のパイ生地で包み込んで焼き上げた特大のアップルパイだ。サクサクの生地の中に、とろけるようなリンゴの果肉とシナモンの香りがギッシリ詰まっているよ。そして、世界樹の果実から抽出したエキスをベースにした、黄金色に輝くキャラメルラテ! 仕上げに星屑のナッツを散らして……熱々のうちに完成だ!」

 アルドがエプロン姿で、黄金色に輝き、香ばしい匂いを暴力的なまでに放つ巨大なアップルパイとラテをダイニングテーブルに運ぶと、神竜ポチとモフモフの星狼シロがテーブルの下でちぎれんばかりに尻尾を振って待機していた。リビングのソファでは、特大モチモチクッションへと強制リメイクされた元・大宇宙の邪神ゼロ・アポカリプスが、ポカポカと温かいヒーター機能を放ちながら、平和なインテリアとしての職務を微動だにせず全うしている。

 この極上スイーツ朝食、一口食べれば天界リンゴの極上のビタミンが全身の魔力回路を限界突破させ、キャラメルラテの圧倒的な糖分が血中のあらゆる疲労物質や呪いを瞬時にデトックスし、魂の底から尽きることのない多幸感と活力を湧き上がらせる『究極の超覚醒・癒やしフルコース』である。


「うむ……! このパイ生地のサクサクとした神聖なる響きと、噛み締めた瞬間に口の中を満たすリンゴとシナモンのビッグバン! そしてラテの圧倒的なコクと深み! 見るだけで我が魔界の闘争本能が、休日の昼下がりに読書を楽しむ貴族の令嬢のようにフニャフニャに溶かされそうになるわい!」

 元・魔界大帝サタナスが、パイのピースを両手で震わせながら握りしめ、あまりの美味さにワナワナと肩を震わせて感涙に咽いでいた。


 そんな賑やかなダイニングの喧騒が一段落し、食後の極上ハーブティーが振る舞われた後。

 アルドは、防音・防諜の魔法結界が幾重にも張られたリビングの長テーブルの上座に座った。その周囲には、『出張解体アシスタント』のレイヴン、『特殊クリーニング部門責任者』のエルミナ、『総合防犯システム責任者』のシノン、そして『最高財務責任者(CFO)兼・広報担当』のアーキヴァルという、総合ライフサポート企業『黄昏の守護者』の頼もしき役員たちが顔を揃えている。


「さて、みんな。南の大火山のピザ窯化も終わって、世界中のクリーンエネルギーがすっかり安定したね。これも我が社の社会貢献の賜物だよ。……それで、次なる『困り事』の案件は何か入っているかな?」

 アルドがニコッと微笑みかけると、CFO兼広報担当のアーキヴァルが、優雅な所作で立ち上がり、分厚いバインダーを開いた。


「はい、社長。我が社の次なるCSR活動として、今回は大陸の地下深く……正確には『次元の基盤』を蝕む、極めて深刻なご相談を受注いたしました」

 アーキヴァルは、手元の書類を指先で弾きながら、冷徹かつ完璧なプレゼンテーションを開始する。

「世界を支える大地の底、次元の狭間に、長年封印されていた『巨大な虫の化け物(次元魔蟲王・アビス・クロウラー)』が目覚めまして。強靭な顎で空間の基盤を食い荒らし、周囲の次元を穴だらけにしております。さらにタチの悪いことに、その化け物が生み出す『眷属の蟲ども(※空間を喰らう魔蟲群)』が地上へと這い出し、家屋や城の土台を内側から崩壊させようと暴れ回っているのです」


 アーキヴァルの言葉の裏にある「真実」を、大公レオハルトと元・大賢者ゾルタンは顔面を蒼白にしながら補完していた。

(次元魔蟲王だと……!? あれは世界の基盤そのものを食い破り、次元を崩壊させるために顕現した神話級の厄災。それが覚醒したとなれば、大陸はおろか、世界そのものが虚無の空間へと崩れ落ちる。本来なら全国家の魔導士を総動員して次元封鎖の大結界を構築すべき、歴史的な絶望事態だぞ……!)


 しかし、アーキヴァルは一切表情を変えず、アルド向けに完璧に翻訳カスタマイズされた依頼書を読み上げる。

「近隣の国々からの要望は、この害虫たち(空間の魔蟲)の『徹底的な駆除(無力化)』と『巨大な親玉(次元魔蟲王)の退治』、そして『床下の環境改善』です。このまま放置すれば、大陸中の建物がシロアリ被害のように崩れ落ちてしまいます。我が社の社会貢献活動として、これほど迅速な対応が求められる案件はないかと」


「なるほど!」

 アルドは、依頼書を見て真剣な表情でポンッと手を叩いた。

「家の下にある基礎の木材がシロアリに食われたら、どんなに立派なお城でも倒れちゃうんだよね! おまけに親玉が床下に居座ってるなんて、湿気が溜まってカビも生えちゃうから大問題だ。美味しいご飯を安心して食べるためにも、家の土台はしっかり守らないと。よーし、さっそく僕たちの『総合ライフサポート』の出番だ!」


 アルドが立ち上がると、役職を得たクランメンバーたちも、一斉に気合い(殺意)に満ちた表情で立ち上がった。


「社長。床下から這い出してくる鬱陶しいシロアリ(魔蟲ども)の解体と撤去は、この『出張解体アシスタント』にお任せを。触角の一本、羽の一枚残さず綺麗にバラして、ただのゴミ以下の仕事にしてご覧に入れましょう」

 レイヴンが、神具の斧を肩に担ぎながら不敵に笑う。

「ええ。害虫が撒き散らすガンコな粘液や空間の歪み(※致死の毒液と次元の裂け目)は、『特殊クリーニング部門』の私が、特製の殺虫スプレー(※極大の絶対消滅魔法)で一瞬にして中和・洗浄して差し上げますわ」

 エルミナが、美しく銀髪を揺らしながら自信満々に頷く。

「……作業中、害虫(※魔蟲の残党)が他の家屋へ逃げ込まないよう、『総合防犯システム責任者』として、現場の周囲に完璧な防虫シート(※絶対封殺の空間結界)を張り巡らせておきます」

 シノンが、音もなく短剣を弄びながら冷たく宣言する。


「うんうん、みんな本当に頼もしいな! 害虫駆除の作業は逃がさないことが大事だから、しっかり防虫シートを張ってくれると助かるよ!」

 アルドは、メンバーたちの頼もしい言葉に満足げに頷き、自身の作業着(空間の崩壊と猛毒を完全に無効化する特製ツナギと防毒マスク)に着替え、手には大きな燻煙剤のような缶を握りしめた。

「よーし! それじゃあ僕は、特製『絶対駆除の神仙バルサン(事象燻煙剤)』と『事象換気の床下ファン』を持っていくよ! 大陸の建物を守るために、床下のシロアリを退治して、ピカピカの健康住宅にリフォームしてこよう!」


 こうして、総合ライフサポート企業『黄昏の守護者』の社員一同は、次元潜行仕様に改造された魔導軽トラに乗り込み、大陸の土台を蝕む次元の狭間へと向けて出勤したのである。


 ***


 その頃、大陸の地下深く、次元の狭間に広がる巨大な空洞。

 空間の基盤を食い破る大地の悪夢『次元魔蟲王』が、周囲の次元を歪ませるほどの超振動を放ちながら、傲慢な羽音を上げていた。


「ギギギギギ……! 素晴らしいぞ! この次元を食い破る顎さえあれば、地上の生命など一瞬で虚無へと落ちる! 見よ、我が生み出したこの圧倒的な魔蟲の軍勢を!」

 次元魔蟲王は、空洞から溢れ出す無数の空間喰らいの魔蟲たちに号令をかけた。

「愚かな地上の生命どもめ。我が目覚めたからには、もはやこの星に安息の土台はないと知れ! さあ、もっとだ! 次元の壁を食い破り、大陸全土を絶望の穴に落とせ!」


「ギィィィィッ!!」

 次元の狭間から這い出した数万の魔蟲たちが、主の言葉に呼応して鼓膜を裂くような羽音を上げる。


「我ら次元魔蟲の顎は絶対だ! この虚無の領域まで踏み込める者など、この世界にはもはや存在し――」


 ――キキィィィィッ!! バタンッ!


 次元魔蟲王が勝利の宣言を口にしようとしたその瞬間、次元の狭間のど真ん中に、四つの車輪がついた奇妙な小型の鉄箱(魔導軽トラ)が、空間の歪みをものともせずにドリフト着陸する音が響き渡った。

 そして、軽トラのドアが「ガラッ」と無遠慮に開け放たれ、燻煙剤の缶と換気ファンを持った青年の明るい声が、次元の静寂を完全に打ち破ったのである。


「ちわーっす! 総合ライフサポート企業『黄昏の守護者』です! 近隣の方々からご依頼いただいた床下のメンテナンスとシロアリ駆除に伺いましたー! ……うわぁ、こりゃひどい食害と、湿気に満ちた嫌な空気(次元の歪み)だね!」

 アルドは、首に巻いたタオルで汗を拭いながら、プロの駆除業者としてのダメ出しを開始した。


「ナ、何奴ッ!? 我ガ絶対虚無ノ領域ニ、地上ノ虫ケラガ何ノ用ダ!」

 次元魔蟲王が驚愕の声を上げる中、アルドの後ろから、レイヴン、エルミナ、シノン、そしてアーキヴァルが、それぞれの「清掃用具(兵器)」を手にして、圧倒的な威圧感を放ちながら次元の土台へと降り立ったのである。


「さあ、社長。まずはこの鬱陶しいシロアリ(魔蟲)どもから、綺麗に『解体』して差し上げましょう」

 レイヴンが神具の斧を構え、凶悪な笑みを浮かべる。

 総合ライフサポート企業の次なる社会貢献(能動的な悪の粉砕)が、次元の狭間で今まさに始まろうとしていた。


「ナ、ナンダ貴様ラハ!? 我ガ次元ノ狭間ヲ『床下』ダト!? 舐メルナ地上ノウジ虫ドモッ! ヤレ、我ガ誇リ高キ魔蟲ノ軍勢ヨ! 奴ラヲ食イ破リ、虚無ニ変エロ!」

 次元魔蟲王の怒号と共に、空洞を埋め尽くしていた無数の魔蟲たちが、一斉にアルドたちに向かって襲い掛かった。


「うわっ、このシロアリ、すっごく大きくて危ない! 家の柱に燃え移ったら大惨事だ!」

 アルドは、迫り来る魔物部隊を「長年の湿気で巨大化したタチの悪いシロアリ」と完全に誤認し、燻煙剤のスイッチに指をかけた。


「社長、ここは我々『社員』にお任せを。シロアリが他の場所に逃げないよう、まずは私が防虫シートを設置します」

 シノンが音もなく跳躍し、次元の空洞の周囲を囲むように、無数の札(神仙の空間結界符)を空中に投げ放った。

 ――ピィィィィンッ!

 瞬間、空洞全体を覆うように、透明で絶対的な強度を誇る『神仙の防虫結界』が展開された。これで、魔蟲は一匹たりとも次元の外へ逃げ出すことはできない。


「完璧なシートですわ、シノンさん。では、私はシロアリが撒き散らすガンコな粘液や空間の歪み(致死の猛毒と虚無)を、特殊クリーニングで綺麗に洗浄いたしますわ!」

 エルミナが白銀の杖を天に掲げると、大宇宙の理を内包した『極大絶対消滅魔法』が、殺虫スプレーのように周囲の魔蟲と次元の歪みを包み込んだ。

「ギャアアアアッ!?」

 猛毒を纏っていた魔蟲たちは、その浄化の光を浴びた瞬間、身に纏っていた毒素ごと完全に無力化され、ただの干からびた虫の抜け殻のようにカサカサに崩れ落ちていく。


「フンッ! 毒を抜かれた虫ケラなど、ただの解体ショーのマトだ! 私が綺麗に砕いてやろう!」

 レイヴンが神具の斧を大上段に構え、カサカサになった魔蟲の群れに向かって旋風のごとく突っ込む。

「害虫粉砕斬ィィィッ!!」

 放たれた一撃は、魔蟲の硬い甲殻を「関節の結合の隙間」から完璧に見切り、まるで落ち葉を踏み砕くかのように、シャリィィィン!と見事な細かい塵へと解体してしまった。


「ナ、何ィィィッ!? 我ガ無敵ノ魔蟲ノ軍勢ガ、タダノ『駆除』ト『踏ミ潰シ』ノ前ニ、一瞬デ塵ニサレテイクゥゥッ!?」

 次元魔蟲王は、自らの精鋭部隊がものの数分で「綺麗な床下の塵」と「ただのゴミ」に変わってしまった光景に、驚愕のあまり触角を震わせた。


「よし、みんなのおかげで子分のシロアリは片付いたね! あとは、あの一番ギトギトに粘液がこびりついた『親玉のシロアリ(次元魔蟲王)』の息の根を止めて、床下換気扇を回すだけだ!」

 アルドは、特製『絶対駆除の神仙バルサン』のピンを抜き、次元魔蟲王の巨大な顔面へと向けて転がした。

 ――当然ながら、その素材は常軌を逸している。燻煙剤は星の核から抽出された純粋な浄化煙であり、大宇宙のいかなる呪いや次元の歪みすらも、物理的に『煙でいぶす』だけで完璧に無害化する『究極の害虫駆除剤』である。


「オノレェェェッ! 舐メルナ人間! 我ガ本気、次元ヲ食イ破ル『虚無ノ大顎ヴォイド・ジョー』デ、貴様ラゴト空間ヲ食イ千切ッテクレルワ!」

 次元魔蟲王が空間を暴走させ、空洞の底から地上すべてを虚無に落とすほどの超巨大な破壊エネルギーを顎に充填し始めた。


「うわっ! 親玉のシロアリが急に暴れ出した! でも、この特製燻煙剤の前には、どんなガンコな害虫も一発でノックアウトだ!」

 アルドが転がした缶から、神仙の煙が容赦なくモックモクと噴き出した。


 ――プシューーーッ!!


 大陸を滅ぼすはずの次元の悪夢は、アルドの「床下のガンコな害虫を退治したい」という圧倒的で暴力的なまでの意思の前に、物理的に「キュウウッ」と情けない音を立てて、まるでただの煙にむせる虫のように、一瞬にして毒素を奪われ無害な存在へと分解されてしまったのである。


「バ、バカナァァァッ!? 我ガ最大奥義ガ、タダノ駆除用ノ煙デ無効化サレタダトォォォッ!?」


「よし、シロアリの親玉はすっかり大人しくなったぞ! 最後に、この『事象換気の床下ファン』を設置して……あ、そうだ。この親玉のシロアリ、よく見ると丸くて平べったい形をしてるね。ちょっと手を加えれば、床下を自動で綺麗にしてくれる『お掃除ロボット』にできそうだよ!」

 アルドが魔蟲王の甲殻に事象修復のワックスを塗り込み、床下ファンを背中に取り付けると、大宇宙の法則が完全にひれ伏した。

 暴走していた次元の魔蟲の禍々しい破壊エネルギーは、瞬く間に漂白・調律されていく。


『ア……ァァ……。我ノ、世界ヲ虚無ニ落トスハズノ大顎ガ、マルデ都合ノイイ【床下ノホコリヲ吸イ込ム為ノ吸引ブラシ】ノヨウニ……!? イヤ、ファンヲ取リ付ケラレル度ニ、我ガ甲殻ガ、異常ナマデニ心地ヨイ【絶対的ナ自動走行ト清掃機能】ニ変換サレテイクゥゥゥッ! 私ノ存在ガ、世界ヲ絶望ニ沈メルノデハナク、コウシテ床下ニ永遠ノ清潔サヲ提供スル「極上ノ全自動・神仙ルンバ」トシテ機能スルコトガ、コレホドマデニ満タサレルコトダッタトハ……!』


 かつて世界を脅かした次元の化身は、アルドの「シロアリ駆除と自動掃除機の設置」によって完全に浄化され、書き換えられた。

 万物を食い破る禍々しい魔蟲王は、気がつけば「安全な次元エネルギーを利用して床下を巡回し、どんなホコリや湿気も完璧に吸い取る、超高性能な『永久・神仙自走式床下クリーナー(見た目は巨大でピカピカな丸いお掃除ロボット)』」へと姿を変えていたのである。


「よしよし! 嫌なシロアリの被害は片付いて、すっごく便利なお掃除ロボットになったぞ! おまけに、背中のファンが空気を綺麗にしてくれるから湿気対策もバッチリだね。これで大陸の家々の土台も、いつまでも頑丈で清潔だよ!」

 アルドが換気ファンを調整して額の汗を拭うと、次元の狭間を覆っていたドス黒い虚無の雲は一瞬にして晴れ渡り、眼下の空洞には澄み切った空気が広がっていた。


 ***


 数日後。大陸を統べる諸国の王室。

 各国の王たちは、宰相からの報告書を見て震え上がっていた。

「ば、馬鹿な……。我が大陸の基盤を食い破るはずだった次元魔蟲王が、たった数時間で『完全駆除』され、あまつさえ魔蟲王が『超巨大な全自動床下お掃除ロボット』に転職して、大陸中の建物の土台を完璧に守護しているだと……!?」


 そこへ、冷徹な執事服に身を包んだアーキヴァルが、うやうやしく一礼して現れた。

「お初にお目にかかります、各国の国王陛下。総合ライフサポート企業『黄昏の守護者』の最高財務責任者、アーキヴァルでございます。この度は、我が社の『CSR活動(床下防虫と換気扇設置業務)』をご利用いただき、誠にありがとうございます」

 アーキヴァルは、分厚いバインダーから【完全なる基盤修復・自動清掃施設開発代金およびコンサルタント料の請求書】を取り出し、王たちの目の前にドンッと突きつけた。


「我が社の社長(アルド様)の理念により、今回は社会貢献として基本の駆除料金はサービスさせていただいております。……が、魔蟲王の完全浄化、空間システムの再構築、そして『大陸全土の建物を守護する全自動クリーナーの永続的な運用費』は、正当なビジネスとして請求させていただきます。お支払いは、各国の年間建築・不動産収益の三割と、次元インフラの独占管理権で手を打ちましょう」

 アーキヴァルの冷たい宣告(合法的な超・搾取)と共に、王たちは完全に心をへし折られ、震える手で莫大な報酬の永続支払いにサインをするしかなかった。


 ***


 日だまり郷の黄金の城塞。

 静寂に包まれた書斎のデスクで、元・大賢者ゾルタンは、羽ペンをインク壺に浸し、新たな社史のページに文字を刻み込んでいた。


『〇月×日。大陸の地下(次元の狭間)におけるシロアリの駆除、および床下換気扇設置完了。大陸を食い破る次元魔蟲王(神話の厄災)を事象の燻煙剤で洗浄し、立派な特大お掃除ロボットへと改修。次元の浄化を完了し、大陸全土の家屋保全と衛生管理の発展に多大な貢献を果たした。

 ……また、我が社のCFOの尽力により、大陸諸国からは莫大な賠償金と、次元インフラの独占管理権を合法的に譲り受けることに成功。これで我が社は、地下水脈、気象、海上物流、クリーンエネルギーに続き、空間の基盤の覇権すらも完全に掌握したことになる。

 社長の「社会貢献」という名の大掃除は、もはや次元の理すらも呑み込み、世界は究極の平穏(我が社による完全支配)へと向かっている。大賢者たるワシの知能をもってしても、この恐るべき企業の快進撃を止める術は、もはや存在しない。』


 ゾルタンが深い溜息と共にペンを置くと、ドアの向こうから「今日のおやつは天界リンゴのアップルパイだよー!」というアルドの無邪気な声が聞こえてきた。

 最強の便利屋の「ただのシロアリ駆除」は、次元崩壊の危機をただの害虫駆除として解決し、魔蟲王の脅威を完全に終わらせただけでなく、世界に最高の衛生管理インフラを誕生させてしまった。

 企業として躍進するクラン『黄昏の守護者』は、これより正式に次元の覇権をも握り、いかなる邪悪も日常のメンテナンス業務として葬り去る、究極の平穏なる企業伝説をまた一つ、歴史(社史)に刻み込んだのであった。


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