第113話:ただの換気扇掃除と、焔魔王の強制ピザ窯化(総合ライフサポート企業の厨房機器メンテナンス)
第113話:ただの換気扇掃除と、焔魔王の強制ピザ窯化(総合ライフサポート企業の厨房機器メンテナンス)
黄金の城塞『日だまり郷』の朝は、大宇宙の理すらも平伏す圧倒的な平穏と、前世の記憶を強烈に刺激する焦げたチーズの香り、そして胃袋を鷲掴みにするような濃厚なトマトとニンニクの匂いと共に幕を開ける。
今日のアルドは、朝から中庭にしつらえた特製の石窯に向かい、見事な火加減で『特製・天界トマトと幻獣チーズの極厚マルゲリータピザと、世界樹のオニオングラタンスープ』を仕上げていた。
「よし! メインは、大精霊の清らかな水で練り上げたモチモチのピザ生地だ。そこに、酸味と甘みのバランスが完璧な天界トマトのソースをたっぷり塗り、幻獣のミルクから作った濃厚なモッツァレラチーズを乗せて一気に焼き上げる! 耳はカリッと、中心はチーズが滝のようにとろける絶妙な焼き加減だ。そして、世界樹の玉ねぎを飴色になるまで丸一日炒め、神仙のブイヨンで煮込んだオニオングラタンスープ! 仕上げにパセリを散らして……熱々のうちに完成だ!」
アルドがエプロン姿で、黄金色に輝き、香ばしい匂いを暴力的なまでに放つ巨大なピザとスープをダイニングテーブルに運ぶと、神竜ポチとモフモフの星狼シロがテーブルの下でちぎれんばかりに尻尾を振って待機していた。リビングのソファでは、特大モチモチクッションへと強制リメイクされた元・大宇宙の邪神が、ポカポカと温かいヒーター機能を放ちながら、平和なインテリアとしての職務を微動だにせず全うしている。
このピザ朝食、一口食べれば幻獣チーズの極上のカルシウムとタンパク質が全身の魔力回路を限界突破させ、オニオングラタンスープの圧倒的な血液サラサラ効果が血中のあらゆる疲労物質や呪いを瞬時にデトックスし、魂の底から尽きることのない多幸感と活力を湧き上がらせる『究極の超覚醒・イタリアンフルコース』である。
「うむ……! この生地の香ばしい小麦の響きと、噛み締めた瞬間に口の中を満たすトマトとチーズのビッグバン! そしてスープの圧倒的なコクと深み! 見るだけで我が魔界の闘争本能が、陽光降り注ぐテラスでマンドリンの音色に酔いしれる旅人のようにフニャフニャに溶かされそうになるわい!」
元・魔界大帝サタナスが、ピザのピースを両手で震わせながら握りしめ、あまりの美味さにワナワナと肩を震わせて感涙に咽いでいた。
そんな賑やかなダイニングの喧騒が一段落し、食後の極上ハーブティーが振る舞われた後。
アルドは、防音・防諜の魔法結界が幾重にも張られたリビングの長テーブルの上座に座った。その周囲には、『出張解体アシスタント』のレイヴン、『特殊クリーニング部門責任者』のエルミナ、『総合防犯システム責任者』のシノン、そして『最高財務責任者(CFO)兼・広報担当』のアーキヴァルという、総合ライフサポート企業『黄昏の守護者』の頼もしき役員たちが顔を揃えている。
「さて、みんな。東の海域の養殖場化も終わって、世界中の海鮮流通がすっかり安定したね。これも我が社の社会貢献の賜物だよ。……それで、次なる『困り事』の案件は何か入っているかな?」
アルドがニコッと微笑みかけると、CFO兼広報担当のアーキヴァルが、優雅な所作で立ち上がり、分厚いバインダーを開いた。
「はい、社長。我が社の次なるCSR活動として、今回は南の大陸にそびえる『活火山の噴火危機』に関する、極めて深刻なご相談を受注いたしました」
アーキヴァルは、手元の書類を指先で弾きながら、冷徹かつ完璧なプレゼンテーションを開始する。
「南の大火山帯に、長年眠っていた『巨大な炎の化け物(大地の怒りの化身・焔魔王)』が目覚めまして。火口から絶えず有毒な火山灰と溶岩を撒き散らし、周囲の環境を破壊しております。さらにタチの悪いことに、その化け物が生み出す『炎の眷属ども(※灼熱の魔物群)』が山を降り、森林火災を引き起こそうと暴れ回っているのです」
アーキヴァルの言葉の裏にある「真実」を、大公レオハルトと元・大賢者ゾルタンは顔面を蒼白にしながら補完していた。
(大地の怒りの化身・焔魔王だと……!? あれは大陸そのものを火の海に変え、生命を焼き尽くすために顕現した神話級の厄災。それが覚醒したとなれば、南の大陸はおろか、世界中が灰に埋もれる。本来なら全国家の魔導士を総動員して絶対零度の封印大結界を構築すべき、歴史的な絶望事態だぞ……!)
しかし、アーキヴァルは一切表情を変えず、アルド向けに完璧に翻訳された依頼書を読み上げる。
「近隣の国々からの要望は、この炎の眷属たち(飛び火)の『徹底的な消火(無力化)』と『巨大な化け物(焔魔王)の鎮火』、そして『火山の環境改善』です。このまま放置すれば、大陸中がススと灰にまみれ、息もできなくなってしまいます。我が社の社会貢献活動として、これほど迅速な対応が求められる案件はないかと」
「なるほど!」
アルドは、依頼書を見て真剣な表情でポンッと手を叩いた。
「山の上にあるデカいコンロ(火山)の火が強すぎて、火口の換気扇が完全に油汚れとススで詰まってるんだね! おまけに飛び火(炎の化け物)が周りに燃え広がってるなんて、火事になっちゃうから大問題だ。美味しいピザを焼くためにも、火の扱いは丁寧にしないと。よーし、さっそく僕たちの『総合ライフサポート』の出番だ!」
アルドが立ち上がると、役職を得たクランメンバーたちも、一斉に気合い(殺意)に満ちた表情で立ち上がった。
「社長。山を降りてくる鬱陶しい飛び火(灼熱の魔物ども)の解体と撤去は、この『出張解体アシスタント』にお任せを。火の粉一つ残さず綺麗にバラして、ただの薪割り以下の仕事にしてご覧に入れましょう」
レイヴンが、神具の斧を肩に担ぎながら不敵に笑う。
「ええ。火山が撒き散らすガンコなススや油汚れ(※致死の火山灰と溶岩)は、『特殊クリーニング部門』の私が、特製の冷却スプレー(※極大の絶対零度魔法)で一瞬にして中和・洗浄して差し上げますわ」
エルミナが、美しく銀髪を揺らしながら自信満々に頷く。
「……作業中、火の粉(※魔物の残党)が他の森へ燃え広がらないよう、『総合防犯システム責任者』として、火山の周囲に完璧な防炎シート(※絶対封殺の耐熱結界)を張り巡らせておきます」
シノンが、音もなく短剣を弄びながら冷たく宣言する。
「うんうん、みんな本当に頼もしいな! 火の元の作業は危険だから、しっかり防炎シートを張ってくれると助かるよ!」
アルドは、メンバーたちの頼もしい言葉に満足げに頷き、自身の作業着(超高熱と有毒ガスを完全に無効化する特製エプロンとマスク)に着替え、手には大きなスプレーボトルを握りしめた。
「よーし! それじゃあ僕は、特製『絶対分解の神仙重曹スプレー』と『事象換気のレンジフードフィルター』を持っていくよ! 大陸の空気を守るために、デカいコンロの油汚れを落として、ピカピカの厨房機器にリフォームしてこよう!」
こうして、総合ライフサポート企業『黄昏の守護者』の社員一同は、耐熱仕様に改造された魔導軽トラに乗り込み、赤々と燃え盛る南の大火山へと向けて出勤したのである。
***
その頃、南の大陸にそびえ立つ大火山の火口。
沸き立つマグマの海から半身を乗り出した大地の怒りの化身『焔魔王』が、周囲の空気を歪ませるほどの超高熱を放ちながら、傲慢な高笑いを上げていた。
「ガォォォォハハハ! 素晴らしいぞ! この大地のマグマの力さえあれば、地上の生命など一瞬で灰燼に帰す! 見よ、我が生み出したこの圧倒的な炎の軍勢を!」
焔魔王は、火口から溢れ出す無数の灼熱の魔物たちに号令をかけた。
「愚かな地上の生命どもめ。我が目覚めたからには、もはやこの星に安息の地はないと知れ! さあ、もっとだ! マグマを噴出させ、大陸全土を紅蓮の炎で覆い尽くせ!」
「ギャオオォォォッ!!」
火口から這い出した数万の炎の魔物たちが、主の言葉に呼応して鼓膜を裂くような咆哮を上げる。
「我ら焔魔一族の炎は絶対だ! この灼熱の領域まで踏み込める者など、この世界にはもはや存在し――」
――キキィィィィッ!! バタンッ!
焔魔王が勝利の宣言を口にしようとしたその瞬間、火口の縁のど真ん中に、四つの車輪がついた奇妙な小型の鉄箱(魔導軽トラ)が、マグマの熱をものともせずにドリフト着陸する音が響き渡った。
そして、軽トラのドアが「ガラッ」と無遠慮に開け放たれ、スプレーボトルと真っ白なフィルターを持った青年の明るい声が、灼熱の静寂を完全に打ち破ったのである。
「ちわーっす! 総合ライフサポート企業『黄昏の守護者』です! 近隣の方々からご依頼いただいた厨房機器のメンテナンスと換気扇掃除に伺いましたー! ……うわぁ、こりゃひどい油汚れと、詰まりに詰まったスス(火山灰)だね!」
アルドは、首に巻いたタオルで汗を拭いながら、プロの清掃業者としてのダメ出しを開始した。
「な、何奴ッ!? 我が絶対焦熱の領域に、地上の虫ケラが何の用だ!」
焔魔王が驚愕の声を上げる中、アルドの後ろから、レイヴン、エルミナ、シノン、そしてアーキヴァルが、それぞれの「清掃用具(兵器)」を手にして、圧倒的な威圧感を放ちながら火口の縁へと降り立ったのである。
「さあ、社長。まずはこの鬱陶しい飛び火(炎の魔物)どもから、綺麗に『解体』して差し上げましょう」
レイヴンが神具の斧を構え、凶悪な笑みを浮かべる。
総合ライフサポート企業の次なる社会貢献(能動的な悪の粉砕)が、灼熱の火山で今まさに始まろうとしていた。
「な、なんだ貴様らは!? 我が火口を『コンロ』だと!? 舐めるな地上のウジ虫どもッ! やれ、我が誇り高き炎の軍勢よ! 奴らを焼き尽くし、灰に変えろ!」
焔魔王の怒号と共に、火口を埋め尽くしていた無数の魔物たちが、一斉にアルドたちに向かって襲い掛かった。
「うわっ、この飛び火、すっごく大きくて危ない! コンロの周りに燃え移ったら大惨事だ!」
アルドは、迫り来る魔物部隊を「火の不始末で発生したタチの悪い飛び火」と完全に誤認し、重曹スプレーのトリガーに指をかけた。
「社長、ここは我々『社員』にお任せを。火が他の場所に延焼しないよう、まずは私が防炎シートを設置します」
シノンが音もなく跳躍し、火山の周囲を囲むように、無数の札(神仙の耐熱結界符)を空中に投げ放った。
――ピィィィィンッ!
瞬間、火山全体を覆うように、透明で絶対的な強度を誇る『神仙の防炎結界』が展開された。これで、炎の魔物は一匹たりとも火山の外へ逃げ出すことはできない。
「完璧なシートですわ、シノンさん。では、私はコンロが撒き散らすガンコなススや熱(火山灰と溶岩)を、特殊クリーニングで綺麗に冷却いたしますわ!」
エルミナが白銀の杖を天に掲げると、大宇宙の理を内包した『極大絶対零度魔法』が、冷却スプレーのように周囲のマグマと火山灰を包み込んだ。
「ギャアアアアッ!?」
灼熱を纏っていた魔物たちは、その冷却の光を浴びた瞬間、身に纏っていた熱量ごと完全に無力化され、ただの冷たい黒曜石の彫像のようにカチンコチンに凍りついていく。
「フンッ! 火を消された石ころなど、ただの解体ショーのマトだ! 私が綺麗に砕いてやろう!」
レイヴンが神具の斧を大上段に構え、凍りついた魔物の群れに向かって旋風のごとく突っ込む。
「砕氷斬ィィィッ!!」
放たれた一撃は、魔物の硬い装甲を「分子の結合の隙間」から完璧に見切り、まるでかき氷を作るかのように、シャリィィィン!と見事な細かい砂利へと解体してしまった。
「な、何ィィィッ!? 我が無敵の炎の軍勢が、ただの『消火』と『氷割り』の前に、一瞬で砂利にされていくゥゥッ!?」
焔魔王は、自らの精鋭部隊がものの数分で「綺麗な庭砂利」と「ただの石」に変わってしまった光景に、驚愕のあまり膝を震わせた。
「よし、みんなのおかげで飛び火は片付いたね! あとは、あの一番ギトギトに油がこびりついた『コンロの火口(焔魔王)』の汚れを落として、換気扇のフィルターを被せるだけだ!」
アルドは、特製『絶対分解の神仙重曹スプレー』を限界まで噴射し、焔魔王の巨大な顔面へと狙いを定めた。
――当然ながら、その素材は常軌を逸している。重曹は星の核から抽出された純粋な浄化結晶であり、大宇宙のいかなる呪いや致死の熱量すらも、物理的に『吹きかけて溶かす』だけで完璧に分解する『究極の油汚れ落とし』である。
「おのれェェェッ! 舐めるな人間! 我が本気、星を融かす『紅蓮の終焉波』で、貴様らごと炭塊に変えてくれるわ!」
焔魔王がマグマを暴走させ、火口の底から地上すべてを焦土と化すほどの超巨大な熱エネルギーを充填し始めた。
「うわっ! コンロの火が急に強くなった! でも、この特製重曹スプレーの前には、どんなガンコな油汚れも熱も一発で分解だ!」
アルドがスプレーのトリガーを力強く連続で引くと、焔魔王に向かって、神仙の泡が容赦なくシュワァァァッ!と降り注いだ。
――ジュワァァァァッ!!
大陸を滅ぼすはずの大地の怒りは、アルドの「コンロのガンコな油汚れを落としたい」という圧倒的で暴力的なまでの意思の前に、物理的に「プスッ」と情けない音を立てて、まるでただの油汚れが浮き上がるように、一瞬にして熱を奪われ無害な白い泡へと分解されてしまったのである。
「バ、バカなァァァッ!? 我が最大奥義が、ただの掃除用スプレーで分解されただとォォォッ!?」
「よし、油汚れは綺麗に落ちたぞ! 最後に、この『事象換気のレンジフードフィルター』を火口にスッポリ被せて……よし、これで有毒なススも出ないし、熱も安全に使えるね!」
アルドが真っ白なフィルター(事象を完璧に濾過する神仙の天幕)を火口に被せ、ピンと張って固定すると、大宇宙の法則が完全にひれ伏した。
暴走していた大火山の禍々しい熱エネルギーは、瞬く間に漂白・調律されていく。
『ア……ァァ……。我ノ、世界ヲ火ノ海ニスルハズノ灼熱ガ、マルデ都合ノイイ【ピザヲ焼ク為ノ遠赤外線】ノヨウニ……!? イヤ、フィルターヲ被セラレル度ニ、我ガ火口ガ、異常ナマデニ心地ヨイ【絶対的ナ温度管理ト石窯オーブンシステム】ニ変換サレテイクゥゥゥッ! 私ノ存在ガ、世界ヲ絶望ニ沈メルノデハナク、コウシテ地上ニ永遠ノ美食ヲ提供スル「極上ノ全自動・神仙ピザ窯」トシテ機能スルコトガ、コレホドマデニ満タサレルコトダッタトハ……!』
かつて世界を脅かした大地の化身は、アルドの「換気扇掃除と厨房機器メンテナンス」によって完全に浄化され、書き換えられた。
万物を焼き尽くす禍々しい大火山は、気がつけば「安全な地熱を利用して最高温度を完璧に保ち、どんな食材も究極の美味しさに焼き上げる、超高性能な『永久・神仙特大ピザ窯兼BBQ場(見た目は巨大で美しいレンガ造りのドーム)』」へと姿を変えていたのである。
「よしよし! 嫌なススと危険な飛び火は片付いて、すっごく立派なピザ窯になったぞ! おまけに、これがあればフィルターが空気を綺麗にしてくれるから環境にも優しいね。これで近所の人たちも、安心して美味しいBBQができるよ!」
アルドがスプレーを片付けて額の汗を拭うと、空を覆っていたドス黒い火山灰の雲は一瞬にして晴れ渡り、眼下の火口周辺にはまばゆいばかりの太陽の光と、澄み切った空気が広がっていた。
***
数日後。南の大陸を統べる諸国の王室。
各国の王たちは、宰相からの報告書を見て震え上がっていた。
「ば、馬鹿な……。我が大陸を灰に沈めるはずだった焔魔王が、たった数時間で『完全消火』され、あまつさえ大火山が『超巨大なピザ窯兼レジャー施設』に転職して、世界中から美食家が集まる観光地になっているだと……!?」
そこへ、冷徹な執事服に身を包んだアーキヴァルが、うやうやしく一礼して現れた。
「お初にお目にかかります、各国の国王陛下。総合ライフサポート企業『黄昏の守護者』の最高財務責任者、アーキヴァルでございます。この度は、我が社の『CSR活動(厨房機器のメンテナンスと排気清掃業務)』をご利用いただき、誠にありがとうございます」
アーキヴァルは、分厚いバインダーから【完全なる環境浄化・地熱エネルギー施設開発代金およびコンサルタント料の請求書】を取り出し、王たちの目の前にドンッと突きつけた。
「我が社の社長(アルド様)の理念により、今回は社会貢献として基本の清掃料金はサービスさせていただいております。……が、焔魔王の完全浄化、環境システムの再構築、そして『安全な地熱エネルギーと観光資源の永続的な運用費』は、正当なビジネスとして請求させていただきます。お支払いは、各国の年間観光収益の三割と、地熱エネルギーの独占管理権で手を打ちましょう」
アーキヴァルの冷たい宣告(合法的な超・搾取)と共に、王たちは完全に心をへし折られ、震える手で莫大な報酬の永続支払いにサインをするしかなかった。
***
日だまり郷の黄金の城塞。
静寂に包まれた書斎のデスクで、元・大賢者ゾルタンは、羽ペンをインク壺に浸し、新たな社史のページに文字を刻み込んでいた。
『〇月×日。南の大火山における飛び火の消火、およびコンロの換気扇清掃完了。大陸を焼き尽くす焔魔王(神話の厄災)を事象の重曹スプレーで洗浄し、立派な特大ピザ窯へと改修。大気の浄化を完了し、大陸全土の環境保全と美食文化の発展に多大な貢献を果たした。
……また、我が社のCFOの尽力により、南の大陸諸国からは莫大な賠償金と、地熱エネルギーの独占管理権を合法的に譲り受けることに成功。これで我が社は、地下水脈、気象、海上物流に続き、クリーンエネルギーの覇権すらも完全に掌握したことになる。
社長の「社会貢献」という名の大掃除は、もはや大自然の理すらも呑み込み、世界は究極の平穏(我が社による完全支配)へと向かっている。大賢者たるワシの知能をもってしても、この恐るべき企業の快進撃を止める術は、もはや存在しない。』
ゾルタンが深い溜息と共にペンを置くと、ドアの向こうから「今日のおやつは天界トマトと幻獣チーズのマルゲリータだよー!」というアルドの無邪気な声が聞こえてきた。
最強の便利屋の「ただの換気扇掃除」は、大陸炎上の危機をただの油汚れ落としとして解決し、焔魔王の脅威を完全に終わらせただけでなく、世界に最高の美食施設とエネルギーインフラを誕生させてしまった。
企業として躍進するクラン『黄昏の守護者』は、これより正式にエネルギーの覇権をも握り、いかなる邪悪も日常のメンテナンス業務として葬り去る、究極の平穏なる企業伝説をまた一つ、歴史(社史)に刻み込んだのであった。
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