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辺境暮らしの便利屋冒険者、伝説のクランのリーダーに祭り上げられる 〜本人曰く「ただの日常」らしいです〜  作者: 盆ちゃん


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第110話:ただの高枝切りと、天空要塞の強制気象台化(総合ライフサポート企業の庭手入れ・後編)

第110話:ただの高枝切りと、天空要塞の強制気象台化(総合ライフサポート企業の庭手入れ・後編)

「な、なんだ貴様らは!? 我が天空の要塞を『お庭』だと!? 舐めるな地上のウジ虫どもッ! やれ、我が誇り高き飛竜部隊よ! 奴らを上空から食いちぎり、雲海へと叩き落とせ!」

 狂竜騎士団長の怒号と共に、要塞の周囲を旋回していた数百頭の凶悪な飛竜とそれに跨る騎士たちが、一斉に急降下し、アルドたちに向かって襲い掛かった。

「うわっ、このカラス、すっごく大きくて凶暴だ! 庭にこんなのが住み着いてたら、そりゃあ下の人たちは迷惑するよね!」

 アルドは、迫り来る飛竜部隊を「長年の放置で巨大化した、タチの悪いゴミ漁りのカラス」と完全に誤認し、高枝切りバサミの柄をしっかりと握り直した。

「社長、ここは我々『社員』にお任せを。カラスが他の場所に逃げて巣を作らないよう、まずは私が防鳥ネットを設置します」

 シノンが音もなく跳躍し、要塞の周囲を囲むように、無数の札(神仙の対空結界符)を空中に投げ放った。

 ――ピィィィィンッ!

 瞬間、要塞全体を覆うように、透明で絶対的な強度を誇る『神仙の防鳥結界』が展開された。これで、飛竜は一羽たりとも要塞の外へ逃げ出すことはできない。

「完璧なネットですわ、シノンさん。では、私はカラスが起こしている嫌な静電気や雨(雷雨と暴風)を、特殊クリーニングで綺麗に中和いたしますわ!」

 エルミナが白銀の杖を天に掲げると、大宇宙の理を内包した『聖なる極大晴天魔法』が、消臭スプレーのように周囲の暗雲を包み込んだ。

「ギャアアアアッ!?」

 雷を纏っていた飛竜たちは、その浄化の光(静電気防止スプレー)を浴びた瞬間、身に纏っていた魔力ごと完全に無力化され、ただの大きなトカゲのようにボトボトと甲板に墜落していく。

「フンッ! 羽を毟られた鳥肉など、ただの解体ショーの材料だ! 私が綺麗にさばいてやろう!」

 レイヴンが神具の斧を大上段に構え、墜落した飛竜と騎士の群れに向かって旋風のごとく突っ込む。

「三枚おろしィィィッ!!」

 放たれた一撃は、飛竜の分厚い鱗と装甲を「骨と肉の隙間」から完璧に見切り、まるで市場の魚をさばくかのように、スパーン!と見事な部位ごとに解体してしまった。

「な、何ィィィッ!? 我が無敵の狂竜騎士団が、ただの『庭の手入れ』と『鳥の解体』の前に、一瞬で食肉にされていくゥゥッ!?」

 騎士団長は、自らの精鋭部隊がものの数分で「綺麗な鳥肉のブロック」と「羽毛ゴミ」に変わってしまった光景に、驚愕のあまり膝を震わせた。

「よし、みんなのおかげでカラスは片付いたね! あとは、あの一番高く伸びちゃってる『邪魔な大枝(気象制御ジェネレーターの塔)』をパツンと切って、日当たりを良くするだけだ!」

 アルドは、手作りの特製『事象切断の高枝切りバサミ』を限界まで伸ばし、要塞の中心にそびえ立つジェネレーターの塔へと狙いを定めた。

 ――当然ながら、その素材は常軌を逸している。バサミの刃は世界樹の最も硬い根を鍛え上げたものであり、大宇宙のいかなる次元の壁や強固な魔力兵器すらも、物理的に『挟んで切る』だけで完璧に切断する『究極の剪定工具』である。

「おのれェェェッ! 舐めるな人間! 我が要塞のメインシステム『超絶雷鳴の裁き(ライトニング・ジャッジメント)』で、貴様らごと炭塊に変えてくれるわ!」

 騎士団長がジェネレーターを暴走させ、塔の先端から地上すべてを焦土と化すほどの超巨大な雷撃のエネルギーを充填し始めた。

「うわっ! あの枝の先っちょ、変な虫がついてて放電してるみたいだ! でも、この特製ハサミの前には、どんな太い枝も一発でチョキンだ!」

 アルドが高枝切りバサミの紐を力強く引くと、ジェネレーターの塔の根元に向かって、巨大な刃が容赦なくガシャンッ!と噛み合った。

 ――パツンッ!!

 地上の国々を滅ぼすはずの古代の気象制御兵器は、アルドの「日当たりを悪くしている邪魔な枝を切り落としたい」という圧倒的で暴力的なまでの意思の前に、物理的に「ポロリ」と情けない音を立てて、まるでただの小枝を剪定するように、一瞬にして根元から綺麗に切り落とされてしまったのである。

「バ、バカなァァァッ!? 我が要塞のメイン兵器が、ただの園芸バサミで切り落とされただとォォォッ!?」

「よし、邪魔な枝は綺麗に切れたぞ! 切り口から雑菌が入らないように、この『防腐剤』を塗っておいて……。よし、これで太陽の光がしっかり下まで届くね!」

 アルドが切り口に特製のコーティング剤(事象修復のパテ)を塗り込むと、大宇宙の法則が完全にひれ伏した。

 暴走していた気象制御ジェネレーターの禍々しい魔力回路は、瞬く間に漂白・調律されていく。

『ア……ァァ……。我ノ、世界ヲ雷雨デ支配スルハズノ気象兵器ガ、マルデ都合ノイイ【天気ヲ予測スル為ノ百葉箱】ノヨウニ……!? イヤ、コーティングサレル度ニ、我ガメイン回路ガ、異常ナマデニ心地ヨイ【絶対的ナ気象観測ト日照り管理システム】ニ変換サレテイクゥゥゥッ! 私ノ存在ガ、世界ヲ絶望ニ沈メルノデハナク、コウシテ地上ニ永遠ノ豊作ヲ提供スル「極上ノ全自動・神仙気象台」トシテ機能スルコトガ、コレホドマデニ満タサレルコトダッタトハ……!』

 かつて世界を脅かした天空の要塞は、アルドの「高枝切りと庭の手入れ」によって完全に浄化され、書き換えられた。

 万物を破壊する禍々しい浮遊要塞は、気がつけば「日だまり郷の庭先に心地よい日陰を作りつつ、世界中の気象を完璧に観測・調整して絶妙な雨と日差しを届ける、超高性能な『永久・神仙気象台(見た目は巨大でお洒落なガーデンパラソル付きの浮島)』」へと姿を変えていたのである。

「よしよし! 嫌なカラスの巣と邪魔な枝は片付いて、すっごく立派なお庭のパラソルになったぞ! おまけに、これがあれば天気予報もバッチリだね。これで地上の農家の人たちも、安心して畑仕事ができるよ!」

 アルドが高枝切りバサミを片付けて額の汗を拭うと、天空を覆っていたドス黒い雷雲は一瞬にして晴れ渡り、眼下の地上にはまばゆいばかりの太陽の光が降り注いでいた。

 ***

 数日後。アステリア王国をはじめとする大陸諸国の王室。

 各国の王たちは、宰相からの報告書を見て震え上がっていた。

「ば、馬鹿な……。我が国を日照り不足と雷雨で脅迫していた狂竜騎士団が、たった数時間で『完全解体』され、あまつさえ天空の要塞が『お洒落な気象台』に転職して、世界中に完璧な天気予報と最適な天候を提供しているだと……!?」

 そこへ、冷徹な執事服に身を包んだアーキヴァルが、うやうやしく一礼して現れた。

「お初にお目にかかります、各国の国王陛下。総合ライフサポート企業『黄昏の守護者』の最高財務責任者、アーキヴァルでございます。この度は、我が社の『CSR活動(庭木の手入れと気象観測業務)』をご利用いただき、誠にありがとうございます」

 アーキヴァルは、分厚いバインダーから【完全なる日照権回復・気象コントロール代金およびコンサルタント料の請求書】を取り出し、王たちの目の前にドンッと突きつけた。

「我が社の社長(アルド様)の理念により、今回は社会貢献として基本の害鳥駆除料金はサービスさせていただいております。……が、要塞の完全浄化、気象システムの再構築、そして『世界中の天候を最適化する気象台の永続的な運用費』は、正当なビジネスとして請求させていただきます。お支払いは、各国の年間農作収益の二割で手を打ちましょう」

 アーキヴァルの冷たい宣告(合法的な超・搾取)と共に、王たちは完全に心をへし折られ、震える手で莫大な報酬の永続支払いにサインをするしかなかった。

 ***

 日だまり郷の黄金の城塞。

「……終わりましたね。世界を脅かした天空の要塞が、アルド様の腕によって見事なガーデンパラソル兼・気象台に成り下がりました。そして、我が社は大陸中の天候を完全に掌握し、莫大な『気象情報提供料とコンサルタント料』を合法的に徴収する権利を得ました」

 CFOのアーキヴァルが、積み上げられた金貨の山と各国の契約書を確認しながら、手帳に『第三回CSR活動:大成功(大陸の気象インフラ完全支配)』と記した。

「アルド殿が剪定したあの要塞、今では世界中の農家が感謝しながら空を仰ぎ、農作物の収穫量が飛躍的に伸びているそうだな。狂竜騎士団の世界支配計画など、完全に『庭の手入れと農業支援』の手伝いにされたというわけだ」

 レイヴンが、暖炉の前でシロ(星狼)に幻獣鶏の骨を与えながら、不敵に笑う。

「ええ。これこそが、我が『総合ライフサポート企業』の力。世界のあらゆる危機を、社会貢献という名目で完全に剪定し、莫大な利益と民衆の支持へと変換する。……社長の掲げた理念は、いよいよ大陸の空すらも支配下に置きました」

 アーキヴァルの眼鏡の奥で、全てを計算し尽くした冷徹な光が煌めいた。

 最強の便利屋の「ただの高枝切り」は、大陸の日照権危機をただの剪定作業として解決し、天空の要塞の脅威を完全に終わらせただけでなく、世界に最高の気象インフラを誕生させてしまったのである。

 企業として躍進するクラン『黄昏の守護者』は、これより正式に「大宇宙規模のライフサポート(能動的な悪の粉砕と市場独占)」を展開し、いかなる邪悪も日常のガーデニング業務として葬り去る、究極の平穏なる企業伝説を盤石なものとしたのであった。

ここまでお読みいただきありがとうございます!少しでも面白いと感じたら、画面下から【ブックマーク】と【☆☆☆☆☆】の評価をいただけると、執筆の大きなモチベーションになります!

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