第104話:便利屋の真実と、大公レオハルトの驚愕(第五回・方針会議の結末と世界征服の幕開け)
第104話:便利屋の真実と、大公レオハルトの驚愕(第五回・方針会議の結末と世界征服の幕開け)
黄金の城塞『日だまり郷』のリビングで続く、アルド主催の『便利屋の今後の方針会議』は、いよいよ最終局面を迎えていた。
外はすっかり夜の帳が下り、アルドが腕によりをかけた豪華絢爛なディナーがテーブルを埋め尽くしている。
「みんな、いよいよ最後の議題だ! その前に、気合を入れるためにメインディッシュを食べよう! 今夜は『特製・天界竜の極厚ステーキと、黄金トリュフの絶品リゾット』だよ!」
アルドがオーブンから取り出したのは、大精霊の山脈で育った天界竜の巨大な塊肉を、外はカリッと、中は極上のレアに焼き上げた圧倒的なステーキ。そして、神仙米と黄金トリュフを濃厚なチーズで炊き上げた、黄金色に輝くリゾットである。
「よし! このステーキに、世界樹の果実を煮詰めた特製赤ワインソースをたっぷりかけて……! 黄金トリュフの香りがリゾットの熱で立ち昇って、最高のディナーの完成だ!」
その圧倒的な生命力と、暴力的なまでに食欲をそそる肉とトリュフの香りに、神竜ポチと星狼シロはもはや我慢の限界を超え、テーブルの下で「早くくれ」と懇願するような鳴き声を上げていた。
このステーキとリゾット、一口食べれば天界竜の極上のマナが全身の細胞を神の領域へと引き上げ、黄金トリュフの香りが魂の奥底に眠る潜在能力(限界突破)を強制的に引き出す『究極の超覚醒・神仙フルコース』である。
「うむ……! このナイフを入れた瞬間に溢れ出す竜の肉汁と、トリュフが奏でる神聖なる響き! 見るだけで我が魔界の闘争本能が、暖炉の前でくつろぐ王様のようにフニャフニャに溶かされそうになるわい!」
元・魔界大帝サタナスが、フォークとナイフを握りしめ、あまりの美味さにワナワナと肩を震わせて感涙に咽いでいた。
豪華なディナーによって、メンバーたちの心身が(神の領域レベルで)満たされた後。
アルドは、これまでにないほど真剣な表情を浮かべ、テーブルの上に広げられたアステリア王国、さらには大陸全土、そして宇宙空間までが描かれた『特製・便利屋お仕事マップ』を見つめた。
「さて、みんなの経歴と新しい役職も決まったところで、いよいよ僕たちの『便利屋の今後』についての最終決議だ。……実は僕、最近の依頼をこなしていくうちに、ある恐ろしい『真実』に気がついてしまったんだ」
アルドのその言葉に、リビングの空気が凍りついた。
レイヴン、エルミナ、シノン、アーキヴァル、そして大公レオハルトと元・大賢者ゾルタンの全員が、息を呑んでアルドを見つめる。
(つ、ついに……! 主が、自らが大宇宙の理すらも凌駕する『神のごとき存在』であり、我々が世界を裏で統べる最強のクランであるという『真実』に気づいてしまわれたのか……!?)
メンバー全員の額に、冷たい汗が伝う。
「僕たち、村の小さな頼み事から始まって、王都の掃除、国境の整備、ついには空の天窓(大宇宙)の修理までやったよね。このマップに印をつけてみたら、一目瞭然だったんだ」
アルドは、マップ上に記された「お掃除ポイント」を指差した。
「僕たちが『お掃除』や『修理』に行く先々で、なぜかいつも『同業者』みたいな人たちがいなくなってるんだよ。悪徳商会(貴族)、怪しい宗教団体(狂信教団)、デカい重機を持ったライバル会社(帝国の軍事要塞)、果ては宇宙規模の不法投棄業者(邪神)まで……。僕たちが仕事をするたびに、彼らは完全に姿を消すか、うちの『備品』になっちゃうんだ」
ゴクリ、と大公レオハルトが喉を鳴らした。
「ア、アルドよ……。それはつまり、どういうことだと……?」
「つまり……僕たち『日だまり郷の便利屋』は、無自覚のうちに、他の業者を力でねじ伏せて市場を独占する『超・悪質な巨大独占企業』になっちゃってるんじゃないかってことだよ!!」
アルドは、頭を抱えてバンッとテーブルに突っ伏した。
「僕たちはただ、綺麗にお掃除して、みんなの生活を便利にしたいだけなのに! 行く先々でライバル会社を倒産(壊滅)させて、仕事(覇権)を全部奪っちゃってるんだ! このままじゃ、世界中の同業者がみんな失業して、僕たちが『世界の経済を支配する悪の企業』だと思われちゃうよ!」
「…………は?」
大公レオハルトを含む全員が、見事に斜め上を突き抜けたアルドの『真実(勘違い)』に、ポカンと口を開けた。
「だ、だからね!」
アルドは勢いよく顔を上げ、決意に満ちた瞳でメンバーたちを見回した。
「これからの僕たちの方針はズバリ、『CSR(企業の社会的責任)の徹底』と『グローバルな社会貢献』だ! 単にライバルの仕事(世界征服の野望)を奪うだけじゃなくて、地域の人たちと協力して、もっと大々的に『世界を便利で平和にする活動』を広げていくんだ!」
アルドは、胸を張って高らかに宣言した。
「今日からうちの便利屋は、ただの村の便利屋を卒業して、『総合ライフサポート企業・黄昏の守護者』として、世界中のあらゆる困りごと(邪悪なる存在)を根こそぎ解決(粉砕)していくよ! みんな、これからも僕と一緒に、最高のサービス(無自覚なざまぁ)を世界に届けていこう!」
アルドの純粋で、しかし大宇宙の理すらも書き換える絶対的な宣言。
それを聞いたメンバーたちは、一瞬の沈黙の後、全員が立ち上がり、深く、深く頭を下げた。
「ハッ……! 主の御心のままに。我ら『総合ライフサポート企業』の社員一同、世界中のあらゆる『障害(敵対者)』を、徹底的に排除させていただきます!」
レイヴンが、感動に打ち震える声で叫ぶ。
「ええ、素晴らしい方針ですわ、社長。世界の汚れ(邪悪)は、全て私が綺麗に焼却して差し上げます」
エルミナが、美しく微笑みながら同意する。
「不審者(国家の敵)の排除とセキュリティは、私にお任せを……」
シノンが、音もなく短剣を弄びながら頷く。
「フフ……。世界の経済(覇権)を支配する巨大企業……最高の響きですね。全ての市場(世界)を我々が独占し、徹底的な社会貢献(管理)を行ってまいりましょう」
アーキヴァルが、手帳に『最終方針:世界完全支配(総合ライフサポート)の開始』と刻み込み、冷徹に微笑んだ。
「素晴らしい……! まさかアルド殿が、自らの意志で『世界規模での平和維持(覇権の掌握)』を宣言する日が来ようとは!」
大公レオハルトと大賢者ゾルタンは、圧倒的なスケールで世界を救済し続ける青年の背中に、もはや宗教的なまでの畏敬の念を抱きながら感涙を流していた。
「よし! じゃあ方針も決まったことだし、明日はさっそく、隣国の『幽霊が出るっていう古いお城(アンデッドの巣窟)』のハウスクリーニングに行ってこようか!」
アルドが無邪気に笑うと、城塞のリビングは、かつてないほどのやる気(殺気)と団結力に満ち溢れた。
最強の便利屋の「ただの方針会議」は、自らの規格外の力に「悪徳独占企業」という完璧な勘違いのレッテルを貼り付けることで、世界の真理を華麗にスルーしたまま、さらなる規模の「社会貢献(能動的な悪の事前粉砕)」へと乗り出すきっかけを誕生させてしまったのである。
クラン『黄昏の守護者』は、これより正式に「大宇宙規模の便利屋」として、いかなる邪悪も日常の家事として葬り去る、究極の平穏なる伝説を永遠に紡ぎ続けるのであった。
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