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均された世界の優等生  作者: ニィギンヤ


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6/8

観測できない領域

 “分岐がない”。



 その事実だけで、十分だった。



 思考が止まる。



 いや。



 止められる。



 いつもなら並ぶはずの選択肢が、ない。



 結果も、過程も、何も見えない。



 空白。



 完全な、空白。



「正解」



 目の前の男が、もう一度言う。



 感情はない。



 でも。



 わずかに。



 “理解している側”の目をしている。



「お前は見ている」



 淡々とした声。



「分岐を」



 肯定も否定も、しない。



 意味がない。



「だが」



 一歩、近づく。



「それは“許容された範囲”だ」



 理解する。



 直感じゃない。



 確信。



「……外があるのか」



「ある」



 即答。



 その瞬間。



 全てが、繋がる。



 今まで見えていたもの。



 全部。



 “与えられていた”。



 だから。



 見えない。



 外側は。



「管理下にない分岐は、観測できない」



 男は続ける。



「お前の能力は、その程度だ」



 否定しない。



 できない。



 事実だから。



「……なるほどな」



 小さく呟く。



 神崎が横で息を吐く。



「最悪だな」



「そうでもない」



 即答する。



「は?」



「制限があるってことは」



 男を見る。



「“外”があるってことだ」



 数秒。



 沈黙。



 男の目が、ほんのわずかに細くなる。



 初めての反応。



「……理解が早い」



「見えてたからな」



「見えていた?」



「今までは」



 言い切る。



 その瞬間。



 神崎が小さく笑う。



「はは、マジで気持ち悪いな」



「褒め言葉として受け取る」



 軽く返す。



 でも。



 余裕はない。



 “見えない”。



 この状態は。



 初めてだ。



 だからこそ。



 選択が必要になる。



「で」



 神崎が一歩前に出る。



「俺らはどうなる」



 男は、迷わない。



「排除対象だ」



 短い。



 明確。



 迷いも、揺らぎもない。



 神崎が息を吐く。



「だろうな」



「ただし」



 男が続ける。



「条件次第で、変更可能」



 その一言で。



 空気が変わる。



 取引。



 それしかない。



「条件は」



 聞く。



 迷う意味はない。



「協力」



 即答。



「観測対象として登録し、管理下に置く」



 つまり。



 飼う。



 逃がさない。



 使う。



「拒否した場合」



 神崎が聞く。



「排除」



 同じ答え。



 変わらない。



 当然だ。



 でも。



 ここで。



 分岐が戻る。



 わずかに。



 完全じゃない。



 でも。



 見える。



 断片的に。



 この男の中。



 “揺らぎ”。



 完全じゃない。



 だから。



 入り込める。



「……結城」



 神崎が小さく呼ぶ。



「どうする」



 今度は。



 完全に任せている。



 判断を。



 責任を。



 全部。



 だから。



 選ぶ。



 最適じゃない。



 でも。



 “外側に繋がる”選択。



「……受ける」



 言う。



 神崎が目を細める。



 でも。



 何も言わない。



 理解している。



 これが。



 一番“先がある”選択だと。



「賢明だ」



 男が頷く。



 その瞬間。



 分岐が、また消える。



 でも。



 今度は違う。



 完全じゃない。



 “穴”がある。



 見える。



 ほんのわずかに。



 外へ繋がる、細い線。



 気づく。



 これは。



 “選ばされた”んじゃない。



 “選ばせた”。



 この状況。



 この会話。



 全部。



 誘導した。



 分岐がない中で。



 唯一残したルートへ。



「……なるほど」



 小さく笑う。



「何がおかしい」



 男が聞く。



「別に」



 首を振る。



「ただ」



 視線を合わせる。



「やっと面白くなってきた」



 その言葉に。



 男は、何も返さない。



 でも。



 わずかに。



 警戒が、強まる。



 それでいい。



 これで。



 “対等”になる。



 少なくとも。



 今は。


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