表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
均された世界の優等生  作者: ニィギンヤ


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

5/8

切り捨てる順番

 足音が、止まっている。



 廊下の奥。



 “そいつ”は、動かない。



 でも。



 逃げる気もない。



 隠す気もない。



 ただ、そこにいる。



 高坂の呼吸が浅い。



 神崎は、動かない。



 視線だけが、揺れている。



 その全部を見ながら。



 分岐が、並ぶ。



 逃走。


 対話。


 無視。



 どれもある。



 でも。



 どれも遅い。



 結論は、一つ。



「——遅かったな」



 小さく呟く。



「え?」



 高坂が反応する。



 でも。



 もう、説明してる時間はない。



「来る」



 その一言で。



 “そいつ”が動いた。



 足音が、近づく。



 ゆっくりと。



 一定の速度で。



 迷いなく。



 こちらに。



 止まる。



 三人の前で。



「確認」



 低い声。



 感情がない。



「対象、三名」



 空気が凍る。



 神崎が、一歩下がる。



 高坂は、動けない。



 でも。



 思考は止まらない。



 分岐が、走る。



 全部見る。



 全部試す。



 全部捨てる。



 残るのは。



 “これだけ”。



「——高坂」



 名前を呼ぶ。



「え?」



 顔を向ける。



 状況を理解していない目。



 でも。



 時間はない。



「三秒後、走れ」



「……は?」



「いいから」



 短く言う。



 神崎がこちらを見る。



 何かを言おうとして。



 やめる。



 理解している。



 全部じゃない。



 でも。



 十分。



「対象、優先順位更新」



 “そいつ”が、こちらを見る。



 目が合う。



 冷たい。



 人間じゃないみたいに。



 でも。



 違う。



 “人間すぎる”。



 無駄がない。



 完全に。



 役割だけで動いている。



「——今」



 呟く。



 高坂が、一瞬遅れて動く。



 走る。



 廊下の奥へ。



「対象、逃走確認」



 視線が動く。



 追う。



 当然だ。



 優先順位。



 低い方を切る。



 高坂は。



 “切れる”。



 だから。



 走らせた。



「対象、二名に更新」



 残ったのは。



 自分と、神崎。



 神崎が、こちらを見る。



「お前……」



 言葉が出ない。



 理解したから。



「最初から、決めてたのか」



「いや」



 首を振る。



「今決めた」



 それが最適だった。



 それだけ。



 神崎は、数秒黙る。



 それから。



「最低だな」



 小さく言う。



「そうかもな」



 否定しない。



 必要ない。



「でも」



 神崎の目が、変わる。



「正解だ」



 短く言う。



 その瞬間。



 “そいつ”が動く。



 今度は。



 こちらへ。



「対象、確保開始」



 速い。



 人間の動きじゃない。



 でも。



 見える。



 全部。



 軌道。



 速度。



 結果。



 分岐。



 選ぶ。



 最短で。



 最小で。



 “生き残る”ルート。



「——右」



 言う。



 神崎が動く。



 迷いなく。



 信じているわけじゃない。



 でも。



 分かっている。



 これが、一番マシだと。



 横にずれる。



 その瞬間。



 “そいつ”の手が、空を切る。



 ズレる。



 ほんの数センチ。



 でも。



 致命的。



「……?」



 初めて。



 “そいつ”が、止まる。



 違和感。



 予測のズレ。



 その一瞬で。



 距離を取る。



 走る。



 階段へ。



「対象、再計算」



 後ろから声。



 追ってくる。



 当然だ。



 でも。



 遅い。



 分岐がある限り。



 追いつかれない。



 階段を降りる。



 角を曲がる。



 人の少ないルート。



 全部、見えている。



「……はは」



 神崎が笑う。



 走りながら。



「マジで全部見えてんだな」



「まあな」



 短く返す。



 余裕はない。



 でも。



 詰んではいない。



 まだ。



 外に出る。



 校門。



 人が多い。



 混ざる。



 紛れる。



 それが最適。



 そのはずだった。



 でも。



 そこで。



 止まる。



 分岐が。



 消えた。



「……は?」



 初めて。



 言葉が漏れる。



 神崎が振り返る。



「どうした」



「……おかしい」



 見えない。



 先が。



 何も。



 分岐が、ない。



 初めての感覚。



 空白。



 何もない未来。



 その意味は。



 一つしかない。



「——上書きされてる」



 呟く。



 その瞬間。



 背後で。



 声がした。



「正解」



 振り返る。



 そこに。



 “別のやつ”が立っている。



 さっきのやつとは違う。



 でも。



 同じ。



 無駄がない。



 そして。



 分かる。



 こいつは。



 ——“見ている側”だ。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ