最適解の外側
夜。
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部屋の電気はつけていない。
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窓の外の光だけで、十分だった。
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静かだ。
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何もない。
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それなのに。
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頭の中だけが、うるさい。
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分岐が、増えている。
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今日だけで、明らかに増えた。
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神崎。
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あいつと話した瞬間から。
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未来が、分かれる。
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今までは単純だった。
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隠す。
演じる。
逸脱しない。
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それだけで良かった。
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でも。
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今は違う。
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“気づいたやつ”がいる。
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しかも一人じゃない可能性がある。
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さっきの気配。
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あれは偶然じゃない。
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ドアは、閉まっていたはずだ。
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音もなく開く可能性。
人がいない可能性。
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全部ある。
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でも。
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一番確率が高いのは——
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「……見られてる」
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口に出す。
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その瞬間。
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分岐が整理される。
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見られている場合。
見られていない場合。
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その後の行動。
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全部が並ぶ。
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選ぶ。
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一番、生存率が高いもの。
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机に向かう。
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ノートを開く。
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ペンを走らせる。
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“何も変わっていない”ように。
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これが最適。
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今はまだ。
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———
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翌日。
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教室。
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空気が、少しだけ違う。
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理由は分からない。
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でも。
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違う。
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分岐が増えている。
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昨日より、明らかに。
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「おはよ、結城」
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三上の声。
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「おはよ」
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返す。
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いつも通り。
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でも。
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“いつも通り”の選択肢が、減っている。
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誰かが、見ている。
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確信に近い。
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視線を感じる。
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探す。
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特定する。
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……いない。
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いや。
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“いないように振る舞っている”やつがいる。
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神崎ではない。
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あいつは隠さない。
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なら。
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別だ。
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「結城」
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その声で、思考が止まる。
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神崎。
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「ちょっといいか」
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昨日と同じ言い方。
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でも。
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状況は同じじゃない。
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「……いいけど」
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立ち上がる。
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廊下に出る。
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人は少ない。
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でも、ゼロじゃない。
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ここで話す意味。
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神崎は理解しているはずだ。
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それでも出た。
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つまり。
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「“見せてる”のか」
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小さく呟く。
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「何が」
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神崎が振り向く。
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「いや」
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首を振る。
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まだいい。
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今は。
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「で、なんだ」
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先を促す。
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神崎は少しだけ間を置いた。
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「昨日の続きだ」
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「何の」
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「“もう一人いる”」
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その一言で。
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分岐が、一気に増える。
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「確定か?」
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「ほぼな」
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「根拠は」
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神崎は、少しだけ笑う。
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「お前と同じだよ」
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「……」
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「違和感」
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短い言葉。
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でも十分だ。
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「どこで」
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「テスト」
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即答。
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「一人だけ、“間違い方が自然すぎる”やつがいた」
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思考が走る。
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全員分の答案。
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記憶はある。
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全部。
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瞬時に再現される。
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該当する可能性。
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絞る。
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三人。
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いや。
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二人。
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いや。
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「……一人だな」
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口に出る。
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神崎が笑う。
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「やっぱりな」
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「誰だ」
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神崎は答えない。
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「当ててみろよ」
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試すような目。
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時間は、いらない。
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既に分かっている。
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でも。
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そのまま言うのは、違う。
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選ぶ。
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別の分岐。
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「言わない」
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神崎の眉が少し動く。
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「なんで」
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「確定じゃない情報は使わない」
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静かに言う。
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それが最適。
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今は。
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神崎は、少しだけ考える。
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それから。
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「……いいな、それ」
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笑う。
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楽しそうに。
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「じゃあヒントやる」
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「いらない」
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「いるだろ」
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「いらない」
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被せる。
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これ以上情報はいらない。
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もう分かっている。
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神崎は肩をすくめる。
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「つまんねえな」
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「そうか」
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「でもまあ」
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少しだけ真面目な顔になる。
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「そろそろ来るぞ」
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「何が」
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その問いに。
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神崎は、ほんの一瞬だけ視線をずらした。
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「上」
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短く答える。
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その意味。
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理解するより先に。
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分岐が爆発する。
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“上”。
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管理側。
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監視。
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排除。
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全部繋がる。
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「……早いな」
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「思ったよりな」
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神崎は笑わない。
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「昨日の“気配”」
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「やっぱり気づいてたか」
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「当たり前だ」
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そこで。
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初めて。
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完全に一致する。
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認識が。
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「じゃあどうする」
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神崎が聞く。
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試すように。
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でも。
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その問い自体が、もう遅い。
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答えは、決まっている。
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「もう動いてる」
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「は?」
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神崎の顔が、初めて崩れる。
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「昨日の時点で、全部分岐見た」
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静かに言う。
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「見られてる前提で、動いてる」
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数秒の沈黙。
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そして。
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「……はは」
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神崎が笑う。
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今までで一番。
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「やっぱりお前、気持ち悪いな」
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「よく言われる」
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「言われてねえだろ」
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「今言われた」
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軽く返す。
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でも。
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視線は逸らさない。
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「なら」
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神崎が一歩近づく。
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「その“最適解”、教えてくれよ」
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その言葉に。
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ほんの一瞬だけ。
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迷う。
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見える。
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教えた場合。
教えない場合。
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分岐。
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結果。
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損失。
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利益。
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全部。
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その中から。
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選ぶ。
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一番。
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面白いものを。
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「……いいよ」
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小さく答える。
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「ただし」
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神崎の目が細くなる。
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「途中で死ぬかもしれない」
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静かな声。
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「それでもいいなら」
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数秒。
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沈黙。
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そして。
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「最高だな」
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神崎は笑った。
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迷いなく。
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その瞬間。
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廊下の奥で、足音が止まった。
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聞こえないくらい、小さく。
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でも。
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確実に。
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二人とも、気づいている。
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もう。
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“始まっている”。




