天使を襲いし大罪人。 ⑤
この話から、部活紹介編。
放送室を後にし、家庭科室、情報教室、保健室、芸術棟など様々な場所を案内してもらった。
最後に、僕を文化部の部室があるというクラブ棟へ連れて行くと、彼女は振り返って言う。
「これで案内は終わり。それで、どうするの? 小町君は。このまま帰る?」
そう言われて、腕時計を見るとまだ最終下校時刻まであと一時間はある。
香奈と一緒に帰るのは確定しているので、それまでどう時間をつぶすかだが……。
僕の様子を見て、このまま帰るわけではないが、この後の予定もないことを察したのか彼女は提案をしてくる。
「良ければ、私たちの部活を見に来ない? この先にある、帰宅部なんだけど……」
帰宅部? えっ……それって部活に所属してない人たちの総称だよね?
それなのに、部室もあるってどういう事?
この学校は、変な人が集まってくる学校で校則も割と緩く、存在している部活は同好会なども合わせると無数にあり、中にはどうしてこんな部活が存在しているんだ? と思うような部活も数多くあるとは聞いていたけど……。
本当にどうして存在しているの?
いざ目の当たりにしてみると、混乱で硬直してしまう。
そんな僕の様子を見て、風井さんは苦笑いする。
「最近、この学校の生徒に慣れ過ぎたせいかな……その反応、新鮮に感じるよ。とりあえず、部室に来ない? ここにいつまでも立ってるのもあれだしさ」
そう言って、風井さんは奥のほうに向かって歩き出す。
僕も予定があるわけでないし、帰宅部については気になったのでついていくことにする。
「じゃーん! ここが我らが帰宅部の部室です!」
『帰宅部』と書かれたプレートがぶら下がっている部屋の前に着き、扉を開けた風井さんはこちらを振り返って、誇らしげな顔をする。
中には、ロッカーが左側面にズラッと並び、様々なトレーニング器具が並んでいた。
とりわけ、足に関するものが多いような気がする。
「えっと……風井さん……確認するんだけど、ここは帰宅部…なんだよ…ね?」
「そうだよ?」
何故そんな質問をするのかとでもいうような表情を浮かべ、当然! といった口調で彼女は答える。
僕の知ってる帰宅部と違うんだけど……。
困惑の表情を浮かべる。
僕の表情で、ようやく彼女は僕の言いたいことが分かったのか、ポンと手を打ち、あー! と声を上げる。
「そういえば、うちとは違う感じの帰宅部もあったね!」
大半の帰宅部は違うと思うよ。
そう言いたいが、話が進まなくなる気がしたのでここはグッと堪える。
「うちは、帰宅部の中でも運動部よりなの」
それは十分伝わっているよ。
というか、今も筋トレしているマッチョメンが二人ほどいるし。
「活動内容はね……帰宅の際に足腰は鍛えられるわけじゃない? なら、帰宅の際により早く、その状態をより長く維持できるように体を鍛えることなの」
………開いた口が塞がらないというのは、こういう時に使うのだろう。
そう考えてしまうほど僕は驚く。
そもそも帰宅ではそこまで足腰は鍛えられないと思うよ、とかそこまでして帰宅部で体を鍛えるくらいなら、陸上部に行けばいいんと思うんだけど……とか色々言いたいことはあるけど……。
一番突っ込みたいのは――目的と手段が入れ替わってることだね。
帰宅の際に早く帰れるように、体を鍛えるのはまだいいとして、そのために学校に残ってたらあんまり意味がないと思うんだけど……。
そのことについて、彼女に聞いてみると――。
まるで、それは盲点だった! という表情を浮かべて驚いていた。
「小町君って、帝花にいたっていうからどれだけ賢いのかと思ってたけど……天才だね!」
褒められるのは嬉しいけど、こんなことで褒められたくはなかったな……。
この後、後ろで筋トレしていたマッチョな部員も会話に参加してきたけれど、彼らも風井さんに負けず劣らずのキャラの濃さだったので部室を出る頃にはドッと疲れていた。
時計を見てみると、まだ六時を少し回った位だ。
体感ではもう一時間は優に立っていると思ってたんだけど……。
改めて、帰宅部の恐ろしさを感じた。
一つ言えるのは、帰宅部だけは選ばないようにしようという事だった。
まだ時間あるし、他の文化部を見て回ろうかな? と少し思ったけれど……帰宅部のような部活が他にあるかもと考えて、すぐに撤回した。
なら、グラウンドのほうで運動部がどんなことをしているか見てみようかな。
グラウンドは3つあるので、まずは一番遠いところから見てみることにする。
第三グラウンドでは、野球部とサッカー部が練習をしていた。
グラウンドは広い――帝花に一つだけあったグラウンドより少し大きい――のだが、いかんせん両方の部活の人数、特にサッカー部のほうが多いので定期的にボールが相手の部活のほうへ入っては喧嘩している。
そこまで頻繁に喧嘩が起こるなら、グラウンドを変えればよくないか? と思うものの、そのつもりはないらしい。
諍いが起こるたびに、結構な人数が参加するのでマネージャーやほかの部員も止めるに止められないらしい。
顧問の先生は、ベンチで観戦しながら野次を飛ばしていた。
そこは、教師が率先して止めるべきだと思うんだけど……。
そう思いはするものの、この集団と関わり合いにはなりたくないので、スルーして次のところへ移動することにする。




