ストーカーって怖いよなっていう話。 ⑮
次も一週間後です……。
他者視点での話を書くのがあんまり好きじゃないので、ストーカーの過去編を書き終わったら翌日から毎日投稿に移るつもりです。
続きは降りてから考えるか、と思い足を踏み出す。
部屋の前まで行き、鍵を開けて中に入ると玄関の照明がついた。
あれ? そういえば香奈先輩の部屋の電気ってついてたよな……。
………まさか。……まさか!
まてまてまてまて! 仮に、仮にだ! 俺の予想通りストーカーが中にいた、もしくは直前に部屋に入っていたとしてだ。
何故そんなことをする?
香奈先輩の帰りが予想より早かった? だが、ストーカーは途中までは香奈先輩をつけていた。雨宿りを途中で切り上げた分、多少の計算違いが起こった可能性はあるが……さすがにそこまで考えなしとは思えない。
俺たちが五階に着いた時、あたりに人影はなかった。直前に家に入っていたとして、ライトがまだついていた以上奥に行ったにせよ、見えなかったのはおかしい。
なら、中にいるという事か? 何のために……。
ストーカーは香奈先輩の家の事情を知っているはずだ。
つまり、香奈先輩の両親が旅行に行っているということを知っている可能性は高い。
そして、今日家に忍び込み中で待っていたという事は……香奈先輩が危ない!
その結論に達した瞬間、緩め始めていたネクタイを直すのも惜しんで家を飛び出す。
エレベーターを使うよりも、階段のほうが早い!
階段を数段飛ばしで駆け下りていく。
階が一つ下なのは幸いだったな。
だが、部屋の前に着いたとしてどうやって中に入る?
扉の前について、一瞬そう考える。
…………最悪壊せばいいか。
多分……壊せる……はず。
もしもの場合はマンションから追い出されることも覚悟しながら、扉に手をかけるとガチャリと音が鳴り開く。
鍵かかってないじゃん……。
確かに、びしょ濡れで帰ったりしたら他のことに気がいって忘れる時もあるけどさ……親がいないときに不用心すぎるだろ……。
先輩のガードの緩さに思わず呆れてしまう。
が、すぐに気を取り直して中に入る。
すると、「きゃあああああ!」という香奈先輩の声が聞こえて風呂場から香奈先輩が男から逃げながら出てきた。
その男、小町裕也はすぐに香奈先輩に追いつき、バスタオル一枚で体を隠す香奈先輩の上にまたがる。
香奈先輩は何か逃げる方法はないかとあたりを見回し――俺に気が付く。
そして硬直してしまった香奈先輩を、どう勘違いしたのか小町裕也が勝ち誇ったように笑う。
「ははは! ようやく悟ったのかい? 君に助けが来ないことをね! 君はおとなしく僕の言うことを聞いていればいいんだよ!」
とかなんとか小町裕也が決め台詞を言っている間に、 香奈先輩と俺はというと―――。
『なんでいるの? ねえ、なんでいるの?』
『いやあ、成り行きで……』
『成り行きって何!? ……そもそもどうやって入ったの!』
『それは先輩が鍵を掛け忘れてただけです。危ないですよ』
『うそっ!? そういえば……お風呂に入ることばっかり考えていて、忘れてたかも……』
『それはそうと先輩。今、襲われてるのにずいぶんと余裕そうですね』
『あっ! そうだよ、私襲われてるの! 来栖君、助けてよ!』
『いやあ、先輩の従兄さんすごい楽しそうだしなあ。邪魔するのもなあ』
『……そういうのいいから。早く助けろって言ってるんだけど』
『……はい……申し訳ございませんでした』
ニヤニヤしながら、香奈先輩をからかってた俺が怒られてタイミングで一向に自分のほうを見ない香奈先輩を不思議に思ったのか小町裕也が首を傾げる。
「香奈。何を見ている」
小町裕也が香奈先輩の視線の先へと顔を動かすと――。
「he,hello~?」
扉の前でバレないように体育座りをしているアホがいた。
『なんで英語なの?』
「なんで英語なんだ?」
わお。さすが従兄妹! 息ぴったり!
「ちょっとテンパっちゃいまして……」
頭を掻きながら答える。
自分でも、何故英語が出たのか……よくわからない。
「来栖君! 助けて!」
香奈先輩のほうが早く混乱から脱し、俺に助けを求めてくる。
「お、お前は! お前はぁぁぁぁぁぁ!」
と、そんな香奈先輩の様子をみて何か思い出したのか小町裕也がいきなり叫びだす。
つーか、そろそろフルネームで考えるのめんどくせえな……。
小町でいっか。どうせ、こいつの下の名前とか知っていたところで役に立たないだろうし。
「僕の香奈とを誑かしやがったクソ野郎だな! ちょうどよかったよ! 後で探す手間が省けてな!」
額に青筋を立てながら、話す小町。
全然関係ないんだけど、こいつ見た目に反してすごい口悪いな。
なるほど、近藤先生(元オリンピック代表候補の体育教師。熱血)がいつも言っている『見た目で人を判断するな!』というのはこういう事だったのか……。
「香奈はなあ! 香奈は僕の妻になる女性なんだ! お前なんかが近づいていいはずがないんだよ! それに香奈と僕は婚約もしているんだぞ!? お前なんかが入る隙間なんてないのさ!」
小町の話にぎょっとしてしまう。
『マジですか? 先輩! 婚約って……。やっぱり俺、お邪魔でしたかね?』
『ぶち殺すよ! 小学校低学年の頃の話だって!』
隙間ガバガバですけど?
「どうせお前、なんてスポーツもやっていないんだろう? 家も我が家のように裕福ではあるまい。容姿も僕と比べればお粗末だ。それに……見たところ全然筋肉がついていないじゃないか。そんなことではいざという時香奈を守ることができないだろう?」
全部事実だけども! 改めて他人から言われるとイラっとくるなあ。
というか、小町の実家って裕福なの?
『先輩。こいつの家って金持ちなんですか?』
『うん。様々な業界に手を出していて、あのヒゴロモフーズに続く業界二番手の小町電機の社長令息だから』
はー。お坊ちゃんなのか……。
それならこのルックスも相まって、女なんて選びたい放題だろうに……なんで香奈先輩なんかにこんな執着するんだ?
『なんかってなに?』
悪寒が……。何なの? このテレパシーじみた能力に加えて、心まで読めるとか超能力者なの?
「そもそも、香奈の家に勝手に入って来るなんて失礼だろう? 全く…君の親を見てみたいよ。まあ、子供を見れば大した奴らじゃないなんてことすぐ分かるが」
「あ゛?」
「ひっ! な、なんだよ、その顔は!」
思わず漏れてしまった怒気に、小町が俺から逃げるようにして後ずさる。
プライドが高いのは別にいいし、俺について扱き下ろすのもいいけどさ。
だからといって、俺の両親や叔父さんまで馬鹿にするのを許す気はない。
■■:おいおい。お前なあ……扉は壊せないだろ。
■■:新しめのマンションだからさあ、壊せるわけないよな………まだ。
■■:つーか、そもそも何で体育座りでバレないと思ったよ……。アホだろ。
秋人:いやいや。待てよ、■■。実際ばれてなかっただろ? ……香奈がばらすまでは。
香奈:私が襲われてるのに、すぐに助けようとしなかったバツだよ!
■■:(バツの割には軽いなあ)
■■:まあ、こいつ、駆け付けるまではかっこよかったのにな。下手に揶揄うから……。
香奈:ほんとにそうだよ!
秋人:ちょっ! ■■! お前が言うから、香奈の怒りがぶり返したじゃねえか!
■■:まあ、そんなどうでもいいことは置いといて。
秋人:おい!
香奈:ちょっと!
■■:次回は……秋人の熱い思いが迸る? こうご期待!
秋人:あああああぁぁぁぁ! 忘れたあああああああああ!
香奈:……ポッ。




