ストーカーって怖いよなっていう話。 ⑪
次回は10/31午前0時です
今日は部屋まで送ろうとは思っていなかったが、香奈先輩の話を聞いて気が変わった。
香奈先輩が鍵を開け、扉を開く。
香奈先輩のご両親もいるだろうし、おそらくないとは思うが一応ストーカーに対する警戒をする。
「ただいまー」
「おかえりなさい。あら? 来栖君、来てたのね?」
香奈先輩のお母さんがパタパタと奥からやってくる。
そして、俺に話しかけた後、香奈先輩のほうに向いて口を開く。
「そうだ! 香奈、なんで言わなかったの? 来栖君って香奈の彼氏でしょ!」
口ぶりからして、俺のことを黙っているのは分かってたけど……あっさりバレてるじゃん。
原因は俺が送り迎えしているからかな?
「そうだけど……私お母さんに言ったっけ?」
香奈先輩が不思議そうに言う。
「そんなの見てたらわかりますよ。あなた来栖君といると楽しそうだし」
そうでもないと思うけどなあ。
家の中と学校での顔に差がありすぎてそう感じてるだけじゃないかな?
「それに、毎朝一生懸命お弁当作ってるものね。『おいしいって言ってくれるかな』なーんていっちゃてねぇ?」
「わーーーー! わーーーーーー!」
うるさい、香奈先輩!
お母さんが何言ってたのか聞き取れなかったじゃないか。
「すみません。よく聞こえなかったので、もう一度行ってもらっても構わないですか?」
「そんなことよりも! 私はもう大丈夫だから、早く帰って!」
そんなせかすなよ。
と、ここで奥から香奈先輩へと注意が飛ぶ。
「香奈。近所迷惑だから、静かになさい」
優しそうな声だ。
「はーい……」
先輩は口ではそう言いながら、俺をにらんでくる。
俺、何も悪いことしてないけど?
なんで睨むんだ。
そこで香奈先輩のお母さんが話題を変える。
「そういえば、香奈。お母さんたち、明日は結婚記念日でしょ? だから、お父さんと一緒に旅行に行くことにしたの」
それを聞いて、香奈先輩は不満の声を上げる。
「なにそれ! 私聞いてない!」
「だって今日決めたもーん」
ノリ軽いな、おい。
「でもストーカーの件は心配だから、裕也君にお願いしといたわ」
誰それ?
近所の人かな?
「誰って顔してるわね、来栖君。彼氏としては、知らない男の人の名前が出てくるのは不安なのかな?」
お母さんがクスクス笑いながら言う。
別にそういうわけじゃないけど……。
このまま話してくれそうなので、勘違いさせたままでいいか。
「裕也君っていうのはね―――」
お母さんが説明しようとしたところで、奥のほうから香奈先輩のお父さんが出てくる。
「私の妹の息子、香奈にとっては従兄にあたる男の子さ。つい十日前に近くに引っ越してきてね、いろいろ不便もあるだろうから便宜を図れるように、合鍵を渡しておいたんだ」
なるほどな、いざという時はその合鍵を使って駆けつけてくれるという事か。
「それに、彼は空手の二段で今年の全日本大会も優勝しているからね。ふる…こんたくと? というらしいが……恥ずかしながら武道には詳しくなくてね。来栖君は知ってたりするかい?」
「すみません。俺もそういう方面には明るくないです」
二段か……それはすごいのか?
あんまり武道に興味がないからわからないが、全国大会優勝ということはおそらく対人は相当強いはず。
それなら、一応安心かな。
そこまで考えたところで、香奈先輩が横から補足してくれる。
「裕也君は、お兄ちゃんみたいな存在なんだ!」
その言葉を聞いて、お母さんが香奈先輩をからかう。
「昔は『私、大きくなったら裕也お兄ちゃんのお嫁さんになる―!』って言ってたものね。今は来栖君みたいな彼氏ができたけど」
俺、偽彼氏じゃん。
えっ……もしかして、学校で告白を断ってたのって……まさか!
えぇ、それはちょっと引く。
思わず、香奈先輩のほうを見てしまう。
その考えが顔に出ていたのか、先輩は腕をつねってきた。
地味に痛い。
「もう! お母さんはだまってて! 来栖君も! 今は違うから!」
必死に否定するのが、なあ?
「わからないわよ~? 裕也君、かなりイケメンになってたからねえ。数年ぶりにあったから驚いたでしょ。『香奈は可愛くなったね』って言われてドキッとしたんじゃない?」
すごい楽しそうだなあ。
まあ先輩の反応が面白いのは分かるけどさ。
香奈先輩の機嫌がいよいよ悪くなったのを見て、お母さんが謝る。
「ごめんごめん。来栖君も、あれはほんの冗談だから」
「大丈夫です、わかってます」
だから、その目をやめようね先輩。
怖いから、普通に怖いから。
このままここにいたら、先輩が何してくるかわからないので退散することにする。
「じゃあ、ここらで失礼します。先輩、また明日」
そう言い残して、足早にエレベーターへ向かった。




