ストーカーって怖いよなっていう話。 ⑨
次回は10/29の午後8時です
マッチョ先輩が親衛隊らしく、香奈先輩にぞっこんだと分かったのでさっさと食べ終わった弁当箱を持って退散することにする。
「それでは失礼しました」
扉を閉め、教室に向かう。
その途中で、一つ懸念が心の中に浮かぶ。
偽彼氏ってストーカー事件の対策だよな。
ということは、事件が解決したらお役御免ってことだよな。
やばくない? 香奈先輩と別れたら、マッチョ先輩味方じゃなくなるんじゃないか?
防波堤を失った俺に親衛隊が襲い掛かってくるんじゃないか?
どうしよう……不安だ……。
負けないとはいえ、あの人数相手にするのは面倒くさい。
そうこう考えているうちに、教室へ着いてしまった。
有効な対策など、何一つ浮かんでいない。
どうするか……。
まあ、ここまで考えても出なかったんだ。
これ以上考えるよりは、時間をかけて妙案を思いつくことを待つしかないな。
そう考え、思考放棄してすがすがしい気分のまま教室へ入る。
いつものごとく、俺の机に集まる龍次たちがいた。
「お、戻ってきたですぞ」
「ずいぶん時間がかかったね」
そう文人が言うと、龍次が俺を指さして言う。
「こいつ、さっき東城先輩の親衛隊に連れていかれてたんだよ」
「それは……大丈夫だったのかい?」
「来栖氏。どんなことをされたのですかな?」
文人と国男が少し心配そうに聞いてくる。
「そのことを話すためにさ、屋上に行かないか? ……ここではあんまり話したくない話も絡んでくるからさ」
後半は周りに聞こえないように、声を小さくして話す。
「わかった」
文人がそういって、席から立ち上がり教室を出る。
俺たちはそれについていく。
「それで? 親衛隊に連れていかれてどんな話をしたんだ?」
開口一番、龍次が聞いてくる。
「実はな、親衛隊に香奈先輩と付き合ってるってバレたんだ」
「それは……ストーカーの件とかも全てって事かい?」
「いや、違う。正しくは俺が香奈先輩と付き合ってるんじゃないか? っていう疑いをもたれてただけなんだけど……」
いったんここで言葉を区切る。
『だけなんだけど?』
そう問い返してくる龍次たち。
「ちょっとね……ポカをやらかして、疑いが確信になっちまったんだよ」
「どんなポカやらかしたんだよ……お前は……」
龍次がちょっと呆れたように聞いてくる。
「かいつまんで話すよりも、もっと詳しく話したほうがいいか」
「ああ。そうしてくれると助かるな」
俺は、龍次たちに親衛隊の本部での話をする。
「お前、やばくね?」
「これは……やばいね」
「やばいですな」
三人とも、同じ感想が出てくる。
「やっぱり? ……ヤバいよな、この状況」
俺の言葉に、龍次が返答する。
「まず、お前が東城先輩と付き合ってる、さらに三股している。この時点でバレたら普通の生徒からのヘイトがやばいわけだな」
そうだな。
女子からも男子からも、嫌われるだろうな。
絶対バレたらいけないわけだ。
「次に、お前の話の……西田先輩? がからのヘイトもまだ溜まってるどころか悪化してるよな」
チンピラ君は納得してなさそうだったしね。
親衛隊から除隊されたくないから、あの場はああ言ったみたいな感じだろうね。
「最後に……剛田先輩、だ。お前の懸念通り、ストーカー事件が解決して、東城先輩と別れたならあの人の言葉を借りて言うと『香奈様に選ばれかったお前は、相応しくない』ってことで粛清される可能性もある。」
だよな………。
あの先輩も親衛隊の例にもれず、香奈先輩のことになるとヤバそうな人だからな。
「もう一つ、問題もある」
龍次の言葉に驚く。
えっ? まだ何かあったっけ?
「お前が別れなくても、偽彼氏だということがバレるだけで粛清される可能性もある。だから、ストーカー事件の話まで言わなかったのはファインプレーだな」
あ! そうか! 偽彼氏ということは、香奈先輩が選んだというわけではないからか。
致し方なく選んだ相手が、たまたま俺だったって話だもんな。
「本当に君は……綱渡りのような状況にいるね」
「マゾなのではないかと疑うレベルの苦境にいますなあ」
マゾなわけねえだろ。
変わってくれる人がいるなら、喜んで変わりたいぐらいだよ。
「で? お前、本当にどうするつもりなんだ?」
そう龍次が問いかけてくる。
「一つ、案がないこともない」
俺は答える。
「ストーカー事件を解決したら、香奈先輩についてきてもらって釘を刺してもらう。で、その時に偽彼氏の話をばらす。以上。」
俺の案を聞いた龍次たちは、ありえない! みたいな顔をした。
「お前……それは案とは言わないだろ」
「それは……ちょっと……」
「それで止まるわけがないですぞ!」
文人の苦笑いが一番堪えるな。
「まあ、どうせストーカーはすぐには見つからないだろうし、何か考えておくよ」
そういって、話を打ち切る。




