ストーカーって怖いよなっていう話。 ⑥
次回は10/26の午前八時です。
「――――ということがあって俺と月島は付き合うことになったんだ」
ふう、これで満足したかな? あいつらも。
「いや待て待て待て! お前、話の内容薄すぎない? この際、罰ゲームで告白したら付き合ったって話は置いとくにしても! 肝心の、月島さんがお前をずっと好きだった理由を話さねえのかよ!」
怒鳴ってくる石田に俺はこう返したい。
それは、俺も知りたい。
「いや、俺も心当たりないんだよね……。月島の勘違いかな? と思ってるんだけど、もし勘違いじゃなかったら忘れちゃってる俺、くそ野郎じゃん」
そこがネックなんだよな。
そこさえ何とかできればなあ。
「あと、お前! 明らかに話の途中で出てきたさ! 黒髪赤目の女の子と月島さん、かかわりあるだろ、絶対!」
もしかして、何かに気付いたのか?
俺の話の中に何かヒントのようなものが隠されていたのかもしれない。
「石田、何を根拠にそんなこと言ってるんだ?」
「それが物語のお約束だろうが!」
ここは現実なんだよ!
石田に期待したのが馬鹿だったわ……。
「もっとマシな意見ねえのかよ!」
「絶対、関係あるって! 一度話してみろよ、その話!」
関係ないと思うけどなあ。
「また、今度な」
「今度っていつだよ」
「とりあえず、俺の状況が落ち着いてからな。今はマジでヤバイから」
ストーカー君に狙われてるっぽいからな。
「チッ、わかったよ。落ち着いたら、声かけろよ。お前にもかかわってくる話だからな」
そう言い残して、石田は席に戻っていく。
ほとんど位置変わってないけどな
一旦、話が終わったところで、月島が教室に入ってくる。
まるで、はかったようなタイミングだな。
月島は教室を見渡して、俺に気が付いたのかこちらに駆け寄ってくる。
「来栖君……じゃなくて秋人君。はい、これ今日のお弁当」
そういって、弁当を渡してくる。
差し出された弁当を受け取り、俺の方も鞄から弁当箱を取り出す。
昨日の弁当箱を洗って持ってきたのだ。
香奈先輩にはすでに返したし、詩織先輩には昼休み弁当を受け取りに行くときにでも返せばいいだろ。
そう考えていると、月島がちょっとだけ得意そうな顔をする。
「今日は、ちゃんと甘くない卵焼きにしたから。期待してもいいわよ」
おやあ? 男子諸君は、俺が月島に弁当をもらっている事を知らなかったのか、人を殺せそうな目つきで睨んでくる。
もちろん石田もだ。
だが……。
「何?」
月島が一瞥するとすぐに散っていった。
よっわ!
もっと頑張れよ!
根性見せる場面だろ、そこは!
心の中で男子どもに激励を送っていると、月島が振り返る。
そして、そのまま俺を見つめる。
何か言いたいことでもあるのかと思い、数秒待つも一向に口を開く気配がない。
男子どもの視線がどんどんきつくなっていってるし、このまま見つめ合っているわけにもいかない。
仕方なく、口を開く。
「月島さん、何か他に用事でもある?」
「……なんでもないわ」
そう言って、月島は髪をふわりとひるがえし自分の席に向っていった。
何だったんだ?
変な間があったし……。
言いたいことがあるなら、言ってくれないと伝わらないぞ。
俺、そういうの察することが苦手だから
昼休み。
詩織先輩のところへ弁当を受け取りに行こうとすると、龍次が近寄って来て銀色の弁当箱を取り出してくる。
「悪い。昨日、渡し忘れてたわ。ん? ああ、安心していいぜ。ちゃんと弁当箱、持って帰って洗っておいたから」
俺の視線に気付いたのか、後半にそう付け加える。
「大丈夫。俺、もらった弁当あるし」
「そういえば、そうだったな」
「じゃ、俺弁当貰ってくるし」
そう、言って教室を出る。
すると、肩にポンッと手を置かれた感触がした。
なんだ、まだ用事があったのか?
「なんだよ? 用ならさっさと言ってくれ、龍次………」
だが、後ろを振り向いた俺が目にしたのは龍次ではなかった。
巨体が俺の視界をふさいでいる。
なので、少し後ろに下がる。
目の前にいたのは、丸渕眼鏡をかけて鉢巻をまいた男達だった。
大体は肥満体型だが、中には筋骨隆々の奴も見受けられる。
えっ、こいつら誰……。
そう思って、なにか判別する要素はないかと観察すると、鉢巻に文字が書かれている。
目を凝らして見てみると『香奈♡命』と書かれている。
こいつら、香奈先輩の親衛隊か。
「お前が、来栖秋人か」
一番前に立っているマッチョな男がそう聞いてくる。
きちんとネクタイは締めているので、二年生なのがわかる。
「はい、そうですけど……。何か御用ですか?」
「お前に聞きたいことがある。俺たちについてきてもらおう」
命令口調かよ。
あの先輩にして、この親衛隊ありってことか。
どう断ればいいだろう?
この先輩、言い方からしてプライドが高そうだしこちらも条件を出したら怒って帰ってくれないかな?
「あー、その前に生徒会室に寄ってもいいですかね? あと昼食を食べながらで良ければ……」
これでどうだ?
怒ったか?
「いいだろう。だが、逃げないように俺が付いて行く。いいな?」
そう答えるマッチョ先輩。
続けて後ろを振り向き、親衛隊に指示を出す。
「お前ら、先に親衛隊本部に行ってろ。こいつは俺が後で連れていく」
全然怒ってなさげだ。
あと、本部なんてものがあるんだな。




