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あれ? 俺……詰んでね?  作者: Aion
小悪魔天使、陥落編
12/41

ストーカーって怖いよなっていう話。 ②

次は10/9の午後八時です


 どうすっかなあ。

 ここに10分くらい居て考えてるけど思いつかねえ。

 それに、さっきからちょこちょこ爺さん婆さんが生暖かい目で通り過ぎていくから、すごい恥ずかしい。

 横に座ってるせいか?

 でもなあ、いまさら立ち上がるのも、なあ?

 もういいや!

 面倒くさいし、適当でいいだろ。


「そんな落ち込まないでくださいよ、先輩! 俺は先輩みたいな可愛い彼女が持てて幸せですよ! たとえ、偽物の彼女だとしても俺の一生の思い出です!」


 こんなもんでいいだろ。

 まあ、これ以降こんな機会はないだろうし、嘘ではないよ。


「本当?」

「本当です!」

「……励ましてくれて、ありがとう……。よし、来栖君! 帰ろうか!」


 あっ、元気になった。

 あと、名前呼びにグレードアップしたな。

 移動のためにベンチから立ち上がり、香奈先輩の前にしゃがむ。


「香奈先輩。俺の背中に乗ってください」

「あ……」


 残念そうな声が背後から聞こえてくる。


「どうしました?」

「なんでもないっ! それより! 子ども扱いしないで!」


 なるほど、背負われるのが不満だったのか。


「でもですね。香奈先輩を送るには、この方法がいいと思うんですよ。下、上靴ですし」

「そうじゃなくて! それ以外にもあるでしょ! ほら、例えば………お姫様抱っことか……」

「すみません、声が小さくてよく聞こえなかったので、例えば、の後をもう一度言ってくれませんか?」

「うるさい! ほら、乗ったから早く行って!」


 乗り方、乱暴だなあ。

 さっきまで機嫌治ってた感じだったのに、また不機嫌になるとか情緒不安定かよ。


「先輩。鞄持ってください」

「もう持ってるよ!」


 なら、行くか! と思ったけど俺、先輩の家知らないわ。


「私の家は、君のマンションと同じだよ」


 まだなんも言ってねえのに、察してきた。

 エスパーですか?

 あと、さらっと俺の家バレてるじゃん。


「明日の朝も、迎えに来てよね! 君のせいで私の靴、学校に置きっぱなしだし!」

「了解です」


 明日の朝は早起きしないとなあ。

 あんまり朝は強いほうじゃないから、心配だけど……。





「先輩、先輩。着きましたよ。部屋番号教えてくれないと、送れませんよ」

「ん、んん? ……私寝ちゃってた?」

「はい。それはもう、ぐっすりと」

「やだっ! ……寝顔見てないよね?」


 おやあ? ちょっと声のトーン落ちたぞ。

 下手な返答すると殺されそうな、圧を感じる。


「先輩を背負ってるんですから、見れるわけないじゃないですか」


 嘘です。

 がっつり見ました。

 寝顔は無邪気で結構かわいかったです。


「それもそうだね! えーっと私の部屋番号は……」

「これ、俺が見てたらダメじゃないですか?」

「別に。君ならいいよ」


 じゃあ遠慮なく。

 ふむふむ、504か。

 ん? 俺の部屋の真下か!

 うわ、次から動画撮るとき気を付けよう……。

 エレベーターにのって、4階分上がる。


「ありがとう! ここでいいよ!」

「いやいや、あとちょっとですから最後まで送っていきますよ」


 エレベーターを降り、部屋番号504のところの前に立ち、インターホンを鳴らす。

 押してから気づいたけど、先輩後ろに乗ってるんだし部屋に誰もいないんじゃないか?

 

 その心配は杞憂だったようで、中から声が聞こえてくる。


「はーい。どちら様ですか?」

「あっ、俺は来栖明人といいます。香奈先p、えーと、東城さんの後輩でちょっと事情がありまして……お宅の娘さんを送ってきたんです」

「香奈が!? 何か、うちの娘に起こったんですか!? まさかストーカーが!?」

「いえ、そういうわけではないです」


 ストーカーの件、お母さんに話してたんだな。

 当たり前か。

 そんな話、話さないほうがおかしいよな。


「もう! お母さん、落ち着いてよ!」

「香奈? 大丈夫なの?」

「大丈夫だって! だから早く扉開けてよ!」

「わ、わかったわ」


 鍵が開く音がして、扉がひらかれる。

 中から、香奈先輩が成長すればこうなりそうだなっと思わせるような、美人の女の人が現れる。

 ……一部を除いて。

 香奈先輩のお母さんが去ってから、玄関に香奈先輩を下ろす。

 その時、思わずリボンの下あたりを見てしまう。

 

 本当に、あの母親から香奈先輩が生まれたのか?

 それにしてはサイズに差がありすぎるような……。


 そんなことを考えていると、香奈先輩に、腹に肘鉄を打ち込まれる。


「いった! ぐああ、ちょ何するんですか!」

「来栖君、また私の胸の事考えてたでしょ。お母さんと比べて、全然無いなって」


 底冷えするような声で、俺にそう問いかけてくる。

 気のせいか、周りの気温が下がったように感じられる。


「いや、そそそそんなことはないですよ?」


 怖すぎて、ろれつが回らない。

 お母さんがいなくてよかった。

 もしいたら俺が、先輩とその母親の胸を見てる最低野郎だと思われるところだった。

 間違ってないけどさ。

 

「もういい! 早く帰って!」


 そういって、先輩は俺をグイグイ押して部屋の外に出そうとしてくる。

 俺を部屋から追い出すと、先輩が扉を閉めようと手をかける。

 扉が閉じる前に、一つ訂正しておかないと。


「先輩! 俺、一つ訂正します。先輩の胸はちゃんとありました。その……背中に乗せたときのの感触が、柔らかかったです」

「最後の言葉がそれ!? もういい! じゃあね、変態君!」


 扉が閉まるときに振り返ると、真っ赤になった香奈先輩が見えた。

 やっぱり怒ったかな?

 デリカシーない発言だったもんなあ。

 でもなあ、やっぱり嘘はよくないでしょ、うん。

 ちゃんと、間違ってたなら間違ってたって言わないと。

 胸のことは気にしてたみたいだったし、ね。


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