ストーカーって怖いよなっていう話。 ①
次は10/8の午後七時です。
終礼が終わるとわき目も振らず、教室を出る。
いそいで下駄箱に着き、帰ろうとしたところで香奈先輩との話を思い出す。
そういえば……迎えに行かないとダメなんだった……。
こっそり帰るとかダメかなあ?
ダメか。
ストーカーは本気で怖がってそうだったし、あと約束すっぽかしたらどんなことされるかわかったもんじゃねえ。
くそっ! あのマスコットの皮をかぶった腹黒め!
一応、靴は持って行っておく。
どこでも履き替えれるようにってのと、靴がないからもう帰ったとおもって、男子どもが外を探しに行ってくれないかなっていう魂胆だ。
放送室の前に立ち、扉をたたく。
コンコン「失礼します」
「はーい。あっ、君が噂の……。部長! 彼氏くんが来ましたよ!」
放送室から男子部員が出てきて、香奈先輩を呼んでくれる。
空いている隙間からこっそり中を見ると、机みたいなものが見えた。
昼にも来たけど、やっぱり変だよなあ。
放送室が部室と兼用なんて。
これも昔の生徒会が決めたことだったりするのかな?
「わかった! すぐ行くね!」
そう声が聞こえて、パタパタと移動してくる音が聞こえる。
「それじゃあ、帰ろうか?」
部員の前だからか、香奈先輩は部室を出てすぐ俺の腕に引っ付いてくる。
ただ、腕に柔らかい感触が一切触れてn……。
「いっ」
「どうしたんですか? 彼氏くん、大丈夫ですか?」
「本当だ! 具合でも悪いのかな?」
お前がつねってきてるんだろうが!
そう言おうとすると、目が笑ってない香奈先輩が視界に映る。
お前、わかってるよな? と目がそう言っている。
「いや、何でもないよ。うん、大丈夫、大丈夫 それより先輩。さっさと帰りましょう」
「君がそう言うなら……帰ろうか!」
「大丈夫ならいいんです。……彼氏さん。部長をよろしくお願いしますよ」
最後に男子部員がささやいてくる。
そのまま、放送室が見えなくなるくらいまで遠ざかると俺は香奈先輩に文句を言う。
「何なんですか! いきなり、つねるなんて!」
「君さ! さっき、私の胸が小さいみたいなこと考えてたでしょ」
後半にいきなり声のトーンが下がる。
「い、いや? そんんなことはないですよ?」
いきなり言われたせいで、上手くごまかせない。
「ふーん。そっかー」
一見気にしてないように聞こえるが、声のトーンが下がったままだ。
下手に怒られないのが一番怖い。
「その……すいません! 実は考えてました! 許してください!」
「別にそんな怖がらなくてもいいじゃん! 別にもう気にしてないよ! ……許しはしないけど」
こっわ! えっ怖すぎじゃない?
「そのお、どうしたら許してもらえますか?」
「うーん……あ! じゃあさ! 私のことをストーカーしてる人を見つけてよ!」
まあ、それぐらいなら……。
どうせ一緒に帰ってる俺にも何かアクションはあるだろうし。
そこから辿れば、見つけやすいか?
「なーんてね。冗d……」
「わかりました! 香奈先輩のストーカーを見つけてみせます!」
あれ? 何か言いかけてた?
「香奈先輩? 何か言いましたか?」
「いや! 別に何でもないよ! 何でもないよ……」
? 変な先輩だなあ。
「あ! 見つけたぞ!」
は? 誰だよ?
こんな大声出したやつ。
何を探してるか知らないけど迷惑な奴だなあ。
「こっちだ! みんな! こっちに来栖がいるぞ!」
え、俺?
「やはりか! 外靴も上履きもないから、もしかすると校内に残っているんじゃないかとにらんで正解だった!」
無駄な優秀さを発揮すんなよ!
今はまだ一人だが、そのうち応援が来るに違いないので今のうちに逃げることにする。
「先輩! 行きますよ!」
先輩を抱きかかえて、走り始める。
「ちょ、ちょっと! き、君! これお姫様抱っこってやつじゃ……」
走ってるせいか、香奈先輩の言葉がぼそぼそとしか聞こえない。
今の状況で言う言葉だし、何か重要な情報なのか?
「香奈先輩! なんていいました?」
「な、何でもない!」
何でもないらしい。
それなら、舌噛むかもしれないし黙っててほしいなあ。
下駄箱のあたりは運よくマークを外れていたのか、だれにも邪魔されることなく校門を出れことができた。
数分ほど家の方向に走っった後、後ろを振り返る。
よし、誰も追いかけてきてないな。
それなら、香奈先輩をいったん下ろすか。
そろそろ靴も変えたいし。
近くに座れるところがないか探すと、小さな公園をみつけたのでその中にあったベンチに座ってもらう。
俺も香奈先輩の横に、座る。
上履きを鞄の中から取り出した外靴に履き替えながら、香奈先輩に謝る。
「すいません。靴にも履き替えられないままこんなところまで来ちゃって……。その……勝手だとは思うんですが……このまま帰りませんか? もちろん、送っていくので」
「別にそれはいいんだけど……何で君は追われてるの?」
月島のことがばれるのは、まずいよな……。
ちょっと、ぼかして話すか。
「あー、そのですね………俺に彼女ができたのがバレたみたいで……。……話すと嘘がバレそうなので逃げてたんですよ」
「……もしかして、私のせいかな? ごめんね、巻き込んだ上にそんなことまで……」
そういえば、香奈先輩は俺があと二人と付き合ってるとは知らないんだっけ?
そう考えて、さっきの俺の発言を聞くと……。
あっ! 香奈先輩の話とも取れるな、これ。
「違います。違います。先輩は関係ないですって」
うん、ゼロではないけどバレたのは月島のほうだからあんまり関係ない。
「気を使わなくていいよ……。わかってるから……」
落ち込んでいるからか、猫の皮をかぶっていないからか、トーンが落ちたままの香奈先輩。
これはさすがに俺でもわかる。
前者だ。
そもそも、先輩は化けの皮がはがれた後でも、明るいままだったし。
この姿を見てると、なーんか俺も気分が下がるんだよなあ。
俺が勘違いさせるようなことを言ったのが原因でもあるんだし、なんか責任感じるなあ……。
果たして、どうすれば香奈先輩をもとの明るい先輩に戻せるのか………。




