2–3:入団テスト?
「それは、やめておくべきではないですか、団長」
誰だと思い、そちらを見やると、昼飯を食べ終えたヒルデがいつの間にか、こちらに来て不満そうにガウェインに反対の意を示した。
「ヒルデか。なぜだ、私は彼が良い動きをしていたと思うし、訓練すればより優れた騎士にだってなれるかもしれない。それに、優秀な者が増えればケトス王国にとってもプラスに働くと思うが」
「確かにそうかもしれませんが、団長は彼のことをよく知らない。私は少なくとも、この1ヶ月共に過ごしてきましたが、彼が兵士、ましてや騎士になんてなれるとは思えません。騎士団に入るということは、この国の国民を守るためなら、命を懸けなければなりません。さらに安全を脅やかす者がいれば、命を奪う側にだってなる。そういう覚悟が必要です。彼にそんな覚悟があるとお思いですか?」
ガウェインの意見にヒルデは力強く反対する。彼女らしくない行動だ。表情を一切変えない彼女が感情を面に出しているのがわかる。声は大きく、険しい顔をして。さらに腕を大きく使い、ガウェインに向かって訴えかけている。僕の知っているヒルデだとは到底思えない。双子の別人じゃないかと疑ってしまうほどに。でも、なぜ彼女がここまで騎士団入りを反対しているのか、正直わからないでいた。
まだ、騎士団に入りたいとは言っていないけれど、入るか入らないかは最終的に自分自身が決めることだ。
覚悟が必要……その意見もごもっともだと思う。それに僕にはそんな、勇敢に、非情に、なる覚悟はない。でも、先ほどの手合わせでワクワクしていた自分がいるのもわかっている。もちろん、ワクワクしたから、なんて遊び半分な気持ちで騎士団に入るつもりはない。やるからには、下僕の仕事同様に本気で取り組むし、覚悟なんてその過程で付いてくるものだ。最初から命を懸けれる、相手の命を奪えるなんて言っているのは口だけの嘘つきか常識から外れている変わった奴だと思う。それに、途中で自分に向いていないと判断すれば辞めったって大丈夫なはずだ。
「それは……」
「——僕が決めることだ!」
ガウェインの言葉を遮るように拓真は自分の気持ちを吐き出した。
それを聞いて、訓練兵たちも何事だ! と、今まで雑談を交わし合っていたのが綺麗に止んだ。
ガウェインも自分の言葉を上からかき消されたことに驚いているが、やがて、白毛交じりの短いあごひげをぽりぽりと掻きながら口を開いた。
「そうだな、その通りだ。お前の意見が最優先だ。——では、単刀直入に聞く。どうしたい?」
真剣な表情だ。その場の空気が張り詰めていくのがわかる。その空気にヒルデもおとなしく口を閉ざし、拓真の返答を気にしている。
「自分は入れてもらえるなら騎士団に入りたいと考えています」
「なっ! 何を言っているのだ貴様は」
反対していたヒルデは拓真の返答に動揺を隠せず、彼へと詰め寄る。
「やめろ、ヒルデ! 拓真が決めたことだ。彼が選択したんだ」
ヒルデは拓真とおおよそ1メートルの距離まで来て、足を止めた。
「しかし……」
「もうよい、わかった。理由はわからんが、そこまでお前が感情を見せ、反対するのも珍しい。なら、お前自身で拓真が騎士団にとって必要な存在か、試してみるといい」
「いいのですか?」
「ああ、ただ本気を出すのは許さん。あくまで見極めることが目的だ。彼に素質があると判断すれば入団させる」
「わかりました。では、違うと判断すれば、入団は却下してください」
「仕方ない……」
「じゃあ、木剣を貰えますか?」
ヒルデは拓真が騎士団に入るか入らないかの話を邪魔にならない距離で耳を澄ましていた訓練兵にお願いをした。受け取った剣を大道芸をしているのかと思うぐらいに右、左と、くるくると回している。右手、左手と交互に馴染んでいるかの確認をしている。
そんな中、拓真は唖然とするしかなかった。なぜか、拓真本人の意思を聞かれることなくヒルデとの手合わせが今まさに始まろうとしていた。
(いや、なんでこんなことになってるんだー! 結局、僕の意見とは……)
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