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現実より、異世界生活⁉︎  作者: ちゃぐ
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2–1:時が経ち……


 あの日から1ヶ月は経っただろうか。毎晩、ベッドに紐で繋がれるのにも、終始、彼女に見張られているのにも慣れた。彼女の相変わらずの無表情にも。仕事も少しずつと慣れてきていた。たまにミスをして、指導係のカルファさんに怒られることはあるが、仕事場の人たちもいい人ばかりで、毎日が楽しい日々だ。

 これまでの1ヶ月は僕にとってはあっという間の出来事だ。下僕の仕事をしていない時はマリーと共に行動することが多かった。この世界に来た当初に見せてもらった弓術なんかを彼女から教えてもらったり、マリーの妹と一緒の勉強会に参加して、基礎的な知識やこの国の歴史について学んだ。また、街に出かけて買い物を楽しんだり、『まほまほ雑貨』に足を運んで、シンシアという商人に色々な魔法を見せてもらいながら魔法について教えてもらった。

 彼女はマリーが使っていた水晶玉の誰でも使えるという簡易魔法インスタントマジックではなく、限られた者・時間を掛けて習得した者だけが使えるという複雑魔法チャントマジック。簡易魔法の水晶を使って発動する魔法とは違い、術者の詠唱を必要とする魔法だ。魔法を見せてもらうのは夢みたいな感覚を味わえ、とても楽しく、同時に自分も扱えるようになりたいと考えていたが、まだ一度も簡易魔法を使えてはいない。なぜなら、安価ではないからだ。それなりに値段が張るのだ。僕は城に置いてもらいながら、下僕として働き、少しではあるが賃金も貰っている。ただ、僕が魔法を使えるのはもう少し先になるだろう。


 朝になり、自分に割り当てられている部屋で目覚めると、ヒルデによって、腕に縄が巻かれベッドの格子へと繋がれている。毎日の日課みたいなものだ。

 その彼女はソファーでスヤスヤと寝息を立て、仮眠を取っている。使用人に割り当てられている部屋には標準的にベッドが2つ備わっている。それならなぜ、もう一つのベッドで寝ないのかと言うと、それはもう一人の同居人が眠っているからだ。その彼は料理人の見習いのササミ。今も僕の隣のベッドでいびきをかいている。なので、ベッドは僕とササミが使い、彼女はソファーで仮眠を取る。彼女にも自分の部屋があるらしいのだが、命令通り僕のことを四六時中、見張るためにこのような形となっている。しかし、仮にも女性だ。なので、たまにではあるが、どこか頑固な彼女を無理言って説得し、彼女と交代でソファーで寝ることにしている。

 朝はいつも早めに起床することを心掛けている。なぜなら、外に出て、気持ちの良い空気を吸いながらランニングするためだ。それと同居人のササミを起こしてあげるためでもある。彼は料理人で仕事が朝早いのだ。


「ーーヒルデ……縄外して」


 まず、彼女を起こして、硬く結ばれた縄を外してもらう。それからササミを起こす。いつものことだが、中々起きてくれないので少々荒っぽいやり方になってしまう。


「ササミ、起きろって!」


 彼の頰に張り手を一発決める。そうする事で大抵起きてくれる。


「い、痛てえよ! もう少し優しく起こしてくれよ」


「何回も呼んでるのに起きないからだろ」


 彼を起こして、着替えを済ませると外に出て、ランニングを開始だ。もちろん、見張りの彼女も一緒だ。

 走るコースは決まっており、城の周りを一周してから街まで行って、戻ってくる。大体、1〜2キロぐらいだろうか。なので、そんなに疲れる距離ではない。ただ、最初の頃は体がなまっていたので、息をゼーゼーと切らしていたが、今では呼吸を乱すことなく走りきることができるようになった。

 部屋に戻るとササミはもう仕事場、つまり食堂と併設されている厨房に行ったため、姿はない。部屋には彼によって脱ぎ散らかされた服などが散乱している。僕は散らかった服をたたんで片付けてから、少し汗ばんでいる体を熱々のシャワーを浴びて流す。

 浴室から出ると、着替えを済ませ、朝ごはんを食べるため食堂へと向かった。

 最近になって見張りのヒルデと一緒にご飯を食べるようになった。しかし、食事中の楽しい会話は一切なく、相変わらずの感情を表に出さない。そんな食事だが、僕は急いで食べ終えると席を立って、食器を返却しに行く。一方で彼女はまだゆっくりと食事をしている。席に戻り、彼女が食べ終えるのを厨房で働いているササミを見物しながら待つ。彼女は食べるのが遅く、いつも自分のペースを保っている。ランニングの時もそうだ。見張りのはずなのに、僕の前方を走っている。時折、気にするように後ろを振り向くが基本的に前を向いている。そして、今もそうだ。僕が食べ終わっているのにも関わらず、その速度を速めようとはしない。だが、それは僕に対して遠慮というものが無くなってきているという証拠ではないかと思っている。だから、遅いから早くしてくれというより、彼女との関係が良い方向に向かっていると楽観的に考えている。


 食事を終え、下僕として仕事に取り掛かった。この城に住むご家族の食事の配膳、城の清掃、訪れる客人の対応など、様々なもの、いわゆる雑用である。

 この城にはある家族が住んでいる。まあ、家族と言っても、そこらの世間一般の家族ではなく、この国を統治している国王のご家族だ。国王と王妃、そして娘が二人。二人のうちの一人、王女のマリーによって、僕はこの城へと導かれて、今ここにいる。彼女と出会わなければどうなっていたか想像できない。死んでいたかも……。

 もう一人の王女は小さい少女だ。名前はシュリー、彼女とは勉強の時に話をしたりする。妹がいたらこんな感じかな、なんて考えたりする。とても可愛らしい子だ。ただ、姉のマリーとは対照的にコミュニケーションを取るのが苦手らしく、僕も最初の頃は彼女との間にあまり会話が無かったが、今は少しずつではあるが、会話が増えつつある。ただ、時折、顔を赤らめる場面があるのだが未だに理由がわからないでいる。

 国王と王妃についてだが、彼らについては接する時間が少ないため、あまりよくは知らないが僕がこの城で住み込みで働くとなった時に国王と王妃の間でひと悶着あったのだが、時間が経つとその関係は修復したようだった。だが、だからと言って王妃は僕がこの城にいることを完全に納得したわけではなく、まだ怪しい者ではないかと疑っているように思う。このことをマリーに話すと、「心配しすぎよ」と言われてしまう。彼女の言うとおり、そうかもしれないが、そうじゃないのかも……。

 

 この国はケトス王国、『七王国』というものの一つだそうだ。自然豊かな土地に堂々と建っている城、それにそこから少し行った所には賑わいを見せる街があり、そこに住まう国民でこの国は成り立っている。僕はその国の城で下僕として働いている。仕事は山ほどあるが、毎日が学ぶ事だらけでとても楽しい。しかし、今僕が存在しているこの世界とは違うもう一つの世界、僕が元々いた世界。そのことも頭の片隅に存在しており、夜中考え込んで寝られないことなんかもあった。しかし、そんなことを考えていても仕方のないことだと思い、今は頭のどこかにその意識はあるが、あまり考えないことにして生活している。

お読み頂き、ありがとうございました。

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