1–22:書物の重み
昼食を食べ終わると僕たちは食堂を後にした。
現在の時間は十四時前ぐらいで、勉強でマリーが迎えに来る十五時まで少し時間がある。それまで城の掃除をしていくことになった。
城は一階から五階まであり、使用人の部屋がある二階を除いて、全ての部屋という部屋、通路を掃除していく。これだけ広いと掃除と言っても一苦労だ。一体どれくらいの時間が掛かるのだろうか。
それに下僕の人数はそこまで多くない。全部を把握しているわけじゃないけど、僕を入れて十人、居るか居ないかだ。それだけの人数でこの大きな城の中を掃除していかなければならない。その上、これだけが僕たちの仕事ではない。他にもやらなければならないことがたくさんだ。丁寧にかつ素早く済ませて、次の仕事にという感じだろう。
とりあえず、手分けして掃除を始める。見習いである僕はカルファさんと一緒に、他の人は一人で掃除してまわる。
そして、僕たちは掃除をするため、動きやすい格好に各々なった。僕は上に着ているジャケットを脱いで、シャツの袖口を腕まくりした。
「俺たちは一階の大広間を掃除していくぞ」
「はい!」
僕は床を拭くモップ、タオルなど、その他色々と掃除に使うだろう物をカルファさんに置いてある場所を聞いて用意した。
とりあえず、モップを手に取る。
これだけ広いと正直どこから掃除していけばいいのか分からない。
僕はカルファさんに指示を仰ぎ、掃除を進めていった。
しかし、この城は掃除をするほど汚いというより、どちらかと言うと綺麗に見えるのだけど、ここではこの掃除を毎日のように行っているらしい。
広間の床をモップで拭いていると、気がつくと一時間が経っており、マリーが迎えに来る時間になっていた。
「拓真、お前は時間だからそのモップは置いといて、手でも洗ってこい! マリー様が来る前にな」
「はい」
僕は昨日のパーティーで行った洗面所に手と、あと顔を洗って身だしなみを整え、広間に戻ってきた。
すると、マリーはすでに来ており、僕を待って退屈そうに広間のピカピカに磨かれたばかりの床を見ていた。
「ごめん。待った?」
「何やってんのよ。待たせるんじゃないわよ」
彼女はいつも通りの反応を見せ、僕に軽く腹を立てている。そんなに待たせていないはずだけど…。
「ごめんって。汚れてたから手を洗ってたんだよ」
「そんなの知らないから……はあ〜、もういいから行くわよ」
彼女は人のことを考えないのか、マイペース過ぎる彼女に僕はかなり振り回されている気がする……。
「待ってよ」
「もう時間過ぎてるんだから、急ぐわよ」
そして、彼女は先に歩き出して行ってしまう。
「ちょっと行ってきます」
「頑張ってこいよ」
そして、僕はマリーの後を付いて目的の場所に向かった。
まあ、どこに向かっているのか知ることなく、マリーの案内で付いて行くしかないのだが、道中はなんてことのない話をしていた。
※
「着いたわよ」
そこは四階にある一室で、マリーの妹と勉強を教えてくれる先生だろう女性が僕たちを椅子に腰掛けて待っていた。そして、マリーも近くにあった椅子に座った。
それを見て僕は一言、
「よ、よろしくお願いします」
これからお世話になる二人……マリーを含めて三人に向けてだった。
「こちらこそ、よろしくお願いしますね」
僕よりも年上のお姉さんが優しそうな声音で話す。
「お願いします……」
シュリーは恥ずかしそうに下を向いている。
「いまさら何よ……」
マリーは僕の方を見ず、どこか違う方向を見ている。
それを見て、なぜか、少しマリーをからかってみることにした。
「マリーには言ってないよ……」
すると、顔をリンゴのように真っ赤にしたマリーが振り向き、僕を睨みつけた。
「う、うるさい! か、勘違いしたのよ。そもそも、紛らわしいあんたが悪いんでしょ」
いつものマリーとは違い、早口になっている。相当動揺しているようだ。ここら辺にしとこう。
(でも、面白いな〜。マリーの反応は……)
「冗談だよ。悪かったね、マリーにもお願いしてる……」
その瞬間、顔をさらに真っ赤にしてマリーは椅子から立ち上がり、何かをこちらに向けて放った。
「ふーざーけーるーなー!」
その何かは見事、僕の顔面にヒットした。それはこれから勉強で使うだろう書物であり、結構な重さがあるものだった。そして、痛みがくる暇もなく、僕はそのまま後ろに吹っ飛び、床に倒れると同時に意識を失ってしまった。
お読み頂き、ありがとうございました。




