表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
短編C-② 『緊急議題 ― 彼女のシリーズの迷子を失くせ ―』  作者: Taku


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
2/6

第2話「プレゼン大会」

―――中継セクター会議室―――


翌日。円卓には、前回よりも多くの資料が積まれている。博士は分厚いバインダーを三冊、スターはギターを抱え、女将はコーヒーポットだけを持って来ている。監査役が、手元のタイマーを確認しながら、立ち上がる。


「……第2回会議を始める。本日の議題は『各作品の入口』の提案。持ち時間は三分。時間厳守でお願いする」


タイマーがセットされる。

カチリ、という音が、緊張を呼ぶ。


「……では、一番手。女将さんから」


監査役が、名簿を確認する。


女将は、何も持っていない。ただ、カップを一つ、テーブルの上に置いた。


「私は、コーヒーだけ持ってきたわ」


「プレゼン資料は?」


「ないわよ」


全員が、一瞬、固まる。


「……それで、何を伝えるつもりだ?」


博士が、眉をひそめる。


女将は、静かに微笑んだ。


「私はね──」


彼女は、カップの中の湯気を見つめた。


「──頑張りすぎた人が、一人で来る店を開きたいの」


誰も、言葉を返せない。


「入口なんて、作らない。来た人を迎えるだけ。それが、『彼女の喫茶店』の在り方よ」


「……時間、です」


監査役が、静かに告げる。


女将は、それだけ言って、席に着いた。会議室に、ほのかな温かさが残る。


「……次、博士」


監査役が、次の名を呼ぶ。


博士は、分厚いバインダーを三冊、机の上に広げた。


「スライドは、全部で六十二枚」


「多い!」


隊長が、思わず声を上げる。


「持ち時間三分です。一枚三秒でお話しください。」


監査役が、冷たく告げる。


「物語の『仕組み』や『構造』に──って、三秒は無理だろ!?」


「残り、二分五十秒です」


「急かすな!」


博士は、慌ててページをめくり始めるが、途中で諦める。パタン、とバインダーを閉じた。


「……結論から言う。『読者地図』は、迷った人間が、『今、自分はどこにいるのか』を知るためのものだ。読む前、そして読んだ後、自分の現在地を確かめる作品だ」


「時間、です」


「……全く言えてない!」


「では、次の方」


博士は、椅子に座り込み、項垂れた。


「またしても、効率の名のもとに、科学が止まった……」


「次、スター」


スターは、ギターを抱えて立ち上がる。彼は、一切の資料を持っていない。代わりに、弦を一本弾いた。


──ジャラン。


その音が、会議室を満たす。


「『彼女の時空』。会いたいと思う気持ちが大切なんだ。トランク一つだけでこの時空を飛び回ってほしい」


カレシが、手帳にメモを記す。

「米米、確認」


「時間、です」


「まだ三分経ってないだろ!?」


「二分五十七秒、経過しました」


「……厳しいな」


スターもまた、席に戻った。


「次、隊長」


隊長は、姿勢を正して立ち上がる。


「私は、まず長老の『彼女の計画』を推す。あれが核だ。そして『外伝』は、計画を支えた人々の物語だ。本編を読んでから、がいいだろう」


「時間、です」


「もう言うことはない」


隊長は、胸を張った。


「では、次、青年」


「『観測者の時空』は、未来や創作の裏側に興味がある人向けかな」


少しだけ考える。


「あと──」


カノジョとカレシの方を向く。


「この二人が、どうして旅を続けているのか知りたい人にも」


カノジョが笑顔で呟く。


「言っとくけど、カレシは彼氏じゃないかんね」


カレシは俯いて目を閉じた。


「では次、学生」


学生は少し頭を掻いた。


「えっと……『彼女の教室』ですけど」


少し照れながら笑う。


「難しいことは言えないんですけどね。一つの謎をじっくり追いかけたい人なら、多分楽しめます。……それに……」


少しだけ照れ臭そうに言う。


「教室から、他のシリーズ作品を読んだ人もいるんすよ」


女将が微笑む。


「素敵じゃない」


「次、私、監査役から」


「『不可逆なインフレーション』を──」


すかさず、博士が茶々をいれる。


「経費の話はいいから!」


全員が、同時に頷く。監査役は、無言で座った。


「……次、カノジョ」


カノジョが、手を挙げる。


「私は、全部好きだから、どれもおすすめできるよ! でもさ──」


彼女は、少し間を置いた。


「──好きになった作品から読むんじゃないの?」


会議室が、静まり返る。誰も、その言葉に反論できなかった。


「……それが、一番単純で、一番正しい気がします」


カレシが、ぽつりと呟いた。


【議事録:御前会議・緊急議題】


第2回会議:各自の提案は出揃ったが、統一見解には至らず。

ただし、カノジョの発言により「好きなところから」という視点が浮上。

次回、議論を深める。



──次回予告──


「対立と混乱」


博士「順番が重要だ!」

スター「ロック魂は分けられない!」

隊長「整列だ!」

監査役「時間切れです。」

全員「まだ終わってない!」


──迷子を巡る戦いは、まだ終わらない。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ