第五話 レフィアの研鑽
フィーヤ、師匠に付けて貰った名前だ。
師匠は何かよく分からないけど、村に来た婆さんだ。腰が曲がってたから婆さんだって分かったけど、私が親に売りつけられて村で仕事をしているって聞いて、凄い勢いで周りに怒鳴ってた。その時は腰曲がってなかった。その時は子供だったから何言ってるか分からなかったし怖かった。
その後、師匠は村から私を倍額で買い上げた。
「お前の名前はフィーヤだ。わかったかい?」
「はい」
師匠は私に名前を付けた。
師匠は薬師だった。でも、
師匠は私に錬金術を教えると言った。
「フィーヤ、私はね、もっと広い世界をあんたに見てほしいのさ。あんな村で奴隷みたいな生き方をするもんじゃあない。アンタには錬金術の基礎と考え方を教える。他の事も教えるが、おまけ程度に考えておきなさい」
「はい」
私は見るもの全てが新鮮だった。
私は買い物を覚えた。
私は1年で基礎を覚えた。
「アンタは集中力があるから、どんな事もすぐに覚えそうだね。それなら、私の夢を話そうかね」
「夢?」
師匠はスキルを封じる魔導具が欲しい。
師匠は同じ境遇の人を救いたい。
師匠は私の夢を聞いてきた。
「まだ、わかりません」
「だからこそ、世界を見て回るのさ」
「今は、ただ錬金術が楽しいです」
「なら、極めると良い。私が教えた事は取っ掛かりに過ぎない、何を成すかは案外終わった後で気付くもの。いつの間にか、やりたいと思った事が結果に繋がってるもんさ」
「はい、師匠!」
「よし、今日からあんたは一人前さ!レ・フィーヤ」
私は錬金術を極めた。
それが、きっかけで師匠は家から私を追い出した。
「あんたに教える事はもう無いよ!面倒を見る義理もない。……頑張んな」
師匠は私に世界を見てきなさいって言ったんだ。
認められるようになったら帰って来よう。
雪に閉ざされた国で私は火を起こす魔導具を造った。気休めにはなったものの原因の魔物を私の力では倒せない。無力を感じた。
魔導国という国家があった。入国審査で落ちた。
私の種族はこの国では嫌われているらしい。
熱帯雨林の中に巨大な貿易港があった。商機にすり寄ってきた人垣に囲まれた。そこで私は大量の魔導具を造った。
戦争に参加した。私の魔導具は大量の人を殺した。
しばらく暴力に使われる魔導具は造らなかった。
師匠……。
私は世界を見て、まだ未熟だなと思った。
私は冒険者になった。錬金術以外も出来ないと護れない。そう、思ったから……。
帝国で訓練場を造った。訓練する人の動きを見て盗んだ。私の集中力は師匠のお墨付きだ。私は弓の扱いを覚えた。
「元はレ・フィーヤだけど、この国の人は発音しにくいだろうし、師匠は相手に合わせる気概を持てとも言っていた。だから、冒険者登録したときの名前はレフィア」
「そうなのですね。今はクリスタリア・アルケミストという部分が吟遊詩人の間では誇張されがちですが、あなたの名前は思いやりの詰まったとても良い名前ですね、レフィア」
「ですです。師匠師匠って自慢げに言うから、どんな人なのか気になってしまったのですが、そんな経緯があったなんて、感動です!」
「2人とも……照れる。私が最近作ったアレは師匠が夢に見た『スキル封じ』シリーズ。だから、師匠に手紙をって思ったけど……」
「そうね、エルフのあなたが子供の頃って言うと180年くらい前って事よね?」
私は師匠に会いたかった。
冒険者の仲間達は優しかった。
仲間の1人は貴族の家の出で、名前はセレナ。
もう1人のですです言う娘はトルテ。
2人とはプラチナランクの昇格時に知り合った。
ギルドマスターのユウヒさんが引き合わせてくれた。新しくパーティ制度という仕組みを作るらしく、依頼を助け合って遂行できるということだ。
師匠も言っていた。
「1人で出来ないなら周りの人を頼りなさい」
魔導具を造って、2人に試して貰う。そういう形に落ち着いて、段々と中が深まって今に至る。
本当に私は、師匠に会えて、2人に会えて、皆に会えて、本当に、本当に、良かった。
「私、本当に今が幸せ!」
レフィアの言葉にセレナとトルテはただ笑顔で頷くのだった。




