第十三話 ロイとノノ
カードの効果とかルールとか考えてたら更新忘れてました。結構色々なカードゲームやってるので、新しい発見があったり新弾出たりすると引っ張られますね。
怪しげな格好の二人。
彼らは元スパイ。魔導国出身の二人。
ロイとノノ、そう名乗っていた。
『元』と付くのは彼らの今の職業が違うものになっているからだ。
これはしがない玩具屋の物語。
ロイはスパイ活動にうんざりしていた。
自分を押し殺した活動内容、安い給料、上官の理不尽、牢屋のような実家。
「ノノ、スパイやめて、この国に住まないか?」
「!?」
ノノは驚いたが、それはスパイを辞めるという部分にではなく、自分も同じ事を考えていたからの驚きであった。
「私も全く同じ事考えてた。あの国給料安いし、上官は殴るし、街は暗いし、住民はいつも喧嘩してる。この国は……何ていうか、皆優しいんだよね」
「そう、そうなんだよ」
二人は追手がかかる事も予想して、目立つ場所で商売を始めようと考えていた。
冒険者ギルドの向かいの家をこれまでの貯金を使って購入、改築していく。
この街は娯楽が少ない。
子供の玩具はお土産屋の端に置いてあるパズルくらいなもので、住民達は休む事を知らない。だが、それが生きがいなのか、街には活気があった。
「ノノ、ビスマスの街のギルド前に私達の活動拠点を造ろう!」
「うん、私もココが良いと思う」
それがスパイを辞めた日の夕方の会話だった。
夕焼けがお互いを染め上げ、自分達の活動を応援してくれている。そんな気がする。
「ノノ、私が思うに、商売をするにしても、この街には既存の商売に、信頼を置ける商人が沢山いる。今から信頼を重ねていくと考えると、同じ商売をしても競争で負けてしまう」
「ロイ、私もそう思う。玩具屋はどうかしら?競合しないだろうし、玩具は私達のスキルで作れば良い。子供からの信頼を得て、未来の味方を増やす」
「全く同じことを考えていたよ」
ロイのスキルは『念写』。自分の考えた景色を魔法で描く事が出来る。
ノノのスキルは『造形』。素材ありきではあるが、瞬時に形を変形させる。
このときのロイとノノはお互いを呼び合う事でスパイ時代の名前を忘れようとしていた。
◇ ◇ ◇
一度売った玩具は売れなくなった。
当然だ。物が残れば同じ物は売れない。
ある時、ロイは提案した。
「『札遊び』というのはどうだろうか?」
「厚紙に色々な絵を描いた絵札を売る?」
「子供達をそれで競わせる。現状この街の商業的に競合することも無いし、より強い絵札を出していけば永遠に売れ続けるだろう」
「絵札が傷にならないよう守る入れ物のようなものも販売すれば売れますね。そちらは任せて下さい。単純な造りだと思うので低コストで量産可能です」
ロイはカードを使った力比べをさせようと考えていた。売る為には仕方ない。
「ちわー、新商品ある?」
来店したのはザコ様だ。
ロイとノノの店の常連さんでもある。彼は事あるごとに尋ねてくるが、大抵のお目当ては精巧な造りの模型や50ピースのパズルだ。
「新商品はないんですが、ちょっと良いアイデアを思いつきまして、聞いていきます?」
ザコ様は全部聞いた上で、これメンコじゃね?と思った。
「残念だぜ。俺様の方が良いアイデアがある。あんたらにやるから好きに作ってくれ。出来たら俺様も遊んでやるからよ」
ザコ様が話したのはトレーディングカードゲームの知識だ。ゲーム性、収集要素どれをとっても2人が聞いたことのないものだった。
「あと、別にお前らだけで作るのも良いけどよ。もう、この街の皆は、お前らの事認めてるし、協力してもらえば良いんじゃねえかな?」
「ありがとうザコ様。『カードゲーム』作ってみるよ。有名な冒険者に声をかけてカードを作るのもアリか」
「それも良いな。もし俺様を使う時があったら、弱くても良いからデッキに何枚も入れられるように頼むわ」
「それも面白いですね!」
玩具の話になると止まらないんだこの2人、と横で口元を緩めるノノであった。
◇ ◇ ◇
『カードゲーム』の販売計画は佳境を迎えた。
第1弾収録カードは全72種、コモンカードのスターターセットには14種56枚。販売前の段階でアポイントメントが取れていないのは残す所8人だった。
「エリナレース、15歳。5歳の時にシルバーランクで冒険者登録。たった1日でランクを1つ上げる。さらに翌年のランクアップ試験を1発合格。プラチナランク冒険者でドラゴンスレイヤー。申し分ないな。依頼しに行こう」
「いや、ロイ会長?あの方って魔物の出る森の中に住んでるんでしょ?私達だけで会いにいけるんでしょうか?」
「あー、非戦闘員の設定の私達では無理だろう。だが、前に依頼したあの方に話を持っていけば、あるいは……」
ザコ様なら一緒に行ってくれそう、2人の共通認識だった。
「なるほど、確かに行けそうですね」
冒険者ギルドの向かいにある玩具屋で話し合う声は、外まで響いていた。
「何を話しているんだい?君たちは」
聞こえていたぞ、と言わんばかりに騎士風の人が店に入って来た。
「ああ、丁度良い所に」
「今からギルドに依頼を出しに行こうと思っていたんですが、私達の話にご興味ありますか?」
「何なんだい?僕はただ知り合いの噂話をされているような気がしただけだ」
エリーを探していた男は超直感によって玩具屋に導かれた。
「担当直入に言いますと、エリナレースさんに用事がありまして、彼女のお宅を訪ねたいのですが、護衛を依頼しようと思ってまして」
「なに!?では、僕が護衛を務めよう!」
話が早いが下心のありそうな騎士様の反応に、ロイとノノは大はしゃぎするのだった。
場面は変わってラビリンスフォレストの結界前、
「お客様はこれにご要件を?」
Welcome Boardと書かれた白い板に備え付けられた不思議なペンで用件を書く。すると奥から奇妙な人型の物体が近付いてくる。
「魔物か?」
2人が警戒姿勢になるが、正義の騎士がすかさず反応する。
「あれは彼女の使い魔だよ」
「使い魔?」
聞き慣れない単語に2人は困惑するが、同時に考えた事があった。
「もしかして、1種で済まないのでは?」
ノノの声にロイは頷く。
カード化2種目は使い魔を使うカードタイプか。
使い魔がウェルカムボードを持って戻っていく様を2人は尚訝しげに見つめる。
程なくして、森の向こうから可愛らしげな黒髪の女の子が歩いてきた。いや、飛んできた。
木の間を縫うように歩いているのだが、速度が尋常じゃない。その様子を見て「ノノ、また種類が……」「こんなに可愛いなんて聞いてない」と漏らす2人がいた。
◇ ◇ ◇
「こんにちは、エリナレースです。ロイさんとノノさんで間違いないでしょうか?」
「ああ、お会い出来て光栄です」
「よろしくお願いします」
「では、付いてきてください。お食事の用意があります。テラートさんもどうぞ」
「僕も良いのかい?ありがとう!」
私とノノは挨拶をすると付いて行く。
やはりと言うべきか、騎士様、いや、テラートさんはエリナレースさんの顔見知りだったらしい。
「入ってください。靴は入り口で脱いで下さい。土足厳禁です」
入り口で靴を脱ぐ、そういう文化も東の方の国にあると聞いたことがある。だが、これは!?
ドアが自ら動いていく、何だこれは!?ドアの裏で誰かが開けてくれたのだと一瞬納得したのだが、確認したら何もいない。
エリナレースさんが靴を脱いだので、私達も靴を脱ぐ。
入ってすぐの階段を登ると、そこは落ち着きのある空間が広がっていた。
いい匂いがする。用意してくれたという食事だろうか?
案内されて座ると目の前には見たことのない料理、見たことのない食器。
「美味しそうですね!」とテラートさん。
「これは挟んで使うのでしょうか?」
「こんな料理食べたことないです」
私とノノはただ困惑していた。
「では、いただきます」
全員が席につくとエリナレースさんとテラートさんは謎のポーズで祈りを捧げている?
それを見て、それが礼儀なのだろうと私達も続いて同じ動作をした。
「いただきます」
なんだか心が改まった気がする。
見たことのない食器だが、使いやすい。オーダーメイドなのだろう。
……
……
「で?カードって何のカードです?」
「ああ、すみません。あまりの美味しさで黙って食べてしまいました。カードゲームってわかりますか?私達、子供が遊ぶ玩具を作っているのですが……」
危ない、実に危険な料理だ。声をかけられて気付いたから良いが、目の前の料理は8割程なくなっている。危険だ。
「なるほど、なら良いですよ。ただし、試作した物を私にください。ちょっと興味有るので」
即答!?もちろん完成度を高めるために試作を繰り返すから、好きなものをお譲り出来るが、
「あ、ついでにテラートさんもカード化してください。護衛を頼んだということは信用はあるんですよね?」
なんだか、利用しているようで悪いと思っていたので、問題無い。この方も有名なのだろうか?
「僕も?良いのかい?」
「カードゲームって言うからには、いくつも戦術があると思うんですよ。それならカードの種類が多い方が良いはずです」
なんだろう?既視感がある。ザコ様に助言をもらった時に似ている。
「エリナレースさんって、もしかしてカードゲームしたことあるんですか?」
「いえ、知り合いが夢中だった時期が有りまして」
やはり、カードゲームは他でも人気なのか……。
「その人曰く、カードプールが少ないと単調なゲームになってつまらない、だそうです」
「ほう」
カードプールとは?
「ちなみにカードゲームの名前って決まってるんですか?」
「カードゲームはカードゲームです」
「ああ、無いんですね。もし他の方がカードを使ったゲームを作ったときに、違うルールの別々のゲームが存在してしまいますよ。名前は必要です」
「ああ、確かに……」
う、正論だ。私達はカードゲームが競合するなど、今日まで、考えてもみなかった。
それにしても名前か……。
「ちょっと良いだろうか?」
テラートさん、なんですか?今考えてる所ですから邪魔しないで欲しいんですが。
いかんいかん、とりあえず返事をしよう。
「はい、何でしょう」
「僕の家系は一応、超直感という優れた直感を発揮するスキルを持っている事が有るんだが。もし、良ければ、僕が名前を付けても良いかな?広く遊んで貰えるような名前が思い付く予感がするんだ」
「良いんじゃないですか?彼に任せても」
「そうですね。それじゃお願いします」
なんだろう、超直感て?と疑問に思っていたら口が勝手に動いて返事をしてしまったことに驚いて口に手を当てる。
するとテラートさんが目を閉じて集中していく。
「見えた、『英雄戯メシアトーチ』」
聞いた途端、グググッと心臓を押された気分になった。え?めっちゃ良い。
言葉を聞いた瞬間洪水のようにアイデアが浮かんでくる。ヤバいヤバい早く帰って形にしたい。
こんなのは初めてだ。ノノを見ると同じように目を瞬かせている。
「ごめんなさい、ちょっと具合悪いかもしれないので、今日はもう」
そこまでエリナレースさんが言うとテラートさんが言葉を遮って
「なんだって!それはいけない!僕は彼女をベッドで看病するから2人は先に帰ってくれ!」
具合悪いならしょうがないな。御暇しよう。
うん、私達は早く帰りたいだけ。
テラートさんの護衛は元々必要ない。なぜなら私達は一般人のフリをした元スパイ。形式上は必要だから護衛を付けていたが、自分達を守る術くらいある。
今はアイデアが本流の如く溢れている。
私達は軽く手を挙げるとそそくさと家を出て、来た道を戻るのだった。
さて、次回はついに真実が明かされます。
前段のカードゲーム回を振り切る勢いで書いてます。
一応R指定なので、多少濡れるかもしれない。夜に読んでください。




