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円環記憶のエリナレース<-8周目の少女->  作者: ユーマヤ・バラッチ


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第十二話 ザコ様の自由とメシアトーチ

皆様お待ちかねのカード回。

「オッサン!そのカードくれよ!」

「ああん?ダメに決まってんだろ?このカードは限定3枚の超レアカード。欲しかったらザコ様って読んで丁寧な言葉で頼んでみろよ」

「ザコ様、そちらのカードを僕にください!」

「いいぜ!そら、アルスレアのエプロン版エリナレース」

「わーい、ザコ様最高!」

「おう、もっと褒めろ」


ガキが、魔女のエプロンカード欲しがるとは、

とんだニッチマセガキだな。もっと英雄のカードを欲しがれよ……。

俺様のアルスレアコレクションがまた1種類なくなっちまった。アルスレアはカートン2枚の激レアだ。大人だからカートン買いで引きに行ってるけどな。はあ、子供相手だからしょうがねえ。

JRR(ジュエルランクレア)なら幾らだって撒くんだけどよ……。


英雄戯メシアトーチの第1弾が出てから4年。

ガキに混ざってカードゲームをする。

これが最近の俺様、ザコ様の日常だ。



俺様は異世界転移者の元コスプレイヤーだ。

元の世界で『ザコ』と呼ばれていたキャラクターに見た目だけ寄せている。あくまで見た目だけだ。ロールプレイ出来るほど出来のいいコスプレじゃない。


異世界転移は唐突だった。

俺様はこの格好でコスプレイベントに参加していた。メイドカフェでやってるやつ。まあ、あれだ、萌え萌え〜キューンってポーズ、やった瞬間に飛ばされた。最悪のタイミングだぜ★


飛ばされた先にいたのは王女様。

どこの国かは知らないぜ。

こんなヒャッハーな見た目のやつが萌え萌え〜キューンした状態で目の前に現れたら、どうするか分かるよな?


まあ、運の良いことに『転移』スキルが使えた。

最初の転移は怖いから、自分から見える所目掛けて飛んだぜ。そしたらコレ魔法の類でな。気持ち悪くなったから一旦手頃な河原で野宿だ。


この国にいれば、命がいくらあっても足りねえ。

そう思って、転移繰り返して今ココ、アルバニア帝国。他の国に比べて街の雰囲気が良い、気に入った。なら住もう、と思ったんだが、金がない。

5日間何も食ってなかったから腹も減ってる。

そのまま、倒れた。

そしたらな、街の皆が助けてくれた。商人のオッサンが飯を食わせてくれた。出世払いで金もくれた。俺様のこと、ザコ様って呼んでくれって言えば、ザコ様って呼んでくれる。皆、優しかった。


たぶん、名前がザコサマだと思ってるだけだろうけど、それでも嬉しかった。


俺様は転移魔法でこの国に貢献しようって考えた。まずは身分証明が必要だろうから、冒険者ギルドって市役所みたいな所で登録。ついで、文化レベルの観察。当面の課題は食だな。


つう事で、各地のスパイスや食材を転移して転売していくぜ。モチロン帝国には通常より安く。

各国の特産書いた手記を渡したら、商人のオッサンは泣いて喜んでくれた。


オッサンからちょくちょく買い出しの依頼が出るから、それは常に受けるようにした。

達成率はいまんとこ100%

おかげでブロンズに上がれた。

戦闘力は皆無だが、それは追々やってけばいい。

別に俺様は戦いたいわけじゃあねぇ。


自由こそが求めているもの。


「ザコ様?」

「おう、なんだ?ってベガじゃねえか!」


こいつはベガ、黒髪に少し銀髪が混ざった5歳のクソガキだ。可愛らしい見た目に反して凶悪。ガキの見た目とは裏腹に頭が切れやがる。


「ザコ様、僕と勝負してよ」

「お前、他に友達いねえのか?」


「いないよ、だって幼稚な遊びを強制されるのは僕の主義じゃない。僕はザコ様とカードやってる時が1番、生を実感出来るんだ」


「はあ、どこで習ったんだよ、そんな言葉」

「母さんにだけど?」


はあ、さっき溜め息出たのに心の中でも溜め息が出たよ。

そうなんだよ、コイツの母親はラビリンスフォレストの魔女。どういうわけか、子供の見た目で2児の母。これまた何故かジュエルランクの超有名人。そんでもって俺様はヤツが12歳の頃に会ってる。


「ベガよー、若いんだから女の子と遊べば良いじゃねえか」

「やだよ、母さん達みたいなジュエルの人達は良いけど、女の人達って読めないし面白くないんだもん」

「あー、好みの問題か。お前の母ちゃん綺麗だもんな」

「母さんは見た目だけじゃないよ。父さんをちゃんと躾けてるからね!」

「あいつも大変だな。惚れたのが悪いか」


目の前のガキの父親に念仏を唱える俺様を余所に、プレイマットを広げるクソガキ。

本当に娯楽だけで言えば、滅茶苦茶普及したな。

俺様達が居るのは玩具屋のトーチスペースだ。金を払えば場所を貸してくれる。だが、ここはほぼ無料で場所を貸している。何故か、それは教会とギルドから金が出てるからだ。

英雄や神が描かれたカードゲームは未来のガキどもへの良い宣伝になる。プレイする場所があれば玩具も、周辺グッズも売れる。

ギルドの前に居を構えた玩具屋の商才たるや……。


「僕の先行で良い?」

「ああ、良いぞ、ってお前スリーブ母ちゃんかよ。デッキケースは父ちゃんだしよ」

「だって二人ともカッコいいし、僕にとっては英雄だもん!」


はあ、本当に微笑ましいよ。お前の家族は。




◇ ◇ ◇




カードゲーム『英雄戯メシアトーチ』


◆概要◆

<ターンの流れ>

①ドローフェイズ

山札からカードをドローします。

②トーチフェイズ

トーチカウンターを裏返す事ができます。

最初のターンのみ、後攻は2つ裏返せます。

一度使ったカウンターは

ターンの始めに表に戻ります。

③メシアフェイズ

カード右上のトーチ数と同じ数のカウンターを

表にし、カードを使うことが出来ます。

④ヒールフェイズ

回復属性スキルカードを持っていれば、

何枚でも使う事が出来ます。

⑤クエストフェイズ

攻撃、採取、生産、行商の4種類のクエストに

挑戦できます。クエストデッキからカードを

1枚表にし、クエストの種類と効果を参照しま

す。フィールドの英雄達成率を参照し、

同種の英雄がフィールドに展開されていれば、

左下の数値分、クエスト達成率が上がります。

クエスト達成率が100%になったら、クエスト

効果を発動し、効果処理後、アビスゾーンに置

かれます。クエスト達成後、クエストデッキか

ら次のカードを表にし、前回クエストの超過分

の達成率を加算します。

⑥レポートフェイズ

達成したクエストのランクと数を参照します。

英雄がフィールドに置かれている状態で

2つ上のランクのクエストをクリアしている場

合、英雄カードのランクが上がります。ランク

上昇時は英雄カードの上にトーチカウンターを

1つ置き、1つにつき10%、英雄の達成率が上が

ります。

クエストデッキが0枚になれば、

あなたの勝利です。

⑦ジャミングフェイズ

相手のクエスト達成率をあなたの英雄の達成率

が上回るとき、クエスト達成率を半分にしま

す。

英雄バトル能力がある場合は効果を発動させる

事が出来ます。

⑧エンドフェイズ

ターンを終了し、相手のターンになります。


<カードの種類>

①英雄カード

左下にクエスト達成率の書かれたカード。

②スキルカード

効果のみが書かれたカード、カード発動後は

アビスゾーンに置かれる。

③クエストカード

達成条件が書かれたカード。

英雄カードと職業色が同じ場合は『免除』部分

の効果が追加で発動する。


<デッキ構築>

ここでは、デッキを組む際の注意点を説明しています。

①メインデッキは40枚、英雄カードとスキルカードをバランス良く入れよう!オススメは1対1の比率だぞ!

同じカードは3枚まで入れられます。

②クエストデッキは12枚、同じカードは3枚ずつ入れられます。


<フィールド説明>

↑相手↑

|◤◤◤◤◤◤◤◤|◤◤◤◤|◤◤◤◤|◤◤◤|

|トーチカウンター|_英__雄_|クエスト|山札_|

|◢◢◢◢◢◢◢◢|◢◢◢◢|◢◢◢◢|◢◢◢|

|◤◤◤◤◤◤◤◤|◤◤◤◤|◤◤◤◤|クエスト

|達成済クエスト__|_スキル_|アビス_|_◆◆◆|

|◢◢◢◢◢◢◢◢|◢◢◢◢|◢◢◢◢| デッキ |

_____________________________________




◇ ◇ ◇



「あー、楽しかった。ザコ様、今日も相手になってくれて、ありがとう」

「いや、いいってことよ。にしてもまさか新しいカード使ってくるとはな」

「うん、母さんに買ってもらったパックに入ってたんだ。知らない英雄なんだけど、効果やイラストが面白くって入れてみたんだ。そしたら、こんなに活躍するなんてね」

「お互いの手札のコストを1⇌5、2⇌4って、こいつ自体がコスト高いから出しにくい上にコストの高いカード沢山入れないと機能しないな。大英雄ララリリダムか、なんか聞いたことあるな」

「レアリティは低いけど、名前に大英雄って書いてあるし、何故かレジェンドランクなんだよね?」


ララリリダム盗賊団って名前のパーティなら知ってるが、パーティ名の由来が英雄の名前ってことか?


「俺もララリリダム盗賊団ってパーティなら知ってるが、それとはまた別だろ? もしかしたら、お前の母ちゃんなら知ってるかもな」

「うん、帰ったら聞いてみるね」



少し長めの足の椅子からベガは飛び降りる。


「じゃあ、また来週ねザコ様!」

「おう、気を付けて帰れよ」

「うん、不意打ちには気を付けるね」


いつものやり取りを終えると、俺様も踵を返す。

ガキどもが帰る時間から依頼をこなすのが、俺様の日課だ。いつから、こんなにガキが好きになったのか知らんが、やっぱり街の雰囲気が良いと、心も洗われるんだろうな。




◇ ◇ ◇




「母さん、帰ったよ~。今日も友達といっぱい遊んで来た」

「おかえり、良かったわね。ん?何か気になることでもあった?」

「ザコ様って、なんであんなに面倒見良いのかな?」

「あー、あの人、凄く街の皆に愛されてるわよね。たぶんだけど、自分と重ねちゃうんじゃないかしら」

「自分と重ねる?」


母さんは本をパタンと閉じるとキッチンに移動しながら言う。


「例えば、ベガが食べ物を食べたいと思ってたとするでしょ、そしたらわたしが料理を作って食べさせました。じゃあ、お父さんがベガの目の前でお腹を空かせてたらどうする?」


「あ、そういう事か!」

「そ、お父さんに自分の分のおにぎりを分けてあげるでしょ?」

「じゃあ、ザコ様は自分がそうしてもらったから、他の人にもそうしてるって事だね?」


うん、と母さんは頷くと手を洗ってクリーンをかけてから料理を始める。

あ、そうだ。


「母さん、そういえばなんだけどさ。ララリリダムって誰か知ってる?」


母さんの手が一瞬止まって、また動き出す。


「大英雄ララリリダムの事?それともララリリダム盗賊団の事?」

「んー?」


そういえば盗賊団の方もザコ様から聞いたけど、何なんだろ?


「両方!」


「そうね。じゃあまず大英雄から話しましょうか。今から600年くらい前に戦乱の時代の真っ只中、昔のアルバニア帝国、名前はテオデルタス。この国はすっごく戦に弱くて、数日の内に滅びてしまう。そんな状況だったの」


ゴクリと喉が鳴る。

母さんの昔話は毎度リアリティが凄い。まるで経験したことみたい。


「その時、1人の冒険者が立ち上がった。本来、冒険者が自発的に戦争に出るって事は無いんだけど。その人はね、自分の周りの人間が傷付いて帰って来たり、帰って来なかったりで凄く悔しい思いをしていたの。冒険の最中に呪いを受けてしまって、ほとんど戦える状態じゃなかったのに、呪いを受けた状態でも戦えるように努力した。

誰もが諦めていた状態で彼は友人達を励まし、私でも戦えるんだ。皆とならもっと戦える。と言って敵軍に突っ込んだ。

彼が身に受けていた呪いは全てが逆になる呪い。敵の動きも上下も左右も前後も自分の感覚も、全部逆。そんな状態で彼は1000人の敵を道連れにした、と言われているわ。後に彼の友人達は彼の事を大英雄と呼んだ」


僕はいつの間にか前のめりになって聞いていた。

ララリリダム、凄い人だ!知らなかった事を恥ずべきだ。


「盗賊団の方は大英雄ララリリダムの名前が全てを逆にするという意味で使っている冒険者パーティ、盗賊の真逆を行くぞっていう行動指針なのよ。ちなみに、コレはおじいちゃんの所属してたパーティ」


「えええ!」


僕は本当に母さんから学ぶ事が多い。

今、イラスト見ると滅茶苦茶かっこよく見える。

だから、このカード逆さに描かれてるのか。

ララリリダムが切り札のデッキ組もうっと。

カードゲームのルール考える時間が、1番長いのヤバない?

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