↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
PR
9/23

File009|第一部【思惑】

SEL課長・三浦


(こういう面倒な案件は、向こうから拒絶してもらうのが一番だな)


(その方が、こちらも綺麗に手を引ける)


(……一度、顔だけ出しておくか)


───


三浦はユウの自宅のインターホンを鳴らした。


(しかし、俺の家とこんなに近所だとはな……)


ユウがドアを開けた。


「はーい」


ドアを開けると、スーツ姿の男が一人、穏やかな表情で立っていた。


SEL課長・三浦が軽く頭を下げる。


「先日はありがとうございました」


「SEL三浦と申します」


「本日は、少しご相談がありまして……」


簡単な挨拶の後、短い世間話を挟み、三浦は本題に入った。


「……実はですね、私達にもノルマがありまして」


「完全にお断りいただけると、こちらも助かる立場でして」


「ですので、今日ここで結論をいただければ、と」


ユウは顎に手を添えた。


(正直、こっちもアイをいじくり回されたくねぇしな……)


(……拾って直したのがバレたら、面倒なことになる)


(所長に怒られるやつだろ、これ……)


ユウの笑顔が少し引きつった。


「あ、分かりました」


「そういう事なら、お断りします」


三浦は軽く頭を下げた。


「……承知しました」


「本日はお時間をいただき、ありがとうございました」


玄関先で再度頭を下げ、三浦はその場を後にした。


三浦は俯きながら歩いた。


(……思っていたより、すんなり事が運んだな)


(これで面倒事が一つ減った)


(……しかし)


(ウチの会社は、なぜあの個体にそこまで執着している?)


(まあ、俺の範疇ではないか)


───


部屋に戻ると、ユウは気楽な口調で言った。


「この前のメンテナンスの話だけどさ、断ったから」


「……」


アイは、わずかに肩を揺らした。


ユウが頭を掻きながら言った。


「なんかさぁ、アイを預けるの正直やだったんだよね」


「ハハッ」


アイが一瞬間を置く。


「——っ、はいっ」


ユウはその反応を深く気に留めることなく、伸びをした。


「……あ、ちょっと買い物行かね?」


「材料、買い足しときたくてさ」


靴を履きながら振り返る。


「お前、荷物持つの得意じゃん?」


「頼むよ」


アイが答えた。


「行きます!」


その声は、少しだけ弾んでいた。


ユウは気づかない。


アイがその場に一瞬立ち尽くし、


ユウの背中を見つめていたことを。


そして、


その視線が、


ただの命令待ちのそれではなかったことも。


───


道端で立ち止まり、三浦は缶コーヒーを開け、一息つく。


ふと顔を上げると、


先程のマンションから二人が出てくるのが見えた。


ユウはアイの少し先を歩き、


アイはその背中を追いかけるように歩いている。


仲睦まじい――


そんな言葉が、一瞬だけ頭をよぎる。


三浦は思う。


(仲睦まじい?……そんなわけ無いか……)


三浦はそれ以上考えず、視線を外した。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。