File008|第一部【同意】
SEL課長が資料を机に置いた。
「これが、アイのバグ報告資料だ。
廃棄前に確認されたものだが、
致命的と判断されなかった個体差も含まれている」
「兆候は細かく記載してある。
参考にして、上手く無償メンテナンスに誘導するんだ。」
SEL主任は頷いた。
「はい。
兆候を匂わせて判断を委ねます」
SEL課長が短く答えた。
「任せる。
何度も訪問すれば警戒される。
分かってるよな?」
SEL主任が答えた。
「はい」
———ユウの自宅
SEL主任がチェックシートを見せた。
「念のため確認なのですが、
このチェック項目に該当する兆候はありませんでしたか。」
「すぐに問題になるものではありませんが、
過去の事例では後から影響が出たケースもあります。」
「現在は無償対応が可能ですので、
ご不安でしたら点検だけでも受けておくと安心かと。」
ユウは腕を組んだ。
「うーん……俺ひとりだと決められないな。
アイはどう思う?」
アイが答えた。
「ユウ様が安心できるなら、
不具合は直した方が良いと思います。」
ユウは心の中で思う。
(これって、俺が拾って直したのバレねぇかな……)
「あー、少し考えます。
二人だけで相談したいし。」
アイが即座に答えた。
「——っ!それが良いと思います。」
SEL主任は軽く頭を下げた。
「……ではまた改めてご提案させていただきます。」
「本日はお時間をとらせてしまい申し訳ございませんでした。」
ユウは頭を掻いた。
「あっ、いえ、こちらこそでした、サーセン」
(やましいことがあるなんて言えない……)
(いや、やましくねぇよな? でも白ってわけでもねぇしなぁ……)
———SEL社内
SEL主任が報告した。
「断られてしまいました。警戒されてる感じはしませんでしたが……」
SEL課長はため息をついた。
「……そうか……元々ダメ元の案件だからな……強引にいくわけにもいかんし。」
(……しかし、こういう尻拭いは勘弁だな……)




