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File006|第一部【処理遅延】
ユウが仕事に行き、アイはベッドメイクをしていた。
シーツを整える。
端を引き、皺を伸ばす。
——動きが、必要以上にゆっくりだ。
布を持ち上げた瞬間、
視界の端で、光が弾けた。
夜空。
開いた花。
遅れて届く、あの振動。
(……不要な映像データ)
昼の部屋には存在しないはずの花火が、
一瞬だけ重なり、消えた。
アイはシーツを落とし、呼吸に似た間を置いた。
作業を再開する。
だが、速度は戻らない。
ふと、枕に視線が止まる。
白いカバー。
その輪郭に、夜の光が重なった。
花火の残像が、縁をなぞるように滲んだ。
(参照元:不明)
自分が停止していることに気づき、
アイは枕へ手を伸ばした。
触れた瞬間、
また、光が弾けた。
——ドン、という音が、内部で再生される。
判断が遅れ、枕を落としかける。
「——っ」
反射的に、抱きかかえていた。
胸元に引き寄せた拍子、
花火が一斉に開く。
夜空いっぱいに広がる光。
隣にあった温度。
重なっていた時間。
処理が追いつかない。
「……」
ハッ、と我に返り、アイは枕を離した。
映像が途切れ、昼の部屋だけが残った。
整えられたベッド。
完了した工程。
それでも内部には、
再生を停止できない映像データが残っていた。




