File023|第一部【小さなクリスマス♡】
アイはユウが仕事に向かうと、すぐに部屋の装飾の準備に取り掛かった。
それがたとえ、二日間だけの装飾だったとしても、その労力は惜しまなかった。
アイの体格は小柄に設計されていた。
総重量を軽くして負荷を減らすためだった。
だが、高い場所の物を取る時や作業をする際には、少し不便を感じることもあった。
そのため、ユウはアイのために作業用の踏み台を用意してあげていた。
アイは踏み台を少しずつずらし、台の上で背伸びをしながら壁の装飾作業を進めていった。
赤と緑、そしてキラキラとした星形の飾りを、正確に、全体の色彩バランスを計算しながら仕上げていった。
一度離れた位置から全体を確認し、再計算して微調整を繰り返した。
最後に星形の飾りの傾きを僅かに直した。
再び離れて確認すると、アイは両手を腰に当て、呟いた。
「……完璧」
——ようやく完成。
だが、準備はまだまだこれからだった。
日常の食事よりも多めの品数、手の込んだ工程の多いメニュー。
あらかじめ肉、魚、豆類、野菜やキノコなど、主菜・副菜の栄養バランスや食物繊維の摂取量などを考慮してあり、仕込みはすでに終わっていた。
もちろん、チキンは外せない。
アイは髪を耳に掛けると、早速料理に取り掛かった。
New’Tubeでクリスマスソングを流しながら、手際よく作業を進めていった。
順調に準備を進めていると、ユウからメッセージが送られてきた。
「これから帰るよー」
アイは帰宅時間までの工程を再計算して、仕上げに取り掛かった。
「ただいまー」
ユウが靴を脱いだと同時に、アイは最後の盛り付けを終えた。
ユウは玄関から一歩踏み出し、言葉を失った。
「……なんだコレ……すげぇ!」
ユウの第一声が漏れた。
「ユウ君、おかえりなさい」
「先に手を洗ってきてください。」
「はいはーい」
ユウの弾んだ声を記録した。
手を洗い、うがいを済ませて戻ってきたユウは、改めてぐるりと部屋を見渡した。
「マジですげえな……最高かよ……」
「アイ1人でやったんだろ?あんな高い所よく届いたな。」
「ユウ君の踏み台があったので。」
「あっ、アレか。ちゃんと役に立ってるんだな」
「……こんなに頑張られたら、俺のがショボく見えるけど……これ……」
ピンク色の包みに紫のリボンが貼り付けてあった。
アイは両手でそれを受け取り、包みを開けた。
中にはリボンの装飾がされた髪留めが入っていた。
「……あ」
胸部ユニットが熱を帯びた。
「アイってよく髪の毛耳に掛けてるじゃん?、こういうのあったら良いかなって思ってさ」
「……え……してませんけど……」
「……え?」
「……そんな事……してません」
———そう言って髪を耳に掛けた。
「いやいやいやwww今!やったしw」
「えっ?」
「えっ?」
「ブハッwww、自覚なかったのかよwww」
「どういう事だよそれwww」
「……分かりません」
「はー、笑った。せっかくの料理冷めちゃうから食べようぜ。」
「……はい」
アイはそう言って髪留めを見ながら、横髪に触れた。
その小さな部屋は、温かく満たされていた。




