File021|第一部【すれ違い】
こんな性格のユウでも、外部から来る衝突を完全に避けられるわけではなかった。
特に職場では、回避が難しい場面もあった。
ユウは意外と律儀で、職場を出る時には必ずアイに連絡を入れていた。
それが、いつの間にかルーティンになっていた。
いつもなら、そろそろ帰宅する時間だった。
すでに食卓には、アイの料理が並んでいた。
「ただいまー」
ドタドタと雑な足音。
帰ってきたユウの手には、また新しいガラクタが握られていた。
「ユウ君、おかえりなさい」
「おっ、今日も美味そう」
手で摘もうとした。
「ユウ君、手」
「あ、そっか」
言われてから、ユウは手を洗った。
いつもの流れ。
そして急いで料理を胃に流し込んだ。
今日はガラクタを持ち帰ってきているせいか、いつもより食べる速度が速かった。
「ユウ君、また食べるのが速くなっています。
咀嚼回数が少ないと、満腹感を得る前に食べ過ぎてしまうことによる肥満・糖尿病のリスク上昇です。血糖値の急上昇、胃腸への過度な負担、消化不良、逆流性食道炎、窒息や誤嚥のリスクも高まります。健康維持のためには、よく噛んで——」
そこまで言いかけた時、珍しくユウが遮った。
「……あーもう、分かったよ。」
その言葉は、ユウの健康管理を目的とした、合理的判断の結果だった。
本来なら、何の問題もなく処理されるはずだった。
だが、ユウが不用意に放ったその一言は、
アイの中で“処理不能”として弾かれた。
アイは、そのまま処理が停滞し、動かなくなった。
(あっ、ヤベ……つい……どうすっか……)
冷蔵庫にプリンがあったのを、ユウは思い出した。
試しに声をかけてみた。
「……なぁアイ、ぷりぷりプリン、一緒に食べない?」
「…………」
無視ではない。
ただ、処理が落ちているだけだった。
だが、ユウにはそう映らなかった。
(……コレは……ヤベェやつか?
とりあえず……そっとしとくのが正解か?
分からん……)
ユウはそっとその場を離れ、拾ってきたガラクタの修理を始めた。
その日は、そのまま会話することなく、二人は就寝した。
———翌日。
「行ってきまーす」
「いってらっしゃい」
朝の会話は、それだけだった。
だが、ユウが出ていってすぐ、
アイはキッチンに違和感を覚えた。
昨日、ユウが拾ってきたガラクタの正体に気付いた。
それは——
食器洗浄機だった。




