File017|第一部【平穏】
「なぁアイ。この間のパーティーで一緒だった友達んとこ行くからさ、予定入れておいてよ」
「友達がさ、アイとゲームしたいんだって。」
「はい。」
「……でも、遠慮はいらねぇから」
「お前、ゲームとか得意そうじゃん。ボコボコにして良いからwww」
「分かりました。ボコボコにします。」
「あ……いや……やっぱり手加減してもらおうかな……」
———
「近かったろ?みんな地元の友達だからさ。」
そう言って、ユウはインターホンを鳴らした。
男友達が弾んだ声で出迎えた。
「おー、よく来たな!さ、上がって上がってっ」
「アイちゃんもありがとね♪」
「どういたしまして。」
「うんうん、さ、さ、どうぞ。」
アイは一歩遅れて入り、自分とユウの靴を揃えた。
「これみやげ、この前直したばっかのやつと、ついでにお菓子買ってきた。」
「あ……うんw……サンキュ!」
「……てゆうか、何コレ?どうやって使うの?」
「お?、それ聞いちゃう?、あのな、これはな……」
「あっ、やっぱ後でいいや!先にゲームやろうぜ!」
———
「取扱説明書は有りますか?」
「えっ?、あるけど、アイちゃんて真面目だね。俺、あんま見ない派だわ。」
男友達はそう受け取ったが、そうではなかった。
これから二人はアイの能力に打ちのめされることとなる……
アイは取説をパラパラとめくり、素早く理解した。
「もう大丈夫です」
「えっ、もう読んだの?早っ、操作説明とかどうしようって思ってたから助かるわ—」
「問題ありません」
「じゃあ、俺とユウが先にやるからちょっと見ててね。」
アイは画面を注視して、取説で理解したロジックが、実際の画面でどう作用するかを理解した。
必殺技の間合い、最小の回避行動、反撃のタイミング、それらをシミュレートした。
「……じゃあ次はアイちゃんやってみる?」
「はい。」
———
男友達が頭を抱えた。
「くぁーっ、やっぱアイちゃん強え!」
「……オラ、もっと弱え奴と闘いてぇ」
ユウのツッコミが入った。
「おまwww、それ雑魚悟空www」
楽しい時間が流れた。
ユウが男友達と親しくしていた。
アイは、ユウの表情や言動の移り変わりを記録した。
その空間で、三人の真ん中に座るユウを見ながら、リラックスした状態を維持できていた。
だからこそアイは気付かなかった。
変化が起きないことに、気付けなかった。
アイの内部で、わずかな温度の上昇があっても、安全域なため記録はされなかった。
原因は特定されないまま、数値は安定していた。




