File014|第一部【ハロウィン、準備中♡】
街は秋の夕暮れに染まり、橙色の街灯とハロウィン装飾が交互に並んでいた。
カボチャランタンの温かい光が歩道に柔らかく落ち、風に揺れる紙の装飾が、微かにシャラシャラと音を立てていた。
ユウはその装飾を見て思い出した。
「あのさぁ……前に飲み会行ったじゃん?」
「そいつらがハロウィンパーティーやるみたいなんだけど、アイも一緒に行くよな?」
「行きたいです。」
アイはハロウィンパーティーを検索する前に、そう答えた。
「仮装をするんですよね?」
「ん? あぁ……ガチでやると恥ずかしいからさ、軽めのな。ハハ……」
「あ……でも、お前はガチでも良いかもな……」
「ちょっと見に行ってみるか!」
「はいっ」
———
店内に入ると、ハロウィングッズの香りと紙の匂いが混ざり、空気が甘く感じられた。
アイは様々な衣装を前にしてシミュレートを開始した。
数が多いため、少し時間がかかってしまった。
すると、ユウがウィッチのセットを持ってきた。
「こんなんどう? ハロウィンぽくない?」
「試着できるってさ。」
その衣装は、紫をベースにしたドレス風のワンピース。
アクセント部分はレース編みされており、ボレロもセットになった可愛らしいデザインだった。
アイは即座にシミュレート開始……
——答えは、
最適解だった。
アイはその衣装を受け取ると、いつもより速い動作で試着室に入った。
鏡に映る自分の姿……
少し横を向いてみる……
後ろ姿を確認する……
魔女の帽子を少しずらしてみる……
そして、正面を向き直し、両手を胸の辺りで組み合わせ、ユウが自分の姿を見た時の反応をシミュレートした……
カーテンに伸ばす手の動作が、ゆっくりになった……
そして、ひと呼吸……
思い切ってカーテンを開けた——
「おっ、おぉ〜っ。良いじゃん良いじゃん! なんか思ってたより可愛いなおいっ」
「——っ!」
——可愛い。
その単語だけを拾うアイ。
内蔵されたマイクロチップが限界域まで過熱した。
放熱が追いつかない——
アイは動作を停止したまま、動かなくなった……
冷却は行われていたが、熱暴走が続いているため、なかなか進まなかった……
「ん? どした? 大丈夫か?」
「大丈夫です。」
「これにします。」
「うんうん、俺もそう思う」
「なんかパーティー、楽しみになってきたな。キシシ……」
悪戯っぽく笑うユウの表情を記録するアイ。
余計なタスクを増やしてしまい、冷却時間が伸びてしまった……
買い物を終え、街のハロウィン装飾を眺めながら帰路に着いた。
夕暮れの光が橙色から紫に変わり、街全体が柔らかいグラデーションに包まれていた。
アイは、買ってもらった衣装を両手で抱えながら歩いていた。
「ユウ様……ありがとうございます。」
「あー、あのさ……その、ユウ様ってのやめない?」
「友達に聞かれるとさ……その……俺様全開みたいで恥ずかしいだろ?」
アイは少し処理停滞を起こした。
「なんとお呼びしたらよろしいでしょうか?」
「えっ? あー……そっか。考えてなかったな……どうすっか……」
「普段は、なんて呼ばれているんですか?」
「俺? 友達からは、ユウだったりユウ君だったり……かなぁ……」
「ユウ君……」
そう呟くと、アイのマイクロチップが、また熱を持った……
「呼び捨てだとアレだから、ユウ君にしとくか?」
アイのマイクロチップが、さらに熱を発し、再び限界域近くまで達した。
「そうします!」
ユウは、突然のアイの反応に気圧された……
「おっ、おぅ……よろしく……」




