File011|第一部【デート?】
アイはよくテレビを観ていた。
それはテレビが好きだからでも、情報源として重視しているからでもない。
ただ、ユウの隣に居るという理由付けとして、都合がよかったからだった。
画面には恋愛ドラマが流れていた。
だが、アイはその内容を把握してはいない。
目線はユウに向けられていた。
ふと、テレビから「デート」という単語が発音され、アイは注意を惹かれた。
瞬時に、瞳に搭載されたカメラのピントがテレビ画面に合わされた。
そこには、男女がとても楽しそうに、
弾むようなテンポで会話を交わす映像と音声が流れていた。
それは、そのままアイの中へと流れ込んできた。
その横で、ガラクタをいじくり回していたユウが、突然大きく伸びをした。
「んーっ……はぁぁぁぁ。」
「……今日は天気もいいし、公園でのんびりするかぁ。アイも行くだろ?」
その唐突な提案に、アイの思考回路がフル稼働し、情報処理は限界まで引き上げられた。
だが演算が追いつかず、関節部などの動作部分が、処理待ちのまま固まった。
(これは……
先程の“デート”というものなのでは?……)
アイが尋ねた。
「必要な物はありますか?」
ユウが答えた。
「ん? あぁ、いらねぇだろ。
自販機もあるしさ、のんびりしようぜ」
公園に到着すると、暖かな陽射しと心地よい風の中、それぞれの想いでその空間を楽しむ人たちがいた。
アイはユウの少し後ろを歩きながら、進行方向、周囲の人影、風向き、気温といった情報を、必要以上に記録していた。
ユウの歩調に合わせているはずなのに、無意識のうちに何度か足並みを揃え直した。
やがて視界が開け、手入れの行き届いた芝生の広場へ……
ユウは脇の木陰に、無邪気な子どものように寝転んだ。
アイはその様子を確認してから、静かに横に座った。
少しの沈黙が二人を包んだ。
リラックスした空気の中、ユウは小さく息を吐きながら、
「はぁぁぁ、来て良かったなぁ……」
そう呟くと、ゆっくりとまぶたを閉じた。
アイはユウが昼寝を始めてからずっと、視線を外せずにいた。
本来なら、飛来するボールや動物など、周囲の情報を把握するのが役目なのかもしれない。
だが、そう出来なかった。
突然ユウが寝返りをうった。
顔に日差しが当たってしまった。
アイは情報処理を開始した。
まずは最短で答えを出した。
アイは手で日陰を作った。
だが、このままでは手が使えない。
非効率的と判断し、再計算。
芝生の傾斜、光源の位置、ユウの身長・体重、重心などを考慮して更に再計算が行われた。
最適解が出した答え――
アイはユウの足首を掴み、引き摺った……
うなされるユウ。
目は覚まさない。
そして、ユウの顔面は無事日陰に収まった。
「……よし」
アイは腰に手を当てた。
だが、ユウはすぐに寝返りをうってしまい、また顔に日差しが当たってしまった。
「……あ……」
アイは、仕方なく手で日陰を作った。




