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ノベルの友くん  作者: SHIROKI


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友くん登場!

 次の土曜日は雨だった。大嫌いな雨。しかも風も強く、明け方から、二階のアパートの窓を大粒の雨が激しく叩いていた。


 唯一の救いは雷が鳴っていたこと。大好きな雷。


 三浦さんはどんな天気が好きなんだろう。雷が好きなら嬉しいな。


 そんなことを思いながら、出かける五時間前から準備にかかった。待ち合わせ場所は、わたしと三浦さんの住まいの丁度真ん中の駅で、と思ったのに、三浦さんはわたしの最寄り駅まで来ると言ってきかなかった。待ち合わせは午後四時。いつも友くんの様子がおかしくなるのは夕方からだという。


 昨夜はよく眠って、肌のコンディションを整えるつもりだった。でも、眠ろうとするたびに三浦さんのいろんな姿が瞼の裏に浮かんで、興奮して眠れなかった。白状すると、三浦さんと交際する妄想までして、自ら興奮に拍車をかけていた。


 まずい――。朝、鏡を見て思ったのは、この顔では三浦さんの後ろに憑いている白髪イケメンよりひどいということだ。


 そう、三浦さんに憑りついている『異質』はイケメンだ。本人には伝えなかったけれど、三浦さんに似ている。三浦さんはそのマイルドボイスと穏やかな人柄を知っているから怖い印象は微塵もないが、狼風の鋭い顔立ちだ。銀狼ならぬ金狼。


 更に『異質』の方は、縁の細い眼鏡をかけている。『異質』が本体より現実的なアイテムを身に着けているのは不思議だったが、仕方ない。


 それに男性の平均身長以上の三浦さんより、更に背が高く見える。服装は和装で裸足だから、厚底靴で見栄を張っているということもないだろう。


 あの『異質』が、三浦さんが『ノベルの友くん』を開くたびに、その人格を乗っ取っているのか――。いかにも口が悪そうな風貌だったから、妙にしっくりくる。


 髪の分け目を決めるのに三十分かけたのに、出かける直前に「やっぱりおかしい気がする」と思って整え直し、結局ギリギリになって、約束の広いカフェに着いた。


 さっき三浦さんから『先に着いたから、一番奥の席にいるよ。あんまり大きな声では話せない内容だからね』とメッセージが届いていた。しかも、お辞儀の絵文字付き。どこまでも気づかいの人だ。


 そう、三浦さんは気づかいの人。普段なら、早めに到着して窓際の見晴らしの良い席をキープしてくれるタイプに違いない。


 本当はすぐに返信したかったが、傘が邪魔だったので、とにかく足早に向かうことにした。


 隅の席に三浦さんがいた。――なんと、その隣に白髪イケメンの異質もいる――。なんてことだ。あんなに堂々と、ソファの三浦さんの横で足を組み、両手も組んで座っている。わたしの方をチラリと見たが、ふんっと目を逸らした。


 そんな友くんもどきに、三浦さんはまったく気づいていない様子で、笑顔でこちらに手を振っている。


 友くんもどきと、リアル智くん――三浦さんの温度差がひどい。ここで騒ぎ出すわけにもいかないので、ぎこちなく手を振り返して、ロイヤルミルクティーを手に席へ向かった。


 注文している間に友くんもどきが消えてくれれば良かったのに。そんな期待もむなしく、友くんもどきはソファに堂々と居座っていた。


 意を決して、トレイを握りしめたまま、友くんもどきから目を離さずに席に腰を下ろした。


 三浦さんの方は、自分の横から視線を逸らさないわたしを見て、戸惑いの表情を浮かべていた。


「あんた、なんのつもり」


 席に座るなり、低い声でうなるように言った。


「え……?」


 三浦さんがおどおどしているがそれどころではない。


 『異質』が初めて至近距離でわたしと目を合わせた。そして、気だるそうにこう言った。


「俺は友くんだよぉ」



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