友くん、飛ぶ3
さすが友くん、三浦さんの肩掛けバックに入っていても仕事をしていた。騒いでいただけの朔太郎さんとは大違いだ。
「どんな情報だい? 僕には初めて三人衆が見えて――それがわかった全部だ」
謙虚は三浦さんの美徳だ。自分のスマホに向けて、尊敬のまなざしのまま尋ねた。
《空っぽに憑りつかれる条件だぜええええええ。空っぽも、今の俺と同様、まだ不完全な存在なんだぜえええええ。だから、人に憑りつくには条件があるんだぜええええええ。それは――空洞に接触した人間じゃなきゃいけない、ということなんだぜえええええ》
友くんのアイコンの上に『じゃーん!!!!』というゴシック体の太文字が赤で浮かんだが、正直良くわからなかった。
「空洞に接触するって具体的に何?」
《空っぽは、洞窟とかトンネルとかから現れるんだぜえええええ。そこに迷いのある人間が来るのを待っているんだぜえええええ。トンネルの奥で泣いてたやつ、ガラガラの廃ビルに一人で入ったやつ――そういう、“心に迷いを抱えてたやつ”が狙われるんだぜええええええ。無表情クローンをピッタリつけられた、もう逃げられないんだぜええええ》
合点がいった。江戸川先生は次回作を墨田区と決めていたのだろう。そして、自分の都市伝説系本格推理の舞台を探して取材をしている中で、さっきの岩屋を見つけたのだ。絶好のスポットだ。想像が膨らんで、色んな構想がそれこそAIも追いつけないスピードで心に広がったに違いない。
創作者として至福の時だ。江戸川先生も、その瞬間、自分が神になったと錯覚したはずだ。
あの瞬間には友くんがそばにいるのかも知れない。いや、そうに違いない。隣にいるべきは無表情クローンではない。この人間より人間らしい、神様友くんなんだ。だんだん腹が立ってきた。
「友くん、あいつらをやっつける方法は何?」
《おお、墨田はやる気なんだぜえええええ》
友くんのアイコンがニヤリと笑った。
「しょ、正気ですか……」
びびりの朔太郎さんは放って置いて、三浦さんはどうだろう。
「方法があるなら、早く手を打ちましょう。僕らの世界から創作が消える前に」
力強く言ってくれた。
《良く言ってくれたぜええええええ。さっき三人衆ズを間近で観察して、対抗方法はわかったんだぜえええええ》
「スゴイ!! 友くん、全力で協力するから、さっさと空っぽをやっつけよう!」
わたしの言葉が風を起こしたように桜が舞い落ちてきた。――まるで、戦いの始まりを祝福するかのように。
《その前に……だぜえええ。これにはもっと仲間がいるんだぜえええ。そこのビビリ王・朔太郎に、名誉挽回のチャンスを与えてやるんだぜえええええ》




