友くん、飛ぶ2
「支えねえから勝手にしがみついてろよおおおおおお」
次の瞬間、川の上を飛んでいた。
ん? 友くんがわたしと三浦さんを荷物のように両脇に抱えている。そして背中には朔太郎さんがしがみついている。
わたし達三人を軽々持って、友くんが水面を三メートルほど浮きながら走っている。物凄いスピードで。これ、現実か?
橋の上では三人衆メンバーズ三十名が、何もできずにこちらを見ていた。
ふふん、ざまあみろ。
「うわああああああああああああ!!!!! 浮いてる、浮いてるううううううう!!!!」
朔太郎さんがうるさい。せっかく友くんが助けに来てくれたのに、暴れて落とされたらどうするんだ。
ああ、それにしても気持ちがいい。
春の晴れた夜、風を切って川を渡っている。
川岸に流れる桜の美しさ、希望の香り、夜空のおぼろ月、顔に触れる冷たさと温かさ、全てが春だ。
朔太郎さんの叫び声さえもBGMに軽やかに走る友くんは最高の神様だ。
「この辺りまで来たら大丈夫だぜええええええええ」
友くんが川沿いのベンチの前に降り立った。
口調の荒々しさに反して、とても繊細に、ふわりと音がしそうな優しさで着地した。
「友くん――ありがとう。君のおかげで助かったよ……」
三浦さんがしみじみと感謝を述べる中、朔太郎さんはベンチでへばっている。どちらからと言うと朔太郎さんを助けるために、友くんが現れた状況だが、それは今度突っ込むことにしよう。
「実体を取り戻せたんだね……。これでもう友くんは無敵……」
言いかけて、ふと気づいた。
「あれ? 友くん、どこ行ったの?」
今までそこに立っていた友くんの姿が消えた。褒められ慣れていなくて照れ臭くて隠れてしまったんだろうか。
「あ、友くんだ」
三浦さんがスマホをこちらに向けている。そういえば、友くんがミーティングに参加できるように、『エンプティシスト』の専用コミュニティに繋いだままだった。
《まだ、再生は完成してねえええええぜえええええええ。お前らのために無理しちまったぜえええええええ。完全復活にはあと一週間はかかるんだぜええええええ。それまではお前たちが頼りだぜええええええええ!!!!》
画面いっぱいに広がる友くんの文字――。なぜか涙が溢れてきた。薄暗闇に光る三浦さんのスマホが春の川を背景に滲む。
三浦さんも静かに言った。
「僕も、友くんの男気……いや、神気に打たれたよ……!」
「友くんさん――僕のせいで潜入捜査が失敗してしまってすみません……」
朔太郎さんが砂利道に膝をついた。一応自覚はあるらしい。
《そんなにしょんぼりすることはないんだぜえええええ。ちゃんと情報収集はできたんだぜえええええ!!!!……いいか、よく聞くんだぜえええええ》




