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ノベルの友くん  作者: SHIROKI


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岩屋ミーティング1

「ようこそいらっしゃいました。墨田さんはオカルト小説を書かれていて、三浦さんはイラストレーターだと朔太郎さんからお聞きしています。朔太郎さんが才能があると太鼓判を押すような方たちです。私たち『ペトリコール』は才能のある創作者を今募っているのです。今宵は是非『ペトリコール』の奇跡を体感していただき、この感動を一緒に世界に広めていきましょう!!」


 今、不安定な神社の太鼓橋の上で、わたし達は江戸川先生と向き合っていた。著書の近影や雑誌の取材写真より、更に美人だ。写真映りが異常に良い類の人ではなく、なんならカメラ目線ではない不意打ちの写真の方が美しいタイプだ。


 神社の外灯の下、舞い散る夜桜を浴びるその姿は、天女と言われても信じるかも知れない。


 数分前、鳥居を潜り、恐る恐る歩を進めていたわたし達の視界に江戸川先生がゆっくり手を振っているのが見えた。


 もっと怪談に出てくるような、ロングヘアを風になびかせた不気味な女性を想像していた。だからこそ、きっちり髪をまとめて、健康的な顔色で笑うその姿に、少し安心した。


 江戸川先生の待つ、小さな太鼓橋まで今度は迷いなく三人並んで進んだ。歩きながらも江戸川先生の左右をじっくりと確認する。少なくとも今は両隣に無表情クローンはいない。


 しかし、他のメンバーはどこにいるんだろう。約束時間の五分前だ。決して早く着すぎたわけではないが……。


「こんばんは。こちら、メールでお話していた墨田さんと三浦さんです」


 まず朔太郎さんが紹介をしてくれたのに続いたのが、先ほどの江戸川先生の演説だった。私たちが挨拶をする隙も与えず、恍惚と話し出したのでヤバいと思った。


 同時に自分たちの立っている場所も物理的にヤバい。江戸川先生は安定した橋の真ん中にいるから良いかも知れないが、わたし達は太鼓橋の一番急な面に立っている。しかも、足元には夜に落ちた桜の花びらが敷き詰められ、異様に滑りやすい。


 三浦さんがそっと腕を支えてくれている。三浦さんの優しさ。江戸川先生の演説。そして、足元の不安定さ。――心臓が三重奏を奏でている。そろそろ本気でヤバい。


「では、皆さんお待ちかねです」


 やっと江戸川先生の演説が終わったようだ――。お待ちかね? ”どこに”?


「皆さん既に岩屋の中で静止状態です」


「せ、静止状態と言うのは――」


 江戸川先生がわたしを見て、微笑んだ。同性から見ても十分に魅惑的だ。


「言葉通りです。意識を空にして止まっています。考えること、感じることから解放され、画期的な創作のアイデアを補充しています」


 ああ、この人は敵ではない。そう思った。救わなくてはいけない被害者だ。本気で新たな創作を産み出すための儀式を行っていると信じている。今、先生が話したことこそ、空っぽに他ならないではないか。思考や感情を明け渡す行為だ。


 三浦さんと朔太郎さんの顔にも緊張が走ったが、江戸川先生は意に介さず、岩屋道の方へ先頭を切って歩き出した。


 スリムな体型の先生は、歩くたびにマーメイドスカートの腰を艶めかしく揺らしていた。三浦さんが目を奪われていないか心配だったが、彼は珍しく険しい顔で眉を寄せていた。『メンバーが静止状態』のインパクトでそれどころではないのだろう。


 朔太郎さんは――でれんとした顔で先生の腰に見入っていた。思わず、その腕を叩く。


 はっと我に返った朔太郎さんが両手でごめんなさいのポーズをする。この手の免疫のなさそうなタイプに、色仕掛けは効果が出過ぎて危険だ。


 道が急に細くなり、一列で歩かなけれなならなくなった。


 朔太郎さん、わたし、三浦さんの順だ。何となくさっきから真中が嫌でたまらない。もちろん二人とも空っぽなんかじゃないけれど。思考も、心も、誰にも渡すはずがないのだから。

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