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ノベルの友くん  作者: SHIROKI


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空っぽからの招待状3

 待ち合わせの場所は、朔太郎さんお気に入りのベーグル専門店。


 ミーティングの行われる神社まで徒歩七分程度の場所にあり、遅くまで併設のカフェもオープンしているという。そこが朔太郎さんの行きつけというのも意外だった。歴史作家がベーグル好き――まあ、昨夜画面越しに会った青年には和菓子や蕎麦よりベーグルが似合う。


 これから向かう神社の暗さを補って余りある程、白く明るい店内に入ると、三浦さんが手を振っていた。いつもと変わりない、優しい笑顔でほっとする。


 そしてその横には――すっかり拗ねた顔の友くんが、いつもの白装束&裸足スタイルで足を組んでいた。わたしにだけ見える神様。怖がっていた自分が嘘のように、今は愛らしく映る。


 そして、カウンターの奥で、背を向けていた人物がすっと立ち上がった。長身の影が、静かに輪郭を強める。


 わたしに向かって緊張した顔で一礼した。


 朔太郎さん……。またしても意外な光景だ。思ったよりずっと背が高い。百八十センチ以上は確実にある。少年のような顔立ちから、勝手に小柄な男性をイメージしていた。


 人の想像なんて、簡単に操れる――。時代物を書いているから、中年の気難しい男性、可愛らしい顔だから小柄、わたしは――わたし達には真実なんて見えていない。切り取られた一部から、貧弱な想像力で全体を補っているに過ぎない。真実が見えているのは全てを俯瞰している神様だけ。空っぽはきっとわたし達の弱さにつけ込み、貧弱な想像力を利用する。そうして、世界を奪いさる。友くんの手から――。


「あの……墨田さん? 今日はわざわざ足を運んでくださってありがとうございます。先に三浦さんが到着されたので、僕らのぶんはオーダーをしてしまいました。墨田さんも好きなものを――ここは僕のおごりです。あ、どうぞ……」


 朔太郎さんがそう言って、わたしのために自分の隣の椅子を引いた。


「すみません、ちょっと驚いてしまって……。朔太郎さんって、思ってたよりずっと背が高くて……。あ、じゃあ、わたしはサーモンとクリームチーズのベーグルを紅茶のセットで!」


 殺気を感じた。友くんがじとーっと恨めしそうにこっちを見ていた。


『俺だって、ブルベリーとクリームチーズのベーグルが食べたいんだぜえええええええ。お前らばっかりズルいんだぜええええええ……』


 うん、やっぱり友くんはかわいい。そんなことで拗ねていたなんて。身体が不安定なこの過渡期がすんだら、思いっきり世界を楽しんで欲しい。それまで世界がこのまま存在していたら――。


「それで――墨田さんと三浦さんにも、ミーティングに参加してもらえることになりました。さっき、友くんと僕のノートパソコンを通して話したのですが、三浦さんのスマホから『エンプティシスト』の鍵付きアカウントにつないだままにしておくことで、友くんにもこっそり参加してもらいます。皆さんにはご迷惑をおかけしますが、僕は本当に救われた気分です――。ありがとうございます――」


 涙ぐんで「花粉症です」と聞いてもいない言い訳をしながら鼻をかむ朔太郎さんに友くんが言い捨てる。


《救われたと思うのはまだ早いんだぜええええ。まだ勝負も始まってないんだからよおおおおおおお》


 二人にはこの悪態は聞こえない。自分が少し特別な気持ちで嬉しくなる。


「じゃあ、腹が減っては戦はできぬです! さっさと腹ごしらえして神社に向かいましょう!!」

 

 朔太郎さんが涙まじりに言った。

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