空っぽからの招待状1
《墨田が真っ先にその気になるとは思わなかったぜえええええ。度胸あるじゃねえかああああ!!!》
友くんのアイコンが、嬉しそうにくるくる回った。
「だって、空っぽになるのは嫌だよ。朔太郎さんや三浦さんの作品が好きなの。空っぽになったら、空っぽの作品になってしまう。そんなの耐えられないから――」
わたしは戦う。自分の好きな創作を守る。これは言葉にしなかった。誓いは声に出さない主義だ。それに言わなくても友くんはわかっているはずだ。
《よっしゃ――だぜえええええ。さて、朔太郎、お前のところにはまだ空っぽからの接触があるだろう? そいつをチャンスに変えて、空っぽをぶっ潰す作戦を立てるんだぜええええ!!!》
「はい、実は今日、また江戸川先生からDMが届いたんです――。内容は『ペトリコール』のオフラインミーティングに参加しないか、というものでした。もちろん無視する予定でしたが、……でも、友くんや墨田さん、三浦さんという仲間がいるなら、今度こそ……」
黙って聞いていた三浦さんが、明らかに年下の朔太郎さんに丁寧に聞いた。
「朔太郎さん、そのオフラインミーティングの時間と場所を教えてもらえますか? 僕らもどうにかして参加できないでしょうか。拒否されても、朔太郎さんを直ぐに救出できる場所から見守ります」
まさに金髪ナイト三浦さんの爆誕だ。朔太郎さんも感激で目を潤ませている。
「ありがとうございます……。オフラインミーティングは墨田区のA神社です。行ったことがない場所なので、ネットで検索しました。共有しても良いでしょうか」
わたし達の返事を待たずに画面に映された神社は、こぢんまりとして、美しいが、特に変哲のない場所に見えた。なぜ、神社でミーティングをするのかは疑問だが。喫茶店を貸し切りとか、個室のあるレストランを予約するとかじゃダメなんだろうか。
「……江戸川先生が東京二十三区を舞台にしたオカルトミステリーを書いているのはご存じですよね? 大人気作だ。先生の次回作が墨田区、そしてA神社から物語が始まるそうなんです。取材と言って、神社には話をつけているから大丈夫だと言うんですけど……罰当たりですよね。だって江戸川先生の小説に登場するとしたら、オカルト現象とか殺人事件の舞台にされる可能性が高いでしょ。まあ、それで参拝客が増えれば良いのかなあ、フィクションですし……」
そう言ってまた瞳に暗い影を落とす朔太郎さんに、友くんが言った。
《その神社関係者とやらも、空っぽに憑りつかれている可能性があるなあああああ。これは思いのほか空っぽの奴らの侵略が進んでいるかも知れねええええええ。厄介だぜえええええええ!!!》
なんと、創作者以外の人間にも既に影響を与え始めているのか――。
「そうかも知れません――。恐ろしい話です。そして、この神社には岩屋があるのですが、江戸川先生はここでミーティングを開くというのです」
画面の画像が切り替わった。洞窟?
そこには、まるで洞窟のような入り口が映っていた。入口の少し手前からの写真だが、大人一人が通るのがやっとという狭く薄暗い通路が見える。写真からも湿度と石の冷たさが伝わってくるようだ。
「神社マニアの間では結構有名な場所のようです。僕は自分の作品に登場する神社には必ず足を運んで、歴史資料も集めて書きますが、ここは知らなかった。洞窟の中の写真も……あります。少し怖いかも知れませんが」




