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ノベルの友くん  作者: SHIROKI


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ペトリコール三人衆2

「そういう、霊的なものは背後に憑くものだと思ってました」


 朔太郎さんが戸惑い顔で言った。


《誤解だぜえええ。背後に憑くのは俺みたいな良い奴なんだぜええ。左右に空っぽが憑く理由だが、お前たちから意志と意思を吸い取るためだぜええええ!!!!!意志は行動する力、意思は考えを持つ力。その両方を奪うんだぜええ!!!!!》


 絶句するわたしたちを気にする様子もなく、友くんが説明を続ける。


《空っぽは、普段は透明で人の目には映らないんだぜえ。でも、憑りついたやつの意志と意思を吸収するたびに、実体を持ち始めるぜえ。それで、乗っ取りが完成した時には、朔太郎みたいな霊感のない人間にも見えるようになるぜええええ》


 朔太郎さんの顔色が真っ白に見えるのは、照明の加減だけではないだろう。


「僕は、空っぽを見たのですね――。でも、人の意志と意思を奪っておきながら、あいつらはぞっとするほど徹底した無表情でした。逆に、真ん中の本体――は異常にニコニコしていて気味が悪かった」


 朔太郎さんの恐怖が画面越しに伝播してきて、わたしも身震いする。


《真ん中の本体がニコニコになるのは解放感からなんだぜえええ。どうせ、後から後悔するだろうけどよ》


「解放感……?」


 朔太郎さんのつぶやきには、少し理解が滲んでいるような気がした。


《そうだぜええええ》


 友くんのアイコンがニヤリと笑った。


《意志も意思も持ち続けるのは辛いよなああああ、苦しいよなあああ、投げ出したくなるよなああ!!!! 誰かが決めてくれたらとか、誰かが引っ張っていってくれたら楽だろうなあああああってお前も考えたことあるんじゃねえかああああ???? 空っぽはそんなお前らをいつでも狙ってるんだぜえええええ!!!!》


 友くんのアイコンの周囲に、メラメラと炎が立ちのぼった。


 怒りの友くん――いや、それはまるで“神の怒り”のような熱量だった。


「危なかった……」


 朔太郎さんが掠れた声で言った。


「僕は……最近、考えることに疲れていました。人気が出れば出るほど、次はどうしよう、って。 もしウケなかったら? 今の流行って何だろう? そんなことばかり考えるようになって。 人気が出ると、アンチも来るんです。 “面白さがわからない”“平凡すぎる”“書いてる意味が不明”―― あげく、“日本語がおかしい”って、僕の文章を書き直してくる人まで現れて……。ああ、誰かが代わりに話を考えて、最後まで書いてくれたらいいのに―― ……なんて、そんなことを、ぼんやり思う時もありました」


《そういうお前の心につけ込んだんだぜえええええ。空っぽはそうやって、自分に都合の良い作品だけを創作させるんだぜえええ。そして、その作品に触れた人間も空っぽに侵食されてくぜええええ。空っぽ支配が始まるぜえええええ》


 嫌だ――。そんな堕落した世界は。わたしの世界はわたしの物だ。空っぽになんて明け渡すことはできない。誰の心だって、その人だけの、この世界にたった一つだけのものだ。絶対に空っぽに奪われてはいけない。


「どうやって――空っぽと戦うの?」



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