ペトリコール三人衆1
わたし達が言おうとしていた台詞を、朔太郎さんに先に言われてしまい、戸惑った。
「実は僕たちも朔太郎さんを誘おうと思っていたんですよ。僕たちのチーム『エンプティシスト』に……。すみません、なんだか怪しすぎますよね。ああ、どうやって説明したら信じてもらえるんだろう……」
三浦さんが珍しく言い淀んでいると、当然、割って入ってきたのは我らがリーダー友くんだ。
《俺は友くん『エンプティシスト』のリーダー。正体は創作の神様なんだぜえええええええ。朔太郎、驚いただろう!? なんだぜえええ!!》
朔太郎さんがきょとんとしている。
「え……! 友くんさん、神様だったんですか……しかも創作の神。嘘だろ……こんなところで会えるなんて、感激だ」
本当にその声が震えている。どうしたらあっさり受け入れられるのか――。朔太郎さんは天然だ――。あの堅苦しい作風と、本人が全然一致しない。でもそれは朔太郎さんだけだろうか。
わたしはどうだ? あんなオカルトを書いているような人物に見えるだろうか? 江戸川先生だって、あんなグロい殺人描写を書くのに、ご本人は年齢不詳の美貌の小説家だ。
三浦さんは? 本人を先に知っているわたしだからこそ、三浦さんの優しさと作品がリンクしているように思うが、他の人からしたらどうだろう。金髪で狼顔の三浦さん。話せば直ぐに優しい人だとわかるが、外見からは想像がつかない。髑髏とか悪魔の絵の方が似合いそうと思うかも知れない。
つまり、創作とは、内面のさらに奥にあるものなのだ。
友くんもそんな深い神様で――
《感激されて、俺も感激なんだぜえええええ!!》
……いや、あんまり深い感じがしないけど、今は目をつむって続けよう。
「……朔太郎さんの理解が早くて助かります。それで、友くんは創作の神様なんですが、今、大変な危機なんです。人々の想像を刺激して、その創作物に支えられて存在する友くんに反抗する勢力が現れたんです。それが『空っぽ』です。空っぽは『ノベルの友くん』をはじめとして、本来友くんが管轄していた創作系AIの乗っ取りを始めました。友くんが、想像と創作意欲を刺激するのと真逆で、空っぽは『アドバイス』と称して創作者を操り、想像力を奪っていくんです。そして、空っぽは最終的に世界中の人間を自分の支配下におこうとしているんです」
「なるほど……江戸川先生とその仲間たちもたぶん、その『空っぽ』にやられたと――」
朔太郎さんが神妙な顔で頷いた。
「空っぽの率いる組織が、きっと『ペトリコール』です。でも、朔太郎さんの見た三人衆というのは一体――」
《俺は正体を知ってるぜええええええええ》
友くんのアイコンが得意げに眉を上下させる。造形は三浦さん似なので、変顔はやめてほしい。見てるこっちが気まずい。
「本当ですか!?」
驚くほどの大声で、朔太郎さんが叫んだ。それだけ朔太郎さんは怯えていたんだ。わたしなんか話を聞いただけでビクビクしているんだから、直接目にした朔太郎さんの恐怖はいかほどだろう。
《ああ、本当だぜええ。あの三人衆こそ、俺たちの宿敵『空っぽ』が人間に憑依した姿だぜえええ。憑依霊ならぬ憑依空っぽなんだぜええ》
友くんのアイコンから足が消え、両手をだらんと垂らしたお化けポーズに変わった。声に一瞬ノイズまで混じった。神様のくせに何考えてるんだ――。




