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ノベルの友くん  作者: SHIROKI


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コンセプトカフェ

 一時間半後、まだみんなが残っているうちに早々に席を立った。どうせ誰も気にしていない。


 金髪三浦さんは既に「お先に失礼するよ」と、低く穏やかな声を残して部室を後にしていた。


 先に店に着いているであろう三浦さんを待たせるのは忍びなかったが、トイレに寄って慣れないメイクをすることにした。


 別に三浦さんに特別な思いがあったわけじゃない。


 でも、初めて二人きりで話すと思うと、少しでも良く見られたい気持ちが抑えられなかった。


 普段はメイクなんかしないので、化粧ポーチの中にもリップクリームくらいしか入っていない。


 部活が始まる前、『コーヒーを買ってくる』と、聞かれてもいないのに宣言して急いでコンビニへ向かい、お試し用サイズのリップとチークを購入した。


 自分に合う色味とか良くわからないから、とりあえず失敗しても目立たないように『薄づき』と書いてあるものから適当に選んだ。


 もし、めかし込んでいる所を誰かと鉢合わせたら、ニヤニヤして「デート? え? 墨田さんって彼氏いたの?」と大声で突っ込まれるのが容易に想像できたので、トイレの個室で、狭い中、悪戦苦闘した。


 やっと自分なりに満足して学校を飛び出したが、果たしてこのメイクが世間一般に――三浦さんにとって正解なのかわからない。


 とにかくこれ以上待たせては帰られてしまう。スマホの経路案内を開き、店に小走りに向かった。


 あれ? いつも学校と最寄り駅の間、一人で寄る店は決まっているので、小道に入っただけで迷った。


 どうしよう、ただでさえ遅れているのに。泣きたくなりながら、とりあえず向かっていることを三浦さんに伝えなければと思った時――向こうから着信が来た。


 動揺のピークだ。出るべきか、出ないべきか?


 いや、待ち合わせで待たせている相手からの電話なんだから、出ないという選択肢はないはずだ。画面をタップした指が、自分の意志に反して小刻みに震えていた。


「もしもし、すみません。今、向かってるんです。出る直前に部長に声を掛けられてしまって――」


 まるで自分から電話したみたいに、言い訳が止まらなかった。


「道に迷ってますか?」


 三浦さんは超能力者か。


「……はい」


「今、どこにいます?」


 目の前に見えたコンビニの名前を答えると、そこまで迎えに行くと申し出てきた。


「あ、あの、悪いですよ」


 やんわり断ったが、金髪タトゥー紳士、三浦さんは譲らなかった。


「いえ、すぐ行くので、そこから動かないでください」


 そう言うと、電話は一方的に切れた。


 コンビニの前でスマホを手に持ったまま、何度も同じ場所を行ったり来たりしていると、遠くからでも目立つ金髪が走ってきた。


 四月初旬にしてはかなり温かい夕方だが、五時を過ぎた裏通りは少しずつ闇が面積を増してきていた。


「すみません! わかりにくい店を指定しちゃった」


「いえ、わたし、究極に方向音痴で、初めての場所に一度で辿り着けたことがないんですよ」


 大袈裟だなあ、というように三浦さんは笑ったが、わたしとしては真実を言ったまでだ。


「あっちです」


 三浦さんはタバコの香りのフレグランスを付けていることを今日知った。


 隣の席に座っていても気がつくか微妙だ。隣に座る以上に近づかないとわからないその香りを知って、少し心が弾んだ。自分でも、どうしてなのかよくわからないけれど。


「ここですか……。独りだったら一生見つけられなかった気がします」


 その店は狭く急な階段を地下二階まで降りたところにあった。


 薄暗い中を降りるのは怖かったけれど、三浦さんが気遣ってゆっくりと進んでくれるのが嬉しかった。


 その先には、中で秘密結社の集会をやっていますと言われても信じるような、鉄製の黒い扉があった。独りでこの店を見つけても、ふらっと入るなんてことは決してないだろう。


「ここ……入っても大丈夫なお店ですか?」


 ふと、これまでの三浦さんの穏やかな言動全てに裏があるような気がしてきた。


 この先で、本当に秘密結社の入団式でもやってるのでは……いや、違法な薬物の取引? まさか、拉致!? ……って、そんなわけないよね?


「どういう意味ですか……? ここはただのコンセプトカフェですよ」


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