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ノベルの友くん  作者: SHIROKI


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17/18

三人いる!!

 重たい気持ちのまま、時間にオンラインミーティングの画面を開いた朔太郎さんは、まず自分の寝不足を疑った。


 その時、江戸川先生と朔太郎さん以外にも六名の参加者がいた。しかし、カメラをオンにしていたのは江戸川先生だけだった。


 その江戸川先生が三人いるように見える。朔太郎さんは目を擦って、瞬きをした。


 ――やっぱり三人いる。それに喋っているのは真ん中の江戸川先生だけで、両隣の二人は全くの無表情だ。最初そういう壁紙を背景として使用しているのかと思ったが、どう見ても、いる。


 異様な光景に目を見張った。


「……藤井さん、聞いておられますか? どうです、素晴らしいでしょう、わたし達の思想は」


 自ら『思想』と言っている時点で、すでに宗教じみていて怖いのに左右の自分そっくりの人物について、何も言及しないのはもっと怖い。


 そして、約束の時間を少し過ぎた時、江戸川先生が突然思い出したように、静まり返っていた他の参加者に声をかけた。


 この時も、本来なら少しずれながらカメラがオンになるはずだが、なんと全員、一秒の狂いもなく画面に現れたそうだ。


 朔太郎さんは、恐怖のあまり、椅子から飛び退いたという。人は恐怖が限界を超えると、声すら出せなくなるのだと、身を持って知った。


 ――新たに現れた六名、全員の両隣にクローン人間のような二人が張り付いていたのだ。江戸川先生と同じように。


 そして、全員がまるで左右を気にする様子もなく――なんなら恐怖している朔太郎さんすら目に入らないように、満面の笑みで声を揃えてこう言ったのだ。


『ようこそ、わたし達の友!』


♢♢


 友くんから朔太郎さんのこの話を聞いてから、悪寒が止まらない。自分の左右が気になって仕方ないのだ。


 三浦さんも怯えた表情で無言になっている。


《俺の名前を勝手に使うなんて、ムカつくぜええええええ!!!》


 え? そっち? そんなことより朔太郎さんがその後どうなったのかが気になる。


「さ、朔太郎さんは結局『ペトリコール』に入会したのかな?」


 三浦さんが動揺しながらも、しっかりとした口調で尋ねた。


《朔太郎は速攻、例のミーティングから退出したんだぜ》


「で、でもそれは江戸川先生とその仲間を怒らせたりしなかったの? それに、三人同じ人が映っていたのは何だったの?」


《てめえら自分でも考えろやあああああ……と言いたいところだけど、それは無茶ぶりってもんだぜえええええええ!!! 教えてやるんだぜえええ。まずは朔太郎の方だ。それから江戸川からの連絡はこなくなったが、代わりに妙なファンメールが毎日、何十通も届くようになったんだぜえええ》


「ファンメールを装った誹謗中傷だったとか?」


 落ち着いて尋ねる三浦さんが、今、画面越しではなく、隣に居てくれたら、どんなに心強いだろう。


《一見、普通のファンメールなんだぜ。内容も好意的な感想だからありがたく目を通してたんだぜえ。と、こ、ろ、が、だぜええええ。十通目あたりから様子がおかしいことに気がつくんだぜえええ。それは語調を変えただけで、全部同じ内容だったんだぜええええええ。一人称を『私、わたし、ワタシ、僕、ボク、俺、オレ、自分……』とか、語尾を『思います、思った、思ったぜ、思ったの、思ったもん♡……』とか変化させてるだけで、書いてることは全部同じだったんだぜええええ》


 それは怖い――。明らかに同一人物が意図的にやっているか、組織的な嫌がらせだ。内容が好意的だというのも質が悪い。サイト運営元に相談しても、対応が遅れそうだ。


 すべて最近、朔太郎さんが投稿サイトで連作を開始した幕末ファンタジー長編に関するものだというが、毎日、更新した内容について、二十一通完全に内容の一致するものが送られてくるというのだ。


《今でも毎日送られてくるそのファンメールに朔太郎はメンタルが完全にやられていたんだぜえええ。そこに、あのファンアートが届いたんだぜええええええええ!!!!!! 意味わかるなあ??? イエス!! 感動しちまったんだぜえええ!!!》


 友くんは敢えて明るく言っているけど、朔太郎さんの恐怖と安堵は良く理解できた。


「朔太郎さん……怖かったよね。あからさまに『ペトリコール』の連中の嫌がらせじゃない。わたしもさっきから両隣に誰かいるんじゃないかと怖くてたまらない。そこに、あの三浦さんのイラストが届いたとしたら――。救いだと思ってしまう。『助けて』って言ってしまう」


《墨田ぁ、ずいぶん静かだったから、寝ちまったと思ってたぜええ。お前らもお察しの通り『ペトリコール』は空っぽに洗脳されたクリエーター集団だぜえええええ》


 三浦さんがごくりと唾を呑みこんだのが、画面越しからもわかった。思わず、男らしい喉ぼとけに目が釘付けになる。


「朔太郎さんを救おう――。友くんのことを正直に話して、仲間になってもらおう。早速返信メールを送って――」


《もう送ったんだぜえええええええ!!☆☆》



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