第27章「新ギルドの誘い」
2週間後。
桐谷から連絡が入った。
「時間あるか? 見せたいものがある」
リョウとアリアは、指定された住所へ向かった。
街の中心部。大きなビルの前。
桐谷が待っていた。
「来てくれたか」
彼はビルを指差す。
「これが、新しいギルドだ」
「新しいギルド?」
「ああ。『リバース』って名前にした」
逆転。やり直し。そういう意味だ。
「中を見てくれ」
エレベーターで最上階へ。
扉が開くと、広大なフロアが現れた。
最新の設備。訓練用のダンジョンシミュレーター、会議室、ラウンジ、医療室。全てが整っている。
元フロンティアのメンバー全員が待っていた。
「リョウ!」
全員が笑顔で迎える。
桐谷が案内する。
「ここがギルドマスターの部屋になる」
個室を開ける。広い。窓からは街が一望できる。
「待ってくれ」
リョウが口を挟む。
「ギルドマスターって……」
桐谷が真剣な顔で言った。
「お前に、やってほしい」
「俺が?」
「ああ」
桐谷は書類を取り出した。
「月給1,000万円。全権限委譲。自由にやってくれ」
他のメンバーも頷く。
「お前が一番ふさわしい」
「俺たちは、お前をサポートする」
リョウは見回した。
最高の環境。最高の待遇。仲間たちの期待。
アリアが横にいる。彼女もこの場にいる。
「どうする?」
桐谷が聞く。
リョウは沈黙した。
「少し……二人で話させてくれ」
会議室へ移動する。
リョウとアリアだけになった。
「どう思う?」
リョウが聞く。
アリアは優しく微笑む。
「リョウの好きにしていいよ」
「でも」
「私は、リョウについていく。どこへでも」
リョウは窓の外を見た。
「ギルドでも、配信はできる」
「うん」
「環境も、待遇も、最高だ」
「そうだね」
でも。
リョウの胸に、違和感があった。
「何かが……違う」
アリアは待っている。リョウの決断を。
リョウは深呼吸した。
「決めた」
会議室を出る。
桐谷たちが待っている。期待の眼差し。
リョウは深呼吸して、言った。
「……ごめん。断る」
一同が驚愕する。
「なんで?」
桐谷が聞いた。
リョウははっきりと答えた。
「ギルドより、大切なものができたから」
「大切なもの?」
「配信。アリア。視聴者」
リョウはアリアを見る。彼女が微笑む。
「それが、俺の全てだ」
桐谷は理解した顔をした。
「ギルドも好きだよ。でも、優先順位は変わらない」
リョウは続けた。
「俺の居場所は、もうここじゃない」
「配信と、アリアのいる場所。それが俺の居場所だ」
沈黙。
そして、桐谷が笑った。
「……お前らしいな」
他のメンバーも笑い始めた。
「そっか」
「わかった」
「無理強いはしない」
桐谷が手を差し出した。
「でも、いつでも歓迎する」
リョウは握手した。
「ありがとう」
メンバーたちも口々に言う。
「配信、応援してるから」
「困ったら頼ってくれよ」
「いつでも力になる」
リョウは笑った。
「今度は俺が、みんなの配信見るよ」
全員で笑った。
温かい別れ。
押し付けない。理解する。それが、本当の仲間だ。
ビルを出る。
アリアが聞く。
「よかったの?」
リョウは頷いた。
「うん」
空を見上げる。
「俺の居場所は、ここじゃない。配信と、君のいる場所」
アリアは嬉しそうに笑った。
「私も同じ」
二人で手を繋ぐ。
「帰ろう、家に」
「うん」
歩き出す。
二人の未来は、ギルドじゃない。
配信と、視聴者と、お互いのいる場所。
それが、二人の居場所だった。




