第28章「初デート」
翌週末。
リョウは鏡の前に立っていた。何度も服を着替える。
シャツ、パーカー、ジャケット。どれがいい?
「これで……いや、ダメだ」
また着替える。
緊張で手に汗が滲む。
スマホが震えた。アリアからのメッセージ。
「準備できた!」
リョウは深呼吸した。
「迎えに行く」
返信を送り、部屋を出る。
駅前の広場。
待ち合わせ場所。
人混みの中に、銀髪の少女が立っていた。
白いワンピース。初めて見る服装。
リョウは見惚れた。
「……かわいい」
思わず声が出た。
アリアが気づいて振り向く。顔が赤くなる。
「ありがと」
リョウに近づく。
「リョウも、かっこいい」
リョウも照れる。
「そんな……」
二人とも、顔が真っ赤だった。
お互い、見つめ合って笑う。
「じゃあ、行こうか」
「うん」
手を繋いだ。
温かい。
最初の目的地は、水族館。
アリアにとって、初めての水族館。
入口をくぐると、青い光に包まれた。
「わあ……」
アリアが声を上げた。
「魚が、いっぱい」
巨大な水槽。色とりどりの魚が泳いでいる。
アリアは水槽に顔を近づけた。
「きれい……」
リョウは、アリアの横顔を見つめていた。
彼女の笑顔。子供のような純粋な喜び。
「楽しそうで、よかった」
「リョウは?」
「俺は、君が楽しそうで楽しい」
アリアは照れた。
「もう……」
イルカショーが始まった。
観客席に座る二人。
イルカが跳ぶ。水しぶきが上がる。
「すごい! 飛んだ!」
アリアが大興奮。
リョウは彼女を見つめ続けた。
アリアが気づく。
「リョウ、ちゃんと見て」
「見てるよ」
リョウは笑った。
「君を」
アリアの顔が赤くなった。
午後。遊園地へ移動した。
ジェットコースターに乗る。
「怖い……!」
アリアがリョウの腕を掴む。
急降下。二人で絶叫。
風が髪を揺らす。心臓が跳ねる。
終わった後、二人で笑い合った。
「もう一回乗る?」
リョウが聞く。
「やだ!」
アリアは首を振った。
でも、笑っている。
観覧車へ向かった。
ゴンドラに乗り込む。二人きりの空間。
ゆっくりと上昇していく。
窓の外、街が一望できる。
夕焼けに染まる景色。
「きれい……」
アリアが呟く。
リョウは、横顔を見た。
夕日に照らされる、銀髪。
心臓が早鐘を打つ。
「アリア」
リョウが口を開いた。
「うん?」
アリアが振り向く。
観覧車が頂上で止まった。
リョウは意を決した。
「好きだ」
アリアの目が見開かれる。
リョウは続けた。
「ずっと前から。君を救いたかったのは、好きだったから」
アリアの目に涙が浮かぶ。
「私も……好き」
声が震える。
「ずっと前から。リョウに出会えて、本当によかった」
二人、見つめ合う。
距離が縮まる。
ゆっくりと。
唇が触れ合った。
初めてのキス。
柔らかく、温かい。
数秒の永遠。
離れると、二人とも真っ赤だった。
「えっと……」
「うん……」
何を言えばいいのか分からない。
また笑い合った。
「付き合おう」
リョウが言った。
「うん」
アリアが頷く。
もう一度、手を繋ぐ。
今度は、恋人として。
観覧車を降りる。
夕暮れの遊園地。
二人は手を繋いだまま、歩いた。
「今日、楽しかった」
アリアが言う。
「俺も」
リョウが笑う。
「また、来ような」
「うん。何度でも」
帰り道。
電車の中。並んで座る。
アリアがリョウの肩に頭を預けた。
「疲れた?」
「ちょっと」
でも、幸せそうに笑っている。
リョウも笑った。
アパートに戻る。
玄関で、二人向き合う。
「おやすみ」
「おやすみ」
もう一度キスをして、別れた。
リョウは部屋で一人、天井を見上げた。
実感が湧く。
幸せが、胸に満ちていた。




